明治座花形舞踊公演 ― 2013/12/02 14:27
2013年11月27日、28日 午後6時半開演 2階1列
27日
長唄「操り三番叟」
幕開きに隼人が裃姿で現れ、真ん中に正座して扇子を置いてお辞儀をしたので何か口上を述べるのかと思ったら何も言わずまた立ち上がって下手奥に行った。ああ、人形遣いの役なんだ、と思った。
下手の箱を開けて、中から出したのは三番叟役の歌昇。歌昇の三番叟は種太郎時代の二年前に趣向の華で観たことがある。あの時の人形遣いは米吉だった。
素踊りなので二人とも五大陸が着物を着たような感じだ。趣向の華のときより今回の方が人形遣いの出番が多いようで(気のせい?)、人形を連れて歩いているとき、隼人の動きと人形の動きが合わないと心配で、隼人ガンバレと思った。
歌昇の踊りの感想は趣向の華のときと同じ。ジャンプ力や、足をすべらせるところなど、下半身の動きは素晴らしい。でも人形にしては、上半身の脱力感が足りない。
隼人が何しろかっこよくて、終始人形よりも人形遣いの方に目が行きがちで申し訳ない。人形の動きに合わせて足を踏み鳴らすが、あれで人形を操作しているわけだ。糸を直した後、上手に控えて人形を見守る姿が美しく、見た目だけなら富樫もできそう。月末に二十歳になる。男の色香が漂ってくるようになった。
清元「三社祭」
種之助と廣松。この二人で舞踊の後見をしてるのを見たことがある。優等生なんだろう。
櫂を持った種之助の踊りが男らしくてかっこよかった。小柄なので櫂が大きく見えるが、それがかえってかっこいい。たぶん、こういう踊りが好きなんだろう。嬉しそうに踊っている。私もこの踊りが大好きだ。
廣松は一心会で三番叟を踊ったときは男性的な人だと思ったが、最近女形が多いせいか、顔つきが基本的に女形らしくなった。きょうの踊りの女役もうまかった。
うまい人が二人そろった三社祭で、楽しかった。
この後、25分休み。
清元長唄「六歌仙容彩」
(僧正遍昭 )
遍昭は菊之丞、小野小町は中村江梨。中村江梨は初めて見た。芝翫の孫だ。
(文屋康秀)
康秀は菊之丞。官女はいろいろな流派の若い舞踊家さんたち。康秀を真ん中にして「コイづくし」のやりとりがあったりする。
ここでの菊之丞一人の踊りが、私にとって本日のメインディッシュだった。菊之丞にぴったり。前に仁左衛門の文屋をテレビで見て、合う役だなあと思ったが、菊之丞は孝夫にどこか通じるところがあり、こういう優雅な役の踊りが似合う。
(在原業平)
小野小町は引き続き中村江梨で、業平は芳次郎。
芳次郎は、2007年の襲名にときに操り三番叟を踊ったのを観た。あの時はまだ15歳の少年だった。
(喜撰法師)
喜撰は勘十郎、祇園のお梶は市川ぼたん。ぼたんは雰囲気がお母さんに似た美人だ。お姐さんの雰囲気で、なかなか良かった。
勘十郎と同じ年頃だと思うが、二人の踊りはけっこう合う。
きょうは、この二人と菊之丞が年長組で、それ以外は平成生まれの若手らしい。
(大伴黒主)
黒主が勘十郎で小野小町が市川ぼたん。
踊りというより歌舞伎的に見た目が盛り上がる演目で、最後は勘十郎が三段の上で決まった。
28日
長唄「歌舞伎草紙」
この演目は拵えをしている。中村江梨が出雲阿国、市川ぼたんが名古屋山三、8人の舞踊家さんたちが阿国の弟子を踊る。
市川ぼたんはきのう素踊りで見たときはお母さんに似てると思ったが、きょうの白塗りの顔は、写真で見る団十郎の海老蔵時代の顔に似ている。頬のあたりの骨格が似ているのだ。
長唄「夢殿」 花柳芳次郎
解説に精神性の高い舞踊、と書いてあるとおり、誰がやっても見映えがするような見せ場があるわけでもなく、所作を積み重ねていく。若い舞踊家にとってはチャレンジングな作品だと感じた。厩戸皇子の役だとしたら若いに越したことはないけれども。
常磐津「一人景清」尾上菊之丞
紋付の羽織を着て、助六のように傘で顔を隠して花道から登場。
豪傑っぽい歩き方をしていたから、景清はそういう人なのだろう。
きのうの文屋康秀の方が菊之丞のニンに合うとは思うが、この踊りも、観ることが悦楽であった。技術的な高まりと、まだ若い体力が合わさって、舞踊家として最高の時期なんだろうと思う。
常磐津長唄「来宵蜘蛛絲」
小姓、座頭、傾城、実は蜘蛛の精が勘十郎、坂田金時は種之助、碓井貞光が隼人、源頼光が歌昇。廣松はきょうは後見に回って、後半は蜘蛛の糸を投げたり、巻き取ったりしていた。
幕開きは舞台中央に隼人が立って刀を構え、種之助は重そうな刀を捧げ持って耐えていた。種之助は元気な坂田金時、イケメンの隼人は碓井貞光にぴったり。
勘十郎が杖で前を確かめながら花道から出てきた姿は見覚えがある。三響会の「月見座頭」のときと、趣向の華でふざけて按摩の役をやったとき。
傾城の踊りがうまい。女形の踊りがうまいのに、いつも素踊りだから、いつか拵えした姿が見てみたい。
頼光役の歌昇は途中から出てきた。白い着物で座っている姿が色白の歌昇によく似合っていた。傾城の勘十郎との踊りも良かったが、蜘蛛の精と争いになり、投げられた糸にからまって身体の自由を奪われ、最後座り込んでしまうときに醸し出す妖しさに、ついつい盛大な拍手をおくってしまった。守ってあげたいような頼光だ。坂田金時や碓井貞光の勇ましさに感動するのは健康的なことだが、歌昇くんがやられるところに興奮するのはちょっとあぶないかも。
いつもの通り、最後は糸がたくさん投げられ、後見さんたちが後ろで必死に巻き取り、踊ってる人たちもたくさん糸をかぶって終わった。きょうも勘十郎は三段に上った。隼人、種之助、歌昇が下手と上手でポーズをとった。十代の隼人を見るのはこれが最後だ。
27日
長唄「操り三番叟」
幕開きに隼人が裃姿で現れ、真ん中に正座して扇子を置いてお辞儀をしたので何か口上を述べるのかと思ったら何も言わずまた立ち上がって下手奥に行った。ああ、人形遣いの役なんだ、と思った。
下手の箱を開けて、中から出したのは三番叟役の歌昇。歌昇の三番叟は種太郎時代の二年前に趣向の華で観たことがある。あの時の人形遣いは米吉だった。
素踊りなので二人とも五大陸が着物を着たような感じだ。趣向の華のときより今回の方が人形遣いの出番が多いようで(気のせい?)、人形を連れて歩いているとき、隼人の動きと人形の動きが合わないと心配で、隼人ガンバレと思った。
歌昇の踊りの感想は趣向の華のときと同じ。ジャンプ力や、足をすべらせるところなど、下半身の動きは素晴らしい。でも人形にしては、上半身の脱力感が足りない。
隼人が何しろかっこよくて、終始人形よりも人形遣いの方に目が行きがちで申し訳ない。人形の動きに合わせて足を踏み鳴らすが、あれで人形を操作しているわけだ。糸を直した後、上手に控えて人形を見守る姿が美しく、見た目だけなら富樫もできそう。月末に二十歳になる。男の色香が漂ってくるようになった。
清元「三社祭」
種之助と廣松。この二人で舞踊の後見をしてるのを見たことがある。優等生なんだろう。
櫂を持った種之助の踊りが男らしくてかっこよかった。小柄なので櫂が大きく見えるが、それがかえってかっこいい。たぶん、こういう踊りが好きなんだろう。嬉しそうに踊っている。私もこの踊りが大好きだ。
廣松は一心会で三番叟を踊ったときは男性的な人だと思ったが、最近女形が多いせいか、顔つきが基本的に女形らしくなった。きょうの踊りの女役もうまかった。
うまい人が二人そろった三社祭で、楽しかった。
この後、25分休み。
清元長唄「六歌仙容彩」
(僧正遍昭 )
遍昭は菊之丞、小野小町は中村江梨。中村江梨は初めて見た。芝翫の孫だ。
(文屋康秀)
康秀は菊之丞。官女はいろいろな流派の若い舞踊家さんたち。康秀を真ん中にして「コイづくし」のやりとりがあったりする。
ここでの菊之丞一人の踊りが、私にとって本日のメインディッシュだった。菊之丞にぴったり。前に仁左衛門の文屋をテレビで見て、合う役だなあと思ったが、菊之丞は孝夫にどこか通じるところがあり、こういう優雅な役の踊りが似合う。
(在原業平)
小野小町は引き続き中村江梨で、業平は芳次郎。
芳次郎は、2007年の襲名にときに操り三番叟を踊ったのを観た。あの時はまだ15歳の少年だった。
(喜撰法師)
喜撰は勘十郎、祇園のお梶は市川ぼたん。ぼたんは雰囲気がお母さんに似た美人だ。お姐さんの雰囲気で、なかなか良かった。
勘十郎と同じ年頃だと思うが、二人の踊りはけっこう合う。
きょうは、この二人と菊之丞が年長組で、それ以外は平成生まれの若手らしい。
(大伴黒主)
黒主が勘十郎で小野小町が市川ぼたん。
踊りというより歌舞伎的に見た目が盛り上がる演目で、最後は勘十郎が三段の上で決まった。
28日
長唄「歌舞伎草紙」
この演目は拵えをしている。中村江梨が出雲阿国、市川ぼたんが名古屋山三、8人の舞踊家さんたちが阿国の弟子を踊る。
市川ぼたんはきのう素踊りで見たときはお母さんに似てると思ったが、きょうの白塗りの顔は、写真で見る団十郎の海老蔵時代の顔に似ている。頬のあたりの骨格が似ているのだ。
長唄「夢殿」 花柳芳次郎
解説に精神性の高い舞踊、と書いてあるとおり、誰がやっても見映えがするような見せ場があるわけでもなく、所作を積み重ねていく。若い舞踊家にとってはチャレンジングな作品だと感じた。厩戸皇子の役だとしたら若いに越したことはないけれども。
常磐津「一人景清」尾上菊之丞
紋付の羽織を着て、助六のように傘で顔を隠して花道から登場。
豪傑っぽい歩き方をしていたから、景清はそういう人なのだろう。
きのうの文屋康秀の方が菊之丞のニンに合うとは思うが、この踊りも、観ることが悦楽であった。技術的な高まりと、まだ若い体力が合わさって、舞踊家として最高の時期なんだろうと思う。
常磐津長唄「来宵蜘蛛絲」
小姓、座頭、傾城、実は蜘蛛の精が勘十郎、坂田金時は種之助、碓井貞光が隼人、源頼光が歌昇。廣松はきょうは後見に回って、後半は蜘蛛の糸を投げたり、巻き取ったりしていた。
幕開きは舞台中央に隼人が立って刀を構え、種之助は重そうな刀を捧げ持って耐えていた。種之助は元気な坂田金時、イケメンの隼人は碓井貞光にぴったり。
勘十郎が杖で前を確かめながら花道から出てきた姿は見覚えがある。三響会の「月見座頭」のときと、趣向の華でふざけて按摩の役をやったとき。
傾城の踊りがうまい。女形の踊りがうまいのに、いつも素踊りだから、いつか拵えした姿が見てみたい。
頼光役の歌昇は途中から出てきた。白い着物で座っている姿が色白の歌昇によく似合っていた。傾城の勘十郎との踊りも良かったが、蜘蛛の精と争いになり、投げられた糸にからまって身体の自由を奪われ、最後座り込んでしまうときに醸し出す妖しさに、ついつい盛大な拍手をおくってしまった。守ってあげたいような頼光だ。坂田金時や碓井貞光の勇ましさに感動するのは健康的なことだが、歌昇くんがやられるところに興奮するのはちょっとあぶないかも。
いつもの通り、最後は糸がたくさん投げられ、後見さんたちが後ろで必死に巻き取り、踊ってる人たちもたくさん糸をかぶって終わった。きょうも勘十郎は三段に上った。隼人、種之助、歌昇が下手と上手でポーズをとった。十代の隼人を見るのはこれが最後だ。
歌舞伎座こけら落とし12月 初日 昼の部 ― 2013/12/09 23:59
2013年12月1日 午前11時開演
仮名手本忠臣蔵
えっへん、えっへんの配役紹介。海老蔵は流石にすごい拍手、と思ったら、その後が玉三郎で、一番だった。当然。
「大序」
役者が目を閉じてじっとしている幕開き。顔を下向き加減にしているので、師直は、ん、あれ本当に海老蔵?という感じだった。でも順番が来たらカッと目を見開くんだろうと思っていたら、その通りだった。
海老蔵初役の師直は悪くない。染五郎は師直に呼び止められるたびに明らかに不機嫌な様子を見せ、幕が閉まる前は肩を大きく上下させて怒りの様子を表していて、前にいてとどめる様子の菊之助と対照的だった。
「三段目」
進物の場、伴内役の幸太郎は台詞がよく入ってなかったようだ。
刃傷の場の前には、長い畳を一回投げるだけで反対側まで敷き詰め、客席から拍手が湧くお約束も無事に終了。
役者本人の年齢差を考えながら見ると、海老蔵の師直、染五郎の若狭之助、菊之助の判官のからみは面白かった。この世代は、海老蔵を師直に回しても勘平や判官や定九郎の配役に困らないくらい美形が多いんだな、とも思った。
「四段目」
去年の花形忠臣蔵に引き続き、菊之助の判官は良い。力弥を前にしてダメだというような顔をするのは菊五郎の方がわかりやすかったが。
力弥役の右近は先月の梅枝ほどは目立たない。普通の出来。
大星は私は染五郎が好きで、幸四郎の大星は、基本的には同じだろうから、たぶん良かったんだろう。私は一番大事なところで睡魔に襲われて、大星が判官の横でポンと胸を叩くあたりを見そこなった。
七之助の顔世は、相変わらず綺麗でうまい。大序からずっと、特筆するところがなく、普通。
「道行旅路の花聟」
玉三郎のおかる、待ってましたっ!
おかると勘平が笠で顔を隠して現れて、笠をとって顔が見えると美しさに客が拍手する、この嬉しさ。
玉三郎の衣装は御所模様で綺麗。松竹座で仁左衛門と踊ったときは、衣装まで、輝くように美しく見えたが、きょうはそれほどではない。おかるに比べて勘平は終始難しい顔をしていて、気にかかることがあるんだとわかる。仁左衛門のときは難しい表情でさえ美しさの中に溶け込んでしまって、勘平の置かれた状況がどうのよりも、見る方はただただ美しさに酔う。
玉三郎は、「賃仕事」のところで昔ほど華麗にひら~んと手を動かさなくなった。勘平の世話をやくような所作をするとお母さんみたいに見えてしまうのも仕方ない。海老蔵と二人の踊りなら、吉野山の方が好きかも。
それでも二人は十分美しい。勘平が一人で踊るところで、黒い着物と赤い襦袢、白い襟の色彩がとても綺麗だと感じたのは初めてだ。
二人が引っ込みで花道七三にいるとき、「お似合いです!」と声が掛かった。
仮名手本忠臣蔵
えっへん、えっへんの配役紹介。海老蔵は流石にすごい拍手、と思ったら、その後が玉三郎で、一番だった。当然。
「大序」
役者が目を閉じてじっとしている幕開き。顔を下向き加減にしているので、師直は、ん、あれ本当に海老蔵?という感じだった。でも順番が来たらカッと目を見開くんだろうと思っていたら、その通りだった。
海老蔵初役の師直は悪くない。染五郎は師直に呼び止められるたびに明らかに不機嫌な様子を見せ、幕が閉まる前は肩を大きく上下させて怒りの様子を表していて、前にいてとどめる様子の菊之助と対照的だった。
「三段目」
進物の場、伴内役の幸太郎は台詞がよく入ってなかったようだ。
刃傷の場の前には、長い畳を一回投げるだけで反対側まで敷き詰め、客席から拍手が湧くお約束も無事に終了。
役者本人の年齢差を考えながら見ると、海老蔵の師直、染五郎の若狭之助、菊之助の判官のからみは面白かった。この世代は、海老蔵を師直に回しても勘平や判官や定九郎の配役に困らないくらい美形が多いんだな、とも思った。
「四段目」
去年の花形忠臣蔵に引き続き、菊之助の判官は良い。力弥を前にしてダメだというような顔をするのは菊五郎の方がわかりやすかったが。
力弥役の右近は先月の梅枝ほどは目立たない。普通の出来。
大星は私は染五郎が好きで、幸四郎の大星は、基本的には同じだろうから、たぶん良かったんだろう。私は一番大事なところで睡魔に襲われて、大星が判官の横でポンと胸を叩くあたりを見そこなった。
七之助の顔世は、相変わらず綺麗でうまい。大序からずっと、特筆するところがなく、普通。
「道行旅路の花聟」
玉三郎のおかる、待ってましたっ!
おかると勘平が笠で顔を隠して現れて、笠をとって顔が見えると美しさに客が拍手する、この嬉しさ。
玉三郎の衣装は御所模様で綺麗。松竹座で仁左衛門と踊ったときは、衣装まで、輝くように美しく見えたが、きょうはそれほどではない。おかるに比べて勘平は終始難しい顔をしていて、気にかかることがあるんだとわかる。仁左衛門のときは難しい表情でさえ美しさの中に溶け込んでしまって、勘平の置かれた状況がどうのよりも、見る方はただただ美しさに酔う。
玉三郎は、「賃仕事」のところで昔ほど華麗にひら~んと手を動かさなくなった。勘平の世話をやくような所作をするとお母さんみたいに見えてしまうのも仕方ない。海老蔵と二人の踊りなら、吉野山の方が好きかも。
それでも二人は十分美しい。勘平が一人で踊るところで、黒い着物と赤い襦袢、白い襟の色彩がとても綺麗だと感じたのは初めてだ。
二人が引っ込みで花道七三にいるとき、「お似合いです!」と声が掛かった。
2013年 南座 顔見世 夜の部 ― 2013/12/10 19:08
2013年12月9日 午後4時15分開演 2階1列11番
「御浜御殿綱豊卿」
御浜御殿といえば綱豊と助右衛門の対決だが、助右衛門が出てくるまではけっこう長い。
江島の時蔵ははまり役。豪奢な柄の打ちかけが似合う。先月の道行も矢絣でなく御所模様の着物で踊った方が綺麗だったのにと思う。孝太郎のお喜世が出てくると、そういえば仁左衛門がやる予定だったのだ、と思い出す。仁左衛門ファンだが、綱豊役に限っては梅玉の方が好きな私。新井白石役の我當は流石に顔立ちが綺麗だ。
きょうの席は花道の役者がよく見える。助右衛門役の中車が出てきて、ちょうど私に見えるくらいの位置に来たときに横を向いたので顔が見えた。あたりを心配そうにうかがうような顔を見て、最初、亀治郎によく似ていると思ったが、しばらくしたら浜木綿子に似てたような気もしてきた。
中車の助右衛門役は楽しみだったが、期待はずれだった。下手な人がやると役の難しさがわかることはよくあるが、これもそうだ。「なあに、たかが甲府三十五万石くらい」と憎まれ口をきくところで、笑いがとれない。ちょっと気持ち悪く歌舞伎口調になる場所があるが、全く効果的でない。テンション高く「放埓が原因でお取りつぶしになった例はなく~」というあたりは、まあまあ聞ける。
「けたたましい」という印象を持った亀治郎の助右衛門と比べて静かだったので初めの方は好感を持ったが、歌舞伎の技術がないと、この役の微妙な表情を表現するのはムリなようだ。客観的にそうだと言ってるだけで、中車を非難する気持ちは毛頭なく、先代猿之助の夢は息子の歌舞伎役者としての可能性は犠牲にして成就したものなのだなあと思った。山岡鉄太郎の役の方が直線的で簡単だったのだろう。
綱豊がいつになくテンションが高いと感じたのは、がっぷり組むような力が助右衛門にないからかもしれない。
「口上」
懐かしい、福山雅治の祝い幕。
口上は下手から中車、猿之助、藤十郎の3人。藤十郎の「新猿翁さんのご長男の照之さんが~」のような紹介の後、猿之助が挨拶。猿之助の名前が南座のまねきに上がったのは○年ぶり、中車は○年ぶり、猿翁は初めて、という話をした。そして、猿翁はきょう無事に74歳になった、という話。中車は、精進してまいります、という話。そして、藤十郎が、皆さんお待ちかねでしょう、と言って猿翁が登場。演舞場の口上のように正座しているように見せるために高さのある緋毛氈の台に「はめた」のではなく、イスに腰掛けた姿で、下の緋毛氈の台がこちらに動いてきて、藤十郎と猿之助の間に入った。顔の綺麗な骨格が露わになった老人。猿之助が、挨拶を代読する、というと、どうぞお願いしますというように、猿之助の方に手を伸ばした。代読の間も、胸の前に両腕を交差させたり、広げたりして、声は出さないが腕の動きで気持ちを伝えようとしているようだった。今後もおもだか屋をよろしく、というところでは、猿之助と中車の方に腕を伸ばす。3人が頭を下げて幕が降りるときは、猿翁は両腕を持ち上げようとするかのように上に動かしていた。
「黒塚」
去年初めて観て大好きになったから、また観られて嬉しい。阿闍梨役は梅玉。演舞場では団十郎だったな、と思い出す。
前半の動きが少ないところが内容としては深いのかもしれないが、私は後半、猿之助(鬼女)の踊りも動きが速くなったところからが好きだ。連理引きもすごくて、強力の猿弥はくるくる回ったりして大変だ。老女がススキの原に消えるところは、ロビーのテレビで観ると宙返りしているが、肉眼で速すぎて確認できなかった。
鬼女の姿で現われる猿之助は、ちょっと可愛い。鬼女が花道七三のところでまっすぐに前向きにバタッと倒れ、その瞬間スポットライトが落ちて黒くなるが、次の瞬間にはスポットライトがまたついて、その時には鬼女は倒れたときと逆の方向に身体を向けている。すさまじい速さだ。それで、後ろに跳びながら舞台に戻る。ここまでが圧巻だろう。
「新口村」
藤十郎(梅川)と翫雀(忠兵衛)で、新口村の舞踊仕立て。
意外と眠らないで最後まで見られた。
「児雷也」
花道を出てきたのはまたまた梅玉(児雷也)。夜の部は梅玉奮闘公演になっている。
児雷也が一夜の宿を求めた家に住む美しい越路の役は笑也。2人とも綺麗だ。
最後の幕になってやっと松緑(夜叉五郎)と愛之助(勇美之助)が出てくる。愛之助ははじめは狼の頭のようなものをかぶっている。横浜で言っていたように台詞はほんの一言。松緑の衣装は派手で、だんまりの所作は綺麗だった。
最後に出てきた蝦蟇がとても可愛かった。幕が閉まる前の背景にはレインボーと呼びたいよう虹が出ていた。
「御浜御殿綱豊卿」
御浜御殿といえば綱豊と助右衛門の対決だが、助右衛門が出てくるまではけっこう長い。
江島の時蔵ははまり役。豪奢な柄の打ちかけが似合う。先月の道行も矢絣でなく御所模様の着物で踊った方が綺麗だったのにと思う。孝太郎のお喜世が出てくると、そういえば仁左衛門がやる予定だったのだ、と思い出す。仁左衛門ファンだが、綱豊役に限っては梅玉の方が好きな私。新井白石役の我當は流石に顔立ちが綺麗だ。
きょうの席は花道の役者がよく見える。助右衛門役の中車が出てきて、ちょうど私に見えるくらいの位置に来たときに横を向いたので顔が見えた。あたりを心配そうにうかがうような顔を見て、最初、亀治郎によく似ていると思ったが、しばらくしたら浜木綿子に似てたような気もしてきた。
中車の助右衛門役は楽しみだったが、期待はずれだった。下手な人がやると役の難しさがわかることはよくあるが、これもそうだ。「なあに、たかが甲府三十五万石くらい」と憎まれ口をきくところで、笑いがとれない。ちょっと気持ち悪く歌舞伎口調になる場所があるが、全く効果的でない。テンション高く「放埓が原因でお取りつぶしになった例はなく~」というあたりは、まあまあ聞ける。
「けたたましい」という印象を持った亀治郎の助右衛門と比べて静かだったので初めの方は好感を持ったが、歌舞伎の技術がないと、この役の微妙な表情を表現するのはムリなようだ。客観的にそうだと言ってるだけで、中車を非難する気持ちは毛頭なく、先代猿之助の夢は息子の歌舞伎役者としての可能性は犠牲にして成就したものなのだなあと思った。山岡鉄太郎の役の方が直線的で簡単だったのだろう。
綱豊がいつになくテンションが高いと感じたのは、がっぷり組むような力が助右衛門にないからかもしれない。
「口上」
懐かしい、福山雅治の祝い幕。
口上は下手から中車、猿之助、藤十郎の3人。藤十郎の「新猿翁さんのご長男の照之さんが~」のような紹介の後、猿之助が挨拶。猿之助の名前が南座のまねきに上がったのは○年ぶり、中車は○年ぶり、猿翁は初めて、という話をした。そして、猿翁はきょう無事に74歳になった、という話。中車は、精進してまいります、という話。そして、藤十郎が、皆さんお待ちかねでしょう、と言って猿翁が登場。演舞場の口上のように正座しているように見せるために高さのある緋毛氈の台に「はめた」のではなく、イスに腰掛けた姿で、下の緋毛氈の台がこちらに動いてきて、藤十郎と猿之助の間に入った。顔の綺麗な骨格が露わになった老人。猿之助が、挨拶を代読する、というと、どうぞお願いしますというように、猿之助の方に手を伸ばした。代読の間も、胸の前に両腕を交差させたり、広げたりして、声は出さないが腕の動きで気持ちを伝えようとしているようだった。今後もおもだか屋をよろしく、というところでは、猿之助と中車の方に腕を伸ばす。3人が頭を下げて幕が降りるときは、猿翁は両腕を持ち上げようとするかのように上に動かしていた。
「黒塚」
去年初めて観て大好きになったから、また観られて嬉しい。阿闍梨役は梅玉。演舞場では団十郎だったな、と思い出す。
前半の動きが少ないところが内容としては深いのかもしれないが、私は後半、猿之助(鬼女)の踊りも動きが速くなったところからが好きだ。連理引きもすごくて、強力の猿弥はくるくる回ったりして大変だ。老女がススキの原に消えるところは、ロビーのテレビで観ると宙返りしているが、肉眼で速すぎて確認できなかった。
鬼女の姿で現われる猿之助は、ちょっと可愛い。鬼女が花道七三のところでまっすぐに前向きにバタッと倒れ、その瞬間スポットライトが落ちて黒くなるが、次の瞬間にはスポットライトがまたついて、その時には鬼女は倒れたときと逆の方向に身体を向けている。すさまじい速さだ。それで、後ろに跳びながら舞台に戻る。ここまでが圧巻だろう。
「新口村」
藤十郎(梅川)と翫雀(忠兵衛)で、新口村の舞踊仕立て。
意外と眠らないで最後まで見られた。
「児雷也」
花道を出てきたのはまたまた梅玉(児雷也)。夜の部は梅玉奮闘公演になっている。
児雷也が一夜の宿を求めた家に住む美しい越路の役は笑也。2人とも綺麗だ。
最後の幕になってやっと松緑(夜叉五郎)と愛之助(勇美之助)が出てくる。愛之助ははじめは狼の頭のようなものをかぶっている。横浜で言っていたように台詞はほんの一言。松緑の衣装は派手で、だんまりの所作は綺麗だった。
最後に出てきた蝦蟇がとても可愛かった。幕が閉まる前の背景にはレインボーと呼びたいよう虹が出ていた。
2013年 南座 顔見世 昼の部 ― 2013/12/10 21:46
2013年12月10日 午前十時半開演 2階1列9番
「厳島招檜扇」
舞台は厳島神社で、後ろに鳥居が見えている。
上の段の真ん中は清盛〔我當〕。上手には宗盛〔進之助〕。
下手には維盛〔萬太郎〕、重衡〔亀寿〕。
下には家臣役の月乃助、亀鶴、名代昇進の千次郎がいる。
舞を舞うために祇王〔壱太郎〕と仏御前〔笑三郎〕が入ってくる。
短い間だが壱太郎の踊りを楽しませてもらった。
仏御前が「親の仇!」と清盛に懐剣で襲い掛かり、清盛は檜扇でこれを打ち落とす。
仏御前は義朝の娘の九重姫とわかる。清盛は義朝は親友だったからと言って九重姫の命はとらない。
清盛が夕日を招き返した理由は、夕刻になるのに大経堂の建築が終わらず、遷座の式に間に合わないから。
式を延期するようなことになれば人々の嘲りを受けると重衡が言うので、清盛が檜扇で夕日を招き返した。
客席側が西になるわけで、舞台の役者たちに光が当たってきて、西から太陽が上がってきといるのがわかった。
「道行旅路の嫁入」
梅枝が踊るのを客席から見守る時蔵の姿はよく見かけたが、親子で踊るのは初めて見る。
二人並ぶと梅枝は顔が長い。でも踊りは梅枝の方がうまい。花嫁行列を見て、長い袖をつかんでうつむいて嘆くような仕草がかわいい。一人で踊るところもあって、うまいのだけど、可愛い若女形というタイプではないから、もっと違う踊りが見たいと思った。
翫雀の可内〔べくない〕。翫雀は踊りを捨ててなくてちゃんと稽古してるように見える。同じ奴でも、先月の松也とはずいぶん足の長さが違う。
可内は伴内と違って二人にからむわけではない。
「ぢいさんばあさん」
先代猿之助の美濃部伊織を観たことがある。無難にこなしていたがすごく良かったわけではなく、その後、同じ役の孝夫を観たときに演技のきめ細かさに感動したものだ。中車はもちろん下手だが、とぼけたおかし味があって、それがこの役で良い味を出している。「こんなところにホクロがあったかなあ」とるんの顔に顔を近づけるところ、京都の酒席で「奥方に会いたかろう」と言われて「会いたい」と言うところ、ぢいさんになってからるんと再会したときに「今度はほめてくれか」と言うところなど、面白かった。お父さんには無い持ち味だと思う。
るんの扇雀がすごく良かった。ばあさんになってから、坊が死んだことを詫びる場面も泣けた。普通の奥さんの役で、この人をこんなに良いと思ったのは初めてだ。頭の良い人だから中車と気が合って、愛情深い妻になっているのかもしれない。若妻のときは落ち着きすぎているくらい落ち着いているが、ふっくらとして美人だ。
下嶋〔右近〕といっしょに出てくる伊織役の中車は、着流しだと着物を着慣れてない印象が強い。私も着物のことは全くわからないのでどこがどうとは言えないのだが、右近と全然違う。立っているときも正座しても。京都の料亭の場でも、他の同輩たちと比べて、足がぴっちりして苦しげに正座しているように見えた。
泥酔して乱入してくる下嶋の右近は、ものすごくうまい。最後に落ちるときに不自然にたくさん歩いたように感じたのは、不慣れな中車が相手で自分で全部どうにかしなければならないから大変なのかもしれない。
甥夫婦役は月乃助と春猿。満開の桜もあって、目が覚めるように綺麗なシーンだった。月乃助は今年の元旦に踊りを観て、それ以来か、と最初の幕でも月乃助は見ているのに今更ながら考えた。
扇雀のばあさんは、今まで観たばあさんの中で一番立派。扇千影が白髪になって出てきたようだ。
中車のぢいさんは、今まで観た中で一番貧相。それでも、最後にるんに手を握られる場面などを見ると、一番可愛がってもらえそうに見えた。
中車は、昨夜の助右衛門はダメだったが伊織の役は良い。NHKの放送が助右衛門の方なのは気の毒だ。
「二人椀久」
椀久は初めは仁左衛門の予定だったが、休演になったので、代わりは愛之助。こうなると、顔見世昼の部の顔ぶれはすごく若い。ほとんど花形歌舞伎じゃないか。
愛之助は、花道を出てきて後ろを振り向いたときに顔がよく見えた。前に舞踊会で亀治郎の松山といっしょに踊ったのを見たことがある。亀治郎は弾けるように陽気な感じで踊っていたが、孝太郎はしっとりと踊っている。8年前に歌舞伎座で観たときのように「美しかったなー」と思うほどではないが、悪くはなかった。
「四の切」
10年くらい観ないでいたいと思っているのにまたまた観ることになってしまった「四の切」。
猿之助は回を重ねただけあって、階段を下りてくる足の様子が、より狐らしくなったし、階段から急に出てくるところのスピードも増したと思う。
亀井六郎が松緑で、駿河次郎が愛之助。この3人が並んだのを初めて観るような気がする。
松緑は夜も最後に少ししか出ないし、使い方が贅沢。これだけのために京都に来たのか。海老蔵と染五郎といっしょに出た追善興行の口上で学校時代の話をして「染五郎が卒業したと思ったら一年下にきのし君というのが入ってきて」と言ってたから、友情出演なのかもしれない。赤っつらの化粧だと辰之助に似る。
秀太郎が静御前。瞼の母のときは台詞がよく聞こえなかったりしたが、古典の役だと声量も十分だし、台詞もはっきりしている。
「厳島招檜扇」
舞台は厳島神社で、後ろに鳥居が見えている。
上の段の真ん中は清盛〔我當〕。上手には宗盛〔進之助〕。
下手には維盛〔萬太郎〕、重衡〔亀寿〕。
下には家臣役の月乃助、亀鶴、名代昇進の千次郎がいる。
舞を舞うために祇王〔壱太郎〕と仏御前〔笑三郎〕が入ってくる。
短い間だが壱太郎の踊りを楽しませてもらった。
仏御前が「親の仇!」と清盛に懐剣で襲い掛かり、清盛は檜扇でこれを打ち落とす。
仏御前は義朝の娘の九重姫とわかる。清盛は義朝は親友だったからと言って九重姫の命はとらない。
清盛が夕日を招き返した理由は、夕刻になるのに大経堂の建築が終わらず、遷座の式に間に合わないから。
式を延期するようなことになれば人々の嘲りを受けると重衡が言うので、清盛が檜扇で夕日を招き返した。
客席側が西になるわけで、舞台の役者たちに光が当たってきて、西から太陽が上がってきといるのがわかった。
「道行旅路の嫁入」
梅枝が踊るのを客席から見守る時蔵の姿はよく見かけたが、親子で踊るのは初めて見る。
二人並ぶと梅枝は顔が長い。でも踊りは梅枝の方がうまい。花嫁行列を見て、長い袖をつかんでうつむいて嘆くような仕草がかわいい。一人で踊るところもあって、うまいのだけど、可愛い若女形というタイプではないから、もっと違う踊りが見たいと思った。
翫雀の可内〔べくない〕。翫雀は踊りを捨ててなくてちゃんと稽古してるように見える。同じ奴でも、先月の松也とはずいぶん足の長さが違う。
可内は伴内と違って二人にからむわけではない。
「ぢいさんばあさん」
先代猿之助の美濃部伊織を観たことがある。無難にこなしていたがすごく良かったわけではなく、その後、同じ役の孝夫を観たときに演技のきめ細かさに感動したものだ。中車はもちろん下手だが、とぼけたおかし味があって、それがこの役で良い味を出している。「こんなところにホクロがあったかなあ」とるんの顔に顔を近づけるところ、京都の酒席で「奥方に会いたかろう」と言われて「会いたい」と言うところ、ぢいさんになってからるんと再会したときに「今度はほめてくれか」と言うところなど、面白かった。お父さんには無い持ち味だと思う。
るんの扇雀がすごく良かった。ばあさんになってから、坊が死んだことを詫びる場面も泣けた。普通の奥さんの役で、この人をこんなに良いと思ったのは初めてだ。頭の良い人だから中車と気が合って、愛情深い妻になっているのかもしれない。若妻のときは落ち着きすぎているくらい落ち着いているが、ふっくらとして美人だ。
下嶋〔右近〕といっしょに出てくる伊織役の中車は、着流しだと着物を着慣れてない印象が強い。私も着物のことは全くわからないのでどこがどうとは言えないのだが、右近と全然違う。立っているときも正座しても。京都の料亭の場でも、他の同輩たちと比べて、足がぴっちりして苦しげに正座しているように見えた。
泥酔して乱入してくる下嶋の右近は、ものすごくうまい。最後に落ちるときに不自然にたくさん歩いたように感じたのは、不慣れな中車が相手で自分で全部どうにかしなければならないから大変なのかもしれない。
甥夫婦役は月乃助と春猿。満開の桜もあって、目が覚めるように綺麗なシーンだった。月乃助は今年の元旦に踊りを観て、それ以来か、と最初の幕でも月乃助は見ているのに今更ながら考えた。
扇雀のばあさんは、今まで観たばあさんの中で一番立派。扇千影が白髪になって出てきたようだ。
中車のぢいさんは、今まで観た中で一番貧相。それでも、最後にるんに手を握られる場面などを見ると、一番可愛がってもらえそうに見えた。
中車は、昨夜の助右衛門はダメだったが伊織の役は良い。NHKの放送が助右衛門の方なのは気の毒だ。
「二人椀久」
椀久は初めは仁左衛門の予定だったが、休演になったので、代わりは愛之助。こうなると、顔見世昼の部の顔ぶれはすごく若い。ほとんど花形歌舞伎じゃないか。
愛之助は、花道を出てきて後ろを振り向いたときに顔がよく見えた。前に舞踊会で亀治郎の松山といっしょに踊ったのを見たことがある。亀治郎は弾けるように陽気な感じで踊っていたが、孝太郎はしっとりと踊っている。8年前に歌舞伎座で観たときのように「美しかったなー」と思うほどではないが、悪くはなかった。
「四の切」
10年くらい観ないでいたいと思っているのにまたまた観ることになってしまった「四の切」。
猿之助は回を重ねただけあって、階段を下りてくる足の様子が、より狐らしくなったし、階段から急に出てくるところのスピードも増したと思う。
亀井六郎が松緑で、駿河次郎が愛之助。この3人が並んだのを初めて観るような気がする。
松緑は夜も最後に少ししか出ないし、使い方が贅沢。これだけのために京都に来たのか。海老蔵と染五郎といっしょに出た追善興行の口上で学校時代の話をして「染五郎が卒業したと思ったら一年下にきのし君というのが入ってきて」と言ってたから、友情出演なのかもしれない。赤っつらの化粧だと辰之助に似る。
秀太郎が静御前。瞼の母のときは台詞がよく聞こえなかったりしたが、古典の役だと声量も十分だし、台詞もはっきりしている。
歌舞伎座こけら落とし12月 夜の部 ― 2013/12/14 01:07
2013年12月13日 午後4時半開演 1階14列26番
「五段目、六段目」
染五郎の勘平は五段目は菊五郎よりスラッとしてるな、と思った程度で、文句のない勘平だったが、六段目はあまり感心しなかった。どこが悪いというのではなく、ただ自分が感動しなかっただけだ。
七之助の女房おかるを観るのは二回目。玉三郎の雰囲気だが、声が少し福助に似てきたと思った。
千崎弥五郎は、五段目で出て来た時わからなかったが、高麗蔵。不破数右衛門が弥十郎なのですごく身長差がある。高麗蔵の千崎は連判状を出す前に外を確かめるとき、戸を開けてあたりを見るが外には出ない。又五郎は外に出て確かめていたような気がした。
「七段目」
この段の幸四郎の由良之助を観たことがあるかどうか記憶にないが、悪くなかった。特に今月は平右衛門が海老蔵で玉三郎と親子ほど年の差があるので、玉三郎と適当な年齢差でお兄さんの幸四郎と二人の場面が良かった。
海老蔵の平右衛門も悪くなかった。幸四郎も玉三郎もよく受けてくれていると思う。由良之助とのやり取りのところは、海老蔵の目立ち方がうっとうしく感じた。
おかるとのからみは、無骨な兄に見えて、なかなか良い。「髪の飾りに化粧して~」で悲劇調に転じるところも良かった。たまに怪獣みたいな顔になることがあるし、勘平が腹を切って死んでしまった、という前に「は、は」というのが不自然で下手とか、おかるに耳を貸すときの形がイマイチ綺麗じゃないとかいろいろ欠点はあるが、全体的には合格。
仲居役で小山三が出ていて、受けていた。獅子くたようなお侍、と言うのが小山三。
見立ては、長い布を波のように動かして海に見立てた「あまちゃん」と、燭台を聖火に見立ててオリンピックだった。
「十一段目」
獅童の小林平八郎と松也の竹森喜多八の泉水の立ち回りは先月の錦之助と歌昇にはかなわないだろうと思ったが、松也が投げられる場面が二回あったし、一応許せる範囲だった。
「五段目、六段目」
染五郎の勘平は五段目は菊五郎よりスラッとしてるな、と思った程度で、文句のない勘平だったが、六段目はあまり感心しなかった。どこが悪いというのではなく、ただ自分が感動しなかっただけだ。
七之助の女房おかるを観るのは二回目。玉三郎の雰囲気だが、声が少し福助に似てきたと思った。
千崎弥五郎は、五段目で出て来た時わからなかったが、高麗蔵。不破数右衛門が弥十郎なのですごく身長差がある。高麗蔵の千崎は連判状を出す前に外を確かめるとき、戸を開けてあたりを見るが外には出ない。又五郎は外に出て確かめていたような気がした。
「七段目」
この段の幸四郎の由良之助を観たことがあるかどうか記憶にないが、悪くなかった。特に今月は平右衛門が海老蔵で玉三郎と親子ほど年の差があるので、玉三郎と適当な年齢差でお兄さんの幸四郎と二人の場面が良かった。
海老蔵の平右衛門も悪くなかった。幸四郎も玉三郎もよく受けてくれていると思う。由良之助とのやり取りのところは、海老蔵の目立ち方がうっとうしく感じた。
おかるとのからみは、無骨な兄に見えて、なかなか良い。「髪の飾りに化粧して~」で悲劇調に転じるところも良かった。たまに怪獣みたいな顔になることがあるし、勘平が腹を切って死んでしまった、という前に「は、は」というのが不自然で下手とか、おかるに耳を貸すときの形がイマイチ綺麗じゃないとかいろいろ欠点はあるが、全体的には合格。
仲居役で小山三が出ていて、受けていた。獅子くたようなお侍、と言うのが小山三。
見立ては、長い布を波のように動かして海に見立てた「あまちゃん」と、燭台を聖火に見立ててオリンピックだった。
「十一段目」
獅童の小林平八郎と松也の竹森喜多八の泉水の立ち回りは先月の錦之助と歌昇にはかなわないだろうと思ったが、松也が投げられる場面が二回あったし、一応許せる範囲だった。
国立劇場 12月公演と研修発表会 ― 2013/12/14 23:23
2013年12月14日 国立劇場大劇場 正午開演 2階1列17番
きょうは討入りの日なので、入り口で四十七士の絵のクリアファイルをくれた。
忠臣蔵のスピンオフ。先月の歌舞伎座と同じ役の人が何人かいて、面白かった。
「主税と右衛門七」
設定は12月13日。主税(隼人)が滞在している家の娘(米吉)は主税のもとに通ってくる右衛門七(歌昇)が好きで、婿にしたいと思っている。
少女漫画的でとても面白かった。二十歳の隼人を観る最初の役が主税なのは嬉しい。
主税の部屋と娘の部屋を廻り舞台で見せる。その間をトボトボと歩く右衛門七。このトボトボ歩く感じがいかにも歌昇。娘の部屋から主税の部屋に来る途中で座り込んで泣き崩れるところが可哀想で、歌昇の魅力が爆発。
隼人は台詞がそれほどうまくないところが、15歳の役にあっていた。まだ幼さが残る声で「母上」と言うだけで母恋しの気持ちがわかる。隼人が自分で鼓を打ち歌もうたって、それに合わせて歌昇が「足軽踊り」を踊るのは素晴らしい観客サービス。
娘と右衛門七のシーンは、いまどきの少女漫画だったら絶対ベッドインがあるぞと思った。前に隼人が商業演劇で主税役をやった時は、討入りの前に黒木瞳に筆おろしをしてもらう話だった。赤穂浪士の中でも十代の2人については、みんないろいろ考えて話を作りたくなるのだろう。
「弥作の鎌腹」
又五郎が、先月歌舞伎座と同じく千崎弥五郎。吉右衛門はその兄の弥作で、百姓。
弥作は代官の娘と弥五郎を結婚させると七太夫(橘三郎)に約束するが、弥五郎は討入りに加わるからダメだから断ってくれという。弥作は断りに行くが、固く口止めされた討入りの話を仕方なく七太夫に漏らす。それを弥五郎に打ち明けると、弥五郎は七太夫を殺して自分は切腹する、と言うので、七太夫に言ってはいない、と言う。弥作は切腹の作法について弥五郎に聞き、紙に書き留める。弥作は七太夫を撃ち殺し、切腹の手順を書いた紙を見ながら腹を切る。
こういう役の吉右衛門は好きだ。弥作のゆるい百姓らしい雰囲気と、弥五郎の武士っぽい雰囲気の対比が面白い。「討入りに加わるのなんかやめろ」というのが人間の自然な感覚だと思う。
「忠臣蔵形容画会(ちゅうしんぐらすがたのえあわせ)」
最初にえっへん人形まで出て、七段目までを踊りで要約して見せる。
大序は高師直の又五郎、若狭之助の歌昇、判官の種之助が目を閉じて下向き加減に座っている。歌昇はイケメン、種之助は可愛い。2人とも声が良くなったと思う。歌昇は扇子の投げ方がかっこいい。若狭之助が怒りで肩を上下させ、その前に判官が腕を伸ばしている形で、この場は終わる。
その後、三人並んで、後ろで黒衣さん達が動いていたので雰囲気的にぶっかえりか、と思ったら、大序の時の衣装から奴が「抜け出て来た」という感じだった。これで二段目になる。
歌昇と種之助はニコニコして、掃除の道具を持って踊る。種之助が箒を持っていると、この前の櫂を思い出す。三人で酒を飲み、歌昇が泣き上戸(ぴったり!)、又五郎が怒り上戸、種之助は笑い上戸。三人それぞれ一人で踊る見せ場があり、最後は又五郎を先頭に上手に引っ込んだ。全員踊りがうまい。
次は三段目。矢絣の着物のおかる(米吉)が花道から出てくる。若い子だから矢絣が似合って可愛い。恋人の勘平(隼人)と会おうとしている。邪魔に入る伴内(吉之助)。隼人がすごく良い男。声がお父さんに似て来て、台詞が良くなった。
四段目。顔世は魁春。腰元吉野は廣松。力弥は先月に続き鷹之資で、花道から来る。廣松と鷹之資は踊りがうまい。
五段目は、歌六が与市兵衛と定九郎の二役。最初に、花道から出て来た定九郎が、稲叢に入る。しばらくして与市兵衛が花道から出てくるので、それが早変わりかと思ったがそうではなく、花道から出て来た人は舞台の木立の後ろへ行き、木立から出て来たときに歌六と入れ替わっている。その与市兵衛が握った50両を稲叢から出て来た手がひっぱり、与市兵衛はそのまま稲叢の中へ引っ張られる。そして、定九郎が出てくる。与市兵衛が稲わらの束を頭にかぶり縛ったところが鼻になっているような猪が出てくるが、この猪の造形は歌舞伎の猪よりずっと芸術的だ。それが定九郎にからむ。この定九郎は最後にすっぽんからせり下がる。
六段目。先月に続きおかやの東蔵。猟師三人は歌昇、種之助、松江。勘平が死んで14日、おかやは村の衆に念仏踊りを教えている。「自分が踊る通りに踊れ」と言うおかや。東蔵が踊りがうまくて面白い。最後に、おかやが目をまわして倒れる。
七段目。人形振りの前に出てきて口上を述べる黒衣が出る。平右衛門(錦之助)とおかる(芝雀)が人形振り。由良之助が出てくるところからは、普通の芝居になる。由良之助の吉右衛門は先月と同じ。討ち入りに加われると聞いて喜ぶ平右衛門の錦之助が綺麗。親子そろって同時期に綺麗なのは、稀有なことなのではないか。
本公演はこれで終了。
6時から研修発表会。2階11列13番で観た。
最初に伝統歌舞伎保存会の人が挨拶し、続いて吉右衛門が挨拶した。
「七段目」
最初からではなく、九太夫が一人で座敷にして、そこに伴内が来るところから。だから、由良之助、平右衛門、おかるのうち、最初に登場するのがおかる(米吉)だ。米吉は見た目は良い。
次に由良之助(歌昇)が出てくるが、手順を追うのが精一杯の印象。台詞は、関西風のイントネーションが自然に言えてない感じ。難しい役なので仕方ないが、縁の下にいる九太夫が文の一部を破ったことに気づくところは、昨夜観た歌舞伎座の幸四郎は観客にそれとはっきりわかる演技だったが、きょうのお客さんはあれで気づいたろうか。おかるに「三日さま三日さま」というところも遊び心が足りない。実年齢より二十年も上の人間の役だからしかたないか。
平右衛門の種之助は、一番期待していた。ニンに合ってるし、変な話、自分で台詞言いながら泣き出してしまうのではないかと思うくらい、性格に合っている役だと思った。実際には、おかると再会して、はじめの方は決まった台詞を言うだけで終わってしまうのかと思ったが、由良之助がおかるを身請けするという話のあたりから良くなった。チャラチャラしたおふざけシーンより内容のある話をするのが得意なんだろう。刀を抜いておかるを追いかけるところは立ち回りが得意な種之助なので安心して見られる。「髪の飾りに化粧して~」もちゃんと言えていた。これに続く台詞には涙を誘われた。「腹切って死んでしまった」は今月の海老蔵よりうまく言えているかもしれない。由良之助に討入りを許され、喜ぶシーンも良かった。
米吉は全体的に安定しているが、もっと「勘平のことで頭がいっぱい」感があった方が良いのではないか。玉三郎の台詞では、今、勘平と言おうとしたな、とわかる「カン」という小さな音が何回か聞こえるが、米吉の台詞では聞こえない。
種之助と米吉は、双子の兄妹のようだった。ともに二十歳。良い思い出になるだろう。
歌昇は、最後に出て来たときの台詞は良かった。
「乗合船恵方萬歳」
隼人が萬歳鶴太夫、廣松が才造亀吉。
最初に乗合船が着いて、いろいろな職業の人が乗っている。
隼人と廣松は花道から出て来る。
船の乗客が一人ずつ踊り、最後に萬歳の二人が踊る。隼人はここでも鼓を持っているが、音は別の人。2人とも歌って踊る。廣松は元々踊りがうまいが、隼人の踊りもうまくなった。見映えがする。二十代は伸び盛りか。
きょうは討入りの日なので、入り口で四十七士の絵のクリアファイルをくれた。
忠臣蔵のスピンオフ。先月の歌舞伎座と同じ役の人が何人かいて、面白かった。
「主税と右衛門七」
設定は12月13日。主税(隼人)が滞在している家の娘(米吉)は主税のもとに通ってくる右衛門七(歌昇)が好きで、婿にしたいと思っている。
少女漫画的でとても面白かった。二十歳の隼人を観る最初の役が主税なのは嬉しい。
主税の部屋と娘の部屋を廻り舞台で見せる。その間をトボトボと歩く右衛門七。このトボトボ歩く感じがいかにも歌昇。娘の部屋から主税の部屋に来る途中で座り込んで泣き崩れるところが可哀想で、歌昇の魅力が爆発。
隼人は台詞がそれほどうまくないところが、15歳の役にあっていた。まだ幼さが残る声で「母上」と言うだけで母恋しの気持ちがわかる。隼人が自分で鼓を打ち歌もうたって、それに合わせて歌昇が「足軽踊り」を踊るのは素晴らしい観客サービス。
娘と右衛門七のシーンは、いまどきの少女漫画だったら絶対ベッドインがあるぞと思った。前に隼人が商業演劇で主税役をやった時は、討入りの前に黒木瞳に筆おろしをしてもらう話だった。赤穂浪士の中でも十代の2人については、みんないろいろ考えて話を作りたくなるのだろう。
「弥作の鎌腹」
又五郎が、先月歌舞伎座と同じく千崎弥五郎。吉右衛門はその兄の弥作で、百姓。
弥作は代官の娘と弥五郎を結婚させると七太夫(橘三郎)に約束するが、弥五郎は討入りに加わるからダメだから断ってくれという。弥作は断りに行くが、固く口止めされた討入りの話を仕方なく七太夫に漏らす。それを弥五郎に打ち明けると、弥五郎は七太夫を殺して自分は切腹する、と言うので、七太夫に言ってはいない、と言う。弥作は切腹の作法について弥五郎に聞き、紙に書き留める。弥作は七太夫を撃ち殺し、切腹の手順を書いた紙を見ながら腹を切る。
こういう役の吉右衛門は好きだ。弥作のゆるい百姓らしい雰囲気と、弥五郎の武士っぽい雰囲気の対比が面白い。「討入りに加わるのなんかやめろ」というのが人間の自然な感覚だと思う。
「忠臣蔵形容画会(ちゅうしんぐらすがたのえあわせ)」
最初にえっへん人形まで出て、七段目までを踊りで要約して見せる。
大序は高師直の又五郎、若狭之助の歌昇、判官の種之助が目を閉じて下向き加減に座っている。歌昇はイケメン、種之助は可愛い。2人とも声が良くなったと思う。歌昇は扇子の投げ方がかっこいい。若狭之助が怒りで肩を上下させ、その前に判官が腕を伸ばしている形で、この場は終わる。
その後、三人並んで、後ろで黒衣さん達が動いていたので雰囲気的にぶっかえりか、と思ったら、大序の時の衣装から奴が「抜け出て来た」という感じだった。これで二段目になる。
歌昇と種之助はニコニコして、掃除の道具を持って踊る。種之助が箒を持っていると、この前の櫂を思い出す。三人で酒を飲み、歌昇が泣き上戸(ぴったり!)、又五郎が怒り上戸、種之助は笑い上戸。三人それぞれ一人で踊る見せ場があり、最後は又五郎を先頭に上手に引っ込んだ。全員踊りがうまい。
次は三段目。矢絣の着物のおかる(米吉)が花道から出てくる。若い子だから矢絣が似合って可愛い。恋人の勘平(隼人)と会おうとしている。邪魔に入る伴内(吉之助)。隼人がすごく良い男。声がお父さんに似て来て、台詞が良くなった。
四段目。顔世は魁春。腰元吉野は廣松。力弥は先月に続き鷹之資で、花道から来る。廣松と鷹之資は踊りがうまい。
五段目は、歌六が与市兵衛と定九郎の二役。最初に、花道から出て来た定九郎が、稲叢に入る。しばらくして与市兵衛が花道から出てくるので、それが早変わりかと思ったがそうではなく、花道から出て来た人は舞台の木立の後ろへ行き、木立から出て来たときに歌六と入れ替わっている。その与市兵衛が握った50両を稲叢から出て来た手がひっぱり、与市兵衛はそのまま稲叢の中へ引っ張られる。そして、定九郎が出てくる。与市兵衛が稲わらの束を頭にかぶり縛ったところが鼻になっているような猪が出てくるが、この猪の造形は歌舞伎の猪よりずっと芸術的だ。それが定九郎にからむ。この定九郎は最後にすっぽんからせり下がる。
六段目。先月に続きおかやの東蔵。猟師三人は歌昇、種之助、松江。勘平が死んで14日、おかやは村の衆に念仏踊りを教えている。「自分が踊る通りに踊れ」と言うおかや。東蔵が踊りがうまくて面白い。最後に、おかやが目をまわして倒れる。
七段目。人形振りの前に出てきて口上を述べる黒衣が出る。平右衛門(錦之助)とおかる(芝雀)が人形振り。由良之助が出てくるところからは、普通の芝居になる。由良之助の吉右衛門は先月と同じ。討ち入りに加われると聞いて喜ぶ平右衛門の錦之助が綺麗。親子そろって同時期に綺麗なのは、稀有なことなのではないか。
本公演はこれで終了。
6時から研修発表会。2階11列13番で観た。
最初に伝統歌舞伎保存会の人が挨拶し、続いて吉右衛門が挨拶した。
「七段目」
最初からではなく、九太夫が一人で座敷にして、そこに伴内が来るところから。だから、由良之助、平右衛門、おかるのうち、最初に登場するのがおかる(米吉)だ。米吉は見た目は良い。
次に由良之助(歌昇)が出てくるが、手順を追うのが精一杯の印象。台詞は、関西風のイントネーションが自然に言えてない感じ。難しい役なので仕方ないが、縁の下にいる九太夫が文の一部を破ったことに気づくところは、昨夜観た歌舞伎座の幸四郎は観客にそれとはっきりわかる演技だったが、きょうのお客さんはあれで気づいたろうか。おかるに「三日さま三日さま」というところも遊び心が足りない。実年齢より二十年も上の人間の役だからしかたないか。
平右衛門の種之助は、一番期待していた。ニンに合ってるし、変な話、自分で台詞言いながら泣き出してしまうのではないかと思うくらい、性格に合っている役だと思った。実際には、おかると再会して、はじめの方は決まった台詞を言うだけで終わってしまうのかと思ったが、由良之助がおかるを身請けするという話のあたりから良くなった。チャラチャラしたおふざけシーンより内容のある話をするのが得意なんだろう。刀を抜いておかるを追いかけるところは立ち回りが得意な種之助なので安心して見られる。「髪の飾りに化粧して~」もちゃんと言えていた。これに続く台詞には涙を誘われた。「腹切って死んでしまった」は今月の海老蔵よりうまく言えているかもしれない。由良之助に討入りを許され、喜ぶシーンも良かった。
米吉は全体的に安定しているが、もっと「勘平のことで頭がいっぱい」感があった方が良いのではないか。玉三郎の台詞では、今、勘平と言おうとしたな、とわかる「カン」という小さな音が何回か聞こえるが、米吉の台詞では聞こえない。
種之助と米吉は、双子の兄妹のようだった。ともに二十歳。良い思い出になるだろう。
歌昇は、最後に出て来たときの台詞は良かった。
「乗合船恵方萬歳」
隼人が萬歳鶴太夫、廣松が才造亀吉。
最初に乗合船が着いて、いろいろな職業の人が乗っている。
隼人と廣松は花道から出て来る。
船の乗客が一人ずつ踊り、最後に萬歳の二人が踊る。隼人はここでも鼓を持っているが、音は別の人。2人とも歌って踊る。廣松は元々踊りがうまいが、隼人の踊りもうまくなった。見映えがする。二十代は伸び盛りか。
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