壽初春大歌舞伎 昼の部 初日2017/01/03 03:08

2017年1月6日 歌舞伎座 午前11時開演 1階5列14番


「将軍江戸を去る」

新年早々こんな演目、と思ったが最後の慶喜の台詞に「世界の中のニッポン」とか出てくるし、案外ふさわしいのかもしれない。

愛之助の鉄太郎は終始熱演。むくつけき中年男のわりには慶喜に言上するときは声が高くなったり泣いたりして女々しいとも思うが、そのくらい熱心に説得したんだ、という表現として、あれもいいのかもしれない。
慶喜の染五郎が、心を動かされた表情をするので、愛之助の演技が説得力を増す。染五郎は明治座のときは不自然な太い声が嫌だったが、今回は自然な声で、すごく良かった。将軍の気品があり、知的で神経質な感じの慶喜のイメージにもピッタリ。

彰義隊新頭取天野八郎役の歌昇が出て来た時、誰だかわからなくて、こんなきれい系の青年、いたかな、としばらく考えた。大人っぽくなった。

又五郎の高橋伊勢守は、はまり役。将軍に諫言するくらいの分別を持った人に見える。

鉄太郎が慶喜に面会を求めて外で押し問答をしている様子が障子に映るが、私の席からはその影がよく見えて、影と声とは同じ役者なのか、別なのか、と考えた。

最後、私の大好きな「上さま、お名残惜しゅうございます」の台詞が聞けて嬉しかった。染五郎は最後の上さまにピッタリ。慶喜が江戸を去って今年で150年になるわけか。

「大津絵道成寺」

愛之助が続けて熱演。藤娘、鷹匠、座頭、船頭、鬼、を早変わりで踊る。

道成寺なので、紅白の幕を背景に緑の鐘が下がっている。クリスマスイヴに観たとき、何気にクリスマスカラー、と思ったのを思い出した。

愛之助が出てくる前に、花道から外方(吉之丞)、唐子と着ぐるみのナマズが出てくる。そのナマズが滅法かわいかった。舞台に出てくると、私の席からちょうど真正面に見えて、指を髭でくるくるしたり、かわいかった。

女形の拵えの愛之助を見るのはすごく久しぶり。永楽館の弁天小僧以来? 藤娘は、初めは赤い地色の着物だった。指が五本あるのを見せるときの指の動きが綺麗だった。あんなに太い指なのに、綺麗に見せるもんだ、と感心する。

で、「花のほかには松ばかり~」で踊り始める。玉三郎で観てから10日も経たないのに。鐘に恨みは数々ござる、で、鐘をキッとにらむのもやる。引き抜きもやる。玉三郎の記憶が生々しいのに愛之助の踊りを観ることになって、ちょっと苦笑い。愛之助の「恋の手習い」を観るとは思わなかった。「道成寺」なんだから今更だが。
愛之助が投げた手拭いの一本が私の足元に落ちてきて拾えた。

女形は珍しくて嬉しかったが、鷹匠役か、若衆の拵えで出てくるとやはりこの方が似合うので、ほっとした。船頭もすごくかっこよかった。浴衣の柄が素敵。船頭を見てるとき、何かぼーっとしたのか、途中で吹き替えになったのに気づかなかった。愛之助がまた若衆姿で出てきて、あれっと思った。若衆姿で鈴太鼓を持った踊りは、綺麗で良かった。愛之助は踊りは下手だが、立役の姿は綺麗なので、お正月らしく華やかな演目になっていた。

座頭の踊りのときに、いっしょに犬が出てきて、その踊りがうまかった。歌昇か種之助か、顔を見てもわからなかったが、筋書を見たら種之助だった。

藤色の衣装の藤娘が鐘の中に入った後、花道から弁慶(歌昇)が出て来た。そして、愛之助は鬼になって登場。その後、押し戻しで矢ノ根の五郎(染五郎)が出てくる。五郎、鬼、弁慶と揃うと豪華。

最後は愛之助がぶっかえって鐘に上って、幕。

「沼津」

吉右衛門は役によって苦手なのだが、十兵衛は、わりと好きな方の役。「この蝋燭の火で〇〇までもつでしょうか」と言いながら平作の顔を照らすあたりの演技が印象深かった。
歌六の平作はうまい。荷物を重そうに持ち上げるところも、しゃべり方も、年寄りらしさがよく出ている。年寄りと言っても私より年下なのかもしれないが。
芝雀のお米は、十兵衛が一目惚れするのも、もと売れっ子花魁なのも納得できる可愛さなのがいい。

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