十月大歌舞伎 第一部2022/11/01 14:37

2022年10月23日 午前11時開始 2階1列19番

2階最前列で、後ろに人がいないので前のめりもし放題という客入り。

「鬼揃紅葉狩」
久しぶりに猿之助の踊りが見られて嬉しい。お姫様の姿でお酒を飲むときに腕が鬼の腕のように動いてしまうのがいい、と平成中村座で近くの人が話していた。
侍女役は種之助、男寅、鷹之資、玉太郎、左近、とたぶん年齢順に真ん中から下手にかけて並ぶ。種之助は自信があるのだろう、すっかり落ち着いて控えている。踊りは女らしく優美。左近が美人だった。
脚をそろえて横に跳びながらグイグイ寄っていく動きはさすがに鷹之資はうまい。隣の玉太郎、左近はこの動きには慣れてないように見えた。
鬼の化粧になると誰が誰やら見分けがつかなくなってつまらない。
猿弥と青虎が従者役。短い間だが青虎の所作が見られてよかった。

「荒川十郎太」
講談を歌舞伎化した新作。ある武士が高い身分の者と偽って堀部安兵衛の墓参に訪れていた、その理由を丁寧に説明した芝居。
松緑演じる荒川十郎太がその理由を説明するときに回想シーンとして主税役の左近がスッポンから現れたり舞台の真ん中に安兵衛役の猿之助が現れたりする。人数が少ないせいか回想シーンの空間が回想として成り立っていて混乱することがない。面白い表現方法だと思った。

十三代目市川團十郎白猿襲名披露公演特別公演2022/11/05 23:04

2022年11月1日 歌舞伎座 午後5時開演 1階3列3番

入場前に記念品引き換えの列に並んでチケットの裏に済のスタンプを押され、記念品が入った紙袋を受け取った。


1.神歌
翁の観世清和と千歳の三郎太が前列に座り、初めに翁が、次に千歳が歌う。後列に地頭、地謡が並んでいた。

2、顔寄せ手打式
幹部役者が3列くらいに並び、松竹の偉いさんが3、4人で短い挨拶をした。役者以外の人が話すせいかいつもの口上とは違ってマイクが入っていたようで、声が下手のスピーカーから聞こえた。役者はびっしり並んでいたが私から見えたのはほとんど一列目だけだ。下手側の真ん中寄りの端に仁左衛門がいてその隣に玉三郎がいた。上手側に獅童が見えた。どういう順番で並んでいるのかはわからなかった。
白鸚が新團十郎を紹介した後、八代目新之助を紹介した。新之助の挨拶ははきはきしていた。仁左衛門が新之助の方を見て微笑んでいた。
最後に観客も加わって手締めをした。

35分の休憩の後、「襲名記念特別映像 」があった。初代からの團十郎の紹介と11代から13代までの写真や映像の紹介だった。11代と12代、12代と13代がいっしょに写っている写真や共演の映像もあった。13代の今までの道のりをたどって新之助時代の「天守物語」や「海神別荘」の写真が出ると、見た頃の自分の暮らしも思い出して懐かしかった。
この後、10分休憩。

3、「勧進帳」
ここまでで休憩が3回もあったので、正直、やっと勧進帳か、と感じた。
海老蔵襲名のときに仁左衛門の富樫が観たくて大阪遠征した。それ以来のこの二人の弁慶富樫だが、仁左衛門はもう1か月富樫をやることはなさそうだし、この組み合わせの弁慶富樫はこれで見納めかな。私の最高の「勧進帳」なのだが。
鳴物の人たちが烏帽子をつけていた。今までに見た記憶がない。
勧進帳は何回も観ているがこの辺の席から見たことはない。富樫の顔がずっと真正面に見える。太刀持ちは丑之助だ。丑之助が将来素晴らしい弁慶役者や富樫役者になることもあるんだなあ、とふと考える。愛之助が初めて太刀持音若をやったのは今の丑之助くらいだろうか。
花道のすぐ横の2席は人がいなくて、私の右側の列の人が一番花道に近い。ここは花道に出てくる役者がよく見える。義経役の玉三郎がしばらく七三に立ち止まっていた。かぶっている笠についたひもを顔の周りで結ぼうとしているのがよく見えた。
四天王は鴈治郎、芝翫、愛之助、市蔵。芝翫、愛之助は元々うまいと思っていたが、鴈治郎も太い声で、こんなにうまかったかと思った。
新之助時代に浅草で初めてやった弁慶も観たが、あの時から何百回も弁慶をやってすっかり安定した。仁左衛門との丁々発止を堪能した。延年の舞を見ていると、弁慶はやっぱり華がある人が演じるべきだと思う。久しぶりで、客の目を引き付けるこの人の魅力を思い出した。
義経と四天王が花道から急ぎ足で去り、弁慶が花道七三あたりでお辞儀をしたり六方を始めるあたりの團十郎の顔がよく見えた。ドブ席だけど見られるだけでありがたい、と思っていたがここは役者の顔がよく見えるので気持ちが盛り上がるすごく良い席だった。

十三代市川團十郎白猿襲名披露 11月 夜の部2022/11/14 15:04

2022年11月11日 歌舞伎座 午後4時開演 1階16列39番

「矢の根」
これは前に観たことがあって、大根が印象に残っている。ストーリーは頭に入らずボーっと見ていたら花道から大根をたくさん積んだ馬が出てきた。主人公の幸四郎はその馬に乗って大根を持って引っ込んだ。

「口上」
下手に仁左衛門と左團次、上手に菊五郎と梅玉。そして新團十郎と新之助、紹介の白鸚。
白鸚の美声の名調子は藤十郎襲名のときのテンション高い本人の挨拶を思い出させる。「年長者の言うことをよく聞いて」という言葉に客席が笑う。いつもの襲名口上と違って大御所しかいないので、お父さんの葬式に集まったお父さんの同僚のような雰囲気。
仁左衛門は、12代目とは仲がよくてお互いの家を言ったり来たりしていて、12代目の家で若い役者たちといっしょにいると、その近くで仲間に入りたそうにしていた子供が新團十郎になって、今は自分の子供がいて父親としての視線で息子を見ている、と言った。左團次はテレビでワイドショーを見ていたらこの襲名を取り上げていたがほとんど新之助のことした言わなかった、ゆうべテレビを見ていたら新團十郎が語っていた、皆さん新之助をどうぞよろしくお願いいたします、と言った。菊五郎は12代目とは若いときからずっと仲良しで、仕事もいっしょだったしその後もいっしょに遊びに行った話をした。梅玉は12代目と同級生だった話と今月助六でやる白酒売は先代の助六で2回やったことがあるという話をした。
白鸚が新團十郎に睨みをするように促す。そういえば先代の襲名のときに松緑もやっていたな、と思い出した。松緑は「團十郎、睨んで差し上げなさい」みたいな口調だったが白鸚は「十三代目さん」とちょっと丁寧。叔父である松緑と、父の従兄である白鸚との違いだろう。
睨みは海老蔵襲名の頃の方が迫力を感じた。

「助六」
きょうの席は1階1等の一番後ろなのだが、先代の襲名の助六のときは3階席で助六が出てきてしばらくは音しか聞こえなくて悔しい思いをしたので、それに比べれば助六の姿が見られるきょうの席はありがたい。
助六、揚巻、白玉が先代の襲名のときの役者の息子になっているのはみんな順調に育ってめでたいというべきか。
並び傾城の一人は團子。團子の女形は初めて見るかもしれない。顔が小さくて首が長そうできれいだ。
松緑の意休は体格のせいか貫禄が足りない。
菊之助の揚巻を見るのは何度目かだ。きれいで落ち着いた揚巻。
白玉役の梅枝は顔が大きくて上背もあって台詞がしっかりしているせいか貫禄がある。2人並んで座っていると揚巻が2人いるような印象。
助六の出端は良かった。腕を伸ばして傘を開いている形がきれいだし、最初の台詞も先代のような悪声ではない。
助六の台詞は全体に早口。仁左衛門のような「滔々と」流れる台詞ではなく単なる早口で聞き取りにくいときもある。
その團十郎に教わっているせいか福山かつぎ役の新之助も早口。まだ子供だし、きっぱりとした雰囲気があっただけで立派。
くわんぺらの仁左衛門はやっぱりうまい。出てくると舞台に引き込まれる。すごくうまいが、この役は他の役者でもいいと思っている。私は仁左衛門には白酒売りをやってほしかった。先代の襲名のとき、12代目團十郎より長身の孝夫が着替えを手伝って助六の後ろで着物を高い位置から広げて持っているのがかっこよくて目に焼き付いているからだ。
梅玉の白酒売りに文句があるわけではない。
鴈治郎の通人は予想よりも楽しかった。