十三代市川團十郎白猿襲名披露 11月 夜の部2022/11/14 15:04

2022年11月11日 歌舞伎座 午後4時開演 1階16列39番

「矢の根」
これは前に観たことがあって、大根が印象に残っている。ストーリーは頭に入らずボーっと見ていたら花道から大根をたくさん積んだ馬が出てきた。主人公の幸四郎はその馬に乗って大根を持って引っ込んだ。

「口上」
下手に仁左衛門と左團次、上手に菊五郎と梅玉。そして新團十郎と新之助、紹介の白鸚。
白鸚の美声の名調子は藤十郎襲名のときのテンション高い本人の挨拶を思い出させる。「年長者の言うことをよく聞いて」という言葉に客席が笑う。いつもの襲名口上と違って大御所しかいないので、お父さんの葬式に集まったお父さんの同僚のような雰囲気。
仁左衛門は、12代目とは仲がよくてお互いの家を言ったり来たりしていて、12代目の家で若い役者たちといっしょにいると、その近くで仲間に入りたそうにしていた子供が新團十郎になって、今は自分の子供がいて父親としての視線で息子を見ている、と言った。左團次はテレビでワイドショーを見ていたらこの襲名を取り上げていたがほとんど新之助のことした言わなかった、ゆうべテレビを見ていたら新團十郎が語っていた、皆さん新之助をどうぞよろしくお願いいたします、と言った。菊五郎は12代目とは若いときからずっと仲良しで、仕事もいっしょだったしその後もいっしょに遊びに行った話をした。梅玉は12代目と同級生だった話と今月助六でやる白酒売は先代の助六で2回やったことがあるという話をした。
白鸚が新團十郎に睨みをするように促す。そういえば先代の襲名のときに松緑もやっていたな、と思い出した。松緑は「團十郎、睨んで差し上げなさい」みたいな口調だったが白鸚は「十三代目さん」とちょっと丁寧。叔父である松緑と、父の従兄である白鸚との違いだろう。
睨みは海老蔵襲名の頃の方が迫力を感じた。

「助六」
きょうの席は1階1等の一番後ろなのだが、先代の襲名の助六のときは3階席で助六が出てきてしばらくは音しか聞こえなくて悔しい思いをしたので、それに比べれば助六の姿が見られるきょうの席はありがたい。
助六、揚巻、白玉が先代の襲名のときの役者の息子になっているのはみんな順調に育ってめでたいというべきか。
並び傾城の一人は團子。團子の女形は初めて見るかもしれない。顔が小さくて首が長そうできれいだ。
松緑の意休は体格のせいか貫禄が足りない。
菊之助の揚巻を見るのは何度目かだ。きれいで落ち着いた揚巻。
白玉役の梅枝は顔が大きくて上背もあって台詞がしっかりしているせいか貫禄がある。2人並んで座っていると揚巻が2人いるような印象。
助六の出端は良かった。腕を伸ばして傘を開いている形がきれいだし、最初の台詞も先代のような悪声ではない。
助六の台詞は全体に早口。仁左衛門のような「滔々と」流れる台詞ではなく単なる早口で聞き取りにくいときもある。
その團十郎に教わっているせいか福山かつぎ役の新之助も早口。まだ子供だし、きっぱりとした雰囲気があっただけで立派。
くわんぺらの仁左衛門はやっぱりうまい。出てくると舞台に引き込まれる。すごくうまいが、この役は他の役者でもいいと思っている。私は仁左衛門には白酒売りをやってほしかった。先代の襲名のとき、12代目團十郎より長身の孝夫が着替えを手伝って助六の後ろで着物を高い位置から広げて持っているのがかっこよくて目に焼き付いているからだ。
梅玉の白酒売りに文句があるわけではない。
鴈治郎の通人は予想よりも楽しかった。

十三代目市川團十郎白猿襲名披露公演特別公演2022/11/05 23:04

2022年11月1日 歌舞伎座 午後5時開演 1階3列3番

入場前に記念品引き換えの列に並んでチケットの裏に済のスタンプを押され、記念品が入った紙袋を受け取った。


1.神歌
翁の観世清和と千歳の三郎太が前列に座り、初めに翁が、次に千歳が歌う。後列に地頭、地謡が並んでいた。

2、顔寄せ手打式
幹部役者が3列くらいに並び、松竹の偉いさんが3、4人で短い挨拶をした。役者以外の人が話すせいかいつもの口上とは違ってマイクが入っていたようで、声が下手のスピーカーから聞こえた。役者はびっしり並んでいたが私から見えたのはほとんど一列目だけだ。下手側の真ん中寄りの端に仁左衛門がいてその隣に玉三郎がいた。上手側に獅童が見えた。どういう順番で並んでいるのかはわからなかった。
白鸚が新團十郎を紹介した後、八代目新之助を紹介した。新之助の挨拶ははきはきしていた。仁左衛門が新之助の方を見て微笑んでいた。
最後に観客も加わって手締めをした。

35分の休憩の後、「襲名記念特別映像 」があった。初代からの團十郎の紹介と11代から13代までの写真や映像の紹介だった。11代と12代、12代と13代がいっしょに写っている写真や共演の映像もあった。13代の今までの道のりをたどって新之助時代の「天守物語」や「海神別荘」の写真が出ると、見た頃の自分の暮らしも思い出して懐かしかった。
この後、10分休憩。

3、「勧進帳」
ここまでで休憩が3回もあったので、正直、やっと勧進帳か、と感じた。
海老蔵襲名のときに仁左衛門の富樫が観たくて大阪遠征した。それ以来のこの二人の弁慶富樫だが、仁左衛門はもう1か月富樫をやることはなさそうだし、この組み合わせの弁慶富樫はこれで見納めかな。私の最高の「勧進帳」なのだが。
鳴物の人たちが烏帽子をつけていた。今までに見た記憶がない。
勧進帳は何回も観ているがこの辺の席から見たことはない。富樫の顔がずっと真正面に見える。太刀持ちは丑之助だ。丑之助が将来素晴らしい弁慶役者や富樫役者になることもあるんだなあ、とふと考える。愛之助が初めて太刀持音若をやったのは今の丑之助くらいだろうか。
花道のすぐ横の2席は人がいなくて、私の右側の列の人が一番花道に近い。ここは花道に出てくる役者がよく見える。義経役の玉三郎がしばらく七三に立ち止まっていた。かぶっている笠についたひもを顔の周りで結ぼうとしているのがよく見えた。
四天王は鴈治郎、芝翫、愛之助、市蔵。芝翫、愛之助は元々うまいと思っていたが、鴈治郎も太い声で、こんなにうまかったかと思った。
新之助時代に浅草で初めてやった弁慶も観たが、あの時から何百回も弁慶をやってすっかり安定した。仁左衛門との丁々発止を堪能した。延年の舞を見ていると、弁慶はやっぱり華がある人が演じるべきだと思う。久しぶりで、客の目を引き付けるこの人の魅力を思い出した。
義経と四天王が花道から急ぎ足で去り、弁慶が花道七三あたりでお辞儀をしたり六方を始めるあたりの團十郎の顔がよく見えた。ドブ席だけど見られるだけでありがたい、と思っていたがここは役者の顔がよく見えるので気持ちが盛り上がるすごく良い席だった。

十月大歌舞伎 第一部2022/11/01 14:37

2022年10月23日 午前11時開始 2階1列19番

2階最前列で、後ろに人がいないので前のめりもし放題という客入り。

「鬼揃紅葉狩」
久しぶりに猿之助の踊りが見られて嬉しい。お姫様の姿でお酒を飲むときに腕が鬼の腕のように動いてしまうのがいい、と平成中村座で近くの人が話していた。
侍女役は種之助、男寅、鷹之資、玉太郎、左近、とたぶん年齢順に真ん中から下手にかけて並ぶ。種之助は自信があるのだろう、すっかり落ち着いて控えている。踊りは女らしく優美。左近が美人だった。
脚をそろえて横に跳びながらグイグイ寄っていく動きはさすがに鷹之資はうまい。隣の玉太郎、左近はこの動きには慣れてないように見えた。
鬼の化粧になると誰が誰やら見分けがつかなくなってつまらない。
猿弥と青虎が従者役。短い間だが青虎の所作が見られてよかった。

「荒川十郎太」
講談を歌舞伎化した新作。ある武士が高い身分の者と偽って堀部安兵衛の墓参に訪れていた、その理由を丁寧に説明した芝居。
松緑演じる荒川十郎太がその理由を説明するときに回想シーンとして主税役の左近がスッポンから現れたり舞台の真ん中に安兵衛役の猿之助が現れたりする。人数が少ないせいか回想シーンの空間が回想として成り立っていて混乱することがない。面白い表現方法だと思った。

平成中村座 十月大歌舞伎2022/10/23 08:51

2022年10月15日 平成中村座 1階19列1番


久しぶりの中村座だ。以前行ったときより浅草の駅から近くて、浅草寺の境内をつっきって行くので楽だった。

「角力場」
勘九郎の長五郎、七之助の吾妻は予想の通り。虎之介の長吉がとてもわかりやすい演技で、成長したとも思ったし、十代の頃感じたように相変わらず気の利いた子だな、とも思った。
与五郎は歌舞伎の登場人物の中で一番共感できる人かもしれない。新悟は長五郎の着物がちょうどぴったりのような長身だが、ひ弱な若旦那をよくやっていた。

「幡随長兵衛」
獅童が長兵衛で息子の陽喜が倅長松。本当の親子でやるのは初めて見る。大河が長松をやったときはたまに「あいよー」とか答えながらもう少し長く舞台にいたように記憶しているが、陽喜はあの時の大河より少し幼いので、あまり長く舞台にはいないのだろう。
獅童は着るものが似合ってかっこいい長兵衛。見た目だけなら御所五郎蔵も文句ないのにな、とちらっと思う。萬屋錦之助が歌舞伎座で長兵衛を演じたときは子分の役で出ていた。あのときは「ずいぶん背が伸びてもうすっかり大人だ」と日記に書いたほど若かったが、何年も経って自分が長兵衛やれるようになったのは素晴らしい。
水野は勘九郎。最初は2階席の後ろの方に現れ、花道の外の外側の席の私のところからけっこう近かった。最初に観たのが孝夫の水野だったせいか、敵役だけどかっこいい人、みたいなイメージを持っていたが、勘九郎はそういうカリスマ性を感じなかった。
舞台番役の獅一が良かった。名前は知っていても役と一致することがなかったが、今回初めて意識してみて、芝居がうまい人だと思った。

帰りは屋台を見て歩いて、途中で鮎の塩焼きを食べた。

四月大歌舞伎 第三部2021/04/06 00:47

2021年4月5日 歌舞伎座 午後6時開演 1階13列14番

「桜姫東文章 上の巻」

36年前の3月に「桜姫東文章」を観てすっかり心を奪われてしまい、今に至る。
8月以来、わりに淡々と歌舞伎を観てきたが、二度と観られないと思っていた玉三郎と仁左衛門の「桜姫東文章」が本当に観られるのかと思うと少しドキドキした。牡丹灯籠以来のポスターも買って玄関に貼った。

36年前に観た後に舞台写真満載の旺文社の文庫で復習したし、玉三郎と段治郎のも観たし、福助と海老蔵のも観たが、初めて見るような気がする部分も多かった。

序幕は花道でやっていた印象だったが、最後は舞台の上に稚児が淵ができて、香箱を持った白菊丸(玉三郎)が海に身を投げた。玉三郎はこの後、新清水の場で桜姫として登場するから早変わりになるのか、と思っていると、幕の前に功一が現れて、きょうの芝居は上の巻で、新清水の場は序幕から17年後のことである、と口上を述べた。

パッと明るくなる新清水の場は、赤い衣装の玉三郎。弟の松若は千之助だ。36年前は孝太郎だった。
清玄が念仏を唱えると、尼になりたい桜姫の手が開き、香箱が転がり落ちる。それを見て、桜姫は白菊丸の生まれかわりと知る清玄。桜姫を出家させると言って上手にはける。

桜姫一行が引き上げた後、局の長浦(吉弥)が一人で誰かを探しているような雰囲気で花道から出てきた。僧の残月(歌六)と落ち合って色っぽく迫る。この二人は最後までとても面白くて好きだ。残月の役は錦之助の方が年下の男の雰囲気があって良かったのではないかと思う。歌六の方がうまいが。

以前桜姫との縁談を断った悪五郎(雁治郎)は、桜姫の左手が開いたと知って気を変え、長浦に恋文の取次を頼むが、「左手が開いたら、お前なんか相手にしないわ、ふんっ」と断られてしまう。そこに、釣鐘権助に替わった仁左衛門が登場して、桜姫に手紙を届けてやろうと言う。権助は実は桜姫の父と弟を殺した男だった。

草庵の場。剃髪を待つ桜姫に、権助が悪五郎からの手紙を渡すが桜姫は復縁を拒む。
幽霊の話をする仁左衛門はいつもながら語りがうまい。
権助の腕の入れ墨を見た桜姫はハッとし、腰元たちを下がらせ、権助を中に呼び入れる。仁左衛門の草履の扱いが手慣れた感じでいい。
玉三郎が袖を顔の近くに持って権助を呼び入れるあたりの客席の雰囲気は、与三郎が「ご新造さんへ~」の台詞を始める直前の客席に似ていて、皆が固唾をのんで見守っている。
桜姫は権助に自分の腕の入れ墨を見せ、去年のことが忘れられずに同じ入れ墨を入れたと語る。そのときに子供ができて生まれた子供はよそに預けてあることも。
その後は濡れ場になるわけだが、初見のときに私には玉三郎が嬉々としてラブシーンを演じているように見えた。それは、権助に再会できた桜姫が喜んでいたということだろう。
横になった二人を隠すように御簾が下りた後、残月が上手からフラフラと出てきて、しきりと口を拭う。それを追うように長浦が出てきて、二人でこっそりと中を覗く。その後の興奮した様子の長浦と、それに怯える残月が笑わせる。

悪五郎も加わって、桜姫が寝ている現場に踏み込む。権助は逃げる。桜姫が責められているところに清玄が現れて桜姫を庇うが香箱の中に清玄の名を書いたものが入っていたので、相手は清玄だろうと言われ、寺を追放されることになった。
残月は清玄に替わって住職になろうとするが、長浦との不義が露見して、やはり追放される。

稲瀬川の場では桜姫と清玄が鞭打ちの刑を受けるが、この場面は記憶にない。
赤ん坊を預かっていた夫婦が、もう金が出ないからと赤ん坊を返しに来た場面は見覚えがある。
清玄は、こうなったからには夫婦になろうと桜姫に迫る。
そこに悪五郎が現れ、赤ん坊の奪い合いになり、最終的に清玄が赤ん坊を抱えて行く。
上の巻最後の三囲の場は、鳥居と階段がある場面で、これは見覚えがある。最初に観たときは両花道の仮花道の方を頭巾を被って赤ん坊を抱いた清玄役の孝夫が舞台に向かってゆっくり歩いて行くのをわりと近くから見た。今回は仮花道はなくて、仁左衛門は上手の上の方から出てきた。階段を降りて火を起こし、赤ん坊の濡れた着物を乾かしてやる。桜姫も赤ん坊を探して彷徨っているが、すれ違う。

初見から36年、綺麗な孝夫と玉三郎は二人とも人間国宝になり、自分も生き延びて、また二人の桜姫を観ることができたのは誠に目出度い。

初見のときは孝夫の権助が素敵で今回も一番楽しみだったが、衣装からうかがえる身体が老人だし、声も当時とは違う。吉右衛門と共演した「盟三五大切」の三五は権助系で、あのとき相変わらずかっこいいと思ったから、あの頃に再演してくれていればよかった。
そのかわり、今回は、仁左衛門がやると清玄がなんて素敵なんだろうと思った。初見のときは清玄みたいな情けない役は別の役者がやってもいい、と思ったのに。
この話の中で、権助は普通の悪党。桜姫は落ちていくお姫様。はじめに白菊丸と心中しようとし、生まれ変わりの桜姫に会ってからは死ぬまで執着して行く清玄が、一番とんでもない。この役を、高貴さを漂わせる仁左衛門が演じるのは最高。6月の下の巻が楽しみだ。

三月大歌舞伎 第一部2021/03/28 22:48

2021年3月4日 歌舞伎座 午前11時開演 1階5列14番

「猿若江戸の初櫓」
10年以上前に南座で観た覚えがある。当時、勘太郎の踊りが見られる以外はそれほど面白い演目とも思わなかった。
今回は、久しぶりに勘九郎の踊りが堪能できたのと、子供の頃から知っている若手 を見られたのが楽しかった。
宗之助を先頭に花道に男寅、虎之介、千之助、玉太郎、鶴松の順に並ぶ。いっしょに動くときは鶴松に注目する。舞台に出てからは全員ソロで踊るときがあった。男寅も表情豊かに自信ありげに踊っているので、大人になったと感じる。鶴松が一番うまいのは言うまでもないが、宗之助と男寅だけが二人残ってまた踊るので、御曹司の中で年上の男寅が優先される、ということか。

「戻駕色相肩」
駕をかついだ浪花の次郎作(松緑)と吾妻の与四郎(愛之助)。浪花と吾妻が松緑と愛之助では逆だが、踊りがうまい松緑と、二枚目の愛之助で、役には合っている。愛之助は衣装が映えるし、台詞も声が通って良かった。
駕篭に乗っている禿役は莟玉。これも若くてきれいな女形で、役にピッタリ。
特に内容がある話ではないが、3人とも役に合っていると、気持ちよく見られる踊りだ。

二月大歌舞伎 第二部2021/02/24 15:33

2021年2月2日 歌舞伎座 午後2時15分開演 1階13列18番

「於染久松色読販」

序幕の「柳島妙見の場」は3年前はなかったように思う。ここで丁稚の久太というのが出てきて、そうだ、吉太朗が出たんだ、と思い出した。吉太郎の花道七三での所作事を見てスカッとした。腕を開く形が綺麗で気持ちがいい。番頭役を見て千次郎かも、と筋書を確認したら千次郎だった。「おちょやん」に出ていた松十郎が中間の役で出ていた。嫁菜売は吉之丞。

第二場の莨屋の場は3年前に見た記憶がある。今回は、福之助がやった髪結が新鮮で印象に残った。顔が似てるわけではないが「芝翫の息子」という雰囲気がある。

油屋の場には丁稚の役で眞秀が出た。丁稚の久太役の吉太朗も前回同様うまかった。
お六(玉三郎)と喜兵衛(仁左衛門)が強請に来るが、特に玉三郎が元気だった。失敗して二人で籠を担いで花道を帰る姿が楽しい。

「神田祭」
玉三郎と仁左衛門がいちゃつく踊り。仁左衛門の胸元あたりに置いた玉三郎の手がエロっぽい。やっぱり、この二人の顔が近くにあるのはいい。二人で花道を引き揚げるときは仁左衛門は客席に向かってペコペコ頭を下げ、盛大な拍手をもらっていた。

壽初春大歌舞伎 第三部2021/02/01 23:54

2021年1月2日 歌舞伎座 午後6時45分開演 1階10列11番

「車引」
染五郎は脚が細い。台詞はもちろんまだ拙いけれども、声に一本筋が通った強さがある。

「らくだ」
江戸の設定の「らくだ」だが、愛之助演じる紙屑屋は関西弁。こういうのは珍しいのだろう。
半次(芝翫)の妹役に男寅。男寅ちゃんは久しぶりに見る。
駱駝の馬太郎の役は松江。

十二月大歌舞伎 第一部2021/02/01 23:32

2020年12月1日 歌舞伎座 午前11時開演 1階3列22番


「弥生の花浅草祭」

何年か前に松緑と愛之助がやったのを観た。今回はそのときの松緑のパートを愛之助が、愛之助のパートを松也がやる。
二人とも元女形、という二人のニンが被るところがあるので、今回は愛之助に不利だったと思う。松緑と踊ったときは踊り自体は愛之助は松緑に及びもつかないが通人はニンに合っていた。今回はその通人を松也にとられて、若い松也の二枚目ぶりが目立った。それに対する国侍は、松緑はどんぐり眼が効いてインパクトのある顔になっていたが、愛之助は顔が地味。最後の連獅子も、背の低い愛之助の方が親獅子で、踊りで差をつけられるわけでもなく松也の方が目立った。

吉例顔見世大歌舞伎 第四部2021/01/30 21:09

2020年11月3日 歌舞伎座 午後7時半開演 1階12列25番

義経千本桜「川連法眼館」

忠信が獅童、静御前が莟玉、義経が染五郎、駿河次郎が團子、亀井六郎が國矢、という配役はまるで浅草歌舞伎で、こんなご時世でもなければ歌舞伎座ではありえない。でもこの演目を嫌というほど見てきた自分にとっては、その新鮮さがありがたい。

莟玉はちょうど一年前の11月が襲名だった。たった一年でこんな大役をやる。今まで四の切を観たときにはあまり感じたことがなかったが、静の台詞はけっこう多く、莟玉が歌舞伎座で堂々と演じていることが感慨深かった。

染五郎は品があって、声に何か一本通ったものがあって、位のある人の役にふさわしい。

團子はひょろっとした印象が連獅子のときと同じで獅童と比べても身長が同じくらいなので、やっぱり長身なのだと思う。素顔は微妙だが、拵えをした顔は二枚目ではないがなかなかいい。

國矢は、この顔ぶれの中では間違いなく一番うまいだろう。

獅童の狐は、決してうまくはないのだが、感動した。欄干歩きとか欄間抜けとかいろいろやることがあって、必死だったと思う。狐の衣装で出てきても人間にしか見えない。大きな人間が必死に動き回っているのを見ると胸に迫るものがある。猿之助の狐とは対極にあるものでも、感動することはあるのだと知った。