舞と鼓の調べ2014/03/02 15:16

2014年3月2日 学習院創立百周年記念会館正堂 午前11時開演 2階席に08

学習院は過去に何回か行ったことがあるが、目白駅からこんなに近かったのか。駅の近くの信号を渡ったらいきなり門があったのでびっくりした。創立百周年記念会館は、そこから少し歩いた正門に近いところにある。

きょうの席は二階下手の、舞台を斜めに見る列の通路際で、前の席がないので、遮るものもなく舞台がよく見えた。
常陸宮妃がお出ましだった。

学習院桜鞍会チャリティー公演なので、最初に会長の斎藤公男さんが挨拶。桜鞍会は学習院馬術部の卒業生の組織なのだ。愛之助のことを「今人気沸騰中の歌舞伎役者」と紹介してくれた。

次に出てきたのは三響会の三兄弟。三人とも学習院の卒業生で、傳左衛門は子どもたちが幼稚園に行っているそうだ。
愛之助が出て来て「僕だけ学習院に何の関係もなくて、自分がこんなところにきて良いのかと。宮様がここで演奏してるのをテレビで見たことがあるなあ~と」と関西アクセントで言う。白い着物に紫の袴。
次に出て来た鷹之資は着物も袴も青系統。傳次郎にインタビューされ「きょうは学習院の生徒として一生懸命踊ります」(何が難しかった?)「毛槍を持って踊るのが難しかった」

一、一調「放下僧」 亀井広忠、観世喜正

久しぶりにきく広忠の大鼓。このホールは結構響く。

二、能 歌舞伎 「船弁慶」 愛之助 梅若紀彰

広忠が言っていた珍しいもの、というのはこれだろう。
下手に地謡の観世喜正と小島英明、中央に三兄弟と笛方、そして上手には長唄と三味線が三人ずつ。
シテの梅若紀彰が静のパートを舞っている間は長唄三味線と太鼓はただ控えているだけ。静がひっこみ、観世喜正が「あら不思議や~」としばらくうたった後、三味線と長唄に変わり、それがひとしきり続く。
愛之助が踊る知盛は歌舞伎だが、「桓武天皇九代の後胤~」とうたうのは地謡。愛之助は挨拶のときと同じ格好で長刀を手にして出て来た。いつも思うが素踊りに向いている。役者顔だからだろう。いつものように、眉を上下させて表情を作っていた。
花道でやる最後のクルクルはどうやるのかと思ったら、舞台を上手から下手へ、下手から上手へと何回か行き来していた。演奏が太鼓と笛だけになり、いよいよ知盛が長刀を肩に担ぐとクライマックスだ。この態勢でゆっくり回ると、顔の表情に手負いの色気が漂う。いつもは花道だが、舞台上でじっくり眺めるのも良いものだ。最後に下手で高速クルクル。盛り上がって盛大な拍手を浴びた。

この後20分の休憩。

三、「獅子」 広忠、傳左衛門、傳次郎

前の演目に続き、これもテンション高い。鼓と笛と咆哮、カタルシスがある。

四、舞踊 「関三奴」 鷹之資

幕が開く前に「待ってましたあ!」と大きな掛け声。幕が開いてからは「天王寺屋!」と何回もかかった。

初めて観る踊りだ。難しかったという毛槍は見事に扱えていた。毛槍を持たないときの踊りが上級の難しいものに見えて、中学2年にとってはかなり大人っぽくて大変だったろうと思った。

スーパー歌舞伎II 「空を刻む者」若き仏師の物語2014/03/07 01:49

2014年3月6日 新橋演舞場 午後4時半開演 1階4列29番

はじめに主な出演者の口上。
猿之助の上手に福士誠治、上手に佐々木蔵之介。
口上の後、みんな後ろにすーっと下がるが、下手端の浅野和之の席だけそのまま置き去りになり、そこから立ち上がって歩き出し、大道具に邪魔にされるところから話が始まる。

仏師見習いの伊吹役の福士はドモリで、牙次郎を思い出すキャラ。素顔の二枚目は役の後ろに隠れて出てこない。浅野が演じる祈祷師といっしょにいることが多い。浅野は終始、プログラムの写真と同じ注連縄をつけた髪型で、派手な色の衣装。

仏師の十和(とわ)役の猿之助と福士が仏像の印の話をして、自分だったらこんな風にしちゃうよ、とピースサインしたりしてるときは面白かった。しかし、仏師のわりには舞台上に仏像は一体も見えない。民を救うための仏像を作りたいと悩んでいるのだが、民がどのように悲惨な状況なのか背景がわからないので、一人で騒いでいるだけのような印象のまま、一幕目が終わる。

領主の息子一馬の役の佐々木蔵之介は一幕目から出ているが、二幕目の長邦(門之助)の屋敷で貴族にからかわれる場面が面白かった。この場は女形も良いが、普段女形をやっている役者が貴族の役なのがはまっている。

佐々木蔵之介は役よりも自分が前に出るスター的な感じ。そういう役なのかもしれないが、福士と対照的だ。福士はすごく良かったので途中で死んでしまって残念だった。

長邦の妻時子(春猿)は一馬を誘惑する。一人になった一馬が「まじっすか」と言って笑わせる。春猿は綺麗だが少し太った。
女盗賊双葉役の笑也は相変わらず綺麗だ。

猿之助と笑也が仏師(右近)の工房に忍び込むときの二人の衣装がかっこいい。佐々木蔵之介は何度も衣装替えするが、写真の中で着ている朱色の長いガウンが一番似合う。ポスターを見て海老蔵みたいな顔の人がいると思ったが、それが佐々木蔵之介だった。

二幕目の幕切れは一馬が双葉を殺そうとするところだったが、三幕目では殺されていない。「殺しなさい」と強く言う春猿が面白い。

仏師として再出発した十和の彫る仏像には一つとして同じものがないので、仏像を見るために村々を渡り歩く人がいるほどの人気が出た、ということが台詞で説明される。

三幕目では十和が「仏像とはいったいなんだー」と叫んだりするので、早く宙乗りして終わってくれと思うようなときもあったが、仏像は空(くう)でなければならない、と空を示すために、厨子の扉をあけた途端に紙吹雪が客席に向かって飛んでくるのは意外性があった。宙乗りは猿之助と佐々木蔵之介。2人別々にぶら下がった宙乗りを見るのは初めてかもしれない。綺麗だった。一度後ろの方まで行ってからバックして、今度は2人手をつないで3階へ。

最後の「朱雀門」の場では立ち回りがあった。一番すごかったのは、弘太郎と龍美麗の戸板倒し。門の上に門之助がいて掛け声をかけ、弘太郎は下手側に、龍美麗は上手側に倒れて、無事着地。

戸板で持ち上げられた猿之助がそのまま門の上に移って立ち回りをする姿にふと先代の猿之助を思い出した。

幕切れで暗くなり、全員順番に出てくるカーテンコールがあった。

歌舞伎座鳳凰祭三月 昼の部 「封印切」「二人藤娘」2014/03/28 11:31

2014年3月10日 1階10列30番

昼の部を途中から観劇。

「封印切」

藤十郎の忠兵衛はここ数年でこれで4回は観ている。以前はもっぱら松嶋屋型のを観ていたが、最近は正面を向いた階段も見慣れたものになった。
扇雀の梅川は綺麗だが、大人っぽく落ち着いているので、笑三郎のときに感じたと同じように、旦那から八右衛門の身請けの話をきいて忠兵衛に身請けされたいと懇願するような分別なしの若い女には見えない。
翫雀の八右衛門がつまらなかった。この人は、見た目はふんわりしているけれども醸し出す雰囲気は硬い。ひょっとすると扇雀がやった方が面白いかもしれない。


「二人藤娘」

本日、お目当ての演目。
七之助は白い藤の花を持って先に舞台にいる。玉三郎は藤色の藤を持って花道から登場。
七之助は藤娘そのもの、玉三郎はやや年のいった藤姐さんだと思うのだが、見た目はまだ玉三郎の方が綺麗だ。だからこそ成り立つ共演なのだろう。
二人でお酒を注ぎ合ったりするのが「二人藤娘」ならでは。衣装替えは引き抜きではなく、藤の木の後ろに隠れてまた出てくるときに替わっていた。
二人が違う色の着物なのでその分一人のときよりもカラフルだし、同じ動きでも玉三郎独特の観客にアピールする動きを確認することができ、玉三郎の何とも言えない目の動きをあらためて感じて、楽しかった。

第三十七回 俳優祭2014/03/28 18:21

2014年3月27日 午後4時半開演 2階5列22番

六歌仙容彩
「遍照」
高僧は誰かすごく長身の人だと思ったら松緑だった。顔が小さいから背が高く見える。小野小町は芝雀。
「文屋」
勘九郎の踊りが良かった。きょうの踊りの中のぴか一。
官女たちは、お三輪をいじめる系統の官女だった。
「業平」
菊之助の業平と七之助の小野小町。
綺麗な衣装の綺麗な二人。
「喜撰」
喜撰法師の染五郎は花道から出てくる。祇園のお梶は時蔵。この二人の「累」が良かったので期待して観た。時蔵は踊りがうまいとは思わないのだが、お梶の役は所作が綺麗で凄く良かった。
「黒主」
大伴黒主が海老蔵、小野小町は玉三郎。踊りより衣装と台詞が大事な演目のようだ。

素踊「楠公」
楠正成が橋之助、正行が宜生、正孝が錦之助。
橋之助は最近少し太った。宜生は子どもから大人になろうとしている。錦之助は顔と佇まいが端正で素踊り向きの役者の一人だと思う。
この三人の踊りの後、扇雀、孝太郎、松江、男女蔵、亀寿、亀鶴が集団で踊り、次に梅枝以下の若手がせり上がってきて踊る。真ん中は歌昇だったのですぐわかったが役者の数が多くて、誰がどこにいるか確認しているうちに終わってしまった。一番小さいのが團子。最後に左馬頭の役の又五郎が出て来て引き締まった。

「模擬店」
藤十郎はじめ理事の挨拶と、三津五郎と亀三郎による模擬店の説明があった。
万雷の拍手で迎えられた三津五郎は「こんなことで復帰すると思わなかった」と言って、にこやかに説明をした。二年前の俳優祭は三津五郎の踊りが最高で、観客も舞台も息をのんで見ていたのに、あのとき舞台にいた勘三郎と團十郎がもういなくて、三津五郎が病み上がりだなんて、この二年の変化の激しいこと。
吉右衛門をはじめ「前の歌舞伎座より狭いのでお客様が殺到すると不測の事態が起こらないとも限らない」と心配していた。
二階だったので、出てすぐのところで売っていたかぶき手帖を買った後、下手のドリンクコーナーの方に行ったら、蝶ネクタイの仁左衛門が見えた。しかし混んでいて並ぶ人の数もロープを張って制限していたので並ぶのはあきらめた。
吹き抜けの周りを一周すると、画廊のところに梅丸や種之助がいた。正面では歌昇たちがTシャツを売っていた。
三階の「花篭」に初めて入った。ここで焼きおにぎり、お団子、ワッフルを買った。いつも舞台写真を売るところで中車親子がTシャツを売っていて、私が行ったときはお客さんと記念撮影をしていた。
幕間の舞踊ショーが見たかったので席に戻った。舞踊ショーはゲイバーのような雰囲気で、吉弥が紫の着物にラメ入りの白いショールをかけ、白い髪飾りもつけて「津軽海峡冬景色」の曲で踊ったのが綺麗だった。最後の歌江はまたヒモがたくさんぶら下がったような派手な衣装で受けていた。

幕間の後の抽選会では、座席番号によって熊本までの航空券があたる抽選会があった。歌昇、巳之助、壱太郎が担当だった。この後、又五郎が押し隈の落札者の発表をした。愛之助の義賢最期の押し隈があったらしいが全然気づかなかった。

「鈴ヶ森錦繍雲駕」

金太郎の白井権八と大河の幡随院長兵衛の対決が楽しみな一幕。おじさん達はひたすら二人の引き立て役に回った。
権八のかごかきは染五郎と松緑。舞台から遠かったので、たくさんいる雲助たちは誰が誰だかほとんどわからなかった。わかったのは目立つ役だった翫雀と、身長でわかる弥十郎くらい。飛脚の役の左團次は裸エプロンで、客席に背を向けて座ったり立ったりするときにしきりに後ろを気にしていた。
きたないおじさん達の中で、金太郎は本当に掃き溜めの鶴のように綺麗だった。雲助役のおじいちゃんとの立ち回りもある。きょうは金太郎の誕生日だそうで、バースデーケーキも登場した。
夜鷹の役で水谷八重子と波乃久里子、雲助役のくまモンも出た。
大河は一つ年下だから、二人の対決といっても金太郎が主体で大河は「おわけえのおまちなせえやし」だけかと思ったら、その後、権八と長兵衛が話をする場面があった。大河は声はかわいい子供の声なのに、大人が江戸弁をしゃべるような調子で台詞を言うものだから、聞いていると思わずニンマリしてしまう。客席は大うけで、大拍手だった。

この後、二人の子役を真ん中にカーテンコールがあり、手ぬぐい撒きがあった。仁左衛門はスーツ姿で投げていた。