十二月大歌舞伎 昼の部2015/12/09 01:30

2015年12月5日 歌舞伎座 午前11時開演 1階14列14番

「十種香」

前半は松也(勝頼)、七之助(八重垣姫)、児太郎(濡衣)で、一番年上が七之助という若い舞台。浅草でトリプルキャストで観たいと思った。年かさの二人は綺麗なコンビ。声も良い。濡衣はもっと年上の人が演じるイメージがあったが、児太郎は落ち着いているので違和感がない。「油断のならぬ~」という台詞で笑いをとっていて、芝居のセンスのある人だと思う。

後半は右近(謙信)、亀寿(白須賀六郎)、亀三郎(原小文治)が出てくる。亀寿がかっこよかった。

「赤い陣羽織」

おやじ役は門之助、女房は児太郎。お代官が中車。児太郎はやはり芝居がうまい。暗闇でおやじとすれ違った話をするときに腰を落として左右に跳ぶときは、ラグビーで鍛えた力強さがある。
前に一度観たときより芝居が長くなっていて、お代官たちが客席に降りるときがある。中車が二階の桟敷に急に現れて、座っている人たちに手拭いを渡して去る。その後、一階に降りて来て、私の横の通路も通って行った。
お代官の奥方は、前回と同じ吉弥。吉弥が出てくると、新作でも歌舞伎の雰囲気が出る。きりっとしていてお代官には厳しいが、村人には優しい。はまり役だ。
馬の孫太郎は前回の方が活躍していた。

「関扉」

松緑の関兵衛は素踊りのときも良かったが、今回も良かった。
七之助の小野小町姫は、八重垣姫と似たような拵えだが、こっちの方が顔が優しく見える。化粧の仕方が違うのだろうか。宗貞役の松也の横で踊っているあたりは、とても綺麗だ。松也と七之助、「十種香」のときと同じで、綺麗なコンビ。
玉三郎の墨染は、今回は少し印象が弱かった。しかし、幕切の見得のときの眼力が強かった。

十二月大歌舞伎 夜の部2015/12/24 23:48

2015年12月19日 歌舞伎座 午後4時半開演 1階13列18番

妹背山婦女庭訓

「杉酒屋」

観るのは初めてかもしれない。求女をめぐるお三輪と橘姫の三角関係であって、とても楽しい幕だった。

丁稚子太郎役の團子が出てくると一際大きな拍手が来る。のびのびしたいい子、という感じがする。お三輪(七之助)、求女(松也)と並び、求女の言葉を真似て「お三輪どの、もうお戻りか」と言うが、「お戻りか」の台詞の調子まで真似ているのが面白い。
こんな時代はあっという間に過ぎてしまうのだな、と思う。今月は團子親子の「物珍しさ」が印象的で、綺麗なお兄さんたちや、玉三郎出世作のお三輪もかすんでしまった。

橘姫役の児太郎は、被り物をとるとギョッとするようなごつい顔で、お姫様の拵えが似合わないなあ、とは思うが、芝居そのものは悪くない。

「道行恋苧環」

お三輪(七之助)、求女(松也)、橘姫(児太郎)。
求女がいい男でないと三角関係がつまらないが、その点、松也はいい男なので役に合っている。七之助と松也は、今月三度目の恋人役。
この幕は舞踊なので、綺麗ではない児太郎が一番うまかった。

「三笠山御殿」

鱶七役の松緑の台詞が相変わらず下手だ。台詞なしの荒事のシーンになるといい。
豆腐買いのおむらは、中車。初めての女形だ。所作をじっと見ていると、中車がここまで仕上げるのは大変だったろうな、と思う。花道の引っ込みまで、特に破綻はなかった。

玉三郎のお三輪は哀れを感じさせてはまり役だが、きょうの席は前の人の頭でちょうどお三輪がいる舞台前方中央あたりが隠れるので、ストレスを感じた。