吉例顔見世 「仮名手本忠臣蔵」 昼の部2009/10/18 19:11

2009年10月11日 御園座 10時45分開演 1階5列28番

「仮名手本忠臣蔵」 というと玉三郎のおかるばかり観ていたので昼の部を観るのは二十年ぶりだ。 夜の五、六、七段目は非常によくできた劇だと思っているが、今回久々に昼の部を見て、大序、三段目もやはりよくできた話で、人気があるのも当然だと思った。

開演時間よりも早く人形が登場人物と配役を紹介し始める。名前を2回読み上げられる人、一回の人、時間をかけて読み上げられる人、と役の大きさによって異なる。最後の読み上げは由良之助役の団十郎で、一際高い拍手を浴びていた。

「大序」

幕が開くと、板つきの役者は皆、目をつぶっている。若狭之助役の愛之助は目をつぶったままの顔が綺麗だ。愛之助の若狭之助は夜の定九郎、喜多八役よりも良かった。特に幕開きのときに着ている衣装が似合う。

この幕の役者は皆、ニンに合った役をやっている。左団次はスケベおやじ風のキャラに年齢の重みと身体の大きさが加わり、リアリティのある師直だ。福助の顔世は、美人なのが何よりも良かった。今回観て感じたのだが、おかるは美人でなくても愛敬でどうにかごまかせるが、顔世は美人でないと話が成立しない。進之介は浮世離れした感じが直義に合っていた。橋之助は温厚な性格の判官役に合っている。

「三段目」

加古川本蔵が賄賂を持ってくるあたりは、やっぱり昔の藩は今の企業と同じで、総合力の勝負なのだと思った。あんな若造一人に藩の命運をまかせるのは危険すぎる。

鷺坂伴内は亀蔵。道行ではしょっちゅう見るが、はじめて正体がわかった。

「四段目」

判官切腹の場。判官の前に手をついて、首をふって別れがたい様子の力弥(新悟)と、それを目でたしなめて行けと促すような判官の橋之助が良かった。

由良之助の団十郎は、家臣達を従わせるようなカリスマ性を感じられなかった。九太夫役の橘三郎はうまい。

「道行旅路の花婿」

おかるの着物は矢絣。顔も着物も地味だったが、この勘平は、女に甘えたいタイプの色男で、しっかりもののおかるについてきたのかもしれないと思いをめぐらした。

年の差カップルに見えなくもない。玉三郎を思い出すと見た目も、縫物をする振りの華麗さなども比ぶべくもないが、孝太郎の踊りは良かった。