三月大歌舞伎 夜の部2019/03/06 23:59

2019年3月6日 歌舞伎座 午後4時半開演 1階1列41番

「盛綱陣屋」
小四郎役の勘太郎はよくやっていた。特に、腹を切ってからの台詞が人を泣かせるような声としゃべり方で、客席からすすり泣きが聞こえた。高綱の首を前にした盛綱(仁左衛門)と、腹を切った小四郎とが顔を見合わせて無言で意思疎通するところが一番の見もの。首をふる小四郎を見て一瞬怪訝な表情をした盛綱。その後しばらく考えをめぐらし、はっと悟る。その辺の仁左衛門の表情がきょうの席からはよく見えた。
その後には仁左衛門の素晴らしい台詞が聞けて、すごく良い演目だと思った。熊谷陣屋よりも、こっちをもっと頻繁にやってほしい。
小三郎役の寺嶋真秀は初めて見た。ほとんど後ろ姿しか見えなかったが、鎧姿と声が可愛い。
微妙役の秀太郎が良かった。秀太郎は位の高い女の役のときの方が良い声だし、台詞がよく聞こえる。
小四郎の母役の雀右衛門は、こういう愛情を感じる役にぴったり。
和田兵衛秀盛の左團次はいつも立派。私が歌舞伎を観始めた頃からほとんど毎月観て来たような気がする。
錦之助の信楽太郎は元気そうで華やかで良い。
時政の四天王は廣太郎、種之助、米吉、千之助。声が聞こえて初めて、種之助の顔が見えていたことに気づいた。

「雷船頭」
船頭役は染五郎、雷は鷹之資。
染五郎は踊りはそこそこだが、きれいな男が動いているのを見るのは目の保養。
鷹之資の雷は楽しい。大人になって、「踊らされる」のではなく、自分で踊り出したようで、今後が楽しみだ。

「弁天娘女男白浪」
猿之助の弁天小僧は亀治郎時代に巡業で観た。当時は、菊之助、七之助のような女形を主たる役とする人が演じる女形寄りの弁天という印象だった。当時よりぐっと線が太くなって、台詞もこってりしている。
お前は男だ、と言われて「えっ」と言う声が男で、笑いをとる。「尻尾を見せちまうぜ」の前に、「おい、兄ぃ」ではなく「おい、南郷」と言う。
舞台に5人並んでの台詞も、猿之助が一番うまくて、大きな拍手を誘う力があった。
南郷の幸四郎は、この弁天の隣りにいるにしては、少し弱い。猿之助と幸四郎は仲良しのようだが、幸四郎といっしょだと猿之助が可愛く見えるとか、そういうことはない。仁左衛門と玉三郎とは違う。
浜松屋の若旦那の宗之助役は鷹之資だった。鷹之資と千之助は「趣向の華」の公演の頃は子供だったが、大人の役をやるようになった。