伝統芸能の今 20142014/05/20 08:24

2014年5月15日 浅草公会堂 午後1時開演 1階け列27番

客席に入ったら出演者たちがプログラムを売り歩いていて、私は逸平から買った。

一、上妻宏光 「津軽じょんから節」「紙の舞」

二、「三番三」

上妻宏光がそのまま真ん中で三味線を弾いて、大鼓(広忠)、小鼓(傅次郎)、笛(傳十郎)が加わり、逸平が舞う。逸平の三番三が一番好きだ。ただ、三味線との共演は興味深いけれども、三味線はない方が良かった。音もそうだが、真ん中にいると逸平の動きが制限されてしまう。

三、「空破」

振付の猿之助が踊り、作曲の上妻、作調の傅次郎が演奏。
これは良かった。扇を持った手の動きが素晴らしく、ああ、やっぱり猿之助は踊りうまいなあ、と嬉しくなった。正月の浅草を思い出した。

四、「風林火山」

大河ドラマのときのテーマソングが流れて猿之助が踊るので、際物だが、猿之助の踊りがうまいので、そんなに鼻白むこともなく見られた。
トークのときに言っていたが、大河ドラマの後のナントカ紀行の音楽は年に4種類あって、その一つが上妻の作曲だったのだそうだ。

五、「トーク」

初めに、がんの子供を守る会理事長の山下さんと、世界の子供にワクチンを日本委員会理事長の細川佳代子さんのお話があった。
天然痘予防接種の痕があるのは年取った人だそうで、傅次郎は「僕はギリギリないんです。逸平ちゃんもないでしょ」広忠はあるようで、あの辺が境になるらしい。

「伝統芸能の今」は6年目になるそうで、紀尾井ホールで亀治郎が越後獅子を踊ったあたりが最初になるのだろうか。あのときはトークのときに三兄弟 と溶け合ってない感じがしたが今ではすっかりなじんでいる。
広忠はプログラム購入のお勧めとか寄付を促す発言がなかなか思い切っている。猿之助よりも人に気をつかわない感じで、広忠はやっぱり面白い。能の方は大鼓が中心なんだけど歌舞伎の方だと一番下っ端で・・・と言っていた。

次の演目「石橋」は狂言ではどんなものなのか逸平が話し、猿之助は、後ろに滝があってそこで獅子が髪を洗う、その水を表すように胡蝶がさらしを動かすけど、蝶々は手がないのにどうしてさらしを持てるのかとか、そういうことは一切考えないで見てください、と言った。

六、「石橋」

着物の柄のような牡丹の花が咲き乱れる山の中にかかる石の橋。後ろに滝も描いてある。今まで、なぜ「石橋」なのか知らなかったが、こういう話だったのか。
上手に、広忠も混じって座る。太鼓は傳九郎。

最初に仙人(逸平)が出てくる。
仙人がいなくなって、いつもの獅子が出そうな演奏があって、出てくる猿之助の獅子。胡蝶は段一郎と笑羽。

猿之助の獅子は悪くないが、きょう一番気に入ったのは「空破」だった。

舞と鼓の調べ2014/03/02 15:16

2014年3月2日 学習院創立百周年記念会館正堂 午前11時開演 2階席に08

学習院は過去に何回か行ったことがあるが、目白駅からこんなに近かったのか。駅の近くの信号を渡ったらいきなり門があったのでびっくりした。創立百周年記念会館は、そこから少し歩いた正門に近いところにある。

きょうの席は二階下手の、舞台を斜めに見る列の通路際で、前の席がないので、遮るものもなく舞台がよく見えた。
常陸宮妃がお出ましだった。

学習院桜鞍会チャリティー公演なので、最初に会長の斎藤公男さんが挨拶。桜鞍会は学習院馬術部の卒業生の組織なのだ。愛之助のことを「今人気沸騰中の歌舞伎役者」と紹介してくれた。

次に出てきたのは三響会の三兄弟。三人とも学習院の卒業生で、傳左衛門は子どもたちが幼稚園に行っているそうだ。
愛之助が出て来て「僕だけ学習院に何の関係もなくて、自分がこんなところにきて良いのかと。宮様がここで演奏してるのをテレビで見たことがあるなあ~と」と関西アクセントで言う。白い着物に紫の袴。
次に出て来た鷹之資は着物も袴も青系統。傳次郎にインタビューされ「きょうは学習院の生徒として一生懸命踊ります」(何が難しかった?)「毛槍を持って踊るのが難しかった」

一、一調「放下僧」 亀井広忠、観世喜正

久しぶりにきく広忠の大鼓。このホールは結構響く。

二、能 歌舞伎 「船弁慶」 愛之助 梅若紀彰

広忠が言っていた珍しいもの、というのはこれだろう。
下手に地謡の観世喜正と小島英明、中央に三兄弟と笛方、そして上手には長唄と三味線が三人ずつ。
シテの梅若紀彰が静のパートを舞っている間は長唄三味線と太鼓はただ控えているだけ。静がひっこみ、観世喜正が「あら不思議や~」としばらくうたった後、三味線と長唄に変わり、それがひとしきり続く。
愛之助が踊る知盛は歌舞伎だが、「桓武天皇九代の後胤~」とうたうのは地謡。愛之助は挨拶のときと同じ格好で長刀を手にして出て来た。いつも思うが素踊りに向いている。役者顔だからだろう。いつものように、眉を上下させて表情を作っていた。
花道でやる最後のクルクルはどうやるのかと思ったら、舞台を上手から下手へ、下手から上手へと何回か行き来していた。演奏が太鼓と笛だけになり、いよいよ知盛が長刀を肩に担ぐとクライマックスだ。この態勢でゆっくり回ると、顔の表情に手負いの色気が漂う。いつもは花道だが、舞台上でじっくり眺めるのも良いものだ。最後に下手で高速クルクル。盛り上がって盛大な拍手を浴びた。

この後20分の休憩。

三、「獅子」 広忠、傳左衛門、傳次郎

前の演目に続き、これもテンション高い。鼓と笛と咆哮、カタルシスがある。

四、舞踊 「関三奴」 鷹之資

幕が開く前に「待ってましたあ!」と大きな掛け声。幕が開いてからは「天王寺屋!」と何回もかかった。

初めて観る踊りだ。難しかったという毛槍は見事に扱えていた。毛槍を持たないときの踊りが上級の難しいものに見えて、中学2年にとってはかなり大人っぽくて大変だったろうと思った。

至高の華 道成寺二題2013/08/09 23:01

2013年8月9日 大阪フェスティバルホール 午後6時開演 1階2列21番

「お話 道成寺縁起 絵とき」

道成寺住職の小野俊成さんによると、道成寺の舞台を観るのは仏様に手を合わせるのと同じで、道成寺を舞うのはお経を上げるのと同じだそうだ。きょう、梅若玄祥は大阪での舞い納めで、藤間勘十郎は初めて踊るという。
小野さんが、絵巻物「道成寺縁起」を台に置いて広げ、ときおり紙を巻いて新しい箇所を見せながらお話をしてくれる。雰囲気的には紙芝居のおじさん。小野さんは上手寄りにいて、真ん中のスクリーンに拡大した画が映るが、スクリーンは白黒。絵巻物はカラー。
初めてちゃんとお話を聞けて良かった。日高川が出てきて、ああ、ここから「日高川」という演目ができたのだ、と思った。

「長唄 京鹿子娘道成寺」

下手から種之助が「きいたかきいたか」と言いながら出てくる。「きいたぞきいたぞ」と続くのは米吉、廣松、梅丸。みんな袴姿だ。4人の役は「強力」。勘三郎が踊ったときに勘十郎と2人で作った演出だとプログラムに書いてある。

4人が正面を向いて並んで順に台詞を言う。私の正面あたりに梅丸が立っていた。廣松が綺麗になった。年頃だもんな。

白拍子役の勘十郎は下手から出てくる。着物が藤色で袴は紫と言って良いのか、よくわからないが、両方ともくすんだ地味目の色。

きょうは前過ぎて足先が見えないのが残念だが、繊細な指の動きがよく見えた。やわらかい上半身の動きと女らしい指の動き。決して細く長い指ではないのだが、美しい動きだ。時々聞こえる足拍子が良い。

途中で勘十郎がいなくなって、4人が踊る。4人とも踊りがうまい。

再登場の勘十郎は手ぬぐいを持っていて、恋の手習いを踊る。しなやかな動き。

鈴太鼓の踊りの後、白拍子は上手にある鐘の中に入って姿が見えなくなる。

しばらくして鐘の中から現われたときは白い着物に薄いグレーの袴。打杖を手にしている。

手を合わせた姿の4人の強力と打杖を持った白拍子の立ち回りがある。白拍子を真ん中に、4人が四角形を作るような形で囲むときもある。

最後は、白拍子は鐘の上に上り、打杖を持ち上げ、鱗模様の布を見せて決まる。強力たちはそれぞれ数珠を手にした形で決まる。

素踊りだから華やかさはないが、きびきびして若々しい道成寺だった。

「能 道成寺」

シテ 前シテ 白拍子、後シテ 蛇体 梅若玄祥
ワキ 道成寺の住僧 福王茂十郎、福王知登、喜多雅人
アイ 能力 茂山七五三、茂山逸平

能と歌舞伎の同演目を比較すると、今更ながら歌舞伎は娯楽性が高いものだと感じる。道成寺は三番叟よりも違いが大きい。能の道成寺は、きょう初めに聞いた「道成寺縁起」の娘の執念が終始前面に出ている。

「花のほかには松ばかり」という歌が能にもあるが、シテが自分で歌う。
白拍子が鐘に近づいて最後に烏帽子を外すのは歌舞伎と同じ。ただ歌舞伎のように上にかけるのではなく、下に落としていた。

鐘は、前の演目と同じものが同じ位置に置いてあり、白拍子はその中に姿を消す。梅若玄祥が鐘の下に立ったら後見の人が玄祥の身体を動かして位置を調節していた。面をつけていると正確な位置がわからないのだろう。

アイの逸平は初めから出ていたが、白拍子が隠れたら七五三が出てきた。顔も似ているが、体型が似ているのが印象的な親子だ。

白拍子は蛇体になって鐘の中から現われる。鱗模様の着物に変り、面も変る。打杖を手にしている。

住僧たちは悪霊退散というように、蛇体に向かって両手をすり合わせて数珠を鳴らす。結局、蛇体は力尽きて、橋掛かりに見立てた下手の方に静かに消えていく。蛇体の勝利宣言のように見える歌舞伎の最後とは全然違う。

この能を見て、前の演目の演出は能からとったものとわかった。強力は4人で数は違うが、住僧と同じく、打杖を持った蛇体と戦う。

第八回 三響会2012/10/28 17:15

2012年10月27日 新橋演舞場 午後3時開演 1階14列25番


一、一調一管による三響會の歩み

 「延年之舞~滝流し~」     

広忠の打つ大鼓を聴くのは久しぶりだ。

 「獅子」    傳左衛門、尾上菊之丞

菊之丞は唄も太鼓もうまいが、やっぱり踊りが一番だ。きょうのは直線的な動きが多かった。

「船弁慶」    傳次郎、藤間勘十郎

前半の静の舞の場面はなくて、知盛の登場から。 気づくと、音もなく花道に出てきた勘十郎が花道の、私の席の列の位置に立っていた。そのまま後ろに引っ込み、再登場して急ぎ足で舞台に向かった。
舞台には、船弁慶と言えば思い出す太鼓の傳次郎がいる。最後の引っ込みはやはり太鼓で盛り上がった。花道でクルクル回る回数は歌舞伎より少なかった。

二、舞囃子「小袖曽我」  広忠 
  
梅若紀彰と観世喜正が2人で舞った。観世喜正は三響会の催しでよく見るが、梅若紀彰は馴染みがないので事前に能に詳しい人にきいたら、イケメンという話で楽しみにしていた。


三、舞踊「供奴」 鷹之資

供奴は素踊りしたか観たことがない。今月の歌舞伎の「御所五郎蔵」の舞台のような中野町。そこに、奴の拵えで現われる鷹之資。花道七三のところでけっこう長く踊る。


四、半能「天鼓」     観世銕之亟

能はいまいちわからない。 しかしきょうは眠らなかった。


五、囃子による「三番叟」 
   
プログラムに名前はないが、中央下手の広忠のとなりに小鼓の佐太郎さんがいた。上手には傳左衛門、傳次郎と笛の福原寛。

後ろの段にも小鼓が並んでいる。

薄暗い中、猿之助はどこから出てくるのだろうとドキドキした。
三番叟の拵えをした猿之助は、三段目の後ろから、ポップアップでピョーンととび出てきた。きょう初めて客席が沸いた瞬間だ。

勘十郎の振り付けだが、初めに花道には行かなかった。烏跳び3回はあった。衣装をつけているせいか、跳躍の間の微妙な違いや、3回の跳躍の表情の違いを感じた。

鈴を持ってから花道に出た。片足で跳びながら舞台の方へ行く振り付けが猿之助らしいと思った。 手に持った鈴から小さい鈴が一つ二つコロッと飛んで落ちるのが見えて、あれも演出で全部落ちるのかと思ったが、そうではなかった。

最後は操り三番叟のときのように片足を前に伸ばして決まった。

セルリアンタワー能楽堂 平成二十四年 正月公演2012/01/02 00:53

2012年1月1日 正午開演

ここ数年、元旦はこの公演に行くのが恒例になった。

「祭り囃子」
傳次郎の太鼓、笛の人、それに中太鼓、鉦担当の人の4人で何曲かメドレー

長唄「連獅子」

小鼓の傳左衛門、太鼓の傳次郎。大鼓は広忠ではないが、元旦から「それ青陵山の~」という長唄と、獅子の咆哮が聞けて嬉しい。イヨーッ、オーッ、という掛け声と、傳左衛門が鼓の紐をギュッと絞って出すギリギリという音も。

舞踊「老松」

この公演を観るようになってから、春猿は、新年最初に見る歌舞伎役者になった。また明日の浅草で見る予定。

いつもは着物の色が華やか目だが、今年は黒。他の人たちと同じだ。
「老松」は、この公演を最初に観た年にも観た。おめでたい舞踊らしい。観ていて楽しかった。

舞踊の後、一度橋掛かりを歩いて引っ込んでから再登場し、挨拶をした。この公演に出るようになって十年目だそうだ。昨年は震災があったが、舞台人は舞台に出て観客の気持ちを癒すことが務め、というような話だった。

最後の手打ちのために傳左衛門、傳次郎が出てきた。傳左衛門は年男だそうだ。(四十八歳ではありません、と傳次郎) 今月、春猿は浅草公会堂、傳左衛門は平成中村座、ルテアトル銀座、演舞場と三座掛け持ち、傳次郎は松竹座だそうだ。

獅子虎傳阿吽堂 VOL. 62011/11/28 22:22

2011年11月27日 世田谷パブリックシアター 午後6時半開演 1階O列上手

7月の「伝統芸能の今」は土壇場で仕事が入って行けなくなったので、三兄弟を見るのは久しぶり。きょうは、萬斎と染五郎という「2大スター」がゲストのせいか、1階の後ろ半分の脇に、立ち見客までいた。そんな中で、ものすごく見やすい席で見ることができたのは三響会さまのおかげです。

壱 歌舞伎囃子『「勧進帳」より延年ノ舞・滝流し』

歌舞伎囃子なので、広忠は出ない。大鼓は、田中傳八郎。歌舞伎用の、黄色っぽい皮の大鼓だ。笛は福原寛。そして、 三味線が今藤長龍郎、龍市郎、杵屋勝正雄。

弐 一調『八島 後』

萬斎と広忠。最初に南座で観た三響会のときにも聴いた。きのう愛之助が踊った「屋島」にも、これにも「思いぞいずる壇ノ浦」という言葉が出る。

久しぶりに聴く広忠の大鼓の音が心地よかった。

参 レクチャー

前に張り出した正方形の舞台に椅子が五脚置かれ、二と三に分かれているようだった。先に三兄弟が出てきて自己紹介した後、萬斎と染五郎が出てきた。二人ともきれいな男だが、染五郎は背が高くて等身が違い、色男だ。染五郎が好きな広忠は「やっぱり近くでみるとかっこいいですね」と言っていた。

この後の演目「二人三番叟」に関連して、三番叟についての話題が多かった。操り三番叟の中で、三番叟が後見の引く糸に操られているように見えるシーンは、二人とも音楽に合わせているのだと思っていたが、染五郎の話では、後見が糸を引く動きをする前に、三番叟の後ろで足を一歩踏み入れてトンと音を出すのが合図で、伏せている三番叟が腕を動かすという。染五郎は、三番叟が操られているように歩いてくるところとか、片足を滑らして足を開いて閉じる動きなどを見せてくれた。足の動きがよく見える席だったので、よくわかった。操り三番叟のときは、足が見えるように普段より短か目に袴をはくのだそうだ。「ムーンウォーク風ですね」と言われ、ムーンウォークもして見せた。


四 三響會版『二人三番叟』

レクチャーのときに傳次郎が、この劇場の照明のすばらしさに触れていたが、それを意識して観ると、確かに照明が効果的に使われている。

お囃子、三味線、長唄は舞台後方にいる。
最初、萬斎が下手、染五郎が上手に控えていて、その二人のいる場所だけが明るくなっている。萬斎が先に踊った。萬斎の三番叟を観るのは四回目だが、今回が一番良かった。近すぎず遠すぎずの、一番条件の良い席で観たからそう感じるのかもしれないが。気が入っていて、強さがあった。
萬斎が下手に戻った後、染五郎が踊りだした。レクチャーのときに、初めて二人で踊りを教わりに行ったとき、振り付けの勘十郎が全部踊って見せてくれて拍手した、という話をしていた。やはり勘十郎の振り付けなのだ。「大入」という字を書くように手を動かしているらしい。

鈴の段の前に、二人で舞台で鈴を手にとった。染五郎は上手に戻り、鈴と扇をもって座った。先に萬斎が踊り出し、途中から染五郎も正方形の舞台に出てきて踊りだした。神事である能の三番叟の純粋で素朴なな動きと、娯楽用にアレンジされた歌舞伎の三番叟の華やかな動きが、ひとつの舞台の上に見えた。
終わった一瞬、ライトが落ちて二人の姿がうっすら見える程度の暗さになり、次の瞬間真っ暗になった。

南座のときは下手と上手で踊っている別々の踊りを見たという印象だったが、今回はガチンコ勝負という感じだった。狭い空間と照明をうまく使って、一体感のある完成度の高い舞台になっていた。

亀井忠雄の会2011/07/02 05:01

2011年7月1日 観世能楽堂 午後3時開演 1階正面し列25番

「三番叟」

萬斎の三番叟を観るのは3度目。しかし能楽堂で観るのは初めてだ。萬斎はなぜか口ひげをたくわえていた。それでもやっぱり綺麗な顔立ち、華奢な体つきもあって、後でお花畑ができそうな三番叟だった。
お囃子は大鼓が広忠、笛が一噌幸弘。暑いときに聞く大鼓のカーンという音は涼しげで良い。お囃子が凄く良かった。

能「関寺小町」

115分の大曲。 亀井忠雄が大鼓で、広忠は後見。小鼓は大倉源次郎。地謡が錚々たる顔ぶれ。私が確認できたのは、坂口貴信、観世喜正、梅若玄祥。

シテの観世清和の老女が素晴らしかった。子方で三郎太が出ていた。

この後、20分休憩。

「連調」
大鼓の人がたくさんいて、小鼓は1人。こういうの、嫌いじゃないぞ、と聴いていたら、あっという間に終わってしまった。

一調「笠之段」、「花筺」


「石橋」

これも、忠雄が大鼓で、広忠が後見だった。

牡丹の木がついた台を運んできて、舞台正面前方に並べる。歌舞伎の牡丹より大きい花。そのわりに、なんかクシャッとしている。歌舞伎だと、台と木は別々に運んで来るが、能の場合は、はじめから台についている。赤と白も、歌舞伎のように対角に置くのではなく、両方とも舞台際に近い方にある。

白獅子が2頭出てきて、次に赤獅子が2頭。2組の親子か? 

歌舞伎の連獅子は好きでも嫌いでもないが、能の獅子は最高。歌舞伎より面白い。面をつけているせいでフィギュアのようで、人間離れしている。
お囃子の、「キャー」という叫びにのって、獅子が上体を反り気味に顔を上げる所作が良い。ライオンが吠えてる姿だろう。かっこいい。
もうひとつ、南座の三響会で、能と歌舞伎競演の石橋のときに
観世喜正が見せてくれた、クルッと半回転。 この二つの動きが、繰り返し出る。

幽玄の世界というより、子供に見せたら喜びそうなショウに見えた。

能を知る会 鎌倉公演2011/05/02 22:46

2011年4月30日 鎌倉能舞台 午前10時開演

鎌倉能舞台は長谷駅から歩いて七、八分。案内表示や看板があるので迷うことはないが、民家に埋没している。 自由席で、行ったときはかなり席が埋まっていた。正面後ろの座敷の座イスの席が空いていたが上がっていく通路があるわけでもなく、その前のイス席を踏ましてもらって席についた。舞台は、私が今まで観た能楽堂と違って客席より階段一段分くらいしか高くなく、客席に近い感じがした。

最初に舞台に正座して挨拶された方(中森貫太さん?)によると、震災の後、お客さんからの電話はパッタリ止まってしまい、中止にした方が赤字にならないのではと思ったほどだそうだが、きょうの客席はぎゅうぎゅう詰めと言っても良いほど満席だった。鎌倉も一時はずいぶん観光客が減ってしまったようで、渡されたチラシの中に「鎌倉を元気にしよう!キャンペーン」というタイトルのが1枚入っていて、チケットの半券を見せると割引が受けられたりドリンクサービスが受けられたりする店が紹介されていた。来たついでにお金使って帰ってほしいような話だった。


きょうの演目は狂言の「柿山伏」と能「吉野静」。その前にけっこう長い解説がつき、カルチャーセンターのようだった。尾島政雄さんの「静御前」についての話は、なかなか面白かった。頼朝に追われた義経一行は吉野を越えて熊野に入り、その後は、山伏のネットワークで逃げて行った。静は吉野で舞を舞って追手の気を引き、義経が逃げるのを助けた。そしてつかまり、頼朝のいる鎌倉に連行された。ここ鎌倉でそういう話を聞くのも面白い。その後は、子供の頃からよく知っている、男の子が生まれて殺され、静は鶴岡八幡宮で「しずやしず~」と舞う話になる。静が踊ったのは、史実では舞殿ではなく、本殿の方だったそうだ。平家物語には静御前についての記述はほんの一か所しかなく、細かく記述しているは源平盛衰記、義経記だそうだ。静がどこで死んだかについては3つの説があるそうだが、どの説でも、死んだ年は21。

狂言の「柿山伏」は、柿をとろうとして木に登った山伏が人にみつかり、その人が「あれはカラスか」「いや、サルか?」と言うのに応じて「コー、コー」と啼いたりサルのように尻を掻いたりするのが面白い。

能「吉野静」は、大鼓が亀井広忠。シテは中森貫太。
佐藤忠信の衣装や雰囲気が歌舞伎とまるで違う。シテの静御前の舞の中には「しずやしず~」の歌も入っていて親しみやすかったが、いつも通り眠くなった。

終わったのは十一時四十分頃。衣装を着替えた後、客の質問に答えるコーナーがあるということだったが、それは見なかった。

亀井広忠プロデュース 能楽舞台 略式五番立 神・男・女・狂・鬼2010/12/10 23:03

2010年11月25日 日経ホール 午後7時開演

能の見どころや聴きどころを抜粋して上演する「略式」。

神 素囃子 「神楽~急々之舞」 
笛 杉信太郎、小鼓 大倉源次郎、大鼓 亀井広忠、太鼓 大川典良

神楽というのはそういうものなのか、今まで聞いた素囃子のような緊張感がなく、ちょっとゆるめ(?)の印象。舞が入るとしっくりするのかもしれない。


これの後、広忠が出てきて、演目の解説はパンフレットにまかせるとして、簡単に各演目を紹介した。


男 舞囃子「清経」 シテ 坂口貴信

坂口貴信は、夏の「伝統芸能の今」で気に入った人。あの時は謡だけだったが、きょうは舞いも見せてくれて、堪能した。

女 一調 「芭蕉」 謡 山崎正道 大鼓 亀井忠雄

狂 居囃子・舞囃子 「融 舞返」 シテ 角当直隆

これも、大鼓は亀井忠雄。

鬼 半能 「石橋 大獅子」 シテ(白獅子) 片山清司 ツレ(赤獅子)

これの大鼓は亀井広忠。歌舞伎の連獅子はしょっちゅう見てるような気がするが、能の「石橋」を見るのははじめてだ。前に三響会で、歌舞伎と能の獅子が一つの舞台で踊るのを見たことはあるが。面をつけるせいか、能の獅子の方がキャラクターぽいというか、フィギュアのような感じがする。アニメが好きな人は、絶対こちらの方が好きだろうと思う。

勤め帰りだし、直前に夕食をとったので、絶対に寝るだろうと思って、確かに少しウトウトしたところはあったのだが、予想よりも面白くて目をパッチリ開いてみてるときが多かった。

逸青会2010/10/23 21:33

2010年10月17日 セルリアンタワー能楽堂 午後3時開演 中正面3列9番

狂言の茂山逸平と、舞踊の尾上青楓の会。

今回は尾上流の名取の同僚にチケットをとってもらった。能楽堂に入ったら、チケットに書いてある席に別の人が座っていて、会場係も見つからないし、同僚も見つからないので、とりあえず一番後ろの空席に座って見た。舞台からはやや遠いが、橋懸りのすぐ横なので、歌舞伎でいうと花横の気分で、悪くなかった。

舞踊「賤機帯(しずはたおび)」

狂女が青楓、渡し守の舟長が菊紫郎。赤ん坊を抱いた狂女で隅田川を連想したが、やはり隅田川を題材にしたものだそうだ。

次は狂言の「濯ぎ川」

最初の舞踊との間には休憩がなく、席はそのまま。

逸平が入り婿で、たすき掛けをして川で洗濯をする。必殺の原型みたいに、怖い奥さんや「婿殿」と言っていびる姑も出てくる。婿は、きたない物を洗濯させる、と憤慨しているが、男を女に置き換えれば、女は普通にやらされてきたことなので、男だからと言って何をそんなに怒る必要があるのか。 用事を次々に言いつけられるので、すべきことを全て書きだし、それ以外のことはやらなくても良い、という約束になる。ここで、「ベニスの商人」的展開になるのだろう、と見当がつく。書いているときも「一番鶏が鳴いたら起き、誰よりも遅く寝る」ことに憤慨しているが、農家の嫁というのは、そういうのをやらされてたわけじゃないか、と少し鼻白んだ。ジャブジャブ、ゴシゴシ、という擬音語がそんなに大昔からあったのか、と驚いたが、昭和28年初演の新作だそうだ。 新作だから、逆に古さを感じるのだと思う。

この後、休憩。同僚が来て、やっと本来の席に座った。私の席は脇正面だったが、私の席に座っていた人の本来の席は正面だった。


「茶壷」

逸平と青楓の共演で、青楓の茶壷を自分のものだと言い張る逸平。青楓の、あっけにとられたような顔が良い。どちらの言い分が正しいか判断しようとする第三者が、菊紫郎。 菊紫郎は踊りはもちろんうまいが、台詞も歌舞伎役者のようにうまい人だ。 逸平は、自分の正当性を主張するときに、青楓を真似する。言葉もそうだが、青楓の踊りを逸平が真似し、しかも同時に踊る、というのが面白い。青楓はきちんとした日本舞踊で、逸平の方はその特徴をとらえて真似する、という趣向。もちろんアドリブでできるわけないので、振りが決まってるのだろうが、適当に真似した、なんとなく似ている動き、というのはとても面白い。