2014年新春浅草歌舞伎 初日 第1部2014/01/02 21:44

2014年1月2日 浅草公会堂 午前11時開演 1階あ列25番

お年玉年始ご挨拶は、猿之助になった亀治郎。二年前、浅草に戻って来るという亀治郎を見送ったが、本当に戻って来たので感動。浅草に育てられた、という。自分と同じように若い人たちも育てていってほしい、と。さわやかな顔をしていた。

「義賢最期」

愛之助の義賢は8年前に松竹座で観て以来、四度目。貫禄がついたと思う。後ろ姿はまだまだ軽いが。
義賢の娘の待宵姫は梅丸。声自体はまだ苦しいが、台詞まわしは正しい路線にのっている。
葵御前は吉弥。小万は壱太郎。小万が色っぽい必要はないだろうが、壱太郎だと色っぽい。所作が綺麗。義賢に顔でおどされてつつつーと後ずさりして倒れるところなど、うまい。数年前は可愛いだけだったのに、今や安定感と、色っぽさを感じることが多いので感心する。
折平は亀鶴。演舞場のときの獅童より歌舞伎はもちろんうまいが、カラフルな衣装とか待宵姫と恋仲なのを考えると獅童のように華やかさのある人が演じる方が合っているのかもしれない。
長田太郎末宗は前回と同じく當十郎。私の中では「ドクロで殴られてた人」として定着している。
九郎助は嵐橘三郎で、安定。

愛之助はトークショーで、ケレン以外のところが面白くなってきた、と言っていた。それでも見ている方は戸板倒し、仏倒れは緊張する。きょうは舞台に近い席だったので、戸板を支えている人たちが、まっすぐ立つように、戸板の舞台に接している部分や上にのっている戸板に接している部分を叩いて位置を変えているのが見えた。最後に戸板を横から押す人と、戸板に上に立った愛之助の掛け合う声がして、戸板は無事に倒れ、愛之助はうまく着地。やったぜ、のような表情に見えた。
矢がたくさん飛んできて、それをよける義賢。このあたりから急に苦しげに息を切らす。その前は、病鉢巻はしていても元気。
義賢が花道で立ち回りをしている間に、黒衣さん達が矢を片づけ、仏倒れの準備。舞台に戻ってからもいろいろあるが、無事に仏倒れが終わった。
最後に義賢と立ち回りをする進野次郎は國矢だった。

愛之助の義賢は良いから、この後に「実盛物語」が続く公演を観たい。

「上州土産百両首」

亀治郎の会で福士がやった牙次郎役をやる巳之助はどうかというのが最大の関心事だったが、結論としてはすごく良かった。今まで見た巳之助の役の中で一番のハマリ役だと思う。いつも声が不安定なのだが、バカっぽい声を出しているために声が安定している。痩せているのが、貧相な雰囲気を助長していて良い。
十年後の再会を約して別れるときの「アニキィ」と呼ぶ声が可愛い。
客を笑わせるべきところはちゃんと笑わせていて、この人なら助右衛門の役ができるかもしれないと思った。

冒頭の、牙次郎が出てくるシーンが亀治郎の会のときと違う。それ以外にも脚本を書き換えたかもしれないが、とにかく冒頭は記憶と異なる。

みぐるみ三次役の亀鶴は亀治郎の会のときと同じだが、折平役よりこっちの方が良い。

猿之助と亀鶴と男女蔵が並ぶと、何年か前の浅草歌舞伎のようで、ちょっと懐かしい。男女蔵はスリの世界にどっぷりとつかっていて足は洗えないが、人情味のあるアニキ分の役で、悪くなかった。

序幕の途中で暗転したとき、係りの人が舞台から横の通路に下りる階段をつけて行ったので、あ、下りて来て通路を歩くのだ、と思った。しかし猿之助と巳之助は、降りてくるのではなくて、花道の後ろから客席の後ろを通り、私の横の通路を通って、その階段を上がって舞台に戻った。

猿之助は、正太郎の役がそんなに合っているとは思わないが、十分うまいし、こういう役が好きなのは感じる。

2014年新春浅草歌舞伎 初日 第2部2014/01/03 00:48

2014年1月2日 浅草公会堂 午後3時45分開演 1階あ列15番

三時半開演予定だったが、第1部が予定より20分も押したので開演が遅れた。

年始あいさつは愛之助。開演が遅れたので、あまり長くなるなと言われたそうだ。それはともかく、自分の名を言わなかったような気がする。第1部のとき、いつ新しい名を名乗るかと待っていて、わりと遅めだったので、愛之助のときも気にしていたが、結局言わなかったような気がする。立ち上がって花道へ行って、「去年、今年限りかもと言ったが今年も来てしまいました」と挨拶。今日が歌舞伎初めての人の挙手を求め、「ちらほらいらっしゃいますね」。質問を受け付け、上手の席へ行くために舞台から足袋のまま降りて行った。質問者は文京区から来た人。「近いですね」というので、へーわかるんだなと思った。「紅白お疲れ様でした。元旦は嵯峨のおうちに行けたんですか」という質問に「元旦は始発の新幹線で関西へ行き、その日に東京へ戻って、今です」という答え。
プレゼントの花を持って舞台に戻り、客席と拍手の練習の後、最後の挨拶。

「博奕十王」

これをやった時の亀治郎の会に行かなかったので、舞踊演目だとは知らなかった。
松羽目風の演目。背景に松の絵はあるが、普通の緑のものではない。

博奕打ちが閻魔大王に博打を教え、賭けに勝ってとった物を担いで退場する。ひねりに欠ける話だが、博奕打ち役の亀治郎の踊りは楽しめる。

「新口村」

忠兵衛の愛之助と梅川の壱太郎が顔を見せたとき、綺麗だった。新口村は主人公が孫右衛門なので、愛之助に二役を見せてほしかった。

「屋敷娘」「石橋」

屋敷娘は、壱太郎、米吉、梅丸三人の舞踊。
米吉と梅丸が透明の傘を持って花道から出てくる。花道でしばらく踊った後、舞台へ。舞台上手から、壱太郎が出て来て加わる。
壱太郎の踊りは女っぽいのよりも中性的なもの、人間離れしたものの方が好きだが、女らしいものも綺麗だ。
梅丸の後見が國矢だった。
三人いっしょの引き抜きもあって、眼福。
憂いある表情の壱太郎、ポーカーフェース系の米吉、にこやか系の梅丸、と個性が違うのが面白い。

大薩摩の後に浅黄幕が落ちたら、舞台上には赤獅子二頭。私の目の前には隼人がいた。上手に種之助。
花道を見ると、歌昇がきょうは白獅子で、すごい迫力でジャンプした。
舞台に来た歌昇の顔を見たら、伯父さんの歌六に似てると思った。化粧のせいか。
歌昇は終始すごい気力迫力だった。

歌舞伎座こけら落とし 1月大歌舞伎2014/01/29 15:52

2014年1月23日 午後4時半開演 1階17列39番

きょうの席は通路のすぐ後ろの一番上手で、舞台の見通しが良いし、休憩時間に食事しながら右を見ると廊下の液晶スクリーンに映る「五大陸」のCMが見えて、気に入った。

「仮名手本忠臣蔵 九段目」

前回観たときにかなりの部分を眠ってしまったのだが後で筋書を読んだら面白かったのですごく後悔した。ぜひもう一度観たいと思っていて、きょうはリベンジ。

戸無瀬役の藤十郎の抗議するような表情と、お石役の魁春の取りつく島がないような表情が良い。
小浪役の扇雀は、戸無瀬かお石の方がニンだとは思うが、綺麗で良かった。

「乗合船恵方萬歳」

一人ずつ順番に踊る、私の好きなタイプの踊りだ。
白酒売りの孝太郎は踊りはうまい。
芸者の児太郎はスラリとして綺麗で踊りもうまい。しかし、なんとなくおかまっぽい感じがするのは女形としてまだ未熟なのかもしれない。
通人の翫雀の踊りは、勘三郎だったらうまかったろうと思うような、すごく難しそうな踊りだった。よくがんばっていると思う。
萬歳は、前の演目で力弥だった梅玉。踊りはいつも通り。
才造は又五郎。うまいのだが、期待しすぎたせいかあまり感動がなかった。

「東慶寺花だより」

戯作者役の染五郎が花道に出て来て早口でまくし立てる。始まりはそういう印象だった。

東慶寺は駆け込み寺。主人(弥十郎)のためを思って駆け込んでくるおせん(孝太郎)、好色な女房(秀太郎)から逃げて駆け込んできた惣右衛門(翫雀)、元いいなずけ同士のおぎん(笑也)と朝吉(橋吾)。

惣右衛門夫婦がコミカルで、ここでも翫雀は難しい役をやっている。
あれは松嶋屋の紋所、ひでたろさ~ん、という唄にのって秀太郎が出てくるのが上方風。

エピソードがいくつかあるが、芯に通っているストーリーが何なのか印象が薄く、各エピソードが独立して面白いわけでもないので、結果的に全体として面白くなかった。

染五郎の膝の上にパタンと倒れる娘役の虎之介が可愛い。