国宝 薬師寺展2008/05/04 17:33

2008年5月2日 東京国立博物館 平成館

金曜日は午後8時まで開館しているので勤め帰りに国立博物館の「国宝 薬師寺展」に行った。平成館に行ったのは初めてだ。

きょうの一番の目的は12世紀ぶりに人の目に触れた日光・月光菩薩像の「背中」を見ること。

音声ガイドを借りた。ナレーターは市原悦子。とても安定していて雰囲気もピッタリで良い。

音声ガイドを聞きながら順路を進んだ。最初に熱心に見たのは東塔先端の水煙のレプリカ。近くで見ると大きい。横笛を吹いている天女は昔から知っていたが、よく見るとその上に複数の天女が下を向いて飛んでいる。横笛を吹いている天女はインド古代美術の絵に似ている。

同じ部屋の奥に展示されている聖観音菩薩立像は音声ガイドによると有間皇子がモデルと言われているということで、いっそう興味をそそられてじっと見た。後で見た日光・月光菩薩もそうなのだが、男性にしては肩ががっしりしていない。腰のあたりが華奢なのに、横から見るとお腹の厚みはある。繊細な手と指に比べて、足はあまり写実性を感じない作り。像の高さはわからないがほとんど等身大なので、次の部屋に移動するときにスロープの上から見ると、台上の人が周囲にいる人々からジロジロ見られているようだ。

スロープを登ると、次の部屋に展示されている日光・月光菩薩像が見える。次の部屋に降りていく前に2つの像を正面からよく見た。鼻梁が細く、アジア人離れした顔に見える。下に降りて、像の周囲をまわった。この2つの像は高さ3メートルということで、聖観音菩薩立像よりずっと大きい。下から見上げる顔は正面から見るのと印象が違い、のっぺりしている。薬師寺に行けば前はまた見られるので、後ろ側をじっくり見ることにした。いつも隠れている後ろ側だが、普通にちゃんと作ってある。十二世紀の間、誰の目にも触れなかった背中が、はるばる東京に来て開陳されているのが不思議。音声ガイドによると、衣の上から脚の形がわかるところや少し身体を傾けたポーズなどはインドのグプタ朝の流行で、その影響を受けた唐の時代の様式だそうだ。やはりインドなのだ。

最後の展示の「吉祥天像」も良かった。スクリーンで絵を大きく表示していて、それだと実物よりよくわかる。衣の色が綺麗だ。 吉田秋生の漫画の「吉祥天女」は きっしょうてんにょ と読むのだが、これは きちじょうてん なのだ。

展示を見終わってグッズ売り場に行った。図録の表紙が厚くて買う気になれなかった。今回の主な展示の写真が印刷されているクリアファイルを買った。

映画 「バレエ・リュス」2008/05/11 20:28

連休の最終日、やっと早起きができて東京都写真美術館で10時20分から1回だけ上映されていた「バレエ・リュス」上映に間に合った。 個人的にいろんな方向に思考が発展していく映画だった。

山岸涼子の漫画でいうと「牧神の午後」と「黒鳥」の間の話。ディアギレフの死と、ジョージ・バランシンのニューヨークシティバレエの間。私が見た映画で言うと、「ニジンスキー」と「ザッツエンタテインメント」をつなぐもの、かな。この映画の中で紹介された昔のアメリカ映画の中ではバレエ・リュスのダンサーのマーク・プラットがダンサーの役をやり、次々に変わる音楽に合わせて踊ってみせる。ダンスはすべてバレエ・リュスで教わったものだ、という本人のコメントが入る。こうやって、ロシアバレエがアメリカのミュージカルに影響を及ぼしたわけか。

レオニード・マシーンには興味があったが、映画の「赤い靴」の靴屋の踊りを見ただけで詳しいことは知らなかったので今回いろいろ話を聞けて面白かった。「牧神の午後」の中ではビザンチン顔と紹介されていたが確かにイコンに出てきそうな顔。マシーンはディアギレフがニジンスキーの後釜としてモスクワで拾ってきた美少年で、鈴木晶の「ニジンスキー 神の道化」で読んだところでは、「ディアギレフの奇跡」と言われているとか。有名なダンサーかつ振付家だが、ニジンスキーと違って真っ当で、すごく有能な人という印象を持っていたが、この映画を見るとプロデューサーとしても有能だったようだ。ただ振付家としての才能はバランシンに負けるのか、マシーンの方の振り付けを見る機会が少ないので、チャンスがあったら見比べてみたい。

漫画関連ではもう一人、「黒鳥」の主人公のマリア・トールチーフ。ロシア系のダンサーが全員絶世の美女であるのに比べると、アメリカに行くと容貌が庶民的になる。

ニジンスキーの妹のニジンスカの話もちょっと出てて嬉しかった。厳しい振付家だったようで、「牧神の午後」のニジンスキーと同じでダンサーに難しいことを要求するタイプだったのかもしれない。

この映画で初めて知ったジョージ・ゾリッチは精悍な男前。私が生で見たパトリック・デュポンの牧神は人間離れした雰囲気だったが、映画の中のゾリッチの牧神は、レイプしそう。 あんな良い男なのに長生きしてて、幸せな人。

アレクサンドラ・ダニロワと11歳下のフレデリック・フランクリンのコンビにはとても興味を持った。初対面のときにフレデリックをYoung manと呼び、30歳になったら口きいてあげるわ、と言ったスターダンサーのアレクサンドラと、どんな経緯で名コンビになっていったのか。

インタビューを受けて話している人たちのバレエに対する愛情には心打たれた。「その場にいるだけで幸せだった」と涙ぐみながら語るコールドバレエの男性を見たら涙が出てきた。子供の頃から読んでたバレエ漫画はライバルとか競争とか才能とか技術ばかりで、「バレエへの愛」という視点が欠けていた。

日本でバレエ・リュスというと普通ニジンスキー、ディアギレフしか思い浮かべないが、この映画を作ったアメリカから見るとアメリカをドサ回りしてたバレエ・リュスの方が身近なわけだ。この映画はつまり、バレエはどのようにアメリカに来たか、という話なのだろう。この映画は作った人のセンスも良いし、バレエ・リュスの組織の変遷、興行の衰退みたいなのを分かりやすくまとめてくれている。本当はもっといろいろあって複雑な歴史なのかもしれないが、スバッと単純化して、こういう理由でこうなった、と言い切ってくれるので頭に入りやすかった。

主なダンサー達が長生きで、インタビューを受けたとき80代の人達がたくさんいるのは凄い。それでも映画完成から今の間に何人か死んでいる。良い時期に作ったと言えるかもしれない。

團菊祭5月大歌舞伎 昼の部2008/05/17 22:08

2008年5月17日 歌舞伎座 午前11時開演 3階5列42番

義経千本桜 「渡海屋・大物浦」

海老蔵の知盛が期待はずれだった。今回初めて気づいたが、海老蔵のニンは若者よりもオッサン。将来を考えればその方が良いのだろうが、獅童の知盛のときに感じた若い人の死の傷ましさのようなものを感じなかった。熱演だが上滑りしていると思った。

3階席だったので銀平の出が見えなかった。見えた部分の出来は、まあ普通。

典侍の局役の魁春は、地味。どこと言って難はないのだが、海老蔵が派手なせいか、かすむ。

「喜撰」

三津五郎が主役の踊りで、三津五郎はいつも通りうまかったが、相手役の時蔵も優美で良かった。

所化にいろんな若手が出ているのだが遠くて全員は判別できなかった。巳之助は不思議とわかった。いつも姿勢が良い。肩幅が広いからそう感じるのかな。

「幡随長兵衛」

冒頭の劇中劇の場面、客席で騒ぎが起きるのだが、これも花道でやるので声が聞こえただけ。

この話の面白さは長兵衛の男らしい死に様なのだろうか。団十郎は口跡が悪いのでスッキリしなくて役に合わない。

水野役は、孝夫で見たときはとても格好良い役でもっと活躍していたような気がしたが、登場するのはあの程度だっけ? 菊五郎もあまりさえなかった。

團菊祭5月大歌舞伎 夜の部2008/05/21 23:52

2008年5月19日 歌舞伎座 午後4時半開演 1階8列37番

「青砥稿花紅彩画(あおとぞうしはなのにしきえ)  白浪五人男」

通しなので、なぜ五人なのかがわかる。しかし花見の場は眠ってしまった。 その後、地蔵堂前のシーンに見覚えがあったので、前にも通しは見たことがある。千寿姫の梅枝が若女形らしくなってきた。弁天小僧役の菊五郎が悪いおじさん状態。

浜松屋の場、菊五郎はきれいではないが、安心して見ていられる。七之助のときに見逃し勝ちだった緋鹿子のキレを入れるところも、ちゃんとわかる。

若旦那の宗之助役で出てくる海老蔵は、見染の場の与三郎と同じでおかまっぽい。正月の巳之助の方がまだしもきちんとしていたのではないかと思うほど。これは客観的に出来が悪い。この役は海老蔵がやる必要はない役だからかまわないけれども、見染の場の与三郎はいつまでもおかまのままなのだろうか。

浜松屋の店先の次の場があると、実直そうだった番頭が店の物を盗んで逃げ出そうとしたり、日本駄右衛門が刀を抜いて有り金残らず出せと言ったり、話が面白く展開するので、今年の浅草もあれが観たかったと思った。

稲瀬川勢揃の場では、左団次の南郷もタッパがあるのでそれなりにかっこよく決まっていたが、浅草の獅童はかっこよかったなあ。

「三升猿曲舞(しかくばしらさるのくせまい)」

前の演目の後、10分の休憩をはさんで10分の踊り。台詞が少しあり、相変わらずサ行の発音が変。途中で、扇子を一回転させるときに受け損なって膝のところで押えたりしていたが、松緑の踊りを見られて嬉しかった。

五月大歌舞伎 新橋演舞場 昼の部2008/05/25 00:36

2008年5月24日 新橋演舞場 午前11時開演 1階14列6番

「毛谷村」

「毛谷村」は、私が歌舞伎座で観た最初の演目だ。そのときは六助が猿之助でお園が梅幸。猿之助が観られたことだけが嬉しくて話の筋は考えていなかった。押しかけ女房が来る話だったのか。今月は、押しかけ女房に困惑する六助を染五郎がうまく演じている。染五郎は押しかけ女房が来そうなタイプだし亀治郎は押しかけ女房に行きそうなタイプで、2人とも適齢期だしリアルに面白い。

お園は一人の所作事の時間が長く、見せ場があるので亀治郎の好きな役だろう。声の出し方が大げさすぎて少しやかましい。動いているとき、身体にぴったりした着物の上から窺われる脚は若い男の強靭な脚だ。

子役が可愛い。3歳か4歳くらいか? 花道のすぐ外側だったので歩いていくのを近くで見たが本当にまだ小さい。でも台詞がしっかりしている。お園が驚いて子供を取り落とすところは、後ろの黒衣が抱えてゆっくり下に落とす。おもしろい演出だ。

舞踊 「藤娘」 「三社祭」 「勢獅子」

「藤娘」では傳次郎が小鼓を打っていた。下手側にいるので私の席から踊っている福助を観る視線とは逆の位置になる。染五郎、亀治郎とともに傳次郎は27日に三響会で見る予定だ。26日が演舞場の楽で、27日、28日は南座の三響会という厳しいスケジュールだ。

福助は身体がやわらかく綺麗だったが、客席に頭を下げるときの笑顔が俗っぽい。

一番見たかった「三社祭」は期待に違わず面白かった。特に最後の方で染五郎が「悪」、亀治郎が「善」と書かれた面をかぶった踊りは「待ってました」の声もかかり、動きも激しくて亀治郎が喜んで踊ってるだろうと思った。

「勢獅子」は歌昇と錦之助だった。歌昇の踊りは楽しみにしていたが、錦之助もよく踊っていた。お祭りの衣装が映えて、仁左衛門を彷彿とする美しさ。途中で入る獅子舞は三階さん2人だが、獅子が足で耳を掻いたりする動きを息を合わせてやっていて面白かった。

「一本刀土俵入り」

取的のときの吉右衛門のお腹をすかせた田舎なまりの大男ぶりがいい。若いときのさぶのようなちょっと間が抜けた感じ。

種太郎が若船頭の役で出ていた。にっこり笑っている写真を買った。

三響会 - 2008年南座2008/05/27 22:38

2008年5月27日 南座

昼の部 午後2時開演 右三の6、夜の部 午後6時開演 右二の2

昨日まで、亀治郎、染五郎、傳次郎は演舞場、梅枝は歌舞伎座に出ていたわけで、皆さん、お疲れ様。

最初に総括的な感想を言うと、去年のような素囃子がなくて寂しかった。去年の南座、演舞場、今回と観た中で言うと、去年の南座の「石橋」のような、能の獅子と歌舞伎の獅子が同じ舞台で同時にそれぞれ動くようなものに自分としては一番三響会の価値を感じた 。

昼の部

一、 能と歌舞伎による「竹生島」

竜神 亀治郎、弁財天 孝太郎、 都人 梅枝

笛 福原寛、小鼓 田中傳左衛門、大鼓 亀井広忠、太鼓 田中傳次郎、長唄 杵屋利光、三味線 今藤長龍郎

素踊りだった。亀治郎の素踊りを見るのは初めてなので、衣装でごまかせなくても流石、と唸らせてほしかったのだが、特に前半、踊りにキレがなかった。 稽古不足? 歌舞伎公演のように一ヶ月続くものじゃない一回 (二回?) 勝負は大変だ。後半、竜の歩き方をするような目立つところは良かった。

孝太郎はあの素顔を晒しながら、二十も若く瑞々しい梅枝を相手に堂々と女を踊るのは立派。こっちは稽古十分なのか去年より良くて亀治郎を食っていた。

梅枝はきちんと踊っていたし、地味になりがちな共演者に若さで華を添えていた。

二、舞踊・狂言・歌舞伎 「月見座頭」

座頭 藤間勘十郎、男 茂山逸平、男 中村壱太郎

囃子 田中傳左衛門 傳次郎、長唄 杵屋利光、三味線 今藤長龍郎

去年、勘太郎がすべったという急なスロープは今年はなく、変わりに数段の階段だった。男達は楽だったろうが目をつぶっている勘十郎はそれなりに大変だったろう。

逸平が出てきたとき、宗彦かと思った。途中まで、何か事情があって配役の変更があったのだと思っていた。そのくらい似ている。

壱太郎は狂言も踊りもうまかった。去年、勘太郎がもったいないと思ったので壱太郎くらいの若い役者でちょうど良かったような気がした。

去年のブログにも書いたが、きょう見て、また勘十郎の踊りの上手さを感じた。きょう見た中で踊りは一番うまい。

三、能楽と歌舞伎による「船弁慶」

静 片山清司、知盛 染五郎

笛 一噌幸弘、小鼓 田中傳左衛門、大鼓 亀井広忠、太鼓 田中傳次郎、地謡 観世喜正、長唄 杵屋利光、三味線 今藤長龍郎

去年の六月に歌舞伎座で見た、かっこいい染五郎の知盛をまた見られる! きょう一日で2回も見られる! それも、下手だった静の踊りは本職が踊ってくれる。 幸せすぎないか?

片山清司の静は舞台後方から出てきた。当然のことながら本職の静はうまいし、面と衣装をつけた全身の造形が美しいキャラだ。

静の舞の間は傳次郎の太鼓は沈黙している。静が引っ込んだ後、太鼓が鳴り出し、後方から知盛が出てくる。青い炎のような染五郎の知盛はいい。花道をひっこむ途中で止まり、また舞台の方に引き返して最後は薙刀を肩に担いで何度も回りながら、激しい太鼓の音と大拍手に送られて引っ込んだ。引っ込んだ後は客席がどよめいていた。

四、 能楽「安達原」

シテ 観世 銕之丞、ワキ 福王和幸、アイ 茂山宗彦

笛 一噌幸弘、小鼓 吉阪一郎、大鼓 亀井広忠、太鼓 前川光範、地謡 片山清司 観世喜正

大好きな三響会で見ても能は未だに苦手。少し眠気をもよおしてしまった。

後半、鬼女の面と衣装がかっこよく、あれで「あんた、何よ」みたいに凄んだら面白いだろうと思った。

宗彦の舞台は初めて見たが、やや期待外れだった。

夜の部

一、狂言「五人三番三」

三番三 茂山正邦、宗彦、茂、逸平、童司、  舞台番 千之丞、鈴渡し 孝太郎

笛 一噌幸弘、小鼓 田中傳左衛門 傳次郎、大鼓 亀井広忠

千之丞と孝太郎はスッポンからせり上がってきた。千之丞が「レディースアンドジェントルメン!」と第一声を発すると会場大受け。私は茂山家の家族関係を知らないので今回出る5人と千之丞の続柄などを聞きたかったが、主に三響会が南座で二回目の公演ができて良かったというようなことを言っていた。孝太郎にも何か言うように勧め、孝太郎が「片岡孝太郎でございます」とお辞儀して、大拍手を浴びていた。

千之丞は、囃子方の名前を紹介した後、狂言方の五人それぞれに短いキャッチフレーズをつけて紹介した。総領の~、底抜けの~、独身の~、といったように。

「初めての能・狂言」の時の逸平はただの袴だったが、今回の五人は神主さんのような衣装をつけていた。逸平が真中にいたのは年齢順で真中に来るからだろうか? 私には逸平が一番うまく見えたので、うまいから真中なのかもしれないと思った。

亀井家の3人と茂山家の5人の叫びが場内を満たしていた。

良かったのだが、逸平が一人でやったときの方が混沌とした原始の力を強く感じた。今回は5人いっしょにやったので、並び方などの秩序が生まれ、魅力が薄まった気がする。5人いっしょにやるならやるで一人のときより混沌と無秩序が増す方が私としては好み。

二、能楽と歌舞伎による「船弁慶」

静 観世喜正、知盛 染五郎

笛 一噌幸弘、小鼓 田中傳左衛門、大鼓 亀井広忠、太鼓 田中傳次郎、地謡 片山清司、長唄 杵屋利光、三味線 今藤長龍郎

昼間とは静と地謡が入れ替わった。静の衣装の色も違っていたような気がする。最初の謡は夜の部は静が謡っていたが、昼の部は地謡ではなかったろうか。昼の部では、地謡だった観世喜正の艶のある美声をたくさん聴いたような気がするのだが、夜は片山清司の声を聴いたのがあまり長くなかったような。能については無知なので勘違いかもしれない。片山清司の声は魅力があるのでもう少し長く聴きたかった。

三、歌舞伎「安達原」

老婆実は安達原の鬼女 亀治郎、祐慶 梅枝、強力 染五郎

笛 福原寛、小鼓 田中傳左衛門、大鼓 田中傳八郎、太鼓 田中傳次郎、長唄 杵屋利光、三味線 今藤長龍郎

前の演目で花道を激しく引っ込んだ染五郎が、この演目の最初に梅枝に従って出てきた。

亀治郎の老婆役の声は猿之助を思い出す。踊りは悪くない。

後半、三日月の出ているススキの原を背景に、三響会によく出てくる道成寺の鐘型のものが置いてあったので、あれが割れて亀治郎の鬼女が出てくるのだろうと思っていたら案の定だった。

鬼女の役は膝をついたまま後ろ向きに何回も跳んだり、最後に後方回転して穴に落ちたりする見せ場があるので亀治郎は頑張っていた。演舞場に続いて共演の染五郎との息もよく合っていた。強力役の染五郎に華があって見ごたえのあるものになったと思う。染五郎の海老反りをはじめて見た。演舞場で共演の合間に二人でこの踊りの稽古をしていたのかと思うとほほえましい。

追記 : きょうは昼の部では壱太郎のお母さん、夜の部は梅枝の両親が一階の一番後ろの席にいるのを見た。また、会場には田中佐太郎さんが傳治郎の娘達といっしょにいるのも見た。傳治郎の次女はお父さん似だ。夜の幕間には傳治郎夫人が長女の手をひいて次女を抱えて、一階の通路で知り合いに挨拶している様子も見えた。帰るときに川端通り側の出口の方へ行ったら、最後の演目には出なかった広忠が浴衣に着替えてお母さんと姪達の近くに立っていた。

幕間に、役者の受付のところで第六回亀治郎の会のチラシをもらった。国立劇場大劇場で8月23、24日。演目考え中だそうだ。今年の8月はお財布に厳しい。