三響会2007/05/29 23:16

2007年5月28日(月) 午後1時開演 南座 一階11列16番

日帰りで京都に行った。玉三郎の舞踊公演の時と違って今回は通路際の席ではないので、開演に間に合うように新幹線を降りてからタクシー乗り場まで走れるところは走った。おかげで遅刻しないでつけた。最初の演目は場内が真っ暗になったので、本当に遅刻しなくてよかった。

一、素囃子 道成寺組曲

真っ暗な舞台に本火が2つ燃えている。そこに演奏者が出てきて座る。 最初に音を出したのは大鼓の亀井広忠。大鼓は片方の膝に抱えて打つもので、木で木を打つような硬い音を出すものだと初めてわかった。ポーン、という音を出すのは小鼓なのだ。

歌舞伎の道成寺の踊り抜きみたいなものかと勝手に想像していたが全く違い、素囃子で、太鼓、大鼓、小鼓、笛だけの演奏。メロディは笛だけで、あとは打楽器と演奏者の声だけが響く。打楽器の音と人の叫び声というのは、こんなにも強く人の心の原始的な部分に訴えてくるものだったのだ。紋付を着て正座し、極めて行儀よく演奏しているのに、劇場内に打楽器の音と演奏者の声が響くと、野生の息吹が立ち昇ってくるように感じる。背景の闇のせいもあるかもしれない。

この演奏は、どの時代にどんな場所で聞いても人を感動させる力があると思った。それだけに、演奏が終わったときの拍手はもう少し待って、余韻を楽しませてほしかった。

小鼓は田中傳左衛門、太鼓は田中傳次郎、笛は一噌幸弘。

二、狂言一調 八島

一つ目の演奏者のうち亀井広忠だけ残ったので挨拶するのかと思ったら、別の人が上手から登場した。それが野村萬斎で、彼の謡と亀井の大鼓の、 静かだが迫力のある演目だった。

野村萬斎の生の舞台を観たのは初めてだ。

ここで10分休憩。

三、 舞踊 喜撰

三味線が入るといかにもお座敷で、ものすごく俗っぽさを感じる。

藤間勘十郎と孝太郎の素踊り。孝太郎の素顔は初めて見た。藤間勘十郎は大河ドラマ「独眼竜政宗」の子役がずいぶん大きくなったものだとしみじみ眺めた。踊りはうまいのかどうかわからない。顔は、家元というより金持ちの旦那のように見える。芸者の格好をして踊ったら美人ではないが愛嬌がある女に見えていいかもしれない。

この後25分休憩。

四、 能と長唄による 船弁慶

舞台奥の真ん中に静の着物がある。

最初に登場する萬斎は櫂を持った舟人で、去年、醍醐寺薪歌舞伎で観た同じ演目の、愛之助の舟長を思い出した。あのシーンは元になった能の合狂言に該るものだから、アイの萬斎が演じるのは、愛之助が演じた役の原形ということか。櫂の動かし方も歌舞伎とは違うし、もちろん台詞の調子も違う。醍醐寺の舟長で印象的だった「なーみよなみよなみよ」も、「波よ波よ波よ」という台詞はあるのだが台詞回しが違う。

シテの片山清司はスッポンから出てきた。知盛の亡霊か。舞台で舞った後、花道で半回転ジャンプしたのがかっこよかった。花道で止まった場所も、歌舞伎の定位置スッポンではなくて真ん中より揚幕に近いところだった。

歌舞伎の船弁慶に慣れていると、芝居全体の流れと登場人物のうち、合狂言の舟長と知盛の亡霊だけ出てきたようで、物足りない。弁慶はどうしたのだ。能の船弁慶も本当はもっと長いのだろうと思う。

この後15分休憩。

五、 能と歌舞伎による 石橋

月が出ている林を背景に、お囃子が始まる。やがて、私の好きな、遠くから獅子が近づいてくる様子を表す打ち方が始まった。大鼓の亀井広忠が「わぁ~」と獅子の咆哮のような声をあげた時に客席で「わっ」とのけぞっている人がいた。

能と歌舞伎と別々に獅子を踊るのかと思っていたら、白い鬣で面をつけた能の獅子(観世喜正)と、赤い鬣の歌舞伎の獅子(片岡愛之助)が下手と上手から同時に出てきて、同じお囃子で踊るのだった。歌舞伎では獅子が花道から出てきて後ろ向きに花道を引っ込むが、三響会版では上手に引っ込む。歌舞伎の獅子は動きが派手で、それに対して能の獅子はあまり動かない。

愛之助の赤い獅子はよく動いていて舞台を踏み鳴らす音もあの太い足で鳴らしているらしい大きな音だった。最後の毛振りはあまりかっこよくなかった。正しい毛振りというのがわからないのでどこがどう悪いのかは言えない。

最後、照明が暗くなって幕が下りるのが歌舞伎とは違う。それでもみんな盛大に拍手をした。もう一度幕が上がり、そのときは舞台は明るくて、獅子とお囃子がお辞儀して終わり、だった。

三響会の中心である亀井家の三兄弟は去年か一昨年テレビでやった「つづみの家」も観たが、お母さんの田中佐太郎が高校の頃NHKでやった番組も私は見た。3人の息子のうち、田中傳左衛門だけは十代の頃から歌舞伎の舞台で何度も見て知っている。三響会のプログラムに載っているプロフィールを読んだら、1990年10月の孝夫と玉三郎の男女道成寺の時に歌舞伎座初舞台だそうだ。私はその舞台は観た。たぶん、その頃テレビで紹介されたのを視て、顔を知ったのだろう。

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