バルバラ異界2006/12/03 02:20

萩尾望都の「バルバラ異界」が日本SF大賞を受賞したそうだ。「残酷な神が支配する」が手塚賞を受賞したときは今さらと思ったものだが、「バルバラ異界」の受賞は素直に嬉しい。萩尾作品としては知名度も低く、これから先も萩尾作品の中ではマイナーな部類であり続けるだろうが、個人的に思いいれのある作品だ。

第一話読後は初期の作品のような軽いファンタジーかと思ったが第二話のSF度が尋常でなく、一気にはまった。特に瀬戸内海に現れる幻の島のあたりに魅力を感じた。結局、この第二話が連載中ベストだった。

英会話のレッスンのときにこの第二話の要約を英語で書いたものをMiriにチェックしてもらった。Miriも面白いと言ったが、後でそれを読ませたら息子も面白いと言ったそうだ。

4巻で終わったがせめてもう1巻あったほうが広げた風呂敷をもっとうまくたためたのではないかと思う。ずっとキリヤに感情移入して読んでいたので最後が悲しかった。どんな形であっても渡会とキリヤが幸せになったと読者が安堵できるような番外編をひとつ書いてほしい。

ブログ一年2006/12/07 00:05

このブログをはじめて一年経った。特にテーマはなく日記にするつもりだったが今のところ主に愛之助追っかけ日記になっている。はじめたときは想像もしなかったことで面白い。この先どうころがることやら。

ケンブリッジ英検 CAE スピーキング2006/12/10 14:47

きょうは昼過ぎにケンブリッジ英検の CAE のスピーキングのテストを受けた。時間は15分。水曜日にはこれ以外の科目のテストを一日かけてやる。

きのうはCAE Study PackについていたCDを聴いた。自分の職業とか、想定問答の練習をしておいた方が良いとは思ったがやる気が出ず、実力で行くことにした。落ちたら来年また受ける。ただペアになって答えるところがあるので相手に迷惑をかけさえしなければいい、と思った。

欠席者がいるかもしれないからインタビュー開始予定時間の三十分前までに来るようにと受験票に書いてあったが、ブリティッシュカウンシルの2階で受験票とパスポートを見せてチェックを受けたときに、欠席者はいないのでインタビューは予定通りの時間に始まると言われた。三十分以上時間があったので渡されたマークシートを持って神楽坂を歩いた。マークシートを見たらGrammar and Vocabulary, Pronunciation, Communicationなどの項目があり、発音だけは自信あるんだけど、などと考えた。

開始時間の少し前に部屋の前の椅子に座った。ペアのパートナーになる方が先に座っていて「よろしくお願いします」と挨拶されたので挨拶を返し、少し話した。カナダで勉強された方でスイスでの就職を目指しているそうだ。試験室の中で話している声が聞こえた。15分は長いでしょうか、と聞いたらパートナーになる方は、友達に聞いたらあっという間だそうだ、と言った。終わった今となっては確かにあっという間だったと感じる。

試験室に入ると、試験官のポールと、アシスタントのフィルがいた。最初に名前と、いつ英語の勉強をはじめたか、なぜか、などをきかれ、その後写真を見せられてパートナーの方と順番にしゃべった。私は後だったので、bottom right とか言ったのが聞こえて自分でも使うことができた。ただこのパートについては自分が見た写真の内容がよく理解できないこともあって出来は悪かった。

二人で、自由について表現しているという写真を見てしゃべるのはうまく行ったと思う。自由関連で、自由に一番貢献した近代の発明は何だと思うかという質問にinventionを eventと勘違いしてフランス革命、などと答えてしまったが、質問を繰り返してくれたのでインターネット、と答えた。語学の試験だからかまわないが、実際には何なのだか浮かんでこない。

上出来ではないが失敗ではなかったと思う。相手の方に迷惑かけなかったのが何より。

事後の自己評価として、私は見たものの描写力がない。これは英語に限ったことではない。試験官が何か質問してくれるとずっと楽だ。質問に答えるのは慣れていて、わりとうまくできると感じた。10年以上やってきた英会話の個人レッスンの成果と言っていいかもしれない。

正月の歌舞伎2006/12/12 01:13

頼んであった正月の浅草のチケットが届いた。結局初日はイープラスのプレオーダーでとれた一部のチケットだけだ。二階席だけど愛之助初役の権太を見られるからいいか。プレオーダーのケチットが無駄にならなくて良かった。 3日は一部二部通しで見る。 友達に頼んだうちの一枚は楽の一部で、どうせ有休をとらざるをえないので二部の3階席をきょう買った。すごい。11月に国立を3回見たとき、2回見るのは意味があるが3回見てもあんまり変わらないと思ったが「すし屋」を4回見るのはどんな感じだろう。

歌舞伎座は夜の部を一回の予定。最愛の玉三郎が一回では申し訳ないが、高いし。

浅草歌舞伎チケット2006/12/12 23:14

友達に頼んでいたチケット二枚がとれなかった。ショック。特に楽の日は一部のチケットがあるから二部を買ったのに。別のところで買うしかないか。

愛之助は今年のこんぴら歌舞伎に出るそうだ。3月南座、4月浪花花形の松竹座、その後四国へ遠征するのか。完全に稼ぐ額より使う額が多いな。

いろいろ考えることは多いが明日は試験なのだ。

ケンブリッジ英検 リーディングその他2006/12/13 21:50

きょうは9時半から午後4時15分までブリティッシュ・カウンシルでCAEのリーディング、ライティング、English in use、リスニングの試験を受けた。

今まで受けたうちで一番難しいリーディングだった。最後まで回答することもできなかった。リスニングはあの内容だったら日本語でも落ちるかもしれない。

9時からIDチェックが始まるので9時少し前に行って地下二階の大会議室の前で待った。待っている間に眠くなりそうだったが試験の間は眠くならずにすんだ。

9時半から10時45分までがリーディング、10時55分から12時55分までライティング、その後45分の休憩があり、その後午後1時45分から2時半までリスニング、最後が2時40分から4時10分までのEnglish in use、の予定だったがリスニングとEnglish in useが逆になった。個々の時間も始まりが一分二分遅れるとそれにつれて終わりも遅くなる。開始終了は人間の言葉によって知らされる。

リーディングについては何も問題ないと思っていたしリスニングについても昨夜目を通したときは楽勝だと思ったが、リーディングは経験者の言うとおり時間が足りなくなる。パート4まであるのにパート1に三十分かかってしまってあせった。結局、パート4は文をまともに読めなかったし、マークの塗り残しもあった。試験が始まる前に、終わったら外に出てもいいですか、と質問しようかと思ったがきかなくてよかった。

ライティングは、1問は必修、次はいくつかある中から選択して書く。普段英文を書くときは頭に浮かんだまま打ち込んでから直していって完成する。手書きで、下書き用の紙も与えられずワード数制限のある文を書くのは大変だった。ただ仕事で毎日英文メールを書いているせいかどうにか書けた。

昼は神楽坂のウェンディーズで食べた。

昼の最初は受験票ではリスニングと書いてあったがEnglish in Useに変わった。得点源だと思って頑張ったが、選択肢のすべてが正しいと思える問題がたくさんあって、自分がその一つを選んでいる理由がよくわからない。与えられている動詞の原形を文に合うように名詞形や形容詞形に変える問題は、オックスフォード大学出版局のCAE Study Packで練習しておいてよかった。否定形とか人とか、自分の概念の中では「変化形」の中に入ってないものまで入るので、知らなかったら戸惑うと思う。

リスニングは、前日に過去の問題やCAE Study Packの問題に目を通しても穴埋め問題で、CDの英文は聞き取れるし、何も問題ないと思った。それが大間違い。後ろの席にいたスピーキングの時のパートナーが「リスニングもテクニックがいるし」と言ったのが「?」だったが、試験がはじまってびっくり。穴埋めする問題が10くらいあるが、その問題を読む時間はとくに与えられない。ただ音声が流れ始める前とか、一回目と二回目の間に必死に読んで、必要な箇所をききとらなければならない。パート2の、音声を一回しかきけない問題は特に難しかった。後半の多肢選択の問題はどうにかできた。テクニックが確かにいる、と強く感じたのだが、本当は母国語くらい内容が理解できればあの問題に答えるくらい覚えていられるのかもしれない。そういう意味で、リスニング力はただ音をききとるだけでなく内容の理解力も求めている、ということなのだと思う。

リーディングとリスニングは失敗した。C判定で十分だからどうにか受かっていないだろうか。

今まで受けた英語の試験の中では、TOEFLが一番純粋な英語力を測る試験だと感じた。英検一級はことわざなどを知っていなければならず、ネイティブでも年少だと知らない可能性がある。TOEFLはそういう知識は不要で、ただ問題を解くスピードは必要で、受けている間に「この問題は英語できればできるな」と、当たり前のことを思った。

CAEは英語力以外のものを測られているように感じる。別の知的能力とか、根気とか努力する力など。あのリーディングの問題はネイティブでも根気のない人間は投げ出すだろう。だから、ヨーロッパで就職のときの条件になっているのは全く正しいことだと思う。

三越カルチャーサロン 歌舞伎おもしろ講座 第三回2006/12/21 23:16

小道具の一部

2006年12月17日

顔見世を見るために京都に向かう新幹線に乗る前、午後1時から三越で「歌舞伎おもしろ講座」の最後、「歌舞伎を飾る小道具について」を受講。講師は藤浪小道具の常務取締役の湯川さん。経歴から推測して七十五歳くらいの方だろう。 愛之助が目当てで受講した人が多くて今回は受講者が少ないかもしれないと予想したのだが、私の目には前回とそんなに変わらない数に見えた。メンバーが入れ替わった感じ。前回いた人で明らかにいない人と、前回は見なかった人がいた。歌舞伎は好きだが愛之助に興味なくて前回欠席の人もいたのだろう。

終わったあとなら道具の写真をとってもいいと言われたので、机の上にあった道具の写真をとった。お地蔵さんは、四谷怪談で使うもの。今はお地蔵さんになっているが、はじめは赤ん坊で、下のひもをひっぱると一瞬にお地蔵さんに変わる。頭はぜんまい仕掛けでまわり、胴体の方はネズミ捕りのバネだそうだ。

今回はA4二枚のレジュメが最初に配られ、話は一応これに沿って進んだ。 私の話は余談が多くて」と、2時半に終わる予定の講座が3時15分まで延びたが、「歌舞伎オタクでどうしようもない人生」と言い、「歌舞伎を愛する人は正常な考えを持っている人が少ない」と明言するこの人の話を私は永遠にでもきいていたかった。

私は歌舞伎について「勉強」したことがなく学術的な背景については知識がない。「くにちかの絵」「ちゅうけい」なと゜、ひらがなでメモをとるしかない。

こんな内容でした。

日本の芸能は神代の昔にさかのぼる。最初は天照大神が天岩戸に隠れたときのアメノウズメのミコトの踊り。古事記の原文では「ホトもあらわに踊り狂った」と書いてある。(「ホトとは・・・」と、昔は女性はパンティーなどはいていなかった、と白木屋の火事の話になる。)アメノウズメというと私は「火の鳥」のアメノウズメを思い浮かべる。神楽が日本の音楽(芸能)の最初、ときくと「バルバラ異界」を思い出す。

士農工商より下の人達が歌舞伎を作った。武士は能。幕府は能、狂言を保護した。

必ず正月は三番叟をやる。三番叟で舞台を清める。 今はスターシステム。正月は役者の得意な芸をやらしてくれる。昔のシステムで三番叟をやるのが少なくなった。三番叟は能の翁からとった。

阿国歌舞伎の○○をになっていた猿若勘三郎が江戸に来た。

日本の文化は武士の文化ではなく庶民の文化。

センザイの中啓は朱のつまどり

正月には江戸では曽我兄弟の仇討ちものをやることが多かった。江戸っ子は判官びいきだから。最近は曽我兄弟といってもわかっている人が少ないので、正月に曽我兄弟の仇討ちものをやるというしきたりもない。残っているのは舞踊。曽我舞踊「正札付根元草摺引」では逆(さか)おもだかの鎧。ボール紙に縮緬を張ったよろい。

蛇皮線が伝わり、三味線ができたことで日本の文化がひらけた。

歌舞伎では男は外また、女は内またで歩くが道成寺の所化の役は中性扱いで左右の足を平行にして歩く、と聞いたので、おっこれから観に行く演目のチェックポイントができた、と感激。 佐藤忠信の刀剣もおもだか屋型は菊五郎劇団にくらべて長い、とか吉野山の静御前のときがさもしゃばり(紗張り?)のものを使う人と黒塗りのものを使う人がいて流派によって違う、とか他にも顔見世観劇のときチェックできそうなことを教わった。

京都国際マンガミュージアム2006/12/23 23:10

京都国際マンガミュージアム

2006年12月18日

顔見世夜の部に行く前に京都国際マンガミュージアムに行った。 http://www.kyotomm.com/

場所は地下鉄烏丸線の烏丸御池を降りてすぐのところ。廃校になった小学校の跡地を利用したもの。校舎は昭和4年に建てられたものだそうで、作りが豪華でまるで大学の校舎のようだ。細かいタイル貼りの階段があったりして自分が卒業したちゃちな木造校舎と比べると涙が出るのだった。

午前10時から午後8時までやっていて、大人五百円で出入り自由。一階から三階まで部屋はいろいろあり廊下の壁に並んだ書架にびっしり入っているマンガ本は立ち読み自由。一階が少年漫画、二階が少女漫画、三階が青年漫画(レディースも含む)で、作者のあいうえお順になっている。

ここを見てから一度ホテルに戻ってから顔見世、という心積もりだったが、これは腰をすえて見なければ、という気持ちになり、結局ここから顔見世直行。

11時からギャラリーツアーというのがあり、一階の集合場所に行ったら平日でお客さんが少ないのか私一人。研究員一人とスタッフ三人と私、という甚だ贅沢なツアーをさせていただいた。 後からサイトを見てみるとスタッフはボランティアで、どうりでマンガが好きそうな人ばかりだった。

最初に案内された地下は書庫に漫画雑誌が詰まっているのがガラス戸越しに見えた。4月以降は登録したお客さんに公開するような話だった。廊下には、鳥獣戯画からはじまる漫画の歴史のパネルがあった。

一階から三階までの壁に「百人の舞妓展」といって、日本漫画家協会所属の漫画家が描いた漫画が貼ってあった。警備室の隣の壁を指して「これが竹宮さん」と教えてくれたが、教えられないとわからない絵柄だった。その隣にあった武田京子の描いた舞妓さんがとてもかわいいと思う。

京都精華大学がやっているミュージアムだそうで、一階の部屋には学生が来てワークショップが開かれることがあるそうだ。

二階には東京パックとか大阪パック、戦後に出た赤本、貸本漫画、いろんな雑誌の創刊号などの日本の漫画史的な資料や外国の漫画、日本の漫画の翻訳版などがあった。

三階で青年漫画の書架を見たところでツアーは終了し、エレベーターで一階の集合場所まで送ってもらいました。迷う人がいるそうだ。

ツアーの後、目をつけた大島弓子の「ポーラの涙ペールの涙」を立ち読みしに二階に行き、しばらく読んでいたら「紙芝居がはじまるよ」とおじさんが木を鳴らして歩いて行ったので、すぐ後ろの紙芝居の部屋に入った。懐かしいお菓子も売っていた。紙芝居の最後のクイズをあてておもちゃの指輪をもらった。

今でも中高年のお客さんが多いそうだが、有名になったら客が殺到してジブリみたいに予約制にしなければならないかも、と言ったら研究員の方はそうなったら嬉しい、今は修学旅行生に来てもらおうかと思っている、と言ったので、心の中で「それだけはやめてくれ」と叫んだ。

入り口にミュージアムショップもあるが売っているものの魅力はイマイチ。鉄腕アトムのノートを買ったがこれは京都駅の手塚治虫記念ミュージアムでも売ってるものだろう。

南座顔見世 夜の部2006/12/24 21:22

南座正面

2006年12月18日 南座 午後4時開演 2階1列24番

京都国際マンガミュージアムを3時すぎに出て、烏丸通りを四条方向に歩く。四条通りを左に曲がって歩き、鴨川を越えて南座に着いた。道路の反対側から写真をとった後、高島屋で焼き鳥弁当を買ってから劇場に入る。

はじめての南座。劇場入り口を入るとすぐ客席に入るドアがある。焼けた中座もそうだった。客席からすぐ外に出られるのは開放的で好きだ。

「俊寛」

仁左衛門で観るのは二回目。前回は海老蔵襲名の松竹座の3階席から見た。この人がやっても好きにはなれない演目。

今回のお目当ての愛之助は花道から秀太郎に続いて出てきた。おお、親子そろって出てきた、と思ったが愛之助は秀太郎の兄の役だとか。秀太郎は立役でも声が女形のときの声で役になじまない。

演目のせいというより多分午前中からの疲れで、時折ウトウトした。朝ホテルでじゃがりこ一箱を食べただけだったのでさすがにこの時間になると空腹になり、休憩時間に上手側のフォルテの横のコーヒー売場でコーヒーを買った。その売り場の人に「良かったですか?」と聞かれ「良かった~」と答えた。劇場でこんな会話をしたのは初めて。

私の座席は椅子の肘掛のところから小さなテーブルが出るようになっているが座席は狭いしコートや荷物があるし、コーヒーが倒れて隣りの人の着物を汚さないかと心配しながらお弁当をかっこんだ。

「口上」

顔を上げた役者の顔をコーヒーを飲みながら見たら正面に一瞬「仁左衛門?」と思う愛之助の顔が見え、ラッキーだった。仁左衛門は下手側の端だったが、口上で手をついているときでも美しい。「私はこう見えても当代より年上で」はちょっと若ぶりすぎ。仁左衛門襲名のとき吉右衛門が「私はこう見えても当代と同い年で」と言ったのを思い出した。

「娘道成寺」

私は勘三郎の道成寺が苦手で、去年の東京の襲名興行のときはこの演目はパスしたほど。道成寺を観るときはいつも玉三郎のことばかり考えているし、前に観たときは玉三郎に比べると腕が短かすぎて耐えられなかった。今回は、これもありか、と受け入れた。美人ばかりが女じゃないし、あんなきったないおっさんがあのくらいの女に化けられるのはたいしたものだ。ただ、最後の鈴太鼓の打ち鳴らし方は強すぎなような気がする。シンバル打ちの猿を思い出してしまう。

「歌舞伎おもしろ講座」できいた所化の歩き方に注目していたが、平行かどうかは角度的に断言できなかった。

舞づくしは鶴松。ちゃんと言えていた。所化の踊りのところも大人と組んで踊っているし、歌舞伎って不思議。

愛之助の役で二回目を見たのはこの所化がはじめて。7月のときはタコを持ってくる所化だったが今回は孝太郎が持ってきた。7月は愛之助は「白拍子、白拍子」と言っていたが今回は「生娘、生娘」。奇数番目は白拍子、偶数番目は生娘、とか決まりがあるのだろうか。

「雁のたより」

上方歌舞伎らしい演目。藤十郎のニンだと思う。 愛之助は歌舞伎おもしろ講座のときに「バカ殿の役です」と言っていた役。正座は座布団の上の方が辛いそうだが、あのくらいの時間なら大丈夫なのか。

秀太郎が藤十郎と話しているときの「ずばり言うわよ」という台詞がおかしくて笑いが起きていた。

「乗合船恵方萬歳」

太夫と才造役の橋之助と翫雀以外の役者は後ろ向きに船に乗って出てきて、客席の方に向き直る。各役者が真ん中に出て順に踊る。愛之助は大工の役で、手ぬぐいを曲尺に見立てたような動きがある面白い踊りだった。この日の役の中では一番かっこいい役。踊りは勘太郎が一番うまいのだろうが、素人目にはうまさがわかりにくい踊りだった。たぶん難しいのだろう。鶴松君はここでも一人前に踊っていた。まわりに座っている役者は他の役者が踊っているのを見ているが、愛之助は鶴松を見ながら自分の子役時代と比べたりしているのだろうか。最後の太夫と才造が微妙に音痴なような気がした。

夜の部は終わったのが9時半で長かったが全幕愛之助が出たので飽きずに見られた。幕間に写真を買ったが、売場の人が仁左衛門1枚と愛之助4枚の写真を「ご確認ください」とテーブルに並べて見せるのでちょっと恥ずかしかった。仁左衛門は俊寛の役でもイケメンであることに気づいて感動して写真を買ってしまった。

南座顔見世 昼の部2006/12/26 00:59

南座の斜め向かいあたりの鴨川沿いに建つ出雲阿国の像

2006年12月19日 午前10時半開演 1階左一5番

地下鉄烏丸線の四条から南座まで歩いてせいぜい10分かと思ったらもっと遠くて、五分くらい遅刻した。 桟敷席のドアから入りコートを脱ぎながら舞台を見たら愛之助は既に舞台に座っていた。

「猿若江戸の初櫓」

私が着いたとき、舞台で勘太郎が踊っていた。この人は明るくてのびのびしているのが良い。七之助はうまいけどちょっと痩せぎすの、なんとなく暗さのある女。

「寿曽我対面」

芝居についての感想はあまりなく、花道の裏側から見ていたので、後見が持ってくる椅子に腰掛ける前には後見がお尻をポンと叩くんだ、とかそんなのを観ていた。 桟敷席に座ったのははじめてだが、桟敷だと役者が花道に出てきて舞台に着くまで、普通の姿勢で楽に観られる。いつもは身体を動かしていた。

「道行初音旅」

休憩時間に物を食べたせいかうつらうつらしてしまった。二人とも踊りはうまいのだろうが特に感動しなかった。

「川連法眼館」

勘三郎は一般的には猿之助よりずっとうまい役者だと思うが、この演目については猿之助をこえてない。観る前は、やっぱりうまいなと感心するだろうと予想していたので意外だった。海老蔵よりうまいのは確かだが、猿之助はキツネに見えたのに勘三郎は見えない。スッポンからピョーン、と飛び出したのはすごいが、海老蔵のジャンプだってすごかった。欄干の上を歩くのも猿之助がやったときはすごいと感動のしたが、海老蔵がやったのを観た後では勘三郎ができるのは当たり前としか思えないので全然感動しなかった。 思い出は美化されるものなのかもしれないが、猿之助の四の切の完成度はすごかった。あの人はファンタジー系の人で、キツネがはまり役だったのかもしれない。歌舞伎でも、ニジンスキーのように当たり役がすべて人以外のもの、という役者がいてもいいわけだ。

「うきねのともどり」

あまり面白くなかった。七之助について上と同じ感想を持った。キレイ系ではあるけどあんまり人好きがしなさそう。 「川連法眼館」で静御前をやった勘太郎は顔はともかく綺麗で、あの人の女形はお嬢さんぽい雰囲気がいい。七之助はうまいがちょっとすさんだような雰囲気のある女だ。若いときより年いってからの方が評価が上がるかもしれない。