三響会 - 2008年南座2008/05/27 22:38

2008年5月27日 南座

昼の部 午後2時開演 右三の6、夜の部 午後6時開演 右二の2

昨日まで、亀治郎、染五郎、傳次郎は演舞場、梅枝は歌舞伎座に出ていたわけで、皆さん、お疲れ様。

最初に総括的な感想を言うと、去年のような素囃子がなくて寂しかった。去年の南座、演舞場、今回と観た中で言うと、去年の南座の「石橋」のような、能の獅子と歌舞伎の獅子が同じ舞台で同時にそれぞれ動くようなものに自分としては一番三響会の価値を感じた 。

昼の部

一、 能と歌舞伎による「竹生島」

竜神 亀治郎、弁財天 孝太郎、 都人 梅枝

笛 福原寛、小鼓 田中傳左衛門、大鼓 亀井広忠、太鼓 田中傳次郎、長唄 杵屋利光、三味線 今藤長龍郎

素踊りだった。亀治郎の素踊りを見るのは初めてなので、衣装でごまかせなくても流石、と唸らせてほしかったのだが、特に前半、踊りにキレがなかった。 稽古不足? 歌舞伎公演のように一ヶ月続くものじゃない一回 (二回?) 勝負は大変だ。後半、竜の歩き方をするような目立つところは良かった。

孝太郎はあの素顔を晒しながら、二十も若く瑞々しい梅枝を相手に堂々と女を踊るのは立派。こっちは稽古十分なのか去年より良くて亀治郎を食っていた。

梅枝はきちんと踊っていたし、地味になりがちな共演者に若さで華を添えていた。

二、舞踊・狂言・歌舞伎 「月見座頭」

座頭 藤間勘十郎、男 茂山逸平、男 中村壱太郎

囃子 田中傳左衛門 傳次郎、長唄 杵屋利光、三味線 今藤長龍郎

去年、勘太郎がすべったという急なスロープは今年はなく、変わりに数段の階段だった。男達は楽だったろうが目をつぶっている勘十郎はそれなりに大変だったろう。

逸平が出てきたとき、宗彦かと思った。途中まで、何か事情があって配役の変更があったのだと思っていた。そのくらい似ている。

壱太郎は狂言も踊りもうまかった。去年、勘太郎がもったいないと思ったので壱太郎くらいの若い役者でちょうど良かったような気がした。

去年のブログにも書いたが、きょう見て、また勘十郎の踊りの上手さを感じた。きょう見た中で踊りは一番うまい。

三、能楽と歌舞伎による「船弁慶」

静 片山清司、知盛 染五郎

笛 一噌幸弘、小鼓 田中傳左衛門、大鼓 亀井広忠、太鼓 田中傳次郎、地謡 観世喜正、長唄 杵屋利光、三味線 今藤長龍郎

去年の六月に歌舞伎座で見た、かっこいい染五郎の知盛をまた見られる! きょう一日で2回も見られる! それも、下手だった静の踊りは本職が踊ってくれる。 幸せすぎないか?

片山清司の静は舞台後方から出てきた。当然のことながら本職の静はうまいし、面と衣装をつけた全身の造形が美しいキャラだ。

静の舞の間は傳次郎の太鼓は沈黙している。静が引っ込んだ後、太鼓が鳴り出し、後方から知盛が出てくる。青い炎のような染五郎の知盛はいい。花道をひっこむ途中で止まり、また舞台の方に引き返して最後は薙刀を肩に担いで何度も回りながら、激しい太鼓の音と大拍手に送られて引っ込んだ。引っ込んだ後は客席がどよめいていた。

四、 能楽「安達原」

シテ 観世 銕之丞、ワキ 福王和幸、アイ 茂山宗彦

笛 一噌幸弘、小鼓 吉阪一郎、大鼓 亀井広忠、太鼓 前川光範、地謡 片山清司 観世喜正

大好きな三響会で見ても能は未だに苦手。少し眠気をもよおしてしまった。

後半、鬼女の面と衣装がかっこよく、あれで「あんた、何よ」みたいに凄んだら面白いだろうと思った。

宗彦の舞台は初めて見たが、やや期待外れだった。

夜の部

一、狂言「五人三番三」

三番三 茂山正邦、宗彦、茂、逸平、童司、  舞台番 千之丞、鈴渡し 孝太郎

笛 一噌幸弘、小鼓 田中傳左衛門 傳次郎、大鼓 亀井広忠

千之丞と孝太郎はスッポンからせり上がってきた。千之丞が「レディースアンドジェントルメン!」と第一声を発すると会場大受け。私は茂山家の家族関係を知らないので今回出る5人と千之丞の続柄などを聞きたかったが、主に三響会が南座で二回目の公演ができて良かったというようなことを言っていた。孝太郎にも何か言うように勧め、孝太郎が「片岡孝太郎でございます」とお辞儀して、大拍手を浴びていた。

千之丞は、囃子方の名前を紹介した後、狂言方の五人それぞれに短いキャッチフレーズをつけて紹介した。総領の~、底抜けの~、独身の~、といったように。

「初めての能・狂言」の時の逸平はただの袴だったが、今回の五人は神主さんのような衣装をつけていた。逸平が真中にいたのは年齢順で真中に来るからだろうか? 私には逸平が一番うまく見えたので、うまいから真中なのかもしれないと思った。

亀井家の3人と茂山家の5人の叫びが場内を満たしていた。

良かったのだが、逸平が一人でやったときの方が混沌とした原始の力を強く感じた。今回は5人いっしょにやったので、並び方などの秩序が生まれ、魅力が薄まった気がする。5人いっしょにやるならやるで一人のときより混沌と無秩序が増す方が私としては好み。

二、能楽と歌舞伎による「船弁慶」

静 観世喜正、知盛 染五郎

笛 一噌幸弘、小鼓 田中傳左衛門、大鼓 亀井広忠、太鼓 田中傳次郎、地謡 片山清司、長唄 杵屋利光、三味線 今藤長龍郎

昼間とは静と地謡が入れ替わった。静の衣装の色も違っていたような気がする。最初の謡は夜の部は静が謡っていたが、昼の部は地謡ではなかったろうか。昼の部では、地謡だった観世喜正の艶のある美声をたくさん聴いたような気がするのだが、夜は片山清司の声を聴いたのがあまり長くなかったような。能については無知なので勘違いかもしれない。片山清司の声は魅力があるのでもう少し長く聴きたかった。

三、歌舞伎「安達原」

老婆実は安達原の鬼女 亀治郎、祐慶 梅枝、強力 染五郎

笛 福原寛、小鼓 田中傳左衛門、大鼓 田中傳八郎、太鼓 田中傳次郎、長唄 杵屋利光、三味線 今藤長龍郎

前の演目で花道を激しく引っ込んだ染五郎が、この演目の最初に梅枝に従って出てきた。

亀治郎の老婆役の声は猿之助を思い出す。踊りは悪くない。

後半、三日月の出ているススキの原を背景に、三響会によく出てくる道成寺の鐘型のものが置いてあったので、あれが割れて亀治郎の鬼女が出てくるのだろうと思っていたら案の定だった。

鬼女の役は膝をついたまま後ろ向きに何回も跳んだり、最後に後方回転して穴に落ちたりする見せ場があるので亀治郎は頑張っていた。演舞場に続いて共演の染五郎との息もよく合っていた。強力役の染五郎に華があって見ごたえのあるものになったと思う。染五郎の海老反りをはじめて見た。演舞場で共演の合間に二人でこの踊りの稽古をしていたのかと思うとほほえましい。

追記 : きょうは昼の部では壱太郎のお母さん、夜の部は梅枝の両親が一階の一番後ろの席にいるのを見た。また、会場には田中佐太郎さんが傳治郎の娘達といっしょにいるのも見た。傳治郎の次女はお父さん似だ。夜の幕間には傳治郎夫人が長女の手をひいて次女を抱えて、一階の通路で知り合いに挨拶している様子も見えた。帰るときに川端通り側の出口の方へ行ったら、最後の演目には出なかった広忠が浴衣に着替えてお母さんと姪達の近くに立っていた。

幕間に、役者の受付のところで第六回亀治郎の会のチラシをもらった。国立劇場大劇場で8月23、24日。演目考え中だそうだ。今年の8月はお財布に厳しい。

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