和文化たしなみ講座 歌舞伎の魅力2007/01/16 23:14

リビングセレブリティサロン 和文化たしなみ講座 歌舞伎の魅力 第3回

平成19年1月16日(火)  フォーシーズンズホテル メイプルルーム 午後7時開始

メイプルルームは前に壇があり、講座受講者の席は前に向かって左右のブロツクに分かれて椅子が並べてあり、真ん中に通路がある。私は向かって左側、Aブロックだった。各座席の後ろに座席の番号を書いた紙が貼ってあり、それが最後の抽選のときの抽選券だった。各座席の上にA4の紙4枚をホチキスでとめたレジュメがおいてあった。出演者プロフィール、浅草歌舞伎の1部の演目、すし屋のあらすじ、すし屋の登場人物相関図、片岡仁左衛門家家系図が書いてあった。

【講義】 第一部 19:00~ 演劇研究家 塚田圭一さんによる「新春浅草歌舞伎」見どころ解説

塚田圭一さんは浅草で1部の方のイヤホンガイドの解説をやっている人。 第一声は「こちらから拝見しますと皆さん愛之助さんが一刻も早く見たいようで、どうして私なんかがしゃべるのかとお思いでしょうが・・・」。

でも私は結構塚田さんの話に期待していたのに、イヤホンガイドと大差なく「すし屋」と「身替座禅」の筋を追っていたのが少し不満。もう少し裏の話とかつっこんだ話が聞きたかった。個人的に一番価値があったのは時代物というのは江戸時代から見て時代劇で、世話物というのは江戸時代の現代劇だ、ということ。はじめて知った。世話物について誤解していた。

浅草公会堂で買ったプログラムをちゃんと読めば書いてあるのかもしれないが、権太の父親が持ってきた首は死んだ小金吾の首だそうだ。誰か殺して持ってきたのかと思っていた。

イヤホンガイドの宣伝もしていたし、帰りには浅草で遊んでいってくれというような、浅草公会堂の役者と同じことを言っていた。

新春浅草歌舞伎は、江戸歌舞伎発祥の地の浅草で、若手に日頃できないような大役をやらせようという趣旨で昭和55年に始まったものだそうだ。

第二部のトークショーの間に30分の軽食タイム。別の部屋でサンドイッチ、デザート、ソフトドリンク程度の立食だが、期待したよりよかった。デザートはあまりおいしくなかったがピクルスがおいしくて口がすっぱくなりすぎるくらい食べた。

第二部 20:20~ 片岡愛之助と中村芝のぶの「トークショー」

最初に第1部の講師の塚田さんが出てきて、愛之助は後ろの扉から入場。眼鏡をかけていたのでちょっと驚く。服は鏡開きのときと同じ。

塚田さんが愛之助をインタビューする形式。

まず、初日に木戸をこわした話から。ストッパーを通り越して戸があき、しまらなくなったそうだ。すし屋の中の他の役をいろいろやった。松緑、猿之助の権太で善太をやった。「猿之助さんの背中におぶさったんですよ」(へえー。) 権太はやっていて気持ちのいい役でしょ? という質問に、ちょっと考える。「すし桶もって花道で見得をきることは気持ちいいでしょ」「あそこだけは気持ちいいです」

最近女形をやりませんね、行く行くはやります、のようないつもの話。平成若衆の話。

日本駄右衛門の役は自分でもそんな役が来たのが驚いた。あれは一生懸命じゃなくて余裕があってやるべき役。

塚田さんが3月南座のチラシを持ち出して「ホストクラブのチラシかと思った。」愛之助は「それは、着て下さいと言われたもの着て撮った。そんな風になると思わなかった。」

9月にオーストラリアに行った話。海外に行ったのは2回目。仕事で行った。食べ物は肉がスリッパ食べてるみたいに硬かったり油っこかったりして合わなかった。スーパーのカップラーメンが輝いて見えた。

塚田さんが「きょうは妹さんが」と言って、権太の妹のお里の役をやっている芝のぶが登場。羽織袴姿。顔、声、しぐさ、すべて男に見えない。電話に出てもおばさんと思われるそうだ。

神戸出身の芝のぶは「きょうは関西弁全開で」と言ったが、そうでもなかった。会場にご両親が来ていた。ロンドンに行くときに羽田から出発すると思っていた話、萬斎のハムレットと共演したオフィーリア役では演出家ではなくて衣装デザイナーが肌を露出させようとするので「女形なのでできない」と言った。ニューヨークへ行ったときは食べるものがなかった。日本食レストランへ行っても出てきたラーメンを見て、ラーメンって、こういうもんだったかしら?と思うような有様。日本は食べ物がおいしい、と愛之助と意気投合。芝のぶは酒好きだが「寄る年波で」仕事に響くので慎んでいるそうだ。浅草歌舞伎の役者仲間達とは草加の健康ランドに行く。

共演中の「すし屋」の話。二人がからむのは三箇所。「びびびびびー」というのは案外難しい、とお里をやったことのある二人が意気投合。愛之助みたいにたくさん役やった役者って、「中村屋はやったかしら」と塚田さん。「でも御台様(若葉の内侍)はやってないでしょう」と芝のぶ。 くどきの時だけハッスルしているように見えないようにしたいそうだ。弥助を床に誘うシーンを稽古してるとき「それは色きちがいやで」と仁左衛門に言われた。

愛之助はいろんな役をやる、十月の松竹座では・・・という話で「ボーイズラブをやってましたね」と愛之助。南座の顔見世の「雁のたより」のばか殿役は、松嶋屋のやり方ではもっと本当にばか殿なのだそうだ。眉も滑稽に書き、髪結いのシーンからやる。成駒屋の型ではその前があってちゃんとしたことをしゃべるのでばかといっても司バカのような感じ。直前に台本を見て台詞が多くて驚いた。

顔見世は全部で5役もやり、夜は全幕出ていた。「遊ぶ時間なんてないでしょ」という塚田さんに愛之助は「終演時間も遅いしね。それでもその後も働かされましたもん。四日連続で町屋を借り切ってトークショーがあった。それが終わったの一時ですよ。」

藤十郎はあまり細かく教えてはくれないと秀太郎は言っていたが年齢が違う愛之助にはけっこう細かく教えてくれる。そう言うと、「へえー、そうなんだ」と秀太郎は言う。

怒るにもパワーが必要なのでおじさん達に怒るパワーがあるうちにいろいろ教えてもらいたい。

上方は型がないと言われるが、各役者毎に違う型がある、と愛之助。「成駒屋さんはいつも同じでしたもんね」と芝のぶ。

愛之助が浅草歌舞伎で忠兵衛をやったとき、八右衛門とのやり取りには型がないので仁左衛門に教えてもらえなかったので男女蔵と二人で決めて後で見てもらった。

今後の予定は愛之助は2月と5月は長野でロケ。シベリア抑留される役なので丸刈りになるかもしれない。浪花花形は「もう言ってもいいですかね」と前置きして、一部は藤間、二部はかさねの与右衛門、三部は団七。芝のぶは来月はお休みで、7月は国立の歌舞伎鑑賞教室という噂で、それ以外は決まっていない。

最後に手ぬぐい、写真、扇子などの抽選をしながら客席から集めた質問を三人にする。塚田さんに「女形だったらどんな役をやりたいか」、答えは「揚巻。愛之助さんの助六で」。芝のぶには圧倒的に多かった「美容の秘訣」、答えは「言いたくないですね・・・・でも、乾燥するのが一番いけない。浅草は乾燥していて足の先からひび割れてくるような気がする」。 愛之助には「東京と関西の仕事の割合」。「前は八割方東京だったが今はおかげさまで半々。両方好きなので・・・」

二人そろって後ろの扉から引き上げた。芝のぶのご両親のところで愛之助はしきりに頭を下げていた。

芝のぶの美しさと頭の良さが印象に残った。