八月納涼歌舞伎 第三部 「野田版 桜の森の満開の下」2017/08/12 17:02

2017年8月11日 歌舞伎座 午後6時半開演 2階2列46番

全体のストーリーは頭に入らなかったが、プッチーニの「私のお父さん」の流れる中、桜の花びらが散る下で七之助が死ぬシーンが、泣きたくなるほどの美しさだった。坂口安吾は読んだことがないが、こんな、オスカー・ワイルドばりの耽美な話を書いている人だったのか?

主な人物は耳男(勘九郎)、オオアマ(染五郎)、夜長姫(七之助)、早寝姫(梅枝)、マナコ(猿弥)、ヒダの王(扇雀)、といったところ。一番印象的だったのは超マイペースで残酷だが綺麗で可愛い夜長姫。耳男は一番活躍する。壬申の乱の中心人物であるオオアマはストーリー的に重要だが、染五郎は早寝姫と戯れているところと、缶蹴りの缶を蹴るところが良かった。マナコはわかりやすく安定したキャラで猿弥の骨太な演技が良かった。扇雀のヒダの王がニンに合っていた。

冒頭は満開の桜の下に鬼女たちが眠っていて、やがて起き出して桜の枝を持って動き出す。聞こえてくる音楽が「私のお父さん」なので、ちょっと驚く。いつもの歌舞伎とは違って、役者がマイクをつけている。

基本的な風景も役者の動きも綺麗で、バレエや絵画のような印象だった。野田秀樹のジョークの連続のような台詞、「〇坊〇坊の天気予報」を始めとする今の若者には通じないパロディも、舞台の妨げとはならず、そういう台詞に乗って話が進む感覚的な舞台で、また見たいと思った。