芸術祭10月大歌舞伎 昼の部 初日2019/10/07 00:14

2019年10月2日 歌舞伎座 午前11時開演 1階7列13番

「廓三番叟」

傾城役の扇雀は全然つまらないのに、新造役の梅枝が踊りだすと顔は玉三郎系で綺麗だし踊りも所作のそれぞれに魅力があって見応えのあるものになるので驚く。

「御摂勧進帳」

初めて観る演目だ。
花道を出てくるのが四天王が先で、四天王がそこで台詞を言い、後から弁慶が出てくる。勧進帳の読み上げのときに弁慶の後ろに迫ってくるのは富樫だけでなく全部で4人くらい覗こうとしている。
というように歌舞伎十八番の勧進帳と比べてしまうが、勧進帳以前の作品ということなので、パロディではない。ただ全体に滑稽味のある話だ。
弁慶役の松緑の顔は、隈取がある上に、鼻の下と顎が山賊のひげのように灰色に塗られていて、ふざけた雰囲気だ。相変わらず語尾が伸びるような台詞の言い方だが、この顔には合っているような気がする。
富樫(愛之助)は屋台の上に出てきて、そのままそこにいる。普通の勧進帳のように弁慶と富樫の対決という感じではなく、安宅の関を守る役人の中には斎藤次(彦三郎)というのもいる。
義経一行が去った後の荒事で弁慶は番卒たちの首を引き抜き、それを大きな桶に投げ込む。そして最後には「芋洗いをお目にかけます」と言って杖で桶をかき回しているところで、幕。
滑稽と残酷が混じった、歌舞伎らしい芝居と言うべきか。

「蜘蛛絲梓弦」
これは、前に名古屋で観たことがある。
碓井貞光(松也)と坂田金時(尾上右近)が源頼光を警護しているところへ、小姓(愛之助)がスッポンから登場。ドロドロで一瞬妖怪の所作をする。
愛之助は楽しげな雰囲気が良かった。特に太鼓持は、和事が生きるせいか良かった。座頭は滑稽味を帯びた雰囲気。傾城は、うまいのだが、愛之助の女形を楽しみにしている自分にとっては地味すぎた。顔の化粧をもっと派手な美人風にできないものだろうか。
最後は蜘蛛の精になって白い糸をたくさん巻き、それが舞台の紅葉とコントラストになって綺麗だった。

「江戸育お祭佐七」

神田祭の当日、佐七(菊五郎)や小糸(時蔵)たちが踊り屋台の踊りを見るために神酒所に集まっている。
その踊りが「道行旅路の花聟」。お軽は亀三郎、勘平は眞秀、坂内は橘太郎。亀三郎は女形に進むのかと思うようなきれいな顔で、終始真剣に踊っていた。指を折る所作とか各所作がしっかりしている。子供ながらもプロの踊り。これに比べると、勘平の眞秀は顔は可愛いが「子供がやらされてる」感じがする踊り。坂内役の橘太郎が、二人にうまく絡んでやっていた。
客席も舞台の上の人も注目していたこの踊りが一番の見もので、本編は、特に面白くはない江戸っ子の話。