5月文楽公演「妹背山婦女庭訓」第二部2019/05/26 01:25

2019年5月25日 国立劇場小劇場 午後3時45分開演 15列21番

5時間座っていて、さすがにお尻が痛くなった。文楽は長丁場だ。
「杉酒屋の段」以外は歌舞伎で観たことがある。いつもながら、字幕が出るからわかりやすい。
最初の「妹山背山の段」は歌舞伎の「吉野川」。これも「妹背山婦女庭訓」の一部だったのだ。雛鳥が入鹿に見初められた、という話が出てきて、筋がつながる。
真ん中の川で下手上手が分かれているが、大夫と三味線も下手上手に分かれる。大夫と三味線の一人一人の名を舞台の黒衣が言って、そのたびに客先が拍手するのも歌舞伎と違うところ。
すごい話だから、最後の拍手も大きかった。

25分休みのときは、出遅れて中の席がとれなかったので外に出てベンチに座って食事をした。気候が良いときはこれでいい。

休みの後は、「杉酒屋の段」。求馬と橘姫が会っていたり、お三輪が出てきて、苧環も出てきたりして、「道行恋苧環」に続く。

求馬、橘姫、お三輪の踊りは綺麗だった。文楽で踊り、と聞いたときは想像し難かったが、人形には肉体がない分、肉体の限界、束縛もなく自由に美を追求できるのかもしれない。

次の段は鱶七。歌舞伎と同じ格好をしている。

最後の「金殿の段」には豆腐買いの女が出る。お三輪と官女たちが御殿の廊下を歩くとき、歌舞伎ではすれ違っていくが、文楽では人形同士がいちいちぶつかるのが面白い。

官女たちがお三輪をからかう場面は、一番感動した。身近にありそうな話なのでどちらの気持ちも想像できる。歌舞伎で何度か見たが、文楽は人形が演じるから役者のキャラを通さずに直接に話が心に伝わってくる。

鱶七が再登場してお三輪の最期となるが、この辺りの話は忘れていたので良い復習になった。

文楽 「夏祭浪花鑑」2018/09/09 14:50

2018年9月8日 国立劇場小劇場 午後4時開演 1階15列12番

歌舞伎では何度も観た「夏祭浪花鑑」。文楽は初めて観る。人間ではよく知っている役を全部人形で見るのは面白い。歌舞伎にあって文楽にはない部分もあって、終始飽きずに観た。
左右に字幕が出てくれるのがありがたい。歌舞伎では聞き取れないか意味がわからないままになっているものも、文字を見れば理解できる。

「住吉鳥居前の段」は歌舞伎と同じ。しかし団七の着替えを持ってきた三婦が「白旗を忘れた」と言って自分のを代わりに渡そうとするエピソードはない。

「内本町道具屋の段」と「道行妹背の走書」は歌舞伎では観たことがない。磯之丞は清七という名の手代として道具屋で働いていて、そこのお嬢さまのお中と深い中。前の段に琴浦が出ていたので、あれ、琴浦は?と思う。清七は仲買の弥一と義平次、番頭の伝八に騙される。ここに至る商人どうしのやり取りがなかなか面白かった。清七は弥一を殺して、お中と逃げる。「道行妹背の走書」は、はじめ心中風に二人で歩いているが、心中は三婦に止められる。お中は、追ってきた伝八に首の吊り方を教えてくれと騙し、木に手拭いを吊って首をかけた伝八の足を
清七がはらって実際に首つりをさせてしまう。そして、先刻自分が書いた「自分が弥一を殺した」という書置きを下に置いて、弥一を殺したのは伝八と思わせるようにした。

この後、「釣船三婦内の段」。ここで、琴浦がお中に嫉妬して磯之丞と喧嘩している。磯之丞は「若い娘がいる家で働かせる三婦が悪い」と言う。三婦は、「伝八が残した書置きが伝八の手ではないという噂があるので、安全のために磯之丞を遠くへやりたい」と言う。
歌舞伎では観たことがない前の2段を観た後では、琴浦と磯之丞の諍い、磯之丞を遠くへやることの必然性がわかる。そして、「若い娘がいる家で働かせる三婦が悪い」という言葉は、次に出て来るお辰に三婦が「顔に色気がある」と言って磯之丞を預けることを拒む伏線になっている。
お辰は、文楽でもやはりすごくかっこいい。文楽では、お辰が花道を引っ込むときの「ここじゃない、ここでござんす」のやり取りはない。

クライマックスの「長町裏の段」は、歌舞伎とほとんど同じではないだろうか。あの立ち回りを、全部人形がやるのが凄い。文楽の方が歌舞伎より先なんだとすれば、よくあんなこと考えたと思う。台詞がない立ち回りに見とれた。
神輿と人波が入って来るシーンが面白かった。団七はそれに紛れて行く。歌舞伎では大抵はこれで終わりだが、文楽は「田島町団七内の段」というのがある。歌舞伎でも、この段をやったのを観たことがあるが、団七が踊りながら祭りの人波についていくので終わる方が芸術性が高いと思う。

国立劇場 9月文楽公演 第二部2017/09/23 01:17

2017年9月12日 国立劇場小劇場 午後4時開演 14列23番

『玉藻前曦袂(たまものまえあさひのたもと)』

人生三度目の文楽。動物が出るのを始めて観た。狐はとても良かった。
文楽の語りは腰元なんかのところが面白い。
側室たちが集まる「廊下の段」や傾城が裁きを行う「訴訟の段」が目新しくて面白かった。一番面白かったのは最後の七変化。雷が三味線を弾いたり、娘や夜鷹の人形とか次々に出て、派手。歌舞伎のようなこんな派手な終わり方の文楽は始めてで、興奮した。

小劇場の休憩時間、ロビーで知らない人と向き合って食事をとるのも面白かった。また行きたいと思った。