吉例顔見世大歌舞伎 第一部2021/01/29 17:38

2020年11月1日 午前11時開演 歌舞伎座 1階10列33番


第1部「蜘蛛の絲宿直噺(くものいとおよづめばなし)」

亀治郎の時代に浅草と松竹座で観た覚えがあるので、少なくとも3回目だが、前に見たのとは演出が違う。
幕開きに金時と貞光が刀を交えているようなのがあった気がするが、今回は病気の頼光の寝所の前で女房達(笑三郎、笑也)が話している。「レムデシビル」だの「そろそろ終息してもいいコロナ」と世相を反映した台詞がある。

猿之助の女童の顔はいつもながら段四郎にそっくり。早替りで小姓、番頭新造と続く。番頭新造の姿が一番好きな猿之助かもしれないが、踊りは太鼓持が良かったかも。この演目ではたぶん初めて観た欄間抜けにびっくりした。
傾城の姿のときに頼光役の隼人と絡みがある。

ところどころで蜘蛛の糸を投げるが、いつもと違って客席にはかからないようにしているようで、投げる糸の量も少なかったと思う。花道にズラリと並んだときに全体が横から見えたが、蜘蛛の糸はきれいに役者たちにかかっていた。

吉例顔見世大歌舞伎 第四部2021/01/30 21:09

2020年11月3日 歌舞伎座 午後7時半開演 1階12列25番

義経千本桜「川連法眼館」

忠信が獅童、静御前が莟玉、義経が染五郎、駿河次郎が團子、亀井六郎が國矢、という配役はまるで浅草歌舞伎で、こんなご時世でもなければ歌舞伎座ではありえない。でもこの演目を嫌というほど見てきた自分にとっては、その新鮮さがありがたい。

莟玉はちょうど一年前の11月が襲名だった。たった一年でこんな大役をやる。今まで四の切を観たときにはあまり感じたことがなかったが、静の台詞はけっこう多く、莟玉が歌舞伎座で堂々と演じていることが感慨深かった。

染五郎は品があって、声に何か一本通ったものがあって、位のある人の役にふさわしい。

團子はひょろっとした印象が連獅子のときと同じで獅童と比べても身長が同じくらいなので、やっぱり長身なのだと思う。素顔は微妙だが、拵えをした顔は二枚目ではないがなかなかいい。

國矢は、この顔ぶれの中では間違いなく一番うまいだろう。

獅童の狐は、決してうまくはないのだが、感動した。欄干歩きとか欄間抜けとかいろいろやることがあって、必死だったと思う。狐の衣装で出てきても人間にしか見えない。大きな人間が必死に動き回っているのを見ると胸に迫るものがある。猿之助の狐とは対極にあるものでも、感動することはあるのだと知った。