日生劇場 二月大歌舞伎2013/02/21 20:35

2013年2月20日 日生劇場 午前11時開演 1階G列10番

11~14番の座席を取り払って花道ができていた。だから私の席は花道のすぐ外。

「口上」 幸四郎

幕が開くと、幸四郎が浅黄幕の前で頭を下げている。
怪我で休んでいた染五郎が5ヶ月ぶりに復帰するにあたっての挨拶だった。

「吉野山」

浅黄幕が落ち、吉野山の風景になった。

花道を歩いて出てくる、静御前役の福助。この役は、前に勘太郎と踊ったのを観た。鼓を打つとき、座席の位置のせいか、鼓と違う方向から音が聞こえるのが気になった。

ドロドロが聞こえて、忠信役の染五郎がすっぽんから上がって来ると、私の席からは全身がよく見えた。元気そうで何より。

染五郎は、舞台正面で「思いぞいずる壇ノ浦~」に始まる踊りのときの方が見応えがあった。役者の踊りなんだと思う。

逸見藤太は亀鶴。亀鶴は藤太をやる役者としては踊りが達者。最後は忠信が花道から投げた笠をナイスキャッチした。

染五郎の引っ込みは、キツネになりそうなのを何回か抑えて人間として歩いて行く型。


「新皿屋舗月雨暈」

弁天堂。旗本磯部主計之介の妾・お蔦の猫を探しに来る女小姓・梅次の役が児太郎。 花道から出る児太郎は後ろから見るとスラッとした綺麗な女の人だが、前から見ると若くてブスいおかまのようで可愛い。

お蔦に横恋慕していて、家宝の茶碗を盗み出し、誤ってそれを割ってしまう典蔵(桂三)。典蔵は、後から猫を探しに来たお蔦(福助)の帯に手をかけて手籠めにしようとするが、家老の弟の紋三郎(友右衛門)が現れて、未遂に終わる。着物のときのレイプは、もっと簡単そうなもんなのに、とちょっと考えた。
お蔦部屋では、召使いのおなぎ(高麗蔵)が帰りが遅いお蔦を案じている。梅次が、お蔦は紋三郎と不義をしたとの疑いをかけられ手討ちになると告げる。 戻って来たお蔦は、主計之介に呼ばれる。
4年前の国立の鑑賞教室では紋三郎の役は亀寿だった。若い亀寿の方が、お蔦と不義を疑われる役として説得力があった。


お蔦殺し。染五郎は、旗本の若様主計之介の役はニンに合っている。
お蔦を手討ちにする前には割れた茶碗も出てくるし、主計之介の前にお蔦が横たわる形が、番町皿屋敷のお菊と青山播磨のようだ。お蔦は殺された後、ポーンと井戸に落ちる。

魚屋宗五郎。幸四郎の宗五郎は、菊五郎のようにいかにも江戸っ子というのではないが、別の良さがある。芝居がうまい人だと思う。三吉(亀鶴)に文句を言うところなど、一々面白い。

座敷で話している中で出るお蔦の支度金は200両。一両10万円とすると、2000万円。妾一人抱えるために2000万円ポンと出せるほど旗本は金持ちだったんだろうか。

亀鶴は達者だが出すぎない感じで良かった。

酔って暴れた宗五郎が磯部の屋敷へ行くのを止めるところでは、おはま役の福助が引きずられていた。福助は立ち回りのとき、嬉しそうにやっている。

磯部の屋敷の家老(左團次)の前で宗五郎が妹を思い出して語るシーンは、幸四郎も悪くはないのだが、勘三郎がしみじみしていて良かったなあと思い出した。幸四郎は、怒りの表情になってからの方が感情がよく伝わる。