歌舞伎座新開場こけら落とし 九月花形歌舞伎 初日 昼の部 ― 2013/09/01 22:18
2013年9月1日 歌舞伎座 午前11時開演 1階4列22番
「新薄雪物語」
すごく良かった。特に良かったのは梅枝と松緑。
序幕の最初は清水寺の花見。腰元(芝喜松)に連れられて薄雪姫(梅枝)が花道から出てくる。後ろに続くのは腰元の籬(七之助)。
薄雪姫が短歌を書いて桜の枝に結び付け、その後に来た園部左衛門(勘九郎)が、奴の妻平(愛之助)に、その枝を折らせる。
ここは、姫の気持ちを察して左衛門との仲をとりもつ籬の七之助が面白い。赤姫の梅枝はあくまでもおっとりした古風な雰囲気が良い。
睡眠不足だったので、この後、亀三郎、海老蔵が出て来たあたりで眠くなったが、愛之助と奴たちとの立ち回りがあったのですっかり目が覚めた。数人を下に置いて飛び越えたり、階段の上からトンボをしたり。かなり高度なレベルの立ち回りだった。愛之助は、この芝居の初めの方では喉に痰が絡んだような声だったが、奴たちの真中で言うセリフは立派だった。
ここまで、30分の休憩前は、主要な人物たちはまだ出てこない。
休憩の後、二幕目の幸崎邸詮議の場では、左衛門が奉納した太刀に鎌倉の将軍調伏のための鑢目が入っており、これが左衛門と薄雪姫の企てではないかとの嫌疑があり、詮議する。
ここで、薄雪姫の父幸崎伊賀守(松緑)と左衛門の父園部兵衛(染五郎)が登場する。
最後の三幕目、園部邸の芝居が盛り上がった。ここで初めて園部兵衛の奥方、梅の方(菊之助)が登場する。私は前に一度だけ「新薄雪物語」を観たことがあるが、それは玉三郎の梅の方目当てだったに違いないので、ここまでジリジリしながら待ったのだろう。
兵衛と梅の方は、ピンクの着物の薄雪姫に、身を隠すように強く勧め、薄雪姫は妻平、籬を供に泣きの涙で園部邸を去る。このときの梅枝の悲しそうな顔、演技が秀逸で、一人で客の注目を集めていた。
奥書院の場では、陰腹を切った幸崎伊賀守(松緑)が首桶を持って花道を歩いてくる。怪我をした人の歩き方、やっとのことで家に上がり、履物も上まで上がってから脱ぐような動きを、松緑はしっかりとやった。声を出すときもお腹に力を入れられないときの声だった。左衛門を逃がすために追い払うときに、最後に「消えろー」と怒鳴った声は、この人、こんな声が出せたのかと思うような迫力だった。
前に観た「新薄雪物語」で覚えているのは、三人笑いのときの玉三郎の、無理やりに「ホホ」と笑おうと口をひきつらせてる様子と、伊賀守役の幸四郎が変な歩き方で尋ねてくるところだけで、園部兵衛役の孝夫は覚えてない。幸崎伊賀守がいかに印象的な役かということだ。
幸崎伊賀守は顔も衣装も黄色っぽくて、舞台にいると半分透明みたいな地味な存在。歌舞伎の二枚目から外れた松緑の顔が、こういう異常な状態の人間の顔には合ってると思った。
三人笑いは、菊之助、染五郎、松緑の三人とも頑張ってくれた。
園部邸広間の襖の、雲海の中にいくつかの山の頂が見えている絵と、奥書院の襖の、雪景色の中で枝の上に二羽のサギ(?)がいる絵が、綺麗だった。
「吉原雀」
お馴染み、吉原仲之町の華やかな景色を背景に、勘九郎と七之助がせり上がって来る。鳥売りの男女。前に錦秋公演で観たことがある。
「新薄雪物語」の終わりが壮絶だったから、明るい踊りをつけるのだろうか。
勘九郎の踊りを観られて嬉しかったのだが、ちょっと物足りなかった。何故かはわからない。
「新薄雪物語」
すごく良かった。特に良かったのは梅枝と松緑。
序幕の最初は清水寺の花見。腰元(芝喜松)に連れられて薄雪姫(梅枝)が花道から出てくる。後ろに続くのは腰元の籬(七之助)。
薄雪姫が短歌を書いて桜の枝に結び付け、その後に来た園部左衛門(勘九郎)が、奴の妻平(愛之助)に、その枝を折らせる。
ここは、姫の気持ちを察して左衛門との仲をとりもつ籬の七之助が面白い。赤姫の梅枝はあくまでもおっとりした古風な雰囲気が良い。
睡眠不足だったので、この後、亀三郎、海老蔵が出て来たあたりで眠くなったが、愛之助と奴たちとの立ち回りがあったのですっかり目が覚めた。数人を下に置いて飛び越えたり、階段の上からトンボをしたり。かなり高度なレベルの立ち回りだった。愛之助は、この芝居の初めの方では喉に痰が絡んだような声だったが、奴たちの真中で言うセリフは立派だった。
ここまで、30分の休憩前は、主要な人物たちはまだ出てこない。
休憩の後、二幕目の幸崎邸詮議の場では、左衛門が奉納した太刀に鎌倉の将軍調伏のための鑢目が入っており、これが左衛門と薄雪姫の企てではないかとの嫌疑があり、詮議する。
ここで、薄雪姫の父幸崎伊賀守(松緑)と左衛門の父園部兵衛(染五郎)が登場する。
最後の三幕目、園部邸の芝居が盛り上がった。ここで初めて園部兵衛の奥方、梅の方(菊之助)が登場する。私は前に一度だけ「新薄雪物語」を観たことがあるが、それは玉三郎の梅の方目当てだったに違いないので、ここまでジリジリしながら待ったのだろう。
兵衛と梅の方は、ピンクの着物の薄雪姫に、身を隠すように強く勧め、薄雪姫は妻平、籬を供に泣きの涙で園部邸を去る。このときの梅枝の悲しそうな顔、演技が秀逸で、一人で客の注目を集めていた。
奥書院の場では、陰腹を切った幸崎伊賀守(松緑)が首桶を持って花道を歩いてくる。怪我をした人の歩き方、やっとのことで家に上がり、履物も上まで上がってから脱ぐような動きを、松緑はしっかりとやった。声を出すときもお腹に力を入れられないときの声だった。左衛門を逃がすために追い払うときに、最後に「消えろー」と怒鳴った声は、この人、こんな声が出せたのかと思うような迫力だった。
前に観た「新薄雪物語」で覚えているのは、三人笑いのときの玉三郎の、無理やりに「ホホ」と笑おうと口をひきつらせてる様子と、伊賀守役の幸四郎が変な歩き方で尋ねてくるところだけで、園部兵衛役の孝夫は覚えてない。幸崎伊賀守がいかに印象的な役かということだ。
幸崎伊賀守は顔も衣装も黄色っぽくて、舞台にいると半分透明みたいな地味な存在。歌舞伎の二枚目から外れた松緑の顔が、こういう異常な状態の人間の顔には合ってると思った。
三人笑いは、菊之助、染五郎、松緑の三人とも頑張ってくれた。
園部邸広間の襖の、雲海の中にいくつかの山の頂が見えている絵と、奥書院の襖の、雪景色の中で枝の上に二羽のサギ(?)がいる絵が、綺麗だった。
「吉原雀」
お馴染み、吉原仲之町の華やかな景色を背景に、勘九郎と七之助がせり上がって来る。鳥売りの男女。前に錦秋公演で観たことがある。
「新薄雪物語」の終わりが壮絶だったから、明るい踊りをつけるのだろうか。
勘九郎の踊りを観られて嬉しかったのだが、ちょっと物足りなかった。何故かはわからない。
歌舞伎座新開場こけら落とし 九月花形歌舞伎 初日 夜の部 ― 2013/09/02 01:36
2013年9月1日 歌舞伎座 午後4時半開演 一階2列11番
「陰陽師」
暗い中で幕が開いたとき、舞台の上の方に照明があるのがわかって、染五郎が前にやった染模様とか、ああいう感じの舞台になるのか、と思った。
舞台の後ろに大きな月が出ていて、その前を晴明(染五郎)、続いて笛を吹きながら博雅(勘九郎)がこちらへ歩いてくる。
舞台下手の方から魑魅魍魎が出てくる。恐竜が帽子をかぶったようなのとか、一つ目小僧みたいなのとか、いろんな形のものが動いている。その中の一団が高くなって、人間を一人つかまえた。グシャグシャという音がする。博雅の従者が食べられた。
下手から、お姫様(菊之助)が竜のようなものに乗って出てきて、魑魅魍魎といっしょに上手に消えた。
この時点では、「海神別荘」のような舞台になるのかと想像した。
しかし、20年前の回想シーンになると、雰囲気が変わる。平将門(海老蔵)は、役人にひどいことをされている人を救う。海老蔵は荷車を持ち上げてブン回したりするのが似合う。友達の藤原秀郷(松緑)と、桔梗(七之助)がいっしょにいる。
将門は東国へ戻る決心をし、それに従う桔梗。秀郷は政治的な理由で都に残る。秀郷は桔梗に心を寄せていて、去っていく桔梗に渡せなかった櫛を、懐から取り出す。
秀郷は朝廷から将門討伐に東国に向かうように言われたが拒絶する。しかし、晴明は彼に将門は前の将門ではないと言い、三上山の麓を通って東国に行くように言って、一本の矢をくれる。
晴明が星を見上げていると、花道の方からカサカサと音がする。差し金の先に、大きめのアゲハ蝶がついていて、それを動かしている音だ。スッポンからはもっと大きなアゲハ蝶が姿を見せ、その後、蘆屋道満(亀蔵)がスッポンから顔をだし、花道に肘をついて顔をのせ、晴明に話しかけた後、舞台に出て来た。顔は青鬼のような色で、仁王襷(と思ったがチョウチョの形?)をしめて、先に髑髏をつけた緑の玉の首飾りをしている。回りには差し金の蝶が飛んでいる。
次の場面でまた仁王襷の人が出て来たので蘆屋道満かと思ったら、今度は秀郷(松緑)だった。秀郷は三上山で大ムカデと戦う。この大ムカデは、大蛇などのときと同じで何人もの役者で一つの大ムカデ。基本的に僧兵の衣装で、肘から手まで赤く塗り、肩のあたりは緑がまじったようなものがついている。先頭の頭はもじゃもじゃした黒い生地に黄色い触覚が2本と、赤い目がついている。
大ムカデを退治した秀郷は、大蛇の精(新悟)から黄金丸という太刀をもらう。これで切られた傷は20年間治らないという。大蛇の精の着物は、後ろに緑のしっぽのようなものがついていた。
松緑は跳び六方で引っ込む。このあたりはかなり歌舞伎的だった。
秀郷は東国で将門に再会する。都にいたときは暴れ者の若い衆という感じだったのが、今は不気味な雰囲気を漂わせている。これが海老蔵にぴったりだった。すぐ隣りに控えているのは興世王(愛之助)。桔梗は今では将門の奥方になっていて、それを聞いた秀郷は動揺する。
この一年前、将門の一族は都の兵に虐殺されていた。討たれた死体が折り重なっている館の様子は凄惨。将門はわが子の死体を見つけて抱き上げ悲嘆にくれる。そして最後にわが子の身体に食いつく。それを煽る興世王。興世王の前で、将門は獣のように四つん這いになってわが子の肉を食らう。
興世王は東国の民が都に虐げられており、それを救えるのは将門だけであり、そうすることが正義だと焚き付ける。
桔梗の前は秀郷に、将門が討手を差し向けたので逃げるように言い、興世王が将門を変えてしまったこと、自分に娘がいることを語る。この娘が滝夜叉。
将門と興世王が来たので秀郷は姿を隠す。将門が秀郷を追って行ったあと、興世王は桔梗を斬り、秀郷と不義を働いていたという。この時の短い立ち回りで、経文が広がって落ちる。桜姫のワンシーンを思い出した。その上に倒れた七之助は綺麗で、上から観たらきっと綺麗に倒れてる姿が見られるのだろう。
数日後、秀郷は小野好古(團蔵)、平貞盛(市蔵)といっしょに、将門を襲う。松緑と海老蔵の立ち回りがあって面白かった。秀郷は黄金丸で将門を斬り、花道から矢を射た。晴明にもらった矢だ。この矢が将門の胸に刺さり、その隙に貞盛が首を落とす。しかし将門の首は貞盛に食らいついた。
将門の首をのせた岩に、血がしたたり流れる。その首が、世に祟りをなす、と告げて、序幕は終わり。
二幕目の初めはまた晴明と博雅が都大路を歩いて、滝夜叉姫に会う。博雅は滝夜叉に気がある様子。
晴明は、自分は狐の子だからと言って、自宅で博雅が笛を吹いている間に白狐と戯れたりしている。この白狐は染五郎が動かす。
博雅役の勘九郎の声は、素の声に近い、ぶりっ子風の声。博雅には合っていた。
晴明と博雅が二人でいるところに尋ねてくる賀茂保憲役の亀三郎が同世代の公卿らしくてなかなか良い。
この三人が、都で起きている事件について話す。
将門を殺した貞盛が奇病にかかっている。医師の祥仙(愛之助)は実は興世王で、貞盛の身体を使って将門の再生を図ろうとしている。興世王と魑魅魍魎に育てられた滝夜叉は、父将門の腕が保存されている家に忍び込んで、腕を取り戻したりしている。
三幕目の最後、貴船山中で興世王が将門を蘇生させようと呪文を唱えている。序幕の興世王は将門を悪の道に誘うメフィストフェレスのような役回りだったが、貴船山中で将門を蘇生させようと必死の姿は、さながらマッドサイエンティスト。衣装が黒と赤で、面白い役だと思う。
将門が蘇生すれば日本を掌中に収めるという大願が成就する、と滝夜叉に告げるが、滝夜叉は、それは将門の望みではなく興世王の望みだ、戦いはもう嫌だという。興世王は腹を立てて、滝夜叉の母を手に掛けたのは自分だと言い、滝夜叉も殺そうとする。そこに道満が現れて、滝夜叉を救おうとする。(道満はいろんなポイントで大きな黒揚羽とともに現れる)
そうこうしているうちに将門が蘇生して恨みを晴らそうとする。晴明、秀郷が駆け付けて戦いとなる。
海老蔵の顔の迫力は本当に将門にぴったりで、台詞を言わなくてもただ真ん中に座っているだけで説得力があった。私の席からは、台詞を言う興世王が将門の後ろに隠れて見えなくなることがあって、海老蔵の顔を見ながら愛之助の台詞を聞いてるのは最高だと思った。
将門と興世王には、晴明が放った白狐たちが襲い掛かる。ちょうど9匹ずつ。
ファイアーボールというのか、炎が一瞬ボンッと出て消えるのが出た。燃えるときの一瞬、熱を感じた。
将門と興世王は戦いに敗れ、いっしょに赤い火に包まれるような感じでせり下がる。
花道に道満が現れて「つまらねえ」「また会おう」と言って去る。
晴明、博雅、秀郷、滝夜叉は舞台にいて、幕となった。
序幕の松緑は荒事で大活躍だったし、公卿の格好も似あってかっこよかったが、髭をはやした二幕目以降は影が薄かった。
最後まで狂っていた将門と興世王が面白かった。滝夜叉姫は髪型や衣装が平凡だし、魑魅魍魎に育てられたわりには考え方が普通でつまらなかった。
「陰陽師」
暗い中で幕が開いたとき、舞台の上の方に照明があるのがわかって、染五郎が前にやった染模様とか、ああいう感じの舞台になるのか、と思った。
舞台の後ろに大きな月が出ていて、その前を晴明(染五郎)、続いて笛を吹きながら博雅(勘九郎)がこちらへ歩いてくる。
舞台下手の方から魑魅魍魎が出てくる。恐竜が帽子をかぶったようなのとか、一つ目小僧みたいなのとか、いろんな形のものが動いている。その中の一団が高くなって、人間を一人つかまえた。グシャグシャという音がする。博雅の従者が食べられた。
下手から、お姫様(菊之助)が竜のようなものに乗って出てきて、魑魅魍魎といっしょに上手に消えた。
この時点では、「海神別荘」のような舞台になるのかと想像した。
しかし、20年前の回想シーンになると、雰囲気が変わる。平将門(海老蔵)は、役人にひどいことをされている人を救う。海老蔵は荷車を持ち上げてブン回したりするのが似合う。友達の藤原秀郷(松緑)と、桔梗(七之助)がいっしょにいる。
将門は東国へ戻る決心をし、それに従う桔梗。秀郷は政治的な理由で都に残る。秀郷は桔梗に心を寄せていて、去っていく桔梗に渡せなかった櫛を、懐から取り出す。
秀郷は朝廷から将門討伐に東国に向かうように言われたが拒絶する。しかし、晴明は彼に将門は前の将門ではないと言い、三上山の麓を通って東国に行くように言って、一本の矢をくれる。
晴明が星を見上げていると、花道の方からカサカサと音がする。差し金の先に、大きめのアゲハ蝶がついていて、それを動かしている音だ。スッポンからはもっと大きなアゲハ蝶が姿を見せ、その後、蘆屋道満(亀蔵)がスッポンから顔をだし、花道に肘をついて顔をのせ、晴明に話しかけた後、舞台に出て来た。顔は青鬼のような色で、仁王襷(と思ったがチョウチョの形?)をしめて、先に髑髏をつけた緑の玉の首飾りをしている。回りには差し金の蝶が飛んでいる。
次の場面でまた仁王襷の人が出て来たので蘆屋道満かと思ったら、今度は秀郷(松緑)だった。秀郷は三上山で大ムカデと戦う。この大ムカデは、大蛇などのときと同じで何人もの役者で一つの大ムカデ。基本的に僧兵の衣装で、肘から手まで赤く塗り、肩のあたりは緑がまじったようなものがついている。先頭の頭はもじゃもじゃした黒い生地に黄色い触覚が2本と、赤い目がついている。
大ムカデを退治した秀郷は、大蛇の精(新悟)から黄金丸という太刀をもらう。これで切られた傷は20年間治らないという。大蛇の精の着物は、後ろに緑のしっぽのようなものがついていた。
松緑は跳び六方で引っ込む。このあたりはかなり歌舞伎的だった。
秀郷は東国で将門に再会する。都にいたときは暴れ者の若い衆という感じだったのが、今は不気味な雰囲気を漂わせている。これが海老蔵にぴったりだった。すぐ隣りに控えているのは興世王(愛之助)。桔梗は今では将門の奥方になっていて、それを聞いた秀郷は動揺する。
この一年前、将門の一族は都の兵に虐殺されていた。討たれた死体が折り重なっている館の様子は凄惨。将門はわが子の死体を見つけて抱き上げ悲嘆にくれる。そして最後にわが子の身体に食いつく。それを煽る興世王。興世王の前で、将門は獣のように四つん這いになってわが子の肉を食らう。
興世王は東国の民が都に虐げられており、それを救えるのは将門だけであり、そうすることが正義だと焚き付ける。
桔梗の前は秀郷に、将門が討手を差し向けたので逃げるように言い、興世王が将門を変えてしまったこと、自分に娘がいることを語る。この娘が滝夜叉。
将門と興世王が来たので秀郷は姿を隠す。将門が秀郷を追って行ったあと、興世王は桔梗を斬り、秀郷と不義を働いていたという。この時の短い立ち回りで、経文が広がって落ちる。桜姫のワンシーンを思い出した。その上に倒れた七之助は綺麗で、上から観たらきっと綺麗に倒れてる姿が見られるのだろう。
数日後、秀郷は小野好古(團蔵)、平貞盛(市蔵)といっしょに、将門を襲う。松緑と海老蔵の立ち回りがあって面白かった。秀郷は黄金丸で将門を斬り、花道から矢を射た。晴明にもらった矢だ。この矢が将門の胸に刺さり、その隙に貞盛が首を落とす。しかし将門の首は貞盛に食らいついた。
将門の首をのせた岩に、血がしたたり流れる。その首が、世に祟りをなす、と告げて、序幕は終わり。
二幕目の初めはまた晴明と博雅が都大路を歩いて、滝夜叉姫に会う。博雅は滝夜叉に気がある様子。
晴明は、自分は狐の子だからと言って、自宅で博雅が笛を吹いている間に白狐と戯れたりしている。この白狐は染五郎が動かす。
博雅役の勘九郎の声は、素の声に近い、ぶりっ子風の声。博雅には合っていた。
晴明と博雅が二人でいるところに尋ねてくる賀茂保憲役の亀三郎が同世代の公卿らしくてなかなか良い。
この三人が、都で起きている事件について話す。
将門を殺した貞盛が奇病にかかっている。医師の祥仙(愛之助)は実は興世王で、貞盛の身体を使って将門の再生を図ろうとしている。興世王と魑魅魍魎に育てられた滝夜叉は、父将門の腕が保存されている家に忍び込んで、腕を取り戻したりしている。
三幕目の最後、貴船山中で興世王が将門を蘇生させようと呪文を唱えている。序幕の興世王は将門を悪の道に誘うメフィストフェレスのような役回りだったが、貴船山中で将門を蘇生させようと必死の姿は、さながらマッドサイエンティスト。衣装が黒と赤で、面白い役だと思う。
将門が蘇生すれば日本を掌中に収めるという大願が成就する、と滝夜叉に告げるが、滝夜叉は、それは将門の望みではなく興世王の望みだ、戦いはもう嫌だという。興世王は腹を立てて、滝夜叉の母を手に掛けたのは自分だと言い、滝夜叉も殺そうとする。そこに道満が現れて、滝夜叉を救おうとする。(道満はいろんなポイントで大きな黒揚羽とともに現れる)
そうこうしているうちに将門が蘇生して恨みを晴らそうとする。晴明、秀郷が駆け付けて戦いとなる。
海老蔵の顔の迫力は本当に将門にぴったりで、台詞を言わなくてもただ真ん中に座っているだけで説得力があった。私の席からは、台詞を言う興世王が将門の後ろに隠れて見えなくなることがあって、海老蔵の顔を見ながら愛之助の台詞を聞いてるのは最高だと思った。
将門と興世王には、晴明が放った白狐たちが襲い掛かる。ちょうど9匹ずつ。
ファイアーボールというのか、炎が一瞬ボンッと出て消えるのが出た。燃えるときの一瞬、熱を感じた。
将門と興世王は戦いに敗れ、いっしょに赤い火に包まれるような感じでせり下がる。
花道に道満が現れて「つまらねえ」「また会おう」と言って去る。
晴明、博雅、秀郷、滝夜叉は舞台にいて、幕となった。
序幕の松緑は荒事で大活躍だったし、公卿の格好も似あってかっこよかったが、髭をはやした二幕目以降は影が薄かった。
最後まで狂っていた将門と興世王が面白かった。滝夜叉姫は髪型や衣装が平凡だし、魑魅魍魎に育てられたわりには考え方が普通でつまらなかった。
平成二十五年度公文協主催巡業 西コース 川口 ― 2013/09/28 03:04
2013年9月25日 川口リリア 午後2時開演 2階15列31番
鎌倉芸術館で観た連獅子が素晴らしくて是非もう一度観たかったので切符を買った。チケットウェブ松竹で買ったときは通路際の30番はなかったのだが、空席だった。都合が悪くて来られなかったのか、別のところで売ってた切符なのかはわからないが。
「沼津」は好きな演目ではないのだが、結構楽しめた。舞台から遠い席なのに、十兵衛がお米を嫁にくれというあたりはすごく引き込まれて見ていた。芸の力か。
平作は南座で観た我當のぼろぼろ感が好きだったが、歌六は遠くから見ても素足が綺麗で、演技で「老人」になっている。
お約束の十兵衛と平作が客先に下りて通路を歩くのは、上手の舞台そで通路から下に下りて下手に行ったようだ。下から役者が見上げていたのか、二階の前の方の人たちが立ち上がって手を振ったりしていた。私のところは後ろすぎて何も見えなかった。
芝雀はいつも可愛くて、お米にぴったりだと思う。義太夫に乗って動くのはあんまり得意そうではなかった。
お米が印篭を盗もうとしたとき、仁左衛門の十兵衛は気づいてすぐに、もうこんな家にはいられないと旅支度を始める様子だったが、吉右衛門はそこまではしなかった。
遠くの席なので舞台全体の役者の動きがよく見え、文楽もこんな動きなのかと考えながら観た。
米吉は最初に出てくる茶屋娘の役。今月は口上とこれだけだ。
「口上」は、鎌倉芸術館のときと大体同じ。ずらっと並ぶと芝雀だけ着物が違う。でもみんな吉右衛門の血縁。「錦ちゃん」「はいっ」と、錦之助が最初に口上を述べた。
「連獅子」はやはり迫力があって素晴らしかった。歌昇は、派手な動きは控えたようだが、高く飛び上がったり、要所要所に気迫が感じられた。
宗論の種之助と隼人も相変わらず楽しかった。隼人はずっと台詞が不安定だったが、改善しようと努力してるように感じた。踊りは種之助の方がうまいのは間違いないのだが、隼人は大きいから動くと舞台映えがする。
鎌倉芸術館で観た連獅子が素晴らしくて是非もう一度観たかったので切符を買った。チケットウェブ松竹で買ったときは通路際の30番はなかったのだが、空席だった。都合が悪くて来られなかったのか、別のところで売ってた切符なのかはわからないが。
「沼津」は好きな演目ではないのだが、結構楽しめた。舞台から遠い席なのに、十兵衛がお米を嫁にくれというあたりはすごく引き込まれて見ていた。芸の力か。
平作は南座で観た我當のぼろぼろ感が好きだったが、歌六は遠くから見ても素足が綺麗で、演技で「老人」になっている。
お約束の十兵衛と平作が客先に下りて通路を歩くのは、上手の舞台そで通路から下に下りて下手に行ったようだ。下から役者が見上げていたのか、二階の前の方の人たちが立ち上がって手を振ったりしていた。私のところは後ろすぎて何も見えなかった。
芝雀はいつも可愛くて、お米にぴったりだと思う。義太夫に乗って動くのはあんまり得意そうではなかった。
お米が印篭を盗もうとしたとき、仁左衛門の十兵衛は気づいてすぐに、もうこんな家にはいられないと旅支度を始める様子だったが、吉右衛門はそこまではしなかった。
遠くの席なので舞台全体の役者の動きがよく見え、文楽もこんな動きなのかと考えながら観た。
米吉は最初に出てくる茶屋娘の役。今月は口上とこれだけだ。
「口上」は、鎌倉芸術館のときと大体同じ。ずらっと並ぶと芝雀だけ着物が違う。でもみんな吉右衛門の血縁。「錦ちゃん」「はいっ」と、錦之助が最初に口上を述べた。
「連獅子」はやはり迫力があって素晴らしかった。歌昇は、派手な動きは控えたようだが、高く飛び上がったり、要所要所に気迫が感じられた。
宗論の種之助と隼人も相変わらず楽しかった。隼人はずっと台詞が不安定だったが、改善しようと努力してるように感じた。踊りは種之助の方がうまいのは間違いないのだが、隼人は大きいから動くと舞台映えがする。
新開場記念 歌舞伎座特別舞踊会 ― 2013/09/28 04:07
2013年9月27日 歌舞伎座 午後4時開演 2階1列3番
「寿式三番叟」藤間勘右衛門、藤間勘十郎
後見は尾上みどりと澤村國矢。みどりが上手、國矢が下手で頭を下げている。
勘十郎と松緑が出てきて、二人とも三番叟を踊る様子だったので、しめた、と思うと同時に、並ぶと顔の大きさが随分違うなあと感じた。
亀治郎と染五郎が二人三番叟を踊った時は二人がシャドウになる動きが多かったように記憶しているが、きょうの二人はミラーの動きが多かった。左右逆にならないので完全に鏡像ではないのだが。
花道での二人の踊りも、上からよく見えた。
勘十郎の三番叟は複数回観ているが、松緑のは初めて。二人ともうまいが、松緑の現代的な身体つきで踊ると三番叟にしてはちゃらい印象を受ける。三番叟は勘十郎の迷いのない力強い踊りが好きだ。
「長刀八島」 井上八千代
前に観た二枚扇の八島が素晴らしかったので、また観たかったのだが。
「猩々」 尾上墨雪
菊之丞のお父さんらしい綺麗な人だ。
猩々はおめでたい踊りだそうだが、素踊りだからめでたそうな色取りは酒の甕と、赤と金の柄の扇。
三味線を使わないお囃子の伴奏がとても気持ち良かった。
「幻椀久」 花柳壽輔
松の木を松山に見立てて、椀久一人で踊る。
この人が花柳寛應を襲名したときの舞踊会に行った。その直後に壽輔になったのだが、舞踊会で踊った「茨木」の真柴の踊りに感動した。台詞も歌舞伎役者のようにうまかった。
きょうは台詞がうまいのはそのままだったが、年齢のせいか足にきてるのが見て取れて、残念だった。
「寿式三番叟」藤間勘右衛門、藤間勘十郎
後見は尾上みどりと澤村國矢。みどりが上手、國矢が下手で頭を下げている。
勘十郎と松緑が出てきて、二人とも三番叟を踊る様子だったので、しめた、と思うと同時に、並ぶと顔の大きさが随分違うなあと感じた。
亀治郎と染五郎が二人三番叟を踊った時は二人がシャドウになる動きが多かったように記憶しているが、きょうの二人はミラーの動きが多かった。左右逆にならないので完全に鏡像ではないのだが。
花道での二人の踊りも、上からよく見えた。
勘十郎の三番叟は複数回観ているが、松緑のは初めて。二人ともうまいが、松緑の現代的な身体つきで踊ると三番叟にしてはちゃらい印象を受ける。三番叟は勘十郎の迷いのない力強い踊りが好きだ。
「長刀八島」 井上八千代
前に観た二枚扇の八島が素晴らしかったので、また観たかったのだが。
「猩々」 尾上墨雪
菊之丞のお父さんらしい綺麗な人だ。
猩々はおめでたい踊りだそうだが、素踊りだからめでたそうな色取りは酒の甕と、赤と金の柄の扇。
三味線を使わないお囃子の伴奏がとても気持ち良かった。
「幻椀久」 花柳壽輔
松の木を松山に見立てて、椀久一人で踊る。
この人が花柳寛應を襲名したときの舞踊会に行った。その直後に壽輔になったのだが、舞踊会で踊った「茨木」の真柴の踊りに感動した。台詞も歌舞伎役者のようにうまかった。
きょうは台詞がうまいのはそのままだったが、年齢のせいか足にきてるのが見て取れて、残念だった。
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