セルリアンタワー能楽堂 平成二十四年 正月公演2012/01/02 00:53

2012年1月1日 正午開演

ここ数年、元旦はこの公演に行くのが恒例になった。

「祭り囃子」
傳次郎の太鼓、笛の人、それに中太鼓、鉦担当の人の4人で何曲かメドレー

長唄「連獅子」

小鼓の傳左衛門、太鼓の傳次郎。大鼓は広忠ではないが、元旦から「それ青陵山の~」という長唄と、獅子の咆哮が聞けて嬉しい。イヨーッ、オーッ、という掛け声と、傳左衛門が鼓の紐をギュッと絞って出すギリギリという音も。

舞踊「老松」

この公演を観るようになってから、春猿は、新年最初に見る歌舞伎役者になった。また明日の浅草で見る予定。

いつもは着物の色が華やか目だが、今年は黒。他の人たちと同じだ。
「老松」は、この公演を最初に観た年にも観た。おめでたい舞踊らしい。観ていて楽しかった。

舞踊の後、一度橋掛かりを歩いて引っ込んでから再登場し、挨拶をした。この公演に出るようになって十年目だそうだ。昨年は震災があったが、舞台人は舞台に出て観客の気持ちを癒すことが務め、というような話だった。

最後の手打ちのために傳左衛門、傳次郎が出てきた。傳左衛門は年男だそうだ。(四十八歳ではありません、と傳次郎) 今月、春猿は浅草公会堂、傳左衛門は平成中村座、ルテアトル銀座、演舞場と三座掛け持ち、傳次郎は松竹座だそうだ。

2012 新春浅草歌舞伎 初日の鏡開きと第一部2012/01/02 21:24

2012年1月2日 浅草公会堂


鏡開き

10分くらい前に着いた。すでに人がいっぱいだった。9時半をちょっと過ぎた頃、
出演者が出てきた。今年は多い。真ん中に亀治郎と愛之助がいて、その左右に竹三郎、春猿、壱太郎、男女蔵、米吉、歌昇、亀鶴、巳之助、種之助、隼人、薪車が立つ。亀次郎、愛之助、の順で挨拶した。

人数が多くて覚え切れないので覚えてるだけ。大体の感じを記す。

亀治郎 今年襲名する。亀治郎としての浅草出演は最後。今年は若い人がたくさん入ったので、今後はこの人たちをよろしく頼みます。今年は平均年齢が下がったと思ったら、竹三郎さんが入った。

愛之助 昼を見た人は夜も見てください。平成中村座も、演舞場、ルテアトル銀座、国立も。大阪松竹座もやってますので観てください。

男女蔵 (オメッティと声が掛かって) ありがとうございます。10年連続で出てましたが去年は出ませんでした。今年は挨拶には出ませんが、どこにオメッティが出てるか探してください。

亀鶴 亀鶴です。ファンレターでも鶴亀(つるかめ)さんと書いてあったりします。

巳之助 4年ぶり、2回目です。身体の成長は止まりましたが芸の成長
は止まりません。

壱太郎 初出演です。寒いのでこれくらいで。

歌昇 (播磨屋!と声が掛かった) 播磨屋です。出演できて嬉しい。

種之助 あけましておはようございます(と言ってしまって笑われた)。出演できて嬉しい。

米吉 (はっきりした記憶がないが、すごくしっかりした印象を受けた。初出演なので、上の2人と同じような内容だったと思う)

隼人 高校3年です。高校生は七之助さん以来だそうです。

春猿 今までは亀次郎さんにすがって出演してましたが、来年からは若い方たちにすがります。

薪車 華やかだよと噂は聞いていましたがやっと出られました。新人です。

竹三郎 子供や孫達を保護するようなつもりで出演します。


第一部 午前11時開演 1階お列8番

花外の席の前の方は、花道で舞台が見えなくなるのを防ぐためか、普通の座席の上にクッションがついている。深く腰掛けると足が着かなくなるくらい厚い。 この席のおかげで、竹三郎の足袋の裏や歌昇の生足、目の前のトンボなどを堪能できた。

年始挨拶は亀治郎。今年で浅草は一応卒業。自分は浅草に育てられたと思う。今年入ってきた若い役者たちを見ると自分はもう若くないと感じ、こうやって年老いて死んでいくのかと思う。これからは若い人たちを応援してほしい。これを僕の遺言とします。

「南総里見八犬伝」

発端。浅黄幕があって、花道から「きいたかきいたか」「きいたぞきいたぞ」と所化が2人出てくる(澤五郎、千蔵)。浅黄幕が落ちると伏姫と八房がいる。八房が、歌舞伎によく出てくるタイプの犬だったのでイメージが狂った。八房は、伏姫を乗せて走れるような大きな犬だと思い描いていた。

伏姫は、何をしたというわけではないけれども八房の子を身ごもったので、八房を殺し自分も死のうとしている。そこに、花道から猟師が出てくる。男女蔵。鉄砲を持っている。撃った弾が八房だけでなく伏姫にも命中し、伏姫は死ぬ間際に腹を裂いて八つの玉を飛ばす。

空中を飛んでいる玉に見えるのは、2人の黒子がもった4本ずつの差し金の先についている丸い電球だった。一字ずつ漢字が書いてある。

序幕、大塚村蟇六内の場では、八犬士のうち、犬塚信乃(歌昇)と犬川荘助(薪車)が出る。信乃は庄屋の養女の浜路(壱太郎)と恋仲である。壱太郎はとても可愛い。台詞がうまくなった。次の演目で夕霧もやるし、第一部では大活躍。信乃が旅立つ前に2人で名残を惜しもうと奥の部屋に入ったりするが、まだ若すぎるラブシーン。というか、歌昇が固い。

浜路に横恋慕する左母二郎役の亀鶴は、歌昇と比較するとさすがに大人。

庄屋夫婦(亀治郎、竹三郎)が花道から出てくる。この2人が滅法うまい。亀次郎は老け役だが、段四郎がやっているようだった。2人がとてもしっくり合っていて、四十も年齢差があるとは信じられない。この夫婦は、浜路を代官に縁づかせて、持参金をもらおうとしている。下女役が愛一郎。庄屋は、この縁組を浜路が承諾しなければ死ぬ、と脅して無理に承諾させる。

代官は、男女蔵の二役。結局、浜路は逃げてしまうので、庄屋と代官たちの間で追いかけっこがある。世話ダンマリというのだそうだ。加賀鳶でやるダンマリに似ている。

二幕目、円塚山の場では、亀治郎は犬山道節の役。こちらは猿之助に似た声で演じる。この場の最後に八犬士が全員そろってダンマリになる。

下手には犬田小文吾(種之助)、中央、上手に目をやると、かっこいい犬江親兵衛(隼人)、女の子のような可愛い犬坂毛野(米吉)、上手の方でよく見えない犬飼現八(愛之助)、それに犬塚信乃(歌昇)と犬川荘助(薪車)。 一人ずつ玉を持って見せたが、「義」が書いてある薪車の玉だけ、電気が切れていた。振り返って玉を見せる前に、愛之助が薪車に何か言ったように見えた。

舞台の幕が閉まって、犬山道節役の亀治郎の幕外の引っ込みになった。飛び六方。

種之助、米吉、隼人の若手は、一日のうちで、このダンマリのシーンしか出番がなかった。来年からはもっと出るよ、という予告編のようなものか。


「廓文章」

この演目は何度も観たが、幕外の角度から観るのは初めてだ。

伊左衛門役の愛之助は前後を面明かりを持った黒衣にはさまれて、花道を歩いてきた。前の黒衣はベールを通して顔を見ると愛一郎。近くに来たとき、笠の下の伊左衛門の顔がのぞけた。

門松が飾ってある玄関前の様子や、繭玉が飾ってある座敷が華やかで、正月気分が盛り上がる演目だ。

若い者、仲居たちはイチョウ柄の着物を着ている。

愛之助の伊左衛門は、顔が地味すぎるように感じた。喜左衛門(竹三郎)、おきさ(春猿)がそろって派手な顔立ちなので、とくにそう感じたのかもしれない。こんなときこそ、もっと仁左衛門に似せた化粧をすれば良いのではないかと思った。見た目からくる説得力がないので、あまり動きがないときが伊左衛門らしくなくて辛い。喜左衛門が貸してくれた羽織を脱いで活動しはじめてからは、表情もいろいろ動くので、顔は気にならなくなった。

「なんじゃいなーおまえらは~」とか「ちょともおもしろいことあらへん」という台詞のときは、同じ調子でもやっぱり言う人によって雰囲気が違ってしまうのは感じた。吉田屋に入ろうとするとき、背中を斜めにひねる形で仁左衛門を思い出した。足の白粉がついてお尻のところが白くなるのも仁左衛門と同じ。

壱太郎の夕霧は、瑞々しく美しくて、嫌味でない色っぽさがある。いつもの通り所作が美しい。
二年も恋人と別れていて、必死に生きてきたみたいな強さも感じた。今まで観た夕霧の中で一番リアル夕霧に近いだろう。

竹三郎は、毅然としていて、情がある喜左衛門にぴったりだった。羽織を、渡すのではなく、着せ掛けてやるのが、この喜左衛門に似合っていた。公会堂の中が寒かったので、羽織を脱いで竹三郎は寒くないだろうかと思った。

春猿は、こういう役だと凄くうまく感じる。伊左衛門が花道で「それいぬ・・・・それいぬ」とやっているとき、後ろで同じ格好をしているときの顔が可愛かった。

吉太朗は顔は悪いが演技はうまかった。

2012 新春浅草歌舞伎 初日 第二部2012/01/03 19:35

2012年1月2日 浅草公会堂 午後3時開演 き列17番

第一部が15分くらい押したので、第二部の開演が10分くらい遅れた。
浅草の初日は何回も観たが初めての経験だ。

年始挨拶は愛之助。素顔に紋付。年始の挨拶、「初日よりかくも賑々しく」の後、立ち上がってマイクをもって花道の方に歩き、自分も来年ここにいるかどうかわからないのでよく見覚えておいてください等と話した後、客席に降りて3人くらいに質問した。プレゼントにもらって嬉しいものは、という質問の答えが「消耗品」だったのは、納得。質問の後、舞台にヒラリと上がって、笑いたいときは笑ってください「常識の範囲で」、拍手したいときはしてください、と言って拍手の練習をした。最後は、隅から隅までずずずいっとー、で締めた。

「敵討天下茶屋聚(かたきうちてんがぢゃやむら)」

愛之助の東間を見るのはこれで三度目だ。イヤホンガイドによると、その前は葉末をやっていたそうだ。今月の葉末は壱太郎。今月の娘役は昼も夜も壱太郎一人で、目立っている。

葉末のいいなづけ早瀬源次郎は巳之助がやっている。源次郎の兄の伊織は亀鶴。亀鶴と巳之助は兄弟と言われても違和感がない。巳之助は、台詞を言っているときの表情が三津五郎に似てきた。やっぱり親子だ。

伊織の妻染の井は春猿。早瀬兄弟に仕える弥助は男女蔵。弥助の弟で、大酒飲みの元右衛門の役は亀治郎。早瀬兄弟の父が東間に殺されたので、兄弟は東間を敵として追っている。

この芝居はそんなに面白いと思わない。しかし、二幕目で、それまで盲目のふりをして目をつぶっていた元右衛門役の亀治郎が、花道七三でぐっと腰を落として目をぱっちりと開き、客席の四方に顔をめぐらした時、亀治郎の芸が凄いと思った。亀ちゃーーん、睨んでーー!と叫びたかった。海老蔵にも負けていない目力。 こんぴらの時は楽しかったが、これほどの凄みは感じなかった。 この後、舞台に戻り、藤棚に上って、引き窓から家に忍び込んで源次郎の金を奪い、兄の弥助を殺す。引き窓から、伸ばした足で下を確かめながら降りる時の足が見もの。ヒーロー的な役は合わないが、この元右衛門の役は亀治郎の当たり役になるだろう。

最後の追いかけでは、亀治郎は花道横の席の人に声をかけて立ってもらい、客席に降り、客席の中に入って隠れたりして逃げ回った。
つかまって、源次郎が台詞を言うと、亀治郎は源次郎役の巳之助に「きょう、客席にねえちゃん来てるよ。ねえちゃんは風林火山のときにオレが世話をした。だから今回はお前が~」みたいなことを言ったが、結局斬られ、元右衛門はそこで死ぬ。

その後、源次郎、葉末、染の井は、敵の東間を待つ。現れた東間は、自分は大坂方に仕えているのだから自分に刃を向けるのは大罪と言う。そこに、花道から片岡造酒頭が現れて、自分は淀の方から敵討ちの許可を得ている、と言う。この片岡造酒頭が亀治郎。それならば、と東間は着物を脱いで、鎖帷子の姿になり、立ち回りをやる。

この少し前に、人形屋幸右衛門役の薪車の立ち回りがあるが、あまりうまくない。先月の喜劇祭りのときの立ち回りを思い出してしまう。それに比べると愛之助の立ち回りはさすがにうまい。結局、源次郎に斬られる。

浪花花形のときは、最後、仁木弾正のような断末魔の見せ場があったが、今回はない。芝居は途中で止まって、最後に舞台の役者が舞台に正座してお辞儀をして終わりになる。

坂東玉三郎初春特別公演2012/01/06 21:19

天井の凧
2012年1月3日 ルテアトル銀座 午後2時開演 10列20番

一、お年賀 口上
プログラムの中の写真と同じ。金屏風の前に玉三郎。下手には富士山の絵、上手は繭玉の絵。

来年は新しい歌舞伎座が開場するという話、ルテアトルの天井に飾ってある大凧の龍の文字は、玉三郎が書いたのを大きくしたものだ、という話など。

二、妹背山婦女庭訓

玉三郎の芝居を久しぶりに見られるのは嬉しいが、ミーハーな私には去年の玉三郎とイケメン達の方が楽しかった。

この演目はたぶん前に観たことはあるのだが、はっきりした記憶がない。

橘姫役の右近は可愛いお姫様で踊りもうまい。淡海役の笑三郎はそつなくつとめている。しかし2人とも印象は薄い。後から出てくるお三輪役の玉三郎が、当然のことながら格段に綺麗。3人いっしょに踊ると、右近より玉三郎の方がやっぱり綺麗。当然だけれども。

猟師鱶七(松緑)は、ギンガムチェックの長裃という奇抜なファッション。猟師だけれども御殿に来たから裃を着てるのか? 初役だそうで、松緑は、子供の頃、祖父や父の鱶七を見てかっこいい役だと思ったと語っているので江戸っ子の役かと思ったら、台詞が関西弁だった。当代の松緑が演じる鱶七は、そんなにかっこよくは見えなかった。がんばって観ていたが、睡魔に襲われてしまった。しかし、玉三郎のお三輪が花道から再登場する前には目がさめた。

お三輪が官女にいじめられるところは面白かった。苧環がくるくる回るのが綺麗だった。

途中で眠ってしまったし、この作品を深く味わうまでいかなかった。もう一回観るので、そのときはイヤホンガイドを借りることにしよう。

平成中村座 壽初春大歌舞伎 昼の部2012/01/07 19:37

skytree
2012年1月7日 午前11時開演 1階10列14

平成中村座のある隅田公演に近づくと、スカイツリーが下の方からよく見えた。

きょうの席は、松席の一番後ろ、一番上手の端。右側に細いながら通路があるので芝居中だけでも荷物を置けるので便利だった。座椅子があって寄りかかれるのは楽。こんぴらはもちろん、永楽館よりも快適だった。

「鳥居前」

萬太郎の義経が良かった。梅枝の静御前は安定している。梅枝はいつもうまいが、萬太郎がずいぶん安定してきた。顔がかわいくて、声も良い。

獅童の狐忠信は一生懸命やっていたし、最後は狐六方の引っ込みもあって嬉しかった。しかし、所作事になると獅童は縮こまる感じがする。せっかく身体が大きいのだから、下手でもいいから伸びやかな動きが見たい。

「身替座禅」

一番最初に揚幕から出てくる右京の勘三郎。久しぶりだ。
最初の「会いたい」から客席に笑い声が起きるのは流石。

弥十郎の玉の井は、女形になってもとくに怖い顔ではないが、大きな身体がゾウのように右京に近づくと威圧感がある。その身長差が面白さをかもし出している右京玉の井だ。

獅童の太郎冠者が楽しみだったが、やっぱり古典は不得意なのか。普通の侍みたいで、右京に仕えている感じが薄い。奥方のわわしさを言って踊るところでは、手を鏡に見立てて顔を映す仕草にとても魅力があって面白く、獅童らしかった。踊り自体はともかく、パントマイム的には面白い。
「めと言え」と言われて、大きく「め」と言う。七之助の太郎冠者と同じだ。中村屋のやり方なのだろうか。私はこれが好きだ。

千枝、小枝は仲之助と仲四郎。仲之助は美女だ。

花子との逢瀬から戻ってくるとき、勘三郎の右京は、花道でニヤリとする。ここは、菊五郎の呆けた顔の方が好きだ。

「当代一!」と声が掛かったが、確かに踊りのうまさを考えたら、勘三郎の右京が当代一かもしれない。

「雪暮夜入谷畦道」

直次郎の橋之助は、蕎麦の食べ方がうまくない。一回にとる蕎麦の本数が少なすぎるように思う。 その前に、お猪口に入れた酒の上に虫がいるのを見つけ、箸でさっと落として酒を飲むところの動きがもたもたしていて、菊五郎のときに感じるような、「虫なんて、かまわないもんね。ぱっとどけて、酒飲んじゃうもんね~」みたいな江戸っ子の心意気が感じられない。

按摩丈賀は亀蔵、暗闇の丑松は國矢。

大口屋寮の場、三千歳の七之助は綺麗だった。七之助を見るのもわりと久しぶり。國久が新造の役で出ている。例年、浅草公会堂で見る役者が、今年はこちらに出ている。

直次郎と三千歳は抱きしめたりするシーンもあるせいか、愛のある恋人同士に見える。何度も恋人役をやっている二人だから、浅草公会堂の恋人たちとは違う。

最後、直次郎をつかまえに来る手先が、たった2人。直次郎と三千歳が組んで戦えば勝てそう。

2012 新春浅草歌舞伎 第一部2012/01/08 21:55

2012年1月8日 浅草公会堂 午前11時開演 お列20番

年始挨拶は隼人。素顔に紋付姿。

犬江親兵衛の役をやってます。親兵衛の年齢は9歳だそうで、八犬士のうち最年少です。そして僕も18才で今月の出演者の中で最年少です。僕は高校3年です。高校生の出演は七之助さん以来、十一年ぶりだそうです。
きょうのお昼に何食べるか決めてない人いますか? 僕の好きな梵のカツサンドを1階で売ってるので。

「南総里見八犬伝」

発端。浅黄幕が落ちると伏姫(春猿)と八房がいる。伏姫は身ごもったことを恥じ、八房を殺して自分も死のうとしている。伏姫と八房の立ち回りがある。八房が伏姫と向き合って、人間同士なら八房がえび反りをする態勢になったところで、花道から出てきた猟師(男女蔵)の撃った弾で両方とも死ぬ。

序幕、大塚村蟇六内の場の犬塚信乃(歌昇)と浜路(壱太郎)のシーンは、歌昇の台詞と演技にメリハリがつき、少し硬さがほぐれてきた。浜路の着物の、ラメ入りの赤い襟が綺麗だ。 「二世の妻だ」と手を握るところが良い。この若い2人が、くすぐったい感じや、ドキドキする雰囲気を出せたら、それはもう素晴らしい。後半にもっとよくなりそうで、観たいけど金がない。


庄屋の蟇六と女房の亀篠(亀治郎、竹三郎)が花道から出てきて、七三のところで亀治郎が年始の挨拶をした。
蟇六と代官たちのダンマリでは、一列に並んでエグザイルのような動きもする。蟇六の役をやる亀治郎は段四郎に似ているが、特に段四郎がやる義平次に似ているときがある。
代官たちが持ってきた角樽を使って、庄屋夫妻が最後に金龍山の龍に見立てたものを作り、代官が金の玉を先につけた棒をもって龍の舞をやるのが面白い。


二幕目、円塚山の場では、代官との縁組が嫌で逃げた浜路は、左母二郎(亀鶴)に連れ去られる。左母二郎は色悪でかっこ良い役。亀治郎は左母二郎をやっつける犬山道節の役。

舞台の上から八つの玉が降りてきて、八犬士が勢ぞろいし、ダンマリになる。ひとりずつ、光る玉を持って名乗りを上げる。種之助は相撲取りの役で、最後に決まる前に着物の上を脱ぐ。水色の地の襦袢に蝶の柄が可愛かった。相撲取りらしく力強く決まっていた。そのまま舞台の幕が閉まり、犬山道節役の亀治郎の幕外の引っ込みになる。亀治郎の飛び六方は形が綺麗だった。


「廓文章」

きょうは中央の席から見たので、夕霧の出が最初から見えた。
夕霧の壱太郎は、終始思いつめたような表情をしている。最初の台詞、「わしゃ、わずろうてのう」までが、藤十郎に似ていた。

壽 初春大歌舞伎2012/01/09 20:12

2012年1月8日 新橋演舞場 午後4時半開演 1階5列31番

演舞場には、浅草公会堂に出ている役者の親が5人も出ていた。

「矢の根」

初めて観た。下手に「坂東三津五郎あい勤め申し候」のように書いてある。三津五郎が五郎で、大きな矢を持って立っている。

大薩摩主膳太夫(歌六)の持ってきた宝船の絵を下に敷いて眠る。五郎が仰向けに寝るときは、枕の前に後見さんが入って、その上に五郎が背中をもたせかける。

五郎は、十郎(田之助)が幽閉されている夢を見て、助けに出かける。出かける前に、仁王襷を舞台の上で後見さんが締めるのが1つの見せ物になっていて面白かった。締めている間、三味線が伴奏していて、ほぼ締め終わったときに、後見さんが三味線の方に合図を送っているようだった。

花道から、大根をたくさん積んだ馬が来て、五郎は馬士(秀調)からその馬をとり、乗っていく。南座の顔見世で実盛が馬にのって花道を引っ込むとき、2階の下で菊五郎が大きく前傾したので、演舞場はどうなんだろうと気になって見ていたら、三津五郎はほぼそのままひっこんでいった。もっと座高の高し人でも、少し頭を倒すくらいで大丈夫そうだった。南座の2階は低いのだ。

「連獅子」

吉右衛門と鷹之資。鷹之資はずいぶん大人びた顔つきになった。去年の趣向の華では親獅子だったが、今月は仔獅子。

去年六月の仁左衛門と千之助の連獅子のときには、仁左衛門は千之助といっしょに大きくジャンプするところがあったが、吉右衛門はジャンプなし。鷹之資の側転もなく、六月とは違う振り付けのようだ。

最後に舞台の真ん中で、仔獅子が親の左後ろで台に乗って決まるのは六月と同じだった。

狂言師親子が花道を引っ込むとき、去年六月は仁左衛門が先に引っ込んで、千之助が後だったが、今月は吉右衛門が後。

宗論は、錦之助が六月と同じ役。愛之助がやった黒谷の僧は又五郎。又五郎が風邪をひいてるような気がした。
仲が良いのか又五郎がうまいのか、六月よりも面白かった。

後シテは、花道で仔獅子だけがバック。その間、親は舞台で仔獅子を見守るような動きをしていた。2人が毛を別々の方向に振るのもやった。吉右衛門の毛振りを見るのは初めてだが、やっぱり基礎ができていて、きちんとした回し方だった。

「め組の喧嘩」

ずいぶん前に一度観たことがある。喧嘩したいから喧嘩するみたいな話。

前に観たときも辰五郎は菊五郎だった。江戸っ子はやっぱり菊五郎だなあ。

今月は大河が辰五郎の倅又八の役をやるのが楽しみ。花道から、母親のお仲(時蔵)、おもちゃの文次(松也)といっしょに出てくる。おもちゃの纏を持っている。舞台の方に来て、最後は松也に肩車をされて上手にはけた。

次の幕では大河は纏を持って遊びながら、時おり台詞を言う。達者にしゃべっているが、はっきりしなくて聞き取れないところもある。無表情なので、時間も遅いし、台詞が無い間に眠ってしまわないかと心配になるが、用を言いつけられると、「あいよっ」と答えて、辰五郎の履物を出したり、辰五郎が脱いだ半纏を抱えて奥の部屋に持っていったりする。出かける辰五郎にすがるシーンもあった。子役は可愛い。

坂東玉三郎初春特別公演2012/01/12 00:15

2012年1月9日 ルテアトル銀座 午後2時開演 21列20番

「口上」
三日とは内容が違っていた。

今月は演目が妹背山だから、お芝居の中で新年のご挨拶をするわけにもいきませんので。

松緑さんのお祖父様の松緑さんには可愛がっていただいた。十五歳のとき、薄雪姫をやらせていただき、21のとき丑松のお米をやらせていただいた。お正月に国立で公演をやっていたとき、公演の後、紀尾井町のおうちで皆でごちそうになった。私は女形で化粧を落とすのに時間がかかって行くのが遅くなったが、必ず松緑さんの隣りを空けておいてくださった。辰之助兄さんもいたけど私の方が隣り・・・・。

「妹背山婦女庭訓」

三日に観たときは途中で眠ったりしたので、きょうはリベンジのつもり。イヤホンガイドを借りた。おかげで話がよくわかった。

道行恋苧環

藤原鎌足の息子淡海(笑三郎)は、入鹿討伐のため、烏帽子折の求女に身を窶している。杉酒屋の娘お三輪は求女に惚れ、深い仲になる。求女のところには、橘姫(右近)が毎夜通ってくるが、まだ男女の仲にはなっていない。実は橘姫は入鹿の妹である。

ある夜、求女は、帰る橘姫の後を追う。追いついた求女が名を尋ねるが、橘姫は名を明かさない。橘姫のくどきで右近が踊る。橘姫が袖で顔をおおい隠す所作をするが、これは、袖を几帳に見立てて袖几帳というそうだ。初めて聞いた言葉だ。

橘姫と求女が2人でいるところにお三輪が来て、持っていた苧環を2人に間に投げ、引き離そうとする。お三輪の着物は萌葱色の地に「十六むさし」の柄。「十六むさし」というのは江戸時代のボードゲームだそうだ。

お三輪は橘姫に、「ひとの男をとっていいと思ってるの? そんなことしちゃいけないって、女庭訓にちゃんと書いてあるでしょ。読んだことないの?」と責める。そうか、だから妹背山女庭訓なのか、と納得。橘姫も負けてないで言い返す。

橘姫は夜明けまでに帰らないと行けないので先を急ぐ。求女は、彼女の正体を知るため、持っていた苧環の赤い糸を彼女の着物に結び付けて後をつける。お三輪は、苧環の白い糸を求女の着物に結び付けて後を追おうとするが途中で転び、糸が切れてしまう。切れたと知って苧環を叩く仕草がかわいい。


三笠山御殿

入鹿の御殿に、漁師の鱶七(松緑)が鎌足からの届け物の酒を持ってくる。鱶七は、どてらの上に長裃。この長裃は弁慶縞の木綿の浴衣地を仕立てたものである。

鱶七が鎌足のことを「鎌どん」というのが面白い。
長袴は見ていて歩きにくそうなのがわかる。裾さばきが難しいのだそうだ。松緑はうまく裾をさばいて、階の上で決まった。

毒味で酒を飲んだ鱶七は酔いがまわって寝ようとするが、御殿の床下から槍が突き出る。その槍を交差させて枕にし、その上で寝る。寝ていると官女たちがやってくる。鱶七は官女たちを追い返すが、入鹿の家来の玄蕃(弘太郎)と矢藤次(猿四郎)がやってきて鱶七を連れ去る。

人がいなくなった舞台に、帰ってきた橘姫が出てくる。そして、赤い糸を追ってきた求女。求女は、橘姫が入鹿の妹であることを知る。橘姫も求女が藤原淡海であると知る。素性を知られた淡海が橘姫を手にかけようとすると、橘姫は覚悟して手を合わせる。
その姿を見た淡海は「心底読めた!」と膝を叩き、刀をしまう。橘姫は入鹿のスパイとして自分を探るために近づいたのではないと確信した淡海は、橘姫が入鹿が盗んだ宝剣を取り戻せば夫婦になる、と言う。
橘姫はそれを承知して別れる。

2人がいなくなった舞台に、花道から出てきたのが、求女の後を追って、やっとたどり着いたお三輪。通りかかった豆腐買いのおむら(猿弥)に求女のことを尋ねると、それはきっとお姫様の婚礼の相手だと言われ、御殿に上がっていく。

中から官女が出てきて、一人一人、お三輪とすれ違う。つけまわし、というのだそうだ。官女は「誰じゃ」と言い、お三輪はその度に「はーい」と答える。

婚礼を覗かせてほしいと頼むと、官女達が酌の仕方を教える。最初に出てきて持ち方を教えるこわい官女は功一。次は辰緑。馬子唄を歌ってみせるのは松次郎。野太い声で、最後に「はい~はい」と歌って。他の官女に、「あなた、お上手ですね」と褒められる。お三輪は馬子唄がうまく歌えずに泣き伏し、官女たちは奥に引き上げてしまう。ここで、嫉妬に狂ったお三輪が髪を振り乱して「「凝着の相」となり、奥へ押し入ろうとするところに鱶七が戻ってきて、お三輪を刺す。鱶七は実は淡海に仕える金輪五郎だった。どてらを脱いで、金襴の四天姿になる。

五郎は、お三輪が追っている求女が実は藤原淡海であり、爪黒の鹿の血と凝着の相の女の血を混ぜて笛に注げば入鹿を成敗できるのだからとお三輪に告げ、お三輪は納得して死ぬ。

2012 新春浅草歌舞伎 第二部 千秋楽2012/01/26 21:05

2012年1月26日 浅草公会堂 午後3時開演 あ列

年始挨拶は亀治郎。拵えをしている。きょうで千秋楽。今年は若い役者が多いせいか、誰もインフルエンザ、風邪、ノロウィルスなどに感染せず、休演者もいなかった。 いつも通り携帯の電源を切るようにとの注意。「休み時間にメールチェックなどして、その後切り忘れることが多いみたいです。2、3階席から聞こえることが多い。大事な場面に限ってとんでもない着信音が鳴るんだよ」 ここでお客さんのくしゃみが聞こえて、「くしゃみは、いくらしていただいても結構ですよ」 とにっこり。10年浅草歌舞伎に出してもらい、自分は浅草に育てられたと、浅草と観客に対する感謝の言葉を述べた。最後は「隅から隅までずずずいーーっとーー」で、澤潟屋! とたくさん声が掛かった。


「敵討天下茶屋聚(かたきうちてんがぢゃやむら)」

花道から出てくる葉末(壱太郎)と染の井(春猿)。2人とも本物の女みたい。

元右衛門(亀治郎)が最初に登場するときは、兄の弥助(男女蔵)と同様、早瀬家の使用人。茶店で座った時、膝にのせた手の指の細長さに目が行った。

東間は最初の2回は笠をとらない。このときは愛之助ではないようだ。下から覗き込んだが、白塗りの横顔が、どうも愛之助とは違う。

東間を敵として追っている早瀬兄弟は、旅をしているので、2人とも刀の柄にカバーをつけている。これは柄袋(つかぶくろ)というものだそうだ。「小金五討死」で愛之助の小金五も刀に柄袋をかぶせていて、その姿が可愛いかったので、柄袋ファンになった。

初日に観たときは何回か居眠りしたらしく、記憶にない場面がいくつかあった。染の井が祇園に売られる話がその1つだ。兄弟が捜し求めていた貫之の色紙が見つかって、それが二百両だというので、祇園に身を売って金を作ることにする。その手付けが百両。この百両は、後で元右衛門に奪われることになる。

花道から目をつぶったままで杖を頼りに歩いてくる、元右衛門役の亀治郎は、おそるおそる歩くニワカメクラの格好を誇張して演じて笑わせる。按摩として入れてもらった家で兄の弥助に再会する。弥助は、自分の着古した袷の着物と、金の入った財布を弟にやる。家を出て、花道まで歩いた元右衛門は、兄にもらった袷の包みを投げ捨て、懐に入っていた財布も投げ捨て、按摩の杖を花道に捨てる。そして、目を大きく見開き、腰を落として七三でぐるりと回って、目を開いた顔を観客に見せる。片袖を引きちぎってほどいて手ぬぐいのようにし、頭にかぶって左右をくるくるとまわして紐にし、顎の下で縛る。その格好で藤棚を伝って家に忍び込む。兄の弥助を殺し、金を奪い、帰ってきた伊織に斬り付けて、去る。亀治郎の芸としては、この一連の流れが最高。

次の幕では、舞台中央にかまぼこ小屋がある。かまぼこ小屋は近くで見るとけっこう大きい。素人が簡単に作れるものではないようで、早瀬兄弟は、小屋主(三津之助)からこれを借りている。
伊織役の亀鶴が一度入り口をあけたとき、、下手側がとれたようだった。その後、中で誰かが持っていたらしい。亀鶴が外に出た後は、下手側に指の先がずっと見えていた。かまぼこ小屋から東間が出てきた後、黒衣さんが後ろへ出て行くのが見えたから、黒衣が持っていたのかもしれない。

元右衛門が伊織に言う「まだある、まだある」という台詞や、東間に「おだんな、おだんな」と媚びるときの口調が面白い。今月の亀治郎が凄いと思うところのひとつだ。

早瀬兄弟が互いに相手を思いやっているところと、弟の源次郎の兄に対する態度がまるで使用人のように丁寧なのが印象的だ。兄の弥助は弟の元右衛門を思いやっていたのに、元右衛門は金のために兄を殺したのとは対照的。

伊織が殺された後、腕助(段一郎)は、源次郎を川に落としたのに、次の幕ではいきなり「前非を悔いた腕助が・・・・」と元右衛門を追いかける側にまわる。

段之扮する老婆が雷おこしを売っている。元右衛門が羽織を脱がせようとすると、「立派な亭主のある身体」と抵抗する。そして、「この敵は妹が」と言って下手にはける。つけ打ちさんに代わろうとした亀治郎が上手から舞台に戻ったとき、つけ打ちのところでうつらうつらしていたのが段之の老婆。そして、「姉の敵!」と襲い掛かる。姉妹が出てくるのは初日にはなかった。

亀治郎の付けうちに合わせて舞台の下の三津之助が足を動かすのを特等席で見た。

元右衛門がつかまって、源次郎、葉末、染の井に討たれる前、亀治郎は巳之助に「よくできました。きょうはアイラインたくさんつけてるね。千秋楽だから。大和屋は安泰。」とからかった。そしてバトンを渡した。壱太郎に「カズくん」と呼びかけ、同じ大学なんだから、刀を向けたりしてはいけない、きれいな女形で、成駒屋は安泰、とこちらにもバトンを渡した。春猿には「バトンを渡すわけにいかない。来月も博多座でいっしょにやってもらうから」と、韓流スターのカン・ジファンのクリアファイルを渡し、「きょうははっきりさせたい。カン・ジファンと、博多座に出る勘寿太夫と、どっちが好きか」と、A4に引き伸ばした勘寿太夫の写真を並べて見せた。後ろ向きの巳之助が大笑いしていた。

刺された元右衛門の亀治郎は、春猿の腕をつかんで離さない。春猿が助けを求めるように壱太郎に手を伸ばした瞬間、壱太郎がさっと立ち上がって急いで花道の方へ行ったので、まるで春猿を見捨てて逃げたように見えて爆笑だった。
死んだ元右衛門はせりで舞台から去る。

最後に討たれる東間(愛之助)だが、こんぴらの時はもっと存在感があったと思う。今回は早瀬兄弟の存在感が増している。比べてみたわけではないが、演出が変わったのだろう。それに、こんぴらの照明で見ると、泥絵の具で描いたような東間の顔が魅力的だった。

これぎりとなって全員正座して一度幕が閉まった後、もう一度幕が上がり、カーテンコールとなった。造酒頭姿の亀治郎が、顔の向く角度を何回か変えて挨拶した後、上手にはけた。ここで、何か違う拵えで再登場すると確信。 役者が次々に出てきて、それぞれ自分のスタイルで挨拶。それが終わる頃、芝居の中で死んだ元右衛門、伊織、弥助が頭に三角の布をつけた死人の格好で出てきた。元右衛門は縛られていた。伊織の亀鶴は、何かが巻きついた棒を手にしていた。亀鶴が「長い間浅草を騒がせたかどにより・・・・」と言い、男女蔵が棒の一本を持って、巻きついていたものを広げると横断幕が現れた。
「亀治郎さん
14年間お疲れさまでした、
市川猿之助ご襲名おめでとうございます」
という大きな字のまわりに、寄せ書きがしてある。


亀治郎は元右衛門の台詞として「普通ならここで涙を見せるのだろうが、俺は涙は見せない。亀が猿になってもいつかまたここに戻ってくる」
と言って、カーテンコール終了。

今年の新春浅草歌舞伎はこれで終わった。亀治郎への寄せ書きは、10分の幕間にロビーで書いたが、布の上に書くのは慣れていないので判読できるか心配だ。

14年間と書いてあって、やはりと思った。亀治郎は10年10年と強調するが、勘太郎や七之助といっしょに出るようになってからは10年だろうが、亀治郎はその前、三之助時代にも出ていて、松緑相手に「鳴神」の雲絶間姫をやったりしていた。

俳優祭2012/01/29 19:18

2012年1月28日 国立劇場大劇場 午後4時半開演

平成になって初めて俳優祭へ行った。今回は初めから諦めてチケット争奪戦にも参加しなかったが、幸運なことに同僚の知り合いが分けてくれて、行けることになったのだ。

開場時間の4時少し前に国立劇場に着いたときは入り口に長い列ができていた。古典芸能担当アナウンサーはじめ、NHKのクルーがいたので、テレビ放映があるのだと思った。3月9日にEテレでやるというお知らせが入り口にあった。しかし、ダイジェスト版。

ロビーには黒衣ちゃんと各地のゆるキャラがいた。

「絵本太功記 十段目 尼ケ崎閑居の場」

十次郎役の七之助が出てきて、七之助久しぶり~と思ってしまったが、三千歳を観たばかりだったな。印象が薄かったか。

初菊は梅枝。いつもうまい。

七之助と梅枝だと、宝塚みたいで綺麗だ。(宝塚は観たことないが)

光秀妻操役の孝太郎はうまかった。「すし屋」のお里のときもそうだが、小柄な身体を大きく左右に動かすような動き。

光秀役の染五郎は普段と違って太い声だが、あまり感心しなかった。


この芝居の後、幕間。次の幕が開く前に舞台に梅玉が出てきて、今年は金券はなく、現金です等、模擬店の説明をした。

「殺陣田村」

これはとっても面白かった。4人それぞれと、3階さん達が絡む。
最初は勘太郎。きれのある、美しい動き。
次は海老蔵。映画のようだ。2人がからむ殺陣もあった。殺陣になると、勘太郎の方に目が行く。

扇雀は花道から長刀を持って登場した。橋之助は二刀流。

この後、一時間の幕間がある。みんな、そそくさと座席を立って、目指す模擬店に急いだ。プログラムを見ると2階の大食堂に模擬店が集中していたので、急ぎ足で階段を上った。食堂の入り口に人が集中し、客ばかりでなく虎之助もいるし、すぐ目の前に勘三郎の頭があるような大きな塊となってなだれこんだ。

奥の方は混んでいて近づけそうもなく、入り口近くで揚げタコヤキを買い、米吉の写真をとった後、食堂を離れた。画廊に行ったら梅丸と隼人がいたので写真をとらせてもらい、隼人と握手した。画廊を見ながらぐるりと歩いて、また食堂の方へ戻ったら、いつもドリンクを売っている売店の前にりき弥、純弥、千志郎がいたので写真をとらせてもらった。売店近くに吉弥と吉太朗もいたので、写真をとらせてもらった。後で見たら、ほとんどぼけぼけの写真の中で、この2人の写真は奇跡的によくとれていた。後ろに照明があったからだろう。

売店でコーヒーを買い、近くのソファでタコヤキを食べた。土産物店の前で、たぶん宗生がさかんに声を出して売り込みをやっていた。

先月の浅草に出ていた役者を中心に回っていたので、次に3階に行って、男女蔵・男寅親子、巳之助の写真をとらせてもらった。

入り口のところでは松緑が「俺、あの晩飲んでたよ~」とか陽気に知り合いとしゃべりながらお酒を売っていた。一番奥で焼きそば、たこ焼きを売っていた松也にカメラを向けている若い女性が多かった。松也は色男で、「女いっぱい泣かせてるんだろ、この、この~」と言ってやりたいような雰囲気を漂わせていた。

2階の大食堂に戻ったら人はずいぶん少なくなっていた。終わりの時間が近づいていて、新悟が大きな声で両手も上げて客引きをしていた。仁左衛門はもういなくて、孝太郎が海老蔵のところに手伝いに来ていた。お寿司は1500円だったのだが、500円に値下げになったときに買って、海老蔵と握手してもらった。海老蔵と隼人と握手できて切符代は完全に元がとれた。

壱太郎のところのフランクも百円に値下げになったので買って、写真を撮らせてもらった。

最後に1階に行ったら上手の売店の前には獅童がいて、お客さんといっしょに写真におさまっていた。入り口の方の売店では光がストラップを持って売り込みしていたので、黒衣ちゃんのを買った。レジの近くで竹松に黒衣ちゃんの絵のついたバッグを勧められて、それも買った。みんな、熱心に物を売っていて偉い。竹松は商品説明もしていたし。光に身長を聞いたら、180㎝くらいだろうと言っていた。3、4年前に見たとき、すでにおにいちゃんと同じくらいの背丈だった。

「質庫魂入替(しちやのくらこころのいれかえ)」

男雛・菊五郎、女雛・芝雀、金時・団十郎、雷神・左團次、八重垣姫・魁春、通人・勘三郎、お三輪・時蔵、禿・三津五郎、宿場女郎・福助、平将門・仁左衛門。これは質屋の蔵にある人形たち。

最初、雷神は獅童かと思ってしまったのだが、声を聞いたら左團次。大御所の勢ぞろいなので、獅童みたいなチンピラは出ているはずなかった。

一人ずつ踊ったとき、禿の三津五郎の踊りが長くてうまくて一番見ごたえがあった。

奇妙院という役の梅玉がすっぽんから出てくる。登場のしかたが仁木弾正のようにかっこいい。奇妙院が術をかけて、人形の魂を入れ替えてしまう。八重垣姫と通人が入れ替わって通人が手に兜を持って八重垣姫を踊ったり、お三輪が勇ましく金時を踊ったり、金時がしなっとお三輪を踊ったり。団十郎の金時がことのほか可愛かった。最後に福助と仁左衛門が入れ替わるのが面白かった。女の着物で男踊りをして足をぐっと開くのは、見てて本当に面白い。仁左衛門がお公家さんみたいな格好で袖几帳をしたり、女の声を出すので場内大うけだった。

役者がこんなに豪華でなくてかまわないから、普通の公演のときにも見たい演目だ。