映画「宮城野」2009/10/28 03:57

2009年10月27日 赤坂レッドシアター 午後9時開演

赤坂レッドシアターには初めて行った。今まで気づいたことがないので、かなり新しいところだと思う。田町通りにあり、1階の入口から階段を下りて地下に行く。

去年の10月31日に蓼科高原映画祭に行った時は帰りの電車の時間が気になって最後の10分を見ないで出てきた。今夜やっと最後まで見て、ドンデン返しはなかったのを確認し、冒頭の、写楽の絵が紹介されているシーンのナレーションは寺田農だというのが最後のクレジットでわかった。

驚いたのは上映時間。蓼科のときは113分だったのに、今夜は9時の上映開始で、帰りに赤坂見附の駅で時刻を見たら10時26分だった。30分もカットされている。毬谷友子が赤い襦袢を着て座敷で人形振りだったか、何か歌舞伎もどきの動きをするシーンがあったが、カットされていた。あれは退屈だったので無い方が良いと思う。写楽と版元(?)の人が矢太郎(愛之助)について話しているシーンもなかった。紙製の風景と人形のシーンも減ったような気がする。

主な出演者全員のだんまりのシーンや、矢太郎が歩いているときの前後の面灯りを持った黒衣などはあった。監督の趣味が色濃く出た映画から、不必要なものを削ぎ落して、原作のストーリーがよく見える映画にした、という印象だ。

演出が変わったと思うところもあった。座敷を出ていく矢太郎に写楽が言葉をかけるシーンは2回ある。蓼科で見たとき、そのうちの1回は写楽の声が聞こえなかったように記憶している。今回は両方ともはっきり聞こえる。声をかけられた矢太郎の顔も、蓼科で見たような、下から仰った顔がなかった。あれは面白かったのだが。

映画は宮城野役の毬谷友子が中心だが、樹木希林がやっぱりとってもうまいと思った。愛之助は、最後にちょっと悪い男になって「俺はそんなに甘くねえんだ」と言ったりするところが私好みだった。

去年見たときの感想に「偽絵」と書いたが、「似せ絵」が正しいのかもしれない。矢太郎は写楽の絵を偽造して売っているわけではない。写楽の絵をトレースしていて、それを写楽が持って行くシーンがあった。去年は、矢太郎は似絵の腕は良いが自分の描く絵に魅力がなくて鬱屈している人間と勝手に解釈したが、再見して、その解釈に自信がなくなった。写楽はかつて素晴らしい絵を描いていたが今は才能が枯渇し、写楽の線を真似られる自分が描いた絵の方が、写楽の絵として優れたものが描ける、と思っていることはわかった。

雪の日に二八蕎麦を担いだ矢太郎が宮城野と出会うシーンは覚えていなくて今回印象に残った。宮城野は食べ物に飢えているはずなのに、蕎麦を食べている途中で箸を止めて矢太郎に話しかけているのがリアリティに欠けると思った。

上映が終わって観客が拍手をしているとき、スクリーンの後ろから毬谷友子が現れて「遅くまでありがとうございます。二日までここで上映していますのでお友達にも・・・」のような短い挨拶をした。