八月花形歌舞伎 ― 2011/08/21 22:04

2011年8月13日 新橋演舞場 午前11時開演 1階17列

「花魁草」

安政の大地震直後の話だ。
川辺に寝ている被災者や歩いて行く被災者がいる。向こう向きで寝ていた男が起き上がったら獅童だった。江戸の役者の幸太郎。川の水を飲む。そのときに踏んで起こしてしまった女は、吉原の女郎お蝶(福助)。幸太郎が食べ物を探しに行っている間に、百姓米之助(勘太郎)の漕ぐ舟が通りかかり、お蝶は頼み込んで幸太郎もいっしょに栃木に乗せて行ってもらう。

次の幕は一年後で、幸太郎とお蝶は栃木で達磨作りをしながらいっしょに暮らしている。大家の米之助は事情を知っているが、近所の人にはお蝶は幸太郎のおばということにしているので、幸太郎に気がある、豪農の娘お糸がいたりして、お蝶は気をもむ。お糸の役は、今年は趣向の華には出ていなかった新悟。

お蝶と幸太郎は好き合っているが、プラトニックな関係。本当に不思議。
お蝶は昔、自分を裏切った男を手に掛けた過去がある。後で知ったところでは、自分の母も人を殺した。自分にはそういう血が流れているので、純粋な幸太郎を傷つけてしまうのではないかと心配している。

幸太郎の贔屓が日光に来て、偶然に幸太郎を見かけ、座元といっしょに訪ねてくる。芝居茶屋の女将で幸太郎の贔屓役の扇雀が、今回もニンに合った役で良かった。座元の役は弥十郎。花形の芝居をたくさんかけたいと思っている。

幸太郎はずっとお蝶といっしょに暮らしていたいと思っているが、お蝶もいっしょに江戸に行くと約束したので、幸太郎はお蝶の縫った着物を着て、座元のところに挨拶に出かけて行く。花道で、行って来るよとお蝶に手を振る幸太郎がとっても可愛い。忠兵衛をやった時も花道にいた時が可愛かった。獅童の持ち味だ。

お蝶は元々、江戸について行ってもすぐに自分1人で戻ってくるつもりだった。次の幕は何年か後で、今は若之助という名の人気役者になった幸太郎が、この地に巡業に来て、2人でいっしょに住んでいた家を訪ねてくるが、そこにお蝶はいない。幸太郎は、昔自分が庭に植えた花魁草が咲いているのを見つける。

最後は、船乗り込みを待つ人々でにぎわう橋のシーン。船乗り込みを一度も見たことがないので芝居でもいいから見たかったが、役者が載っている舟は出なかった。人々が去った後、最後に残ったお蝶が、舟を見送る。

地震が発端で今年は観客の共感を得られそうだし、お蝶の過去が怖いが話は破滅的な方向には行かなくて、楽しめる芝居だった。お蝶の「江戸には金があってスケベな女がたくさんいる」という台詞が面白かった。

「櫓のお七」

正月の浅草を思い出す舞台。
趣向の華で昼夜人形振りを観たが、また人形振りか。お七の人形振りは、大昔に玉三郎のを観て以来だ。

七之助は娘道成寺もカクカクして人形風だったから、うまいかも。確かに、種太郎や梅枝よりも人形味があった。やっぱり有名な人形振りの演目だからか、人形らしさの表現が確立している感じがする。

「翼がほしい」というのは梅枝も言っていたし、梅枝も最後は横になって運ばれていった。この演目からモチーフをとった踊りだったのだろうな。

外は暑いのに舞台には大雪が降っていた。雪の白と、お七の衣装の赤と黒のコントラストが美しかった。