五月花形歌舞伎 昼の部2014/05/13 04:23

2014年5月3日 明治座 午前11時開演 1階16列36番

「鳥居前」
幕開き直後に客席に飛び込んだら義経役の隼人が立って台詞を言っていた。キラキラした感じ。台詞が以前より安定してきて、声が錦之助に似てきた。

静御前役の米吉はつまらなく感じるくらい安定している。

弁慶の種之助は動きは綺麗だが小柄で可愛すぎる。

忠信の歌昇は台詞も動きも良かった。六方の引っ込みにスピード感があった。

早見藤太が吉之助。吉之助と隼人が長身で、歌昇、米吉、種之助が小柄なので、見た目にバランスが悪い。小柄な三人はうまいのだが。

「釣女」

大名が高麗蔵で、太郎冠者が染五郎。
上臈の壱太郎は小柄でいかにもかわいい女の子。醜女役が亀鶴だが、こんなインパクトのある顔の亀鶴は初めて見た。すごく存在感のある醜女ぶりが良い。

「邯鄲枕物語」

はじめて観た芝居だ。金に困った男が昼寝をして、金があると苦しむ世界の夢を見る話。

芝居としては軽いパロディで、特に観る価値もないかと思うが、吉田屋のパロディで紙衣姿になった染五郎が、雰囲気的に文句なしの伊左衛門だった。伊左衛門の紙衣の紫の部分が水色になって、さらに全体にラメが入ってキラキラしている衣装が、染五郎に余計似合っていた。相手の花魁が壱太郎なのが本物の上方歌舞伎っぽい。

伝統芸能の今 20142014/05/20 08:24

2014年5月15日 浅草公会堂 午後1時開演 1階け列27番

客席に入ったら出演者たちがプログラムを売り歩いていて、私は逸平から買った。

一、上妻宏光 「津軽じょんから節」「紙の舞」

二、「三番三」

上妻宏光がそのまま真ん中で三味線を弾いて、大鼓(広忠)、小鼓(傅次郎)、笛(傳十郎)が加わり、逸平が舞う。逸平の三番三が一番好きだ。ただ、三味線との共演は興味深いけれども、三味線はない方が良かった。音もそうだが、真ん中にいると逸平の動きが制限されてしまう。

三、「空破」

振付の猿之助が踊り、作曲の上妻、作調の傅次郎が演奏。
これは良かった。扇を持った手の動きが素晴らしく、ああ、やっぱり猿之助は踊りうまいなあ、と嬉しくなった。正月の浅草を思い出した。

四、「風林火山」

大河ドラマのときのテーマソングが流れて猿之助が踊るので、際物だが、猿之助の踊りがうまいので、そんなに鼻白むこともなく見られた。
トークのときに言っていたが、大河ドラマの後のナントカ紀行の音楽は年に4種類あって、その一つが上妻の作曲だったのだそうだ。

五、「トーク」

初めに、がんの子供を守る会理事長の山下さんと、世界の子供にワクチンを日本委員会理事長の細川佳代子さんのお話があった。
天然痘予防接種の痕があるのは年取った人だそうで、傅次郎は「僕はギリギリないんです。逸平ちゃんもないでしょ」広忠はあるようで、あの辺が境になるらしい。

「伝統芸能の今」は6年目になるそうで、紀尾井ホールで亀治郎が越後獅子を踊ったあたりが最初になるのだろうか。あのときはトークのときに三兄弟 と溶け合ってない感じがしたが今ではすっかりなじんでいる。
広忠はプログラム購入のお勧めとか寄付を促す発言がなかなか思い切っている。猿之助よりも人に気をつかわない感じで、広忠はやっぱり面白い。能の方は大鼓が中心なんだけど歌舞伎の方だと一番下っ端で・・・と言っていた。

次の演目「石橋」は狂言ではどんなものなのか逸平が話し、猿之助は、後ろに滝があってそこで獅子が髪を洗う、その水を表すように胡蝶がさらしを動かすけど、蝶々は手がないのにどうしてさらしを持てるのかとか、そういうことは一切考えないで見てください、と言った。

六、「石橋」

着物の柄のような牡丹の花が咲き乱れる山の中にかかる石の橋。後ろに滝も描いてある。今まで、なぜ「石橋」なのか知らなかったが、こういう話だったのか。
上手に、広忠も混じって座る。太鼓は傳九郎。

最初に仙人(逸平)が出てくる。
仙人がいなくなって、いつもの獅子が出そうな演奏があって、出てくる猿之助の獅子。胡蝶は段一郎と笑羽。

猿之助の獅子は悪くないが、きょう一番気に入ったのは「空破」だった。

スカイツリー歌舞伎2014/05/26 14:50

2014年5月24日 午後1時~ スカイアリーナ D列34番

行ったことがなかった最寄りの東武ストアに片道30分かけて歩いて行って応募葉書をもらいレシートを貼りつけて応募した。2通しか出さなかったが、自分以外に応募葉書を取ってる様子がないので当たるかも、と思っていたら案の定当たった。

押上というところに初めて行った。スカイツリータウンの4階の屋外、スカイアリーナに開演ギリギリくらいに行って招待券を出したら、代わりにお土産の袋と座席番号を書いたカードをくれた。
お土産はアサヒスーパードライドライプレミアム2缶、Mintiaの白と黒、スカイツリータウンのポストカード、東京ソラマチ2周年記念ピンバッジで、袋には三人吉三と錦秋公演のチラシも入っていた。

私の席は一番下手の最前列通路側。遅く行ったわりには舞台に近くて良い席だった。

すぐ始まったのが和太鼓と津軽三味線の演奏で「武蔵」。芸談のときに「ムサシ」はスカイツリーの634メートルにちなんでるのだと言っていたが、言われて初めて気づいた。

次が七之助と松也の「団子売」。舞台の左右は黒御簾風の囲いがしつらえてある。「武蔵」の後スタッフがワラワラと出て来て太鼓を片づけたり、後ろに、天神橋の書割が掛けたりした。お囃子の人たちが上手に座った。

七之助と松也は2人とも踊りより芝居がうまい人たちだから踊りにはあまり期待していない。それでも若くて綺麗で気が合ってる二人なので華やいで楽しい雰囲気だった。七之助が上の方を指して2人が後ろを見上げたのは、後ろの液晶画面を見て「映ってるね」と言い合っている様子かと思ってしまったが、芸談のときに、スカイツリーを見上げた振りだと言っていた。特別な振りを追加したために松也が振りを忘れ、本当は七之助の肩を叩く振りがあるのに、「こいつ、なかなか来ねえな」と思っていたと七之助。後ろの人が見づらいから画面がついていたのだろうが、肉眼で見るのとは違う角度が見えるので嬉しかった。踊りのときはいろんな角度からとった画面が後ろに見えたら楽しいだろう。

15分休憩の後、「芸談」。2人ともスーツに着替えていた。15分で化粧を落として着替えるなんてとても無理だから「団子売」の格好のままで出たいと松也は言ったらしいが、七之助は経験値が高く、「15分もあるの?余裕」という感じだったそうだ。でも「人間、やってみればできるもんですねえ」という松也。
きのうの夜、この場所で舞台稽古があって、七之助は恥ずかしかったという。松也は昨夜初めてスカイツリーに上がり、夜景が予想外に素晴らしくて感動した。
「団子売」は七之助は何度も踊っているが兄と踊るときは兄の方が女だった。松也といっしょに踊ること自体初めて。松也は野外で踊ったのは初めてだが七之助は野外の経験は多い。水回りがないのが不便。きょうもテントの中で着替えをした。松也は金盥で身体を洗ったのは初めて。
野外で「俊寛」を演じたときは歌舞伎座の舞台にはない本物の「砂」を手から落とす感覚がわかったり、遠くから近づいてくるものを見る感覚を覚えたり、ためになったそうだ。

きょうはアサヒビールの主催なのでテーブルの上に缶ビールが置いてある。
司会の女性「どんなときにビールを飲みますか」
七之助「ビールはアサヒですよ。きょうは兄は敵です」
松也「そういうのはいやらしいですけどね...。僕は実はビールはアサヒしか飲んだことがないんです」
司会「...すごいですね」

七之助と松也は仲が良いので、きょうも息が合っていたし、来月の「コクーン」の「三人吉三」でもうまくいっている。お嬢が奪った金をお坊がよこせといい、いや渡せねえ、ともめる場面は普通は三味線に乗ってやるが、今回はその演奏がない。気心が知れない同士だとぎこちなくなるかもしれないが、2人の場合は遠慮なくつかみ合いのようにやっている。それを見ている和尚役の勘九郎も、止めに入るところで気が入っている。菊五郎にお嬢を教わったときにお嬢が刀を持って決まる見得は柄を持ち上げてちゃいけないよ、と言われた理由が、わかった。リアルでは手が下になるから。

2人それぞれのこれからの予定を言ったが、コクーンはチケットが残ってないそうで、観たい方は当日券に並んでください、ということだった。

後ろの通路を歩いているときにこちらに気づいて立ち止まってのぞき込んでいる人が結構いたが、たまたま松也が「きょうはあちらにも・・・」と振り返ったときには少なくなっていて松也ががっかりしていた。

七之助の芸談はいつも勘九郎といっしょだったので控え目な人という印象だったが、今回のように年下の松也といっしょだと饒舌だった。

最後に七之助、松也の順で立って観客に礼を言い、引き揚げて行った。松也は、「これいいですか」と缶ビールをひとつ持ち帰った。