初瀬/豊寿丸 蓮絲恋慕曼荼羅(はちすのいと こいのまんだら)2007/03/11 02:10

2007年3月10日 国立劇場 小劇場 午後5時開演 12列3番

実は11日のチケットを買ってあったのだが明日観る南座と重なってしまい、ネット上で新たにチケットを購入、最初に買ったチケットはこれもネット上で買い手を捜して買っていただいた。

玉三郎が出るものは原則として何でも観るのだが、新作だし、まあつまらないだろうと覚悟していた。それにしては途中までは大健闘。役者も粒揃いで、予想より良かった。

休憩中に玉三郎のインタビューがあるので芝居中は聞かないがイヤホンガイドを借りた。開演前には役者の日替わりのインタビューがあり、きょうは春猿と門之助だった。門之助の地の声は初めて聞いたような気がする。国立劇場ということで名題試験のときの思い出を話していた。名題は「なだい」と読むのだと初めて知った。「めいだい」か「なだい」か確信がもてないでいた。

開幕したときの舞台はこれからバレエが始まるような雰囲気。奥で横向きに立っている段治郎の長身が映えていた。

前半は、初瀬(玉三郎)に言い寄りレイプしようとする弟(段治郎)、義理の娘を打ち、家来(猿弥)に殺害を命じる継母(右近)など俗っぽい面白さがあった。玉三郎と笑三郎が出ると二人とも長身で安定していてとても良い。そして歌舞伎味がある。段治郎だけだと歌舞伎味が薄れる。

20分の休憩のときは後半をとっても期待していたが後半の途中から失速する。イヤホンガイドで「ドンデン返しがある」と言ってたが、それがひどく凡庸でつまらなかった。顔を隠して出てきた時点で玉三郎でないことは誰にでも予想がつくし、母親が息子を殺してしまうのだろうとも予想できる。

姉をレイプしようとしたときに母が来たので姉の方が自分に無体なことをしたと嘘をつく弟、その弟が死体から首を取ってきたと言ったので、また嘘かと思ったらやっぱり嘘で、姉を救うために姉に似た娘を殺してその首を持ってきたのだった。この弟は姉についていこうとする家来も殺してしまってどうしようもない奴だ。初瀬が弟に言い寄られて「2人で地獄に」と言ったときにひと思いに弟を殺ってしまったら良かった。あそこでじゃまが入るのがいろんな意味でつまらない。あそこから話がつまらなくなる。あの弟があそこで急に姉のかわりに母に殺されるのは唐突。「こいつが死ねば問題はすべて片付く」と思わせるこのバカ弟と、継母にもうひと粘りしてほしかった。それでないと最後のカタルシスがない。 最後の方が抽象的で単に伝説をなぞったような内容になったので残念だ。

中将姫は女が見て共感するキャラではなかった。はじめの方で物乞いにお金をあげるのを見て幸福な王子みたいな人なのか、と思ったがそうでもない。弟の嘘を否定せず自分から誘った、と認めるのは面白い。「豊寿がああなったのはみんなわしのせいじゃ」と言うのは自意識過剰。

中将姫伝説というのを知らなくて、プログラムの中将姫の話を読んでも要領をえなかった。

役者はみんな良い。去年の7月の歌舞伎座のメンバー。おもだかのメンバーはうまいにもかかわらず玉三郎が気を使わなくて良い相手で楽なのかもしれない。結構好きな組み合わせだ。

休憩中のインタビューでも三島に言及していたと思うが、プラグラムの中で玉三郎が三島のことを語っているのがうれしかった。三島が玉三郎を観て「百年に一人の女形が出たね」と言ったのが死の一年前。どうして生きて玉三郎の行く末を見ようとしなかったのだろう。今、生きている三島と玉三郎の対談が見たかった。

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