シンデレラ2015/04/01 00:01

2015年3月21日 オーチャードホール 午後四時半開演 2階4列22番

「シンデレラ」はずいぶん前にボリショイ(?)のを観たときにあまり面白いと思わなかったので、期待していなかったが、けっこう良かった。

4人の妖精が一人一人個性があってレベルが高かった。馬車は「かぼちゃの馬車」のイメージとは違って、曳くのは4頭の牡鹿だし、クリスマスカードに出て来そうな北の国っぽい雰囲気だが、夢のような雰囲気ときらびやかさがあった。全体に美術が素晴らしい。

個人的には、王子様が王子様に見えたのが一番だ。井澤諒は顔立ちも良く、足も長く、シンデレラの王子ではないかもしれないが、東南アジアの王子には十分見えた。

海外のバレエ団をいくらでも見られる今の日本で、人気を保っているだけのことはあると思った。

四代目中村鴈治郎襲名披露 四月大歌舞伎 夜の部2015/04/05 00:30

2015年4月3日 歌舞伎座 午後4時半開演 2階東11の2

「梶原平三誉石切」

何度も観ているが好きになれない演目なのでどうでもいいのだが、舞台下手にいて花道も動く梢役の壱太郎がこの席からよく見え、紅一点ということもあり、目についた。
下手に座る梶原方の大名は由次郎、松江、廣太郎、松之助。前回観たときの歌昇、種之助、米吉、隼人に比べると、今回はずいぶん年齢分布が広い。
俣野は錦之助。赤っ面のこの役は、前に愛之助がやったときには鼻が丸いせいか面白い顔になっていたのに、錦之助はあくまで良い男。舞台の真中で主役の幸四郎とからむ時、そういえば愛之助のときも主役は幸四郎だったと思い出した。

「芝居前」

襲名の口上のかわりに、芝居仕立ての幕がある。
成駒屋一門の役者が芝居小屋の前に集まっている。そこに、道頓堀座元の仁左衛門に案内されて鴈治郎が来る。小屋の中から菊五郎、吉右衛門、梅玉が出てきて出迎える。
梅玉は「正月の道頓堀の芝居以来」と言って鴈治郎もそれに返していたが、菊五郎、吉右衛門は台詞がちゃんと入っていないらしくプロンプが聞こえて、それが何度もあるので、客が大笑いだった。
それ以外の役者たちは、立ち役が本花道、女形が仮花道に並んで、男女交互に一人ずつ決まったセリフを言う。この席は本花道はよく見えるが、仮花道は見えない。大谷友右衛門が珍しく女形の方に入っていた。
秀太郎、我當、進之介も出て来た。最後に奉行の役で幸四郎が登場。

全員が引っ込んだ後、藤十郎と息子二人、その息子たち、合計5人が裃姿で台の上に並んで出てきた。藤十郎だけ藤色の裃だった。最後に口上を述べる藤十郎のオーラがすごい。

「河庄」

三五郎役の虎之介を壱太郎と勘違いし、前に観たことがあるけど、またやるんだな、と思っていた。少し後に善六役の壱太郎が出て来たときは二役なんだと思った。

小春(芝雀)を身請けしようとしている太兵衛(染五郎)と善六が治兵衛の悪口を浄瑠璃風に語るのは、この二人には荷が重すぎた。

今まで治兵衛役は藤十郎しか観たことがなかったが、鴈治郎は悪くない。この役は二枚目である必要はなく、ただ小春と別れがたい気持ちさえ客に伝われば、この芝居のテーマは表現できる。そこをちゃんと押さえていた。

梅玉の孫右衛門は、小春の情を理解して感謝もするが、かつ「こうあるべきである」ということを弟の治兵衛に言って聞かせる分別の人、という立場がよく出ていた。

芝雀の小春は可愛くて情があり、かつ水商売の女の色気があって良い。

「石橋」

染五郎、壱太郎、虎之介が獅子の精。白獅子の染五郎が舞台の石橋の上にいてせり上がって来て、赤獅子の二人は花道から。

「河庄」では壱太郎と虎之介を見間違ったが、踊りのときは間違えない。虎之介の方が腕が短いように見える。たぶん壱太郎は肩から指の先までの動きが良い。
毛ぶりに入る前の踊りが、この三人だとモダンな感じで観てて楽しかった。

K-Ballet Youth 「トム・ソーヤの冒険」2015/04/07 23:33

2015年4月5日 オーチャードホール 12時半開演 1階20列10番

一幕目と二幕目の初めに、男の子と女の子がベルを鳴らしながら客席を歩く。
これも一幕目と二幕目の開幕直前に、熊川哲也が中央下手の扉から入ってきて席についた。座って足を組む様子が熊川だった。

「トム・ソーヤの冒険」、話はよく知っているが、バレエにする場合、音楽はどうするのか、と考えていたが、幕開きはデキシー。リパブリック讃歌、Johnny, get your gun、ヤンキードゥードルなどアメリカの曲がところどころに流れ、最後の場面はマイオールドケンタッキーホームだった。

最初は、村の人たちの中でトムだけが動いている。やがてみんなが動き出す。

ポリーおばさんの娘のメアリーの踊りが綺麗だった。
ベッキーはもっと美少女をイメージしていたが、踊りは安定していた。

ハック役の矢野政弥は小柄だが芝居志向の踊りで目についた。
リゼットの三好梨生が超絶可愛く、スタイルも良く、色っぽくて華があった。
黒ぶた役の酒匂麗が個性的でうまい。

二幕目のこうもりの群れは、マシューボーンの「白鳥の湖」で王子を襲う白鳥たちのように怖いイメージだろうと思うので、外人の女のような脚のダンサーたちをそろえて迫力を出してほしかった。と考えてしまうほど、ユースといってもレベルが高かった。

次のウィリの場面はジゼルやシルフィードのような雰囲気。ウィリの女王の吉田このみがほっそりと綺麗で、この人がこうもりの女王をやったらどうなのかと思った。

最後は「血の婚礼」の冒頭のように村の人たちが記念写真のように並ぶシーンがあった。そして、またトムだけが動いて他のみんなは止まる。

冗長なところはなく、踊りの見せ場をうまくつなげて、よくまとまっている。音楽と美術も悪くない。

きょうはカーテンコールに熊川も出た。

藤間勘十郎素踊りの会2015/04/29 13:44

2015年4月28日 国立劇場小劇場 昼午後2時開始、夜午後6時半開始、昼夜1階8列18番

昼の部

「保名」
花道から出てくるのかと思っていたら舞台後方から現れた。いつものようにふんわりと柔らかい踊り。

「茶壺」
大好きな踊りなので一番楽しみにしていて、やはり一番面白かった。目代の種之助の踊りも楽しめたので。
麻胡六は廣太郎のゆるキャラが生きた。熊鷹太郎の勘十郎と二人で籠を背負って二人の顔が並ぶとユーモラス。
熊鷹太郎が麻胡六の言うことをこっそり聞きに行って戻るときに最後は少しすべるのが面白かった。

「娘道成寺」
大阪で観たときと同じで、所化ではなく強力が出る。米吉が「きいたかきいたか」と先頭で鷹之資、玉太郎、梅丸が「きいたぞきいたぞ」と続く。
花のほかには松ばかり~、のところ、傳左衛門の小鼓をはじめ、演奏がすごく良かった。


夜の部

「藤娘」
はじめ真っ暗なのは歌舞伎のときと同じ。明りがつくと、いつものように藤の花が下がっていて、視界がパッと華やぐ。 真ん中の木はなかった。あれはやはり衣装替えのためにあるのか。勘十郎は藤の花をかついで、黒い笠を持っていた。
素踊りなので衣装の引き抜きのような視覚的楽しみはないが、その分じっくり勘十郎の踊りを見られた。最後はすっぽんからせり下がる。

「鳥羽絵」
たぶん初めて観る踊りだ。玉太郎がネズミの役。そこに出てくる升六役の勘十郎。藤娘との間には休憩はないのに、もう着物を着替えている。
玉太郎のネズミが柄に合ってとても可愛く、勘十郎と顔の大きさがかなり違っていて、二人のコンビネーションが楽しかった。

「鏡獅子」
鏡獅子の最初、御殿に4人座っているが素踊りなので袴姿。袴歌舞伎と思えば良いのだが、男の役の廣太郎と種之助の方はともかく、飛鳥井の米吉と吉野の梅丸は、男子の姿で女形なのが可愛くて笑ってしまう。後見は鷹之資。弥生に扇を渡したり、けっこう大変そうだが頑張っていた。
胡蝶は渡邊愛子ちゃんと林ももこちゃん。
獅子が出てくる前は、傳左衛門に傳次郎も加わって久しぶりに獅子の咆哮を聴いて嬉しかった。勘十郎は袴姿で鬣つけてくるのかと予想していたが、頭はそのままで、上半身に衣装をつけていた。