酒と涙とジキルとハイド2018/05/01 00:18

2018年4月27日 東京芸術劇場プレイハウス 午後7時15分開演 1階E列9番

4年前の初演を観たが、細部をほとんど忘れているせいか、新鮮な気持ちで観られた。
登場人物は4人。
迫田孝也演じるプールは、長髪に耳が見えている悪魔のような髪型と、「態度の大きい使用人」的な雰囲気がいい。
イヴ役の優香は、別の人格ハイジも演じて、熱演。
ビクター役の藤井隆は笑いの中心。舞台の床にキスをするように唇に当てた手を床につける動きが面白い。それを「何をやってるのだろう」のような顔で見るジキル博士役の愛之助も面白い。
「誰もがハイジになる」という薬を飲んだ後、初演のときは、当時の愛之助に期待されていたオネエっぽいしゃべりをしていたが、今回は歌舞伎の女形風に「熱うござんす」「ハイジでありんす」と言った。本業に立ち返っているのが面白い。

勘九郎・七之助 春暁特別公演 20182018/03/19 22:48

2018年3月18日 なかのZERO 午後3時半開演 2階7列31番

なかのZEROは、元同僚のバレエの発表会を見に毎年行くところだが、歌舞伎を観たのは初めてだ。花道も回り舞台もないが、歌舞伎の巡業でもやってくれると、近いので嬉しい。

「芸談」
 
フジテレビのアナウンサーが司会。きのう桜が開花したので、花見について。午前中は、大道具さん主催の花見の話を聞いたが、ご家族での花見の思い出はあるか、という質問。家族の花見の思い出はないそうだ。幕内の花見だと、予定した日に雨が降ったりしても大道具が桜を持って来るので困らないらしい。
この次は、咲いた桜から逃げるように北海道での公演。塩ジンギスカンがおいしい店があって、勘九郎は大河ドラマの役の都合で食事制限をしているが、塩ジンギスカンは絶対に食べに行く。
大河ドラマの役はマラソンランナーで、中学生のときから始まる。歌舞伎なら羽二重で引っ張るし化粧でどうにでもなるが、映像、それも4k。しかし、中学生に見せるコツを会得した。口角を上げて、目を大きく開ける。
年取ってからは、特殊メイクになる。
歌舞伎の化粧を落とすには、今、水クレンジングを使っている。そういう化粧品に詳しいのは新幸四郎。水クレンジングも幸四郎が教えてくれたが、実は七之助は知っていた。「エターナル近松」のときに短時間で拵えを変える必要があって使ったから。それを言ったら、幸四郎は「普段使ってないでしょ。僕の方が先」と言った。負けず嫌い。
きょうの演目の1つ「浦島」は、浦島太郎の話で、勘三郎の前で踊ってみせた時に、「それいいから、お前踊れ」と言われた。どういう教訓なのか、不思議がる勘九郎に、フジテレビのアナウンサーは、ある番組のために調査したところ、浦島太郎は実はハッピーエンドだった、と言う。乙姫が亀で、浦島は鶴で結ばれる話だったが、明治時代に教科書に載せるためかなんかの理由で太政官が後半を変えたのだそうだ。「すごいことしますね」と驚く兄弟。私もびっくりした。ということで、きょうの浦島は、最後は鶴になってもらえますか、とむちゃぶりをされていた。

客先からの質問。好きな酒について。勘九郎はハイボール。氷結ストロングが好き。七之助は特に好みはなく、シャンペン以外なら飲む。
全国を回っていると、ホテルで怪談のような経験はないか。そういう経験は、あるそうだ。
最後の質問に対し、勘九郎は欅坂46のファンで、欅坂46について熱心にしゃべった。

「鶴亀」
従者役の仲侍がうまかった。

「浦島」
2010年9月の錦秋特別公演で、当時の勘太郎が踊るのを観た。あの時と同じく、玉手箱を開けて老人の姿になってからの踊りが、腰をぐっと下ろした姿勢で、見ものだと思う。芸談のときのリクエストに応え、最後は鶴の羽ばたきのように腕を大きく動かしてくれた。

「枕獅子」
鏡獅子の原曲になっている作品だが、鏡獅子の方をよく知っていると、鏡獅子の女形バージョンという感じ。
七之助は黒地で左側が水色の打掛。衣装にはピンク、赤、黄色、黄緑、と色がたくさん使ってあるのにおかしくなくて、目を楽しませるものになっている。引き抜きがある。
差し金の蝶が二羽飛ぶ中で踊っている姿を見て、福助か時蔵でも観たことがあるのを思い出した。
獅子の姿になる前には、胡蝶ではなく禿二人が踊る。鶴松と國久。
七之助が獅子の姿になって出てきて3人でいっしょに踊る。最後の方は気振りがあって、七之助が最後に男になったような感じがした。

歌舞伎座百三十年 三月大歌舞伎 初日 昼の部2018/03/08 23:03

2018年3月3日 歌舞伎座 午前11時開演 1階4列14番

「国姓爺合戦」
舞台は唐の獅子ヶ城。これが近松門左衛門原作と聞くとびっくりするが、エキゾチックな話で観客の興味を惹こうとしたのだろう。城壁の後ろに立っている兵隊たちも、錦祥女(扇雀)の衣装も外国のもので、和藤内(愛之助)は押し戻しのような衣装。母親の秀太郎だけが和の着物。その着物をおかしいと言う次女たちの話が面白い。
話全体としては和藤内が主役なのだろうが、この幕は母親と、義理の娘の錦祥女をめぐる話だった。和藤内は荒事を見せる。花道で、愛之助の足の親指が上に反り返っているのが見えた。

「男女道成寺」
先代雀右衛門の追善。友右衛門が明石坊という役で口上を述べる。
所化は歌昇が先頭で、竹松、壱太郎、廣太郎、米吉、橋之助、男寅、と続く。

花子は雀右衛門、桜子実は狂言師左近は松緑。ありがたいことに、松緑の踊りがよく見える席だ。美人ではないが可愛い桜子。もう少し長く観ていたかった。

雀右衛門は踊りはうまくないが、一人で踊るパートは情感豊かで良かった。

松緑の撒いた手拭いの1つが足元に落ちたので拾った。

「芝浜革財布」
大きなくしゃみが聞こえて客が笑った。客の誰かのくしゃみかと思ったら政五郎役の芝翫だった。金杉橋の近くに勤めていたことがある。江戸時代はあんな場所だったか。

女房のおたつは、こういう役にはぴったりの孝太郎。松之助の納豆売りから納豆を買う。納豆売りは、藁苞を開いて中の納豆を取り出し、おたつが出した小鉢に入れ、そこにカラシもつける。

誘われて家に来て飲む友人たちは弥十郎、松江、橋之助、福之助。弥十郎と松江は自分の女房の惚気を言っていて、ずいぶん上品な飲み会。橋之助と福之助は成長した。

愛之助の部屋子になった愛三郎が丁稚の役で出る。政五郎が「愛坊のところに入った丁稚か」のように声をかけてくれる。

Kバレエカンパニー 「くるみ割り人形」2017/12/22 00:55

2017年12月21日 赤坂ACTシアター 午後2時開演 1階V列39番

「くるみ割り人形」はクリスマスが本物に見える外国のバレエ団に限る、と思っていたのだが、美術と技術が気に入ったKバレエカンパニーのを観てみることにした。
クリスマス気分がイマイチなのは、ダンサーの顔が日本人だからだと思う。しかし、一幕目は美術が素晴らしく、二幕目は馴染みの曲が次々に出てきて、楽しめた。立派なエンタテインメントだ。

ネズミが可愛い。幕開きにもカーテンコールにも出る。おもちゃの兵隊と戦うときは、投石機でチーズを投げ、おもちゃの兵隊に当たる、という演出。

倒れたくるみ割り人形の側で悲しむクララから悲しみが伝わってきた。その後、クララ、ドロッセルマイヤー、くるみ割り人形の三人で踊るシーンが美しい。後ろでひらひらと揺れ動く幕、それに音楽の力が加わって、観客をうっとりさせる。揺れ動く幕が落ち、横にすべってはける。後ろには雪の国が現れる。

二幕目は花のワルツ、アラビア、スペイン、中国、ロシア、と馴染みの曲が続き、それぞれが別の魅力で惹きつけられた。私の好きな「アラビア」は女性一人と男性二人。女性が大柄で手足が長く、顔立ちもはっきりしていて、いかにもアラビアのダンサー風でインパクトがあった。中国の人形の二人もコミカルな感じが良かった。ロシアのコサックダンスもあった。

マリー姫と、青年の姿になったくるみ割り人形の踊りも、流れる曲が美しくてよかった。マリー姫は小林美奈。浅川紫織のケガで、雪の女王役からこちらに変わったと掲示があった。難しい踊りも何気なくこなせる、上手い人だと思う。

NHK交響楽団定期公演 「イワン雷帝」2017/11/20 22:08

2017年11月17日 NHKホール  午後7時開演 2階C4列5番

プロコフィエフの「イワン雷帝」と言えば、昔テレビで見たボリショイバレエを思い出すが、きょうのはスタセヴィチ編オラトリオ「イワン雷帝」作品116というものだ。合唱、語り手、独唱、オーケストラのためのオラトリオで、全20曲からなる。
開演時間になると合唱団のメンバーが出てきて、オーケストラの後ろの段に並ぶ。東京混声合唱団と、東京少年少女合唱隊。
指揮者のトゥガン・ソヒエフと語り手の愛之助がいっしょに出てきて、愛之助は指揮者よりも上手よりに立った。
曲の合間に愛之助の語りが入る。赤い表紙の本を手にして読むが、最初の語りは特にカタカナ系が聞き取りにくかった。その後、そうでもなくなったのは音声担当の人のマイク調整があったのかもしれない。愛之助は、平家物語の語りのときと同じで地の文より台詞の部分がうまい。特にイワン雷帝の台詞は太い声が雷帝らしかった。他の人の台詞もあったと思うが、誰の台詞なのかわからない。
独唱はウクライナのスヴェトラーナ・シーロヴァとアンドレイ・キマチ。特に女性の歌唱が素晴らしかった。
演奏終了後、独唱者二人と指揮者、語り手が4、5回舞台に現れて拍手を受けていた。

デストラップ2017/07/19 02:14

2017年7月7日 東京芸術劇場 午後6時半開演 1階B列24番

最前列の上手。シドニー(愛之助)が座っている机が目の前で、そこで演技をすることが多かったので愛之助がよく見えた。映画で見たときに印象的だった、クリフォードからの手紙を読み上げるシーンは、演出家の指示があったんだろうな、と思われる口調だった。時代設定は映画と同時代で、電話はダイヤル式。

シドニーの妻マイラ役の高岡早紀は綺麗。クリフォード役の橋本良亮はテレビで見たときと同じ印象。頭が良さそうで役に合っている。

シドニーがロープでクリフォードの首を絞めるシーンは、ちゃんと仕掛けがあるのだろうが、間違って本当に絞まるのではないかと、怖かった。映画では、死んだはずのクリフォードがガラスを割って窓から飛びこんできたが、今回の舞台にはそんな窓はなく、上手の扉から入って来たので、映画ほどの驚きと怖さはなかった。
マイラが死んだ後のキスシーンは映画のようにしてほしかった。二人の関係が、というかこの殺人の仕掛けが一瞬で理解できるし、一幕目の最後が盛り上がったろうに。一幕目はムダのない緊迫した舞台だったので、ここでダメ押ししてほしかった。

二幕目、弁護士のポーター(坂田聡)は、うまいのはわかるが少しダレる。シドニーがクリフォードを愛している、ということはシドニーの台詞で語られる。でも、二人の間に緊張感が漂う前に、「恋人だったんだ」という確固たるイメージを植え付けるために、やはりキスをしてほしかった。
最後は逆転に次ぐ逆転でスリルがあった。愛之助が最後に倒れるところは膝上仏倒れみたいだった。

コメディ・トゥナイト 初日2017/03/07 23:49

2017年3月4日 新橋演舞場 午後四時半開演 1階1列24番

副題は「ローマで起こったおかしな出来事 江戸版」。 ローマの話を江戸に設定しなおしたのは、まあ成功したと言えると思う。衣装、装置が洋物がかった着物、日本家屋で、それは面白かった。特に澤野屋という女郎屋が、西洋の家を赤い提灯で飾り付けて日本ムードを出そうとしているようで、見とれてしまった。入り口に下がっている日本髪の女のヌードの絵の提灯がすごく良い。内装も、浮世絵の春画が壁の絵になっていたりしてエセ江戸の雰囲気。

愛之助の歌を聴くのが楽しみだったが、マイクを通しているのでどのくらいうまいのかよくわからなった。愛之助に限らず、下手な人はいないかわりに誰がとくにうまいとも感じなかった。

全体に、だれるところはないが、どこと言って盛り上がりもない。トニー賞をとっているということだが、オリジナル版はどういう点が評価されたか知りたいものだ。コメディで、客席にはお嬢さんたちの笑い声が響いていたが、自分にとっては笑うほど滑稽な場面はなかった。

ルー大柴を近くから見られて嬉しかった。テレビで見るのと同じ雰囲気。女の格好をするシーンは見ものだとは思うが、しゃべり方や仕草を女っぽくするわけではないので、ただルー大柴が女の格好をしている、というだけだった。

荒尾正蔵の役をやった鈴木壮麻が、愛之助がのっぺり見えるような立派な顔立ちで、演技も良かった。

布袋屋の主人役の高橋ジョージがいい味を出していた。澤野屋の主人役のダイヤモンド・ユカイも良かった。

ストーリーがイマイチ面白くないせいか、話の中心になる若い二人の魅力も感じられなかった。

カーテンコールでは今日が誕生日の愛之助を祝う声が上がり、私の右隣の方たちは銀紙で周りを飾った「お誕生日おめでとう」と書いたボードを分けて持って舞台の愛之助に見せていたようだ。二度目に出て来たとき、高橋ジョージが音頭をとって客たちが立ち上がり、ハッピーバースデーの歌をうたった。愛之助は「誕生日に初ミュージカルです」と挨拶した。きょうは、みんなで歌を歌ったのが一番楽しかった。

第60回記念日本舞踊協会公演 2/172017/03/04 01:46

2017年2月17日(金) 国立劇場大劇場 午後4時半開演 1階13列27番

1.「四季三葉草」
翁が西川扇蔵、千歳が中村梅弥、三番叟は尾上墨雪。中村梅弥は初めて観たが綺麗で、踊りも良かった。

2.「妹背山道行」
ここの部分の踊りだけを見てもあまり面白いものではない。

3.「洛中洛外」
幕間に外にいて戻るのが遅れたので後ろで立って観たが、テンポが良くてなかなか面白かった。

4.「三人連獅子」
初めて観たが、舞踊会で見ると他の演目とは目先が変わって楽しい。前半は、連獅子や鏡獅子と違ってステップも軽く、草原で遊んでいるライオンの家族風。それでも、舞台は深山幽谷と石橋。後半は石橋の上で踊り、仔獅子をリアルに突き落とす。仔獅子が一番目立つ良い役。花柳源九郎のきびきびした動きが良かった。

5.「邯鄲」
井上八千代一人の踊り。黒留袖で全体のトーンはとても静かなのだが、、寝転がって、そこからさっと立ち上がるとか、回転とかの動きがたまに入ってアクセントになっている。

最後に「にっぽん・まつりの四季」という群舞があった。

アントニオ・ガデス舞踊団「カルメン」2016/09/22 22:15

2016年9月18日 オーチャードホール 午後1時開演 1階33列30番

映画の「カルメン」は官能的で、映画館で6回くらい見た。アントニオ・ガデスの来日公演で、舞台の「カルメン」も、複数回観た。今回はほぼ30年ぶりの「カルメン」だ。

映画のプログラムか新聞評に「主役はフラメンコ」と書いてあった記憶があるが、本当にその通り。舞台転換もなく、踊りっぱなし。
ガデスは死んでしまって、ドン・ホセは別のダンサーが踊る。ガデスのようなカリスマ性、オーラはないが、良いダンサーだ。来日当時のガデスより若い。カルメン役はセクシーな美人。二人とも腕が長い。

30年前はあまり意識しなかったが、今回は音楽の構成の見事さを感じた。開幕はビゼーの「カルメン」で、最後も「あーカルメン、あー、カルメ~ン」で終わり、それは録音で流れる。しかし、かなりの部分はスペイン語の歌、フラメンコの曲の生演奏が占めていて、演奏者は舞台上にいる。歌いながら踊った人もいる。合間に「ハバネラ」のような有名な曲やカルメンのテーマの録音が流れる。そのつながりがごく自然で全体が美しい音楽劇になっている。最後、エスカミリオとドンホセの対立のところはフラメンコの曲で、その直後、ドンホセがカルメンを殺すシーンにはオペラの録音が流れてつながる。

マシューボーンの「白鳥の湖」と同じで、繰り返しの鑑賞に堪える名作だと思う。

カーテンコールでも何度も踊ってくれて、スカッとした。

ミュージカル 狸御殿2016/08/07 14:08

2016年8月6日 新橋演舞場 午後4時半開演 1階16列35番

シンデレラと「白鳥の湖」が合体したようなストーリーだった。
ガラスの靴のかわりに、草履、草履は誰でも履けるから国中の女と面接することになる。

渡辺えりが足を見せて歌うシーンくらいインパクトがあるシーンが次々に出て来たら全体ははちゃめちゃでももっと見応えがあったろうと思う。他のシーンはつまらなくはないが小粒。B級がぞろぞろ出てくる感じ。
押しつけの感動シーンがないから鼻白むことはないのが救い。

最後の方の、オペラ歌手の翠千賀と歌手の城南海の対決はなかなか良かった。翠千賀の役は王子さまのお妃候補で、「白鳥の湖」のオディールがスペイン人のダンサーを従えて夜の女王のアリアを歌っているようなキャラ。

松也は最後の太鼓と、「東西。まづこんにちはこれぎり~」が一番良かった。 王子さまらしい華があり、衣装がどれも似合う。立ち回りは、「小金吾討死」のときより良かった。

宮本亜門の演出だからダンスはまとも。歌は、本職の二人はうまいとして、台詞を音にのせて歌うところが、渡辺えり以外は下手。「ミュージカル」とは言っても、踊りや歌に完全に魅了される瞬間はない。

國矢と徳松も赤井英和の子分の役で出ていた。