2014年新春浅草歌舞伎 第2部2014/02/14 05:33

2014年1月26日 浅草公会堂 午後3時半開演 1階こ列17番

今朝は起きられなくて昼の部は観なかったのだが、新年の挨拶が愛之助だったので、亀治郎の千秋楽の挨拶も聞きたかったと思った。
愛之助は41歳で、今まで何度か今年で卒業といいながら浅草に出続けていたが、今年は「ほぼ」これで卒業ということになるようだ。浅草では8年前の権太初役からいくつも大きな初役をやり、去年は富樫もやったし、いろいろ楽しませてもらった。愛之助も知名度が上がり、大きく成長した。一つの時代が終わって、新しい時代に踏み出すのだろう。

「博奕十王」
猿之助の一人の踊りが長くて楽しめた。菊之丞と同じで、猿之助も今が充実した良い時代なのだろう。
閻魔大王役の男女蔵が博奕に負けて身ぐるみはがされたとき、黒タイツに「オメ」と書いた褌みたいな恰好になっていたが、初日はあれはなかった。後で考えると、あれだけが千秋楽のサービスだったような気がする。

サロメ2014/02/20 05:07

2014年2月19日 東京芸術劇場シアターウエスト 午後3時開演 C列18番

坂東薪車が秋元道行という名で舞台俳優になるということなので、どんなものかと観に行った。
10分前に行ったら舞台の上には階段がついた給水塔みたいなものがあり、その周りにマシンガンをもったゲリラ兵のようなお兄さんが二人いた。なので、サロメとヨカナーンの写真からはわからなかったが、現代風な話にしているのだろうと予想した。
私の席はC列だが前の列は端の方の席だけになっていて、実質最前列だった。両隣りの席が男性だったし、歌舞伎とは当然ながら客層が違う。

開幕の前に若い男たちがたくさん舞台上に現れた。サロメの西条美咲は下手の階段から舞台に上がって来た。音が鳴りだし(役者の一人のかげになって私の席からはよくみえなかったが)給水塔の前面に「サロメ」というタイトルが映し出されたのが開幕の合図だろう。初めはしばらく暗かったので閉所恐怖症の私には息がつまる感じがした。

給水塔と思ったのは登場人物の言葉によれば「貯水槽」で、この中が牢屋のようになっているらしい。上からブランコのような鎖が2本下がっていて、人が上がり下がりできるようになっている。ヨカナーンの役の秋元道行は、始まってしばらくはナレーションのような声が聞こえるだけだったが、やがて貯水槽から出て来て、裸足で階段を降りて来た。目はあらぬところを見ている。いでたちは悪く言えばホームレス、良く言えばリア王のようだ。見た目も台詞も、とにかく舞台にいる他の人たちとはまるっきり「違うもの」が出て来たという雰囲気がしたのは良かったと思う。

この役に合うかどうかは別の話として、秋元道行は舞台映えする人だ。はっきりした顔立ちと長身で得をしている。

ヨカナーンの役に合うかというと、サロメの台詞から想像するヨカナーンとは違う気がした。20代の韓流スターでも使った方がイメージに合ったのではないか。

ヨカナーンの出番は短い。最後に「首」が貯水槽から上がって来るが、あれは作り物だ。生首が出るのはちょっと歌舞伎的。

西条美咲は映画の「赦免花」に出ていた。その舞台挨拶で見たことがあるので、きょうで2度目。小柄な女の子だ。サロメののりは、不良少女風と言うべきか。途中で衣装から素肌が透けて見える格好になり、一瞬だが全部脱ぐので、西条美咲のファンなら毎日通う価値があるだろう。

モロー展を見に行ったとき、サロメの絵があったので「サロメって何なの」と、いっしょに行った友人に訊いたら「ストリッパー」と答えた理由がきょうわかった。

大和田伸也と島田洋子が、サロメの義父と母の役。ヨーロッパのパーティに出るような衣装だ。その取り巻きの人たちといっしょに、客席から舞台に上がって来る。みんなベテランのうまい人たちで、もったいない気がした。
大和田伸也と島田洋子は長く出ているが、この人たちの場面で眠くなった。それは、役者が悪いのでも脚本が悪いのでもなく、単純に、サロメについては、サロメとヨカナーンの話しか面白くないからだと思う。
サロメとヨカナーンの首を描いたビアズレーの絵は魅力があるし、二人をテーマにした舞踊演目でもあったら面白いだろうが、サロメと親の関係なんかどうでもいい。

他に、舞台上で知ってる顔は山崎裕太。串間保も、どこかで見た顔だと思った。名前は知らなかったが尾関陸と瀧沢犬太郎は可愛かった。サロメと母以外は全員男性。

終演後のロビーでは各役者の写真を売っていた。1枚300円。
プログラムは2000円。稽古風景の写真がついている。
何人かの役者がロビーでファンと話していた。

片岡愛之助トークショー2014/02/23 23:28

2014年2月23日 ホテル日航新潟 朱鷺の間 午後3時半~4時半

新潟駅からタクシーで会場のホテルに行ったが、雪の欠片も見えなかった。新幹線からは越後湯沢以降、雪景色が続いていたので、雪国を歩けるものとワクワクしていたのに。愛之助もトークの中で同じことを言っていた。

トークショーのときの食事はおまけだから内容に期待していないのだが、ここのはなかなか豪華だった。洋食と中華がチャンポンに出てくるコースで、特に洋食が気に入った。前菜の中の「海の幸のジュレ」、フォアグラのソテー、デザートのチョコレートとオレンジのテリーヌが特においしかった。中華の方も久しぶりに蓮の葉包みのおこわが食べられて嬉しかった。
私のチケットには食事の場所として「鳳凰」と指定してあったが、場所をきいたら30階だったので、下に変更してもらった。3階の「桃李」というレストランで食べた。食事の途中に窓の外を見たら雪がチラホラ舞っていた。さすが新潟。

トークショーの会場は「朱鷺の間」。椅子が並んでいて、チケットの番号を見つけて座る。私は最前列で、壇上の花が正面に見えた。左右の大きなスクリーンに愛之助の顔が映るようになっていた。

最初に司会の中井美穂が出て来た。
その後、愛之助が遠くの方の通路を通って壇上へ。きょうは三つ揃いだ。中井が花の近くの下手に、愛之助が上手に腰かけた。

(トークの内容)

・新潟について。愛之助は巡業で来たことがあるらしい。中井は、大阪からみると東北は遠くないか、と訊く。(新潟は東北ではないけれども)
なぜかというと、中井はお母さんが燕でお父さんが福島の出身。親戚中、東の人間なのに、旦那が初めて兵庫。

・2月はシスティーナで「フィガロの結婚」というのを歌舞伎でやった。
歌も歌って、気持ち良かった。
宝塚、新喜劇の人たちも出演して、それぞれいかにもそれらしい演技をする。上杉祥三は歌舞伎が好きで、初めは全然違う演技だったが、歌舞伎役者の演技をじっと観察していて、だんだん歌舞伎のようになった。

そういうのも歌舞伎でやるんですか、という中井の質問を受けて、「GOEMON」の話も。要所をよく押さえてよどみなく話すので感心した。各所で使いまわしてるのかもしれないが、一度はきちんと頭の中で組み立てておかないとあんな風にスラスラと口から出てこないはず。
GOEMONは赤毛だから眉も赤くしないとおかしいので化粧を変言い、阿国にフラメンコを教えるのでこんな風にステップを踏んで・・・と言って足を動かしたのが見えた。

・江戸と上方の違い
簡単には言えないが、江戸の男はすっきりしてかっこいい。上方は、つっつくところぶので「つっころばし」と呼ばれるようなのとか、情けない。たとえば「すしや」の権太は関西では「ごんたくれ」という言葉の元になったようなやんちゃな男。それを江戸の役者が見て江戸バージョンを作った。そうすると、権太がかっこいい男になる。上方版のは自分と仁左衛門、我當くらいしかやらないが、江戸の役者が見るとイメージが違う権太に驚く。

・新しい歌舞伎座が建って銀座の歌舞伎座が中心と思われているかもしれないが、歌舞伎は元々関西発祥。
関西では孝夫が出ている芝居でも二階には人が数えるほどしか入っていない時代もあった。13代目仁左衛門は私財を投げ打っても関西で歌舞伎興行をしようとした人。その後、澤村藤十郎や当時の勘九郎などの努力もあって、関西での歌舞伎人気が回復した。

・愛之助としては切符をもっと安くしてほしい。自分が座頭のときは会社に言ってなるべく安くしてもらう。ここで会社の悪口を言っても始まらないが殿様商売で、何もしなくても客が来ると思っている。巡業も各地一日ずつではその日は都合で来られない人もいるので、もっと長くやりたい。

・歌舞伎観たことない人、と訊いた。テレビは観たうちに入らない、と言って歌舞伎の舞台を観たことがない人に手を上げてもらったら、けっこうな数いたようだ。私の隣りにすわっていたお嬢さんたち2人も手を上げていた。最前列に座るような人の中に2人も、まだ歌舞伎観たことがない人がいるんだったら、新規顧客獲得に成功しているのではないだろうか。

・中井は、こども歌舞伎スクール「寺子屋」というのが始まるにあたり、部屋子で歌舞伎の世界に入った愛之助に、「何が必要ですか」と尋ねた。愛之助の答えは「やる気じゃないですかね」
愛之助には、今までやめたいと思うような危機はなかった、という。
日舞は歌舞伎役者にとって重要で、日舞の素養がなければ舞台を歩くこともできない。子供の時、師匠の花柳寿々が良かったので、面白いと思って通っていた。

・この後の仕事について
4、5月は三谷幸喜の「酒と涙とジキルとハイド」。愛之助の役はジキル。本は全然できてなくて、古い映画を見ただけ。
わかっているのは、愛之助と藤井隆が二人で一役、優香が一人二役ということ。
(古い映画はたぶん、スペンサー・トレーシー主演のものだろう。前にテレビで見たが、あれはスペンサー・トレーシーが二役で、イングリッド・バーグマンが娼婦役で出ていた)
三谷幸喜は筆が遅いので、愛之助としては「もう当日までに書けばいいよ、三谷さん」と覚悟している。

テレビの2時間サスベンスで主役をやる。

楳図かずお監督の映画「マザー」で楳図の役をやる。
グワシの指の形をしてみせた。
有名な吉祥寺の家以外に高尾にも家があって、そこでも打ち合わせをした。

・半沢について
下手の方から「黒崎さ~ん」と声がかかった。(このトークショーでは「松嶋屋!」がなかった)
黒崎役はたまたま六月の歌舞伎座で三部中の一部しか出ていなかったのと、七月は昼の部にしか出ていなかったのでできた仕事。ディレクターの福澤克雄から話があった。この人は福沢諭吉のやしゃごで、ラグビーをやっていて、大きい。ジャイさんと呼ばれているが、それはドラエモンのジャイアンから来ている。
オネエ役なので二十歳くらいだったらやらなかったかもしれない。他の役者たちにも「よく引き受けたね」と言われた。
黒崎はまるで悪役のようだが、悪いことはちっともやっていない。半沢の方が書類を隠したり、よっぽど悪いことをしている。上野の美術館の大階段のところで撮影した。五大陸の撮影のときも同じ階段を使った。

最近は有名になりサインを頼まれることも多いが、電車の中でゲームやってるときにサインを頼まれたりすると気まずい。

・最後に、お客さんから質問受け付け。
質問1.「一か月ひまだったら何がしたいか」
愛之助「日本各地を車で旅行したい」
中井「一人で行くんですか」
愛之助「そうですねえ、愛一郎でも連れて行きましょうか」

質問2「どんなゲームが好きですか」
愛之助「ポコパン」と言って、ゲームの内容を簡単に説明。自分の最高点が〇〇万点で、友達がその二倍くらいでショックを受けたようなことを言っていた。

トークの後、中井と愛之助にホテルの関係者が花束を贈呈し、記念写真を撮っていた。