国立劇場 6月 歌舞伎鑑賞教室 「連獅子」2018/06/06 01:26

2018年6月2日 国立劇場大劇場 午後2時半開演 3階8列22番

「歌舞伎のみかた」
巳之助は舞台後方に立っていて、舞台の奥の深さを強調した。きょうは、生徒を舞台に上げていろいろさせるタイプ。二人上がってきた。演目が踊りなので舞台には所作台が置いてある。
すり足の仕方、見得、扇の使い方などを指導し、最後は花道を通ってすり足ではけた。
巳之助の解説は明瞭でわかりやすい。噛まないだけではなく、聴いている人にわかりやすいようなメリハリをつけている。「山や谷」の言い方とか。この仕事をするにあたって、誰かに指導されるのだろうか。
「連獅子」のストーリーの説明用に四枚の絵が出てきた。上手から、石橋、牡丹と獅子、崖の上と下に離れた獅子の親子、宗論の二人。巳之助は「ポップな絵」と表現していたが、ヘタウマな味わいがあって印象的。
最後は、また歌舞伎が観たいと思ったら~ということで、八月のNARUTOの宣伝をした。

「連獅子」
又五郎、歌昇親子の連獅子を観るのは何年か前の巡業以来だ。あのときは歌昇の熱血仔獅子に萌えたが、きょうは、あの時ほど格好つけた感じはしなかった。だが狂言師の衣装と赤い色が似合って、ほんのりとした色気を感じた。又五郎は全く外連味なく名人の踊り。

宗論は、隼人と福之助。巡業のときに種之介が踊った浄土の僧を隼人が踊り、隼人が踊った法華の僧をきょうは福之助が踊る。浄土の僧の方が難しい踊り。隼人は法華の僧の方が見映えがして似合うような気がした。福之助は踊りはしっかりしている。

又五郎と歌昇が獅子の格好になって花道から出てきた。仔獅子が花道を後退るときの足の運びが上から見えた。獅子の踊りはわりとあっけなくて、すぐ毛振りになる。毛の量や質が違うせいもあるのだろうが、又五郎の毛は先が最後にくるんと丸くなるのに、歌昇の方は丸まり方が不完全に見えた。毛振りの最後、歌昇は高速でグルグル回した。

切られの与三2018/05/20 20:29

2018年5月17日 シアターコクーン 午後1時半開演 2階Ą列26番

歌舞伎風演劇だが、なかなか面白かった。七之助は見た目の雰囲気は与三郎にぴったり。普段歌舞伎の源氏店で見る男らしい与三郎と比べると情けない優男だが、見染めの場との連続性があって、ある意味、与三郎の実像はこんなもんかな、と納得がいく。

見染めの場から玄冶店までは、頭の中で歌舞伎と比較していた。
見染めの場、与三郎は舞台端の段のところに腰かけていて、お富(梅枝)とぶつからない。落ちた羽織は落ちたまま。
蝙蝠安(笹野高史)が傷だらけになった後の与三郎を連れ歩いて面倒をみている様子がわかる。与三郎の傷を見ると相手が金を投げ出して逃げる様子が面白い。
玄冶店のお富の家には女中はいなくて、藤八(亀蔵)と二人だけになっていた。お富に言い寄ってはいるが、化粧してもらったりあれやこれやは、なし。
蝙蝠安といっしょに来た与三郎が、安がゆすっている間にお富の顔を見て気が付くところは、二人に照明が当たる。
与三郎が「御新造さんへ、」という台詞の前の態勢に入ると客席が静まり返る、という状況をここでも体験できて感動した。台詞の「しがねえ恋の情けが仇」の後、「命の綱の切れたのを」以降はバックミュージックが流れる。
多左衛門役の扇雀は、落ち着いた大人の感じ。

玄冶店までで終わりかと思ったら、続きがあった。多左衛門にもらった金を使い果たした二人が金を作る相談をしているところに安が来て、会津屋の旦那の話をする。梅枝が「大店で会ったことがある」と言ったが「賭場で会ったことがある。大店の旦那だね」と言うべきところだったようで、客席と笹野が、やっちゃったな、という雰囲気になり、梅枝が恥ずかしがっていた。

梅枝は見染の場で通路に登場したときから歌舞伎味が強く、玄冶店もうまい。色っぽいところは色っぽく、与三郎に対しては年上女房風。
七之助の与三郎は可愛くて、梅枝に食われ気味だったが、二度目の休憩の後は、走ったり馬跳びなどがあって大活躍だった。普段はお目にかかれない太腿を露わにした姿も見られた。

扇雀の二役目の久次の最後は、玉手御前の戻りを思い出した。

最後の場は飛行機雲ができているような青空の下、与三郎が一人座って、「しがねえ恋の~」の台詞を言う。「与三郎の青春」という感じだった。

歌舞伎座百三十年 四月大歌舞伎 夜の部 「絵本合邦衢」2018/04/18 01:54

2018年4月17日 歌舞伎座 午後4時45分開演 1階9列41番

「絵本合邦衢」を観るのはこれで4度目だが、今回が一番良かった。主人公二人の、一切悔い改めることのない、徹底的な悪がいい。いかにも歌舞伎だ。

自分のブログを読む限り、国立でやった2回と話はそんなに変わらないようで、今回良いと感じた理由はよくわからない。太平次は、相変わらず大学之助が「殺してやった」で終わるわけで前回不満を感じた部分もそのままだ。

仁左衛門は大学之助の声は太くて、風邪かと思うようなガラガラ声だった。太平次のときは普段の仁左衛門の声だったので、わざと違う声にしていたのだろう。序幕の最後、開いた扇子の後ろで舌を出す大学之助が面白い。

今回の与兵衛は錦之助だった。愛之助のときは和事と感じたが、錦之助は特にそう思わなかったが、なかなか良かった。

うんざりお松は時蔵。強請に行くときの衣装が前回とは違うような気がする。

今回はお米の役が梅丸。太平次役の仁左衛門に縛られる。そして、最後に孫七(亀蔵)といっしょに太平次に串刺しにされて殺される。

最後の幕は、大きな閻魔の後ろから大学之助が現れる印象的な場面。自害したふりの弥十郎夫婦に殺される。騙し合いが最後まで続くわけだ。

大学之助が刺されて断末魔の後倒れて死んだ、と思うとすぐ起き上がって「こんにちはこれぎり~」となる。これも国立の時と変わらない。

歌舞伎座百三十年 三月大歌舞伎 夜の部2018/03/25 20:03

2018年3月24日 歌舞伎座 午後4時半開演 1階14列12番

「お染の七役」

小梅莨屋の場
部屋の後ろに莨の葉が干してある。「岡崎」を観たときにもこうやって干して合って、あの時は莨の葉を刻む様子を見るまでは魚だと思っていた。
幕が開いてしばらく、土手のお六(玉三郎)と中間の三平(功一)が座ってしゃべる。綺麗な二人。
鬼門の喜兵衛(仁左衛門)は花道から出て来る。仁左衛門にぴったりの役なのに演じるのが41年ぶりとは。私が歌舞伎を観始めるずっと前ではないか。以前、玉三郎のお六で観たときは喜兵衛は團十郎だった。
莨を買いに来た嫁菜売り(橘太郎)が、髪結(亀蔵)に髪を直してもらいながら、傷をつけられた謝罪として油屋に袷と金をもらった話をする。そして、木綿物なら繕い物を請け負うというお六に袷と、着ていた羽織を預けていく。その着物を使って、桶の中の死人に着せ、油屋に連れて行って強請り、必要な百両を作ろうとする夫婦。桶の中の死人は丁稚の久太(吉太朗)で、死んだまま喜兵衛に帯を解かれる。帯を長く引っ張って決まる喜兵衛の姿を見た覚えがある。

油屋の場
夫婦の強請の場は十六夜清心を思い出すが、十六夜の方が若いせいかビッチ度が高い。お六は油屋(彦三郎)にしゃべるときは怖いが、旦那としゃべるときは女らしい。
錦之助演じる山家屋清兵衛が、死体はまだ死んでない、と言い、灸をすえさせる。昨日の嫁菜売が昨日の礼を言いに来る。自分の着物を着て倒れている死体を見て驚くが、死体は息を吹き返す。
吉太郎は息を吹き返して台詞を言い、花道でも黄色い布を使って一しきり所作をした。若い子が一生懸命やっている感じではなく役になり切っているのがすごい。歌舞伎座で、仁左衛門と玉三郎が出る人気の舞台で目立つ役をもらえてラッキーだ。
強請に失敗した夫婦は駕籠を担いで引き上げる。

「神田祭」
これはずいぶん前に一度観た。二人がいちゃいちゃする以外に何の内容もない演目だなと思ったが、今回の感想も同じ。綺麗な二人が寄り添ったり頬を寄せたり互いの着物を直したりするのをただうっとりと眺めていた。

「滝の白糸」
30年以上前に玉三郎と吉右衛門で観た。話は知っていると思っていたが細かいところは忘れている。
石動の茶屋の場では蚊帳の中で寝ているのが白糸(壱太郎)。太夫元が秀調、一座の先乗り新助は千次郎、春平は歌六、松三郎は亀蔵、桔梗は米吉。弟子のみどりが吉太朗。出刃打の南京寅吉が彦三郎。
水芸の舞台は楽しい。玉三郎の「はい」「はい」という声を覚えている。
村越欣也役の松也は、次の卯辰橋で登場する。
欣也に仕送りする金に困って強盗を働くことになる原因はこういうことだったのか、と再認識した。
法廷の場面は、玉三郎が背を向けて立っていたのと上の壇から吉右衛門が玉三郎に語りかけていたのが記憶にあるので、欣也は判事になったのだと思っていたが、検事なのだ。戦前の裁判制度で、検事も裁判官と並んで座っている。
白糸は被告だと思っていたが、これも違った。被告は南京寅吉で、強盗で起訴されている。そして、白糸から金を奪い、凶器とされる出刃はそのときに投げつけた、と主張している。白糸は証人で、金は盗られていない、と言う。南京寅吉役の彦三郎が、いつもと違う感じで面白かった。
ずっと黙って聞いていた欣也が、最後に白糸に向かって「待て」という声がいい。その後の台詞もなかなか聞かせた。言い聞かされて、金をとられたことを即座に認める白糸もいい。
欣也は席を立ち外に出て行って、間もなく銃声が聞こえ、法廷では白糸が舌を噛み切った。廷吏が欣也が自殺したと告げる。最後が短時間で片付くのが気持ちがいい。

勘九郎・七之助 春暁特別公演 20182018/03/19 22:48

2018年3月18日 なかのZERO 午後3時半開演 2階7列31番

なかのZEROは、元同僚のバレエの発表会を見に毎年行くところだが、歌舞伎を観たのは初めてだ。花道も回り舞台もないが、歌舞伎の巡業でもやってくれると、近いので嬉しい。

「芸談」
 
フジテレビのアナウンサーが司会。きのう桜が開花したので、花見について。午前中は、大道具さん主催の花見の話を聞いたが、ご家族での花見の思い出はあるか、という質問。家族の花見の思い出はないそうだ。幕内の花見だと、予定した日に雨が降ったりしても大道具が桜を持って来るので困らないらしい。
この次は、咲いた桜から逃げるように北海道での公演。塩ジンギスカンがおいしい店があって、勘九郎は大河ドラマの役の都合で食事制限をしているが、塩ジンギスカンは絶対に食べに行く。
大河ドラマの役はマラソンランナーで、中学生のときから始まる。歌舞伎なら羽二重で引っ張るし化粧でどうにでもなるが、映像、それも4k。しかし、中学生に見せるコツを会得した。口角を上げて、目を大きく開ける。
年取ってからは、特殊メイクになる。
歌舞伎の化粧を落とすには、今、水クレンジングを使っている。そういう化粧品に詳しいのは新幸四郎。水クレンジングも幸四郎が教えてくれたが、実は七之助は知っていた。「エターナル近松」のときに短時間で拵えを変える必要があって使ったから。それを言ったら、幸四郎は「普段使ってないでしょ。僕の方が先」と言った。負けず嫌い。
きょうの演目の1つ「浦島」は、浦島太郎の話で、勘三郎の前で踊ってみせた時に、「それいいから、お前踊れ」と言われた。どういう教訓なのか、不思議がる勘九郎に、フジテレビのアナウンサーは、ある番組のために調査したところ、浦島太郎は実はハッピーエンドだった、と言う。乙姫が亀で、浦島は鶴で結ばれる話だったが、明治時代に教科書に載せるためかなんかの理由で太政官が後半を変えたのだそうだ。「すごいことしますね」と驚く兄弟。私もびっくりした。ということで、きょうの浦島は、最後は鶴になってもらえますか、とむちゃぶりをされていた。

客先からの質問。好きな酒について。勘九郎はハイボール。氷結ストロングが好き。七之助は特に好みはなく、シャンペン以外なら飲む。
全国を回っていると、ホテルで怪談のような経験はないか。そういう経験は、あるそうだ。
最後の質問に対し、勘九郎は欅坂46のファンで、欅坂46について熱心にしゃべった。

「鶴亀」
従者役の仲侍がうまかった。

「浦島」
2010年9月の錦秋特別公演で、当時の勘太郎が踊るのを観た。あの時と同じく、玉手箱を開けて老人の姿になってからの踊りが、腰をぐっと下ろした姿勢で、見ものだと思う。芸談のときのリクエストに応え、最後は鶴の羽ばたきのように腕を大きく動かしてくれた。

「枕獅子」
鏡獅子の原曲になっている作品だが、鏡獅子の方をよく知っていると、鏡獅子の女形バージョンという感じ。
七之助は黒地で左側が水色の打掛。衣装にはピンク、赤、黄色、黄緑、と色がたくさん使ってあるのにおかしくなくて、目を楽しませるものになっている。引き抜きがある。
差し金の蝶が二羽飛ぶ中で踊っている姿を見て、福助か時蔵でも観たことがあるのを思い出した。
獅子の姿になる前には、胡蝶ではなく禿二人が踊る。鶴松と國久。
七之助が獅子の姿になって出てきて3人でいっしょに踊る。最後の方は気振りがあって、七之助が最後に男になったような感じがした。

歌舞伎座百三十年 三月大歌舞伎 初日 昼の部2018/03/08 23:03

2018年3月3日 歌舞伎座 午前11時開演 1階4列14番

「国姓爺合戦」
舞台は唐の獅子ヶ城。これが近松門左衛門原作と聞くとびっくりするが、エキゾチックな話で観客の興味を惹こうとしたのだろう。城壁の後ろに立っている兵隊たちも、錦祥女(扇雀)の衣装も外国のもので、和藤内(愛之助)は押し戻しのような衣装。母親の秀太郎だけが和の着物。その着物をおかしいと言う次女たちの話が面白い。
話全体としては和藤内が主役なのだろうが、この幕は母親と、義理の娘の錦祥女をめぐる話だった。和藤内は荒事を見せる。花道で、愛之助の足の親指が上に反り返っているのが見えた。

「男女道成寺」
先代雀右衛門の追善。友右衛門が明石坊という役で口上を述べる。
所化は歌昇が先頭で、竹松、壱太郎、廣太郎、米吉、橋之助、男寅、と続く。

花子は雀右衛門、桜子実は狂言師左近は松緑。ありがたいことに、松緑の踊りがよく見える席だ。美人ではないが可愛い桜子。もう少し長く観ていたかった。

雀右衛門は踊りはうまくないが、一人で踊るパートは情感豊かで良かった。

松緑の撒いた手拭いの1つが足元に落ちたので拾った。

「芝浜革財布」
大きなくしゃみが聞こえて客が笑った。客の誰かのくしゃみかと思ったら政五郎役の芝翫だった。金杉橋の近くに勤めていたことがある。江戸時代はあんな場所だったか。

女房のおたつは、こういう役にはぴったりの孝太郎。松之助の納豆売りから納豆を買う。納豆売りは、藁苞を開いて中の納豆を取り出し、おたつが出した小鉢に入れ、そこにカラシもつける。

誘われて家に来て飲む友人たちは弥十郎、松江、橋之助、福之助。弥十郎と松江は自分の女房の惚気を言っていて、ずいぶん上品な飲み会。橋之助と福之助は成長した。

愛之助の部屋子になった愛三郎が丁稚の役で出る。政五郎が「愛坊のところに入った丁稚か」のように声をかけてくれる。

二月大歌舞伎 夜の部 初日2018/02/04 23:08

2018年2月1日 歌舞伎座 午後4時半開演 1階16列31番

「熊谷陣屋」
相模は魁春。前に観た芝雀の相模と違って口で言うことが本心に聞こえるのが残念。その雀右衛門は藤の方。
堤軍次は鴈治郎。
梶原が芝翫で、義経は菊五郎。四天王は歌昇、萬太郎、巳之助、隼人。
何度も観た覚えがある左團次の弥陀六は流石にうまかった。
染五郎時代に花形の熊谷を観たことがあり、その時は悪くない印象を受けたのだが、今回は周りを先輩に囲まれているバランスからか、あまり良くなかった。

「壽三代歌舞伎賑」

舞台下手に座っていた我當は呂律が回らず、引き上げるときは、たぶん千次郎ともう一人出てきて、肩につかまって運ばれるような感じだった。
藤十郎の音頭で手締めがあった。
両花道に男伊達と女伊達が並ぶとき、私の席からは女形が後ろから出て来るのがよく見えた。真ん中あたりにいた梅枝は若くて背も高いので目立っていた。男伊達と女伊達が交互に台詞を言って、最後の秀太郎の台詞が終わると間もなく、後ろから黒衣が出てきて秀太郎の腰を支えていた。
玉三郎と梅玉が花道から出て来る前に舞台の上で仁左衛門、藤十郎、菊五郎、吉右衛門のうちの誰かが台詞が出てこなくなったようで、結局どうなるのが正しかったのかはわからないまま。
玉三郎と梅玉が舞台に出てしばらくして、梅玉が襲名の三人で口上をするように促して、三人は舞台後ろに入った。
舞台上が空になった後、三人が並んで座った台が出てきて、口上になった。最初に口上を述べた白鸚は声がよくてしっかりしていて、やっぱりまだ幸四郎はこの人にかなわないと思った。

「仮名手本忠臣蔵 七段目」

由良之助役の白鸚は良かった。染五郎が力弥役。

私の席からは二階から玉三郎が現れるのを正面に見ることができた。由良助の読む手紙を、おかるが二階から、九太夫(錦吾)が縁の下から読もうと試みるシーンはいつ見ても面白い。

仁左衛門と玉三郎の兄妹は、いつもながら美しい。前半の喜劇調のところも、「髪の飾りに化粧して」から始まる悲劇調のところもうっとりする。「あにさん、わたしゃどうしょー」というおかるに「もっともだ」とだけ言って応じる兄。「どうしょー」と最後に抱きついた形が素晴らしくて、あれで幕でも良かった。この二人の「桜姫東文章」を観て歌舞伎にのめり込み、30年以上いろいろ観てきたが、私が観たいのは結局これだ。

新春浅草歌舞伎 2018 二部2018/01/31 00:26

2018年1月24日 浅草公会堂 午後3時開演 1階そ列31番

挨拶は隼人。口上のときのような拵えで歌舞伎町で挨拶した後、マイクを取り上げて普通のしゃべり方になる。公演も最後に近づいたので、各役者の今後の予定を教えてくれた。

「操り三番叟」
隼人は衣装を変えて千歳の役、錦之助が翁。隼人は踊りがうまいわけではないが、手足が長くて見映えがする。錦之助は翁にしてはいい男過ぎるかも。

種之助の三番叟は、今月一番感動した。三番叟は好きだが、操り三番叟は好きではなかったのだが、種之助の踊りを観て初めて魅力がわかった。操られているように踊るのは、普通に踊るより技術も筋力もいる。種之助は、人形であることが目立つような動きだけではなく細部まで忠実に人形として動いている。踊りは元々うまいが、その技術と、今の若さが持つ筋力、心肺機能が揃ったときにだけ、今月の種之助の三番叟のような踊りが踊れる。10年先に同じように踊れるとは思わない。今月は、踊り手にとっても観客にとっても幸せな時間だったと言うべきだろう。

几帳面な感じの梅丸の後見が良く、端正なコンビだった。

「引窓」
これはうまくできた話で、与兵衛の役者によって、与兵衛の性格が微妙に変化するのも面白いが、歌昇は、わりと普通で、特に個性を感じなかった。
松也の濡髪は体格から言って、ニン。
米吉のお早は、今まで観たお早の中で一番、女郎上がりというのがよくわかる色っぽさ。

「京人形」
新悟の京人形と聞いて不安だったが、すごく良かった。人形なんだから、大きいのも自然な気がする。縦長の大きい大の字になるのもインパクトがあるし、急に女らしくなる動きとのギャップが大きくて、面白い。
甚五郎役の巳之助は丁寧に踊っている。種之助が、女房のおとく。磯之丞だの与五郎だのをやっていた頃と比べると関西弁も板についた。

初春大歌舞伎 高麗屋襲名 昼の部2018/01/10 00:35

2018年1月9日 歌舞伎座 午前11時開演 1階10列27番

「箱根霊験誓仇討」

初めて観る演目。

冒頭、初花(七之助)が、勝五郎(勘九郎)が乗るいざり車を引いて、花道を出て来る。舞台には奴筆助役の愛之助が登場する。

筆助が花道から引っ込んだ後、勝五郎と初花の台詞や立ち回りがあった後、愛之助2役目の滝口上野が舞台に登場。滝口上野は勝五郎の兄の敵で初花に横恋慕している。

初花の母の早蕨(秀太郎)も滝口上野に捕まっている。初花は、滝口上野の隙を見て殺すように勝五郎に言われて、滝口上野に引き渡される。

白滝の場で、勝五郎の足が立つ。最後は、命を落とした初花の姿が舞台の後ろの上の方に現れて「霊験」という雰囲気になるが、「いざりの仇討」というタイトルのような仇討シーンはなくて全体として退屈。愛之助の二役も、早変わりの楽しさがあるわけでもない。途中で寝てしまった。

「七福神」

恵比寿の又五郎を中心に、弁財天の扇雀、寿老人の弥十郎、福禄寿の門之助、布袋の高麗蔵、毘沙門の芝翫、大黒天の鴈治郎。
お正月らしい踊りで、夜の部の踊りより良かった。あまり見る機会はないが、高麗蔵はけっこううまい。


「車引」

七之助の桜丸が綺麗だった。女形がやる役だが、桜丸の顔が綺麗だと思ったのは初めてだ。七之助は骨格が綺麗なんだろう。

梅王丸の勘九郎は当然ながら形が綺麗に決まる。

杉王丸の廣太郎は成長したと思う。

松王丸の新幸四郎は、3年前に愛之助、菊之助といっしょにやったときは主役、という感じがしたが、今回は他の二人がわりと長身のせいか、少し影が薄い印象を受けた。

「寺子屋」

幕が開くと猿之助の涎くりが見えて、無事な姿にほっとする。しかし、左腕のあたりが、なんとなくいつもの猿之助ではない感じがした。元気そうだが、涎くりとしては、前回の歌舞伎座の弘太郎の方が子供らしくて好きだ。迎えに来る父親役が東蔵。いつもは涎くりが父をおぶって引っ込むのだが、今回は手をつないで引っ込んだ。

梅玉の源蔵はたぶん何回か観ている。無駄なものをそぎ落として磨きこんだ源蔵、という感じ。
戸浪の雀右衛門、幸四郎の松王丸、魁春の千代、みんな危なげのない演技。

藤十郎の園生の前は、段を上がったときに少し後ろに傾く感じがあってひやりとしたが、息子の菅秀才の横に座って優しいお母さんだった。

新春浅草歌舞伎 2018 一部2018/01/05 21:56

2018年1月5日 浅草公会堂 午前11時開演 2階ぬ列17番

電車の接続が悪くて公会堂に着いたときは挨拶が始まっていたので、終わってから席に着いた。

「鳥居前」

義経は種之助。顔だけでなく声も又五郎に似ている。四天王の一人の声に聞き覚えがある、とプログラムを見たら片岡當十郎だった。
静御前は梅丸。高音がよく出るようになった。
弁慶は歌昇。まずまずの出来。
逸見藤太は巳之助。浅草歌舞伎の最年少だった頃を思うと、とても成長した。最近は声が裏返ったりしなくなった。
狐忠信は隼人。台詞がイマイチ生な感じがするが、見た目は立派。隼人の六方を初めて観た。

「御浜御殿綱豊卿」

茶屋前の場では、江島役の新悟の台詞が一番すっきりして良かった。綱豊役の松也は、いつもは美声だと思うが、この役に関しては台詞がしつこくてお腹にもたれる感じがする。

途中で眠ってしまって、新井白石役の錦之助は全く記憶にないし、助右衛門が入って来たところも覚えていない。
助右衛門の役は10人近い別の役者のを観ていると思うが、巳之助はその中で上の部類。一生懸命な感じと、心情がよくわかるところがいい。松也の方は、感情過多に感じる。殿様なのに必死過ぎ。この役に関しては私の好みは仁左衛門よりも梅玉だから、もう少しクールな感じがいい。
米吉のお喜世は良かった。