平成28年度 松竹大歌舞伎 中央コース2016/07/07 01:12

2016年7月1日 府中の森芸術劇場 午後1時開演

「歌舞伎の見方」
鑑賞教室のように、はじめに解説があった。最初は大薩摩の演奏があり、その後、花道から萬太郎が出て来た。萬太郎がしばらく話した後、亀寿も加わった。

「鳴神」

梅枝の雲絶間姫は、何よりも品があるのが良い。黒雲坊、白雲坊相手に話してるときは、ついつい玉三郎を思い出して、人を相手に話して聞かせてる感が足りないかなと感じてしまったが、あんなベテランと比べる私がバカだ。
梅枝の演技は、鳴神上人(松緑)を色仕掛けで騙す以降の方が印象的だった。「尼になりゃ」と言われて、「ああ〜」と癪を起したふりをする前に、冷静に後ろの鳴神をうかがう表情を見せて、ここからがスタート、というのがよくわかった。クライマックスの「お師匠さま」は平板に流れずに、客に固唾をのんで見守る緊張感を与えて上出来。「なるわいなあ」とくだけた調子になった後、注連縄がはってある理由をきく「どうして」という声がとても好きだった。

松緑は、台詞の語尾がのびる欠点はいつも通り。最後の飛び六方が一番松緑らしくて、反り返った手が綺麗で良かった。

「文売り」
時蔵は吉田屋の伊左衛門のような紙衣を着ていた。台詞と所作で、とても雰囲気が出ていた。

「三社祭」
萬太郎と亀寿。亀寿の方がずっとこの踊りになれているのが見て取れる。今の年齢だからかもしれないが、二人の熟練度に違いがありすぎだと思った。

七月花形歌舞伎 昼の部2016/07/21 22:22

2016年7月17日 歌舞伎座 午前11時開演 1階13列43番

「柳影澤蛍火」

柳沢吉保の話。吉保が綱吉ではなく美男好みの桂昌院に気に入られて出世する、というのが面白い。イケメンの海老蔵は役にはまっていて、桂昌院の役は国宝になったばかりの東蔵が楽しそうに演じている。
綱吉役は中車。中車にしては印象が薄い。

護持院隆光役の猿之助がすごくうまかった。客に受ける台詞術を心得ている。

最後は六義園で、猿之助と海老蔵の対決の後、おさめ役の右近と海老蔵の対決になって、そこはなかなか盛り上がる。権太夫役の猿弥を殺すあたりが、話としては少しだれたと思う。

「流星」

今月は、これが観たかった。綺麗でうまい、織姫役の右近と、衣装が似合っていた牽牛の巳之助。この二人を前座に、猿之助の流星が花道から現れる。七三での所作からして、うまい人は一味違う。

後見は段一郎が頑張った。夫婦、赤ん坊、姑、と面をとっかえひっかえ、役を演じ分けながら踊る。赤ん坊のときが一番客席が沸いた。

この後、面をつけないでしばらく踊るが、それがまた滅法うまい。うまい人の、全盛期の踊りを観られる幸せを感じながら、ずっと足の動きを見ていた。

最後は宙乗りで引っ込む。踊りを堪能した客から万来の拍手。これが、猿之助の宙乗りのいいところ。宙乗りの間、たっぷり拍手で称えられて客も嬉しいし、猿之助も満足だろう。

三階に消える前に、壁に映る猿之助の影が見えた。