セルリアンタワー能楽堂 平成25年 正月公演2013/01/01 19:16

2013年1月1日 正午開演

「祭り囃子」
傳次郎の太鼓をはじめ、傳左衛門社中。

長唄「鶴亀」
傳左衛門が出てきて、太鼓は傳次郎でなく傳九郎になった。


舞踊「七福神」
立方は月乃助。去年までは毎年春猿だったが、今年は猿之助襲名興行が大阪の松竹座であり、その初日がきょうで、春猿はそれに出ている。
月乃助は背が高い。ずいぶん痩せて、ちょっと梅枝に似たような顔になった。一人で踊るのを観たのは初めてだが、まあ普通。
一度橋掛かりから引き揚げた後、そそくさと出てきて、挨拶した。
膝の手術をして三年ほど歌舞伎の舞台から遠ざかっていたそうだ。しかし、去年の十月に完治したと医者に言われたので、これからは歌舞伎の舞台にも出る。きょうの踊りは八分くらいの長さだが、こんな風にまともに踊ったのは4、5年ぶり。明日からは新派の舞台に出るのでよろしく、ということだった。

後ろから出てきた傳左衛門は、傳次郎は、松竹座に出るため、今頃は新幹線の中だろうと言った。

例年通り、最後に一本締めをした。

新春浅草歌舞伎 2013 初日 第1部2013/01/02 21:32

2013年1月2日 浅草公会堂 午前11時開演 1階え列15番

今年は鏡開きはパスして、第1部から観た。

年始あいさつは愛之助。3つの初役を前に、鏡開きに出て挨拶し、年始挨拶もするのは凄い。
いつも通り、舞台前方真ん中で手をついて年始あいさつをした後、立ち上がって花道に行き、きょうの演目の説明。幡随長兵衛の長兵衛のことをアウトローと説明し、「アウトローというのは海老蔵さん自身のことではありません」と言って珍しく受けていた。その後、お客さん2人から質問。ライジングサンの質問と、今年はどんな年にしたいかという質問だった。舞台に飛び乗って戻って、最後の挨拶の前に、既に座っていたが、拍手の練習をした。

「寿曽我対面」

私の席が素晴らしかった。正面に立っている大名が背の高いイケメンだと思ったら功一で、國矢、松次郎改め松十郎が横に並んでいる。大名が脇に行って主要人物達が現れたら、正面に八幡三郎役の隼人が座っていて、その肩ごしに化粧坂少将の梅丸が見えた。

海老蔵の声は大人っぽく、この場で一番偉い人、みたいな貫禄があるので工藤に合ってると思う。

大磯の虎役は米吉。うまいが、常盤のときもこんな感じだったな、と思う。近江小藤太役の種之助もうまい。比べると隼人はまだ台詞が不安定。梅丸は顔は可愛いくて、台詞も一応言えている。高校一年なので、この程度で十分かと思う。

舞鶴役の新悟に一日の長がある。新悟はいつも落ち着いた感じで好きだ。

花道の奥から声がして、五郎十郎の兄弟が出てくる。先に歩いてくる十郎の壱太郎。そして、五郎役の松也。松也は顔が可愛いので、なりばかり大きくて中身は子供っぽいやんちゃな弟、という雰囲気。壱太郎はずっと小柄で年下だが、年上の落ち着きがあり、憂いを帯びた瞳で弟を思いやる「姉」の風情だった。
松也は、思い切り声を張り上げて台詞を言っているように聞こえるが、愛之助が我當に言われたという、「おじさんみたいにやっちゃダメだぞ(舞台は一ヶ月続くので、大声を張り上げていては喉を傷める )」という教えは知っているだろうか。最終日にも行くので確かめたい。

全体に綺麗な役者が多く、正月らしい華やかな演目だった。

「幡随長兵衛」

村山座舞台の場。芝居の最中に泥酔して花道に上がり、「さぁ殺せ」と騒ぐ男は旗本奴白柄組の水野の中間で、演じるのは片岡仁三郎。仁三郎はうまいと思う。この中間が連れ出された後、客席に向かって「お座りを」という舞台番は新十郎。止まっていた芝居が再開するが、白柄組の侍の坂田がやって来る。これが松之助。自分の先祖の話は面白いと言って、四つん這いになった舞台番を椅子にして腰かけて芝居を観はじめる。そこにやって来るのが町奴の長兵衛(海老蔵)。坂田は長兵衛に切りかかるが、逆に打ち据えられて逃げ出す。

海老蔵の長兵衛は、坂田をやっつけるところはスカッとしてかっこいい。しかし、眉と目の表情が、はじめ穏やかに話しているときから、人を小ばかにしているように見えて、侠客らしくない。

この様子を見ていたのが水野十郎左衛門(愛之助)。水野のいる桟敷席は、舞台袖の短い花道のようなところに作ってあった。簾を上げると水野の姿が現れる。私の席からよく見えた。本当に良い席。

長兵衛の子分三人が駆け付けるシーンでは壱太郎、種之助、米吉が、下手通路を走って、舞台に駆け上がった。長兵衛が、はやる3人をおさえて、幕切れ。3人が小柄なので、背の高い海老蔵と、親分と子分らしく見える。

二幕目の初めは、座敷の真中に隼人が座って家具を磨いていて、その隣りにいるのが功一。子分たちが白柄組が仕返しに来るだろうと話している。

花道から、長兵衛の女房お時(孝太郎)と、倅長松をおぶった出尻清兵衛(松也)が戻って来る。松也は、てんぱってる五郎より、のんびりした雰囲気の清兵衛の方が合っている。

孝太郎はこの一座の中では年長者でもあり、長兵衛の着替えを手伝うあたりも手慣れたもので、安定した演技だった。

ところどころ面白いところはあるし、台詞もよくわかるのに、この芝居の最中、眠くて仕方なかった。目に入る範囲の客席でも、眠っている人が何人かいた。食事時間の後ということもあるだろうが、私は食事したわけでもなく、どうしてあんなに眠かったのかわからない。昼夜を通じて、たぶん今月一番客席睡眠率の高い演目になるだろう。

新春浅草歌舞伎 2013 初日 第2部2013/01/03 15:11

2013年1月2日 浅草公会堂 午後3時開演 1階か列20番

「毛谷村」

はじめてイヤホンガイドを聴きながらこの芝居を観たので、今まで気がつかなかったこともわかった。

幕開き、六助(愛之助)と微塵弾正(亀鶴)が剣道の試合中。

愛之助の六助は、今まで観た六助の中で一番役にはまっている。いつもながら義太夫狂言はうまい。台詞が良いし、顔も動きも綺麗で、文楽のようだ。こういう役は身体に入ってるんだなと感じる。与三郎の時とは正反対。

お園の壱太郎は新妻役が本当によく似合う。華奢で可愛いが、色気がある。踊りの腕もあって、見せ場でしっかり客の目を引き付ける。永楽館で観た「引窓」のお早を思い出した。相手役が愛之助だし、お園の母お幸が吉弥なので、顔ぶれも同じ。

お園が抱えている子供が、お園が六助の話を聞いているうちにだんだん落ちていくシーンなど、面白くて客席も盛り上がっていた。

飯炊きをしようとしているお園を、六助が座敷の隅に立って眺めている姿も、包容力がありそうでなかなか良い。

杣斧右衛門の役が、ごちそうの海老蔵。情けない顔の化粧で、殺された母の敵をとってくれと言う。

斧右衛門の母の死体を見た六助は、微塵弾正が連れていた老女だと気づく。微塵弾正は、老母のために試合に勝たせてくれるように六助に頼み、六助は承知したのだった。
幕開きの剣道の試合の前の幕をやらないので、この辺の事情はわかり難い。

六助がいろんなおもちゃを使って子供をあやす場面はなかった。

「口上」

海老蔵の口上。きょうは睨みもあった。

「勧進帳」

最初に出てくる富樫の愛之助。期待したほど見栄えはしないが、台詞は期待通りうまい。

太刀持音若は部屋子になった市川福太郎。愛之助の本に載っていた千代丸の太刀持音若の写真のように可愛い。番卒は松之助、新十郎、仁三郎。

花道から弁慶一行が出てくる。最初に出てくる義経(孝太郎)。亀井六郎の松也は、この役が一番素の色男に近いかもしれない。片岡八郎の壱太郎は、これが四役目。口上以外全部出ている。顔の化粧が鬼の子供みたいで可愛い。駿河次郎は種之助。小柄だが男らしい。常陸坊海尊は市蔵。

海老蔵の弁慶は顔を見ていると、幸四郎の弁慶と同様に、いけすかない男に見える。勧進帳の読み上げのところもあれで良いのかなとは思うが、美声で華やか。台詞が不明瞭でも目と耳を引き付ける魅力がある。

富樫初役の愛之助は、冷静に自分のペースを守りながら、よく海老蔵の弁慶にくらいついていた。台詞は明瞭。声の高さには幅があり、ちょうど良かった。勧進帳を読んでいるときに弁慶にソロリソロリと近づき、気づいた弁慶がハッとする、スリリングな瞬間もはっきりしていて、客席が盛り上がった。弁慶と四天王、富樫と番卒たちが互いに睨み合ってジリジリと近づいていくところもよく対決感が出ていた。

最後、海老蔵の跳び六方はかっこ良くてスカッとした。

海老蔵が浅草に出るのは14年ぶり。口上のときに、その時の弁慶は緊張したと言っていた。私はあの時の勧進帳を観た。浅草歌舞伎の中ではあの舞台が一番印象に残っている。自分が終始心の中で「ガンバレ」と言いながら観ていたからだ。そういう気持ちで舞台を観ることがあることを、あの時はじめて知った。

きょうは顔の表情がよく見える席だったが、昼夜通して海老蔵は、幡随長兵衛のときに感じたような「人を小ばかにしたような」顔をしていた。眉と目の動かし方で、そう感じた。初めてこの人の舞台を観たのだとしたら、絶対に好感を持たないだろう。
そういう反感と、海老蔵のかっこ良さから来る爽快感が、きょうは同居していて複雑。

ブログタイトルを変更しました2013/01/30 00:33

本日、60歳になりました。会社は定年退職しました。

今まで「50代負け犬OLの日記」というタイトルでしたが、50代でもOLでもなくなったので、タイトルを変更します。

岡崎京子の漫画「東京ガールズブラボー」のタイトルが好きなので、これを真似して「東京ローバズブラボー」とします。
ハンドルネームも「東京ローバ」に変更します。

今後ともよろしくお願いいたします。

                          東京ローバ

三十周年記念 上方花舞台2013/01/30 22:59

2013年1月30日 国立文楽劇場 午後2時開演 1階13列26番

きょうは私の60歳の誕生日です。 この日に玉三郎が大阪で踊ることを知り、大喜びでチケットを確保しました。

「口上」
去年正月のルテアトル銀座での口上のときのような格好で、玉三郎が口上を行った。「上方花舞台」は大阪万博のときに初めて公演を行ったものだそうだ。 「関東の生まれの自分がどうしてと思われるかもしれないが」、大阪の大和屋のおかみさんと長く昵懇の間柄で、その人に呼ばれた。今は西も東もなく、伝統芸能を守っていくべきとき。
きょうは、玉三郎の口上には珍しくいろいろな人物や組織の名前が出てきた。後援の「関西・大阪21世紀協会」の名をちょっと間違えて謝っていた。

5分休憩の後

地唄「松竹梅」
山村流の舞踊家さん達の踊り。初めに2人で踊った。着ているものは同じ。着物の知識皆無の私が勝手に感想を言うと、下半身の模様がくどい。黒地の着物で、上半身のすっきりした感じと、2本の横じまの扇子と、下半身の模様が調和してない。
次に、もっとたくさん出てきて踊り始めた。この人たちは扇子が銀色の無地で、下半身の模様と調和し、全体にすっきりした印象だった。

山村若の振付。

名前はわからないが、最後に並んだとき下手から2人目の人が特にうまかった。

休憩をはさんで「三段返花絵草紙」

地唄「雪」
踊りというより、動く美人画。美しい玉三郎の周りで横に動いたりつぼまったりする傘の動きもまた完璧に美しい。すべての要素が一つの美しい絵を作っていて、どの瞬間を切り取っても一枚の美しい絵になる。
それを実現しているのは玉三郎の肉体であり、力だ。

長唄「業平」 大空祐飛

宝塚っぽい人が踊る、浜辺で小鼓を打って遊んでいる光源氏、みたいな感じだったが、業平か。

義太夫「海士(あま)」

吉太朗が貴公子の格好で花道から現われる。藤原房前だそうだ。

房前は大臣の子だが、母を知らずに育った。母が死んだという讃岐の国房前を訪ねると海士(玉三郎)が現われ、房前の母が死んだいきさつを語り、最後に「われこそ御身の母なるぞ」と告げて消える。

白い着物の腰のところに群青色の着物を巻きつけた海士の姿が玉三郎にぴったりで美しい。山岸涼子が描いた卑弥呼のような雰囲気。あのスラリとした長身、衣装の微妙な色、扇は、ぜひ山岸涼子に描いてもらいたい。

玉三郎は舞台のセリから上がってきて、スッポンから下がっていなくなった。舞台には吉太朗が残り、その泣く姿で幕切れ。

吉太朗は変にこまっしゃくれたところもなく、オーソドックスに踊りがうまい。共演するくらい玉三郎が信用してるのは凄いと思う。

15分休憩の後、最後に

「おあそびやす」

榛名由梨と瀬戸内美八が江戸時代の商人の格好で花道から登場し、お座敷遊びをする趣向。

山村流の舞踊家さん達の踊りと、OSKの人たちの踊り。榛名由梨と瀬戸内美八も踊った。

「松竹梅」のときにうまいと思った舞踊家さんは、水色の着物だった。この人が、顔の表情も含めて一番プロフェッショナルな印象を受けた。真ん中で踊った、薄紫の着物の人もうまかった。

フィナーレは、男の姿になった玉三郎が舞台の後ろから現われて真ん中に立ち、皆で扇を広げてもって終わりになった。