六月大歌舞伎 第三部2016/06/15 18:47

2016年6月4日 歌舞伎座 午後6時15分開演 1階14列29番

国立劇場から歌舞伎座へ移動。途中、夕食もとれるくらい余裕があった。

「吉野山」

「四の切」はもう一生分観たような気がしていて、この三部を観に来たのは偏に、染五郎の静が観たいからだ。遠目には綺麗だった。声を聞いて、ああ染五郎だ、と思った。鏡獅子の弥生はもっと伸び伸びと踊っていた。相手のあることだから、ちょっと遠慮しているのかもしれない。
猿之助の忠信より大きいが、男雛女雛の形になるときは、しっかり背を盗んでいた。染五郎の静が大きかったのは、次の幕で笑也の静が出て来たときにあらためて感じた。

猿弥の逸見藤太はユーモラスで、台詞もめでたくて良かった。

猿之助の忠信は、一人になった後の高いジャンプと、ぶっかえって狐六方で引っ込むのが印象的だった。
澤瀉屋型の、一人になってからの忠信が昔から好きだ。先代は狐の本性を表す前が男の色気を感じさせて好きだった。花道の引っ込みは、やっぱり狐六方の方が盛り上がる。

「四の切」

また観るのか、とウンザリしていた「四の切」だが、前の幕からの熱気と祝祭的な雰囲気で気持ちが高揚してきた。
駿河次郎(松也)と亀井六郎(巳之助)が出てくるところや、次の場の時間稼ぎに、明りを手にした腰元たちが庭を見て回るシーンを懐かしく感じた。
猿之助の狐がチョコッ、チョコッと階段を降りてくるところは、足先と降り方を狐らしいと感じた。
正月の浅草歌舞伎のときに松也の狐は欄干を上るのに手間取っていたが、猿之助は欄干をつかんで、まるで体操選手のように軽々と身体を中に飛ばした。
観客が、それまでの猿之助の奮闘ぶりに感心しているから、最後の宙乗りで思いっきり拍手をして盛り上がる。あの猿之助の宙乗りが、歌舞伎座に戻って来た。