明治座 五月花形歌舞伎 夜の部 水かぶり席 ― 2013/05/25 21:07

2013年5月23日 明治座 午後4時開演 1階1列

「将軍江戸を去る」

きょうは最前列で、勘九郎が風邪をひいてたら絶対にうつるだろうと思うような近さだった。

慶喜役の染五郎は、結局最後まで未完成だったように感じた。特に大慈院の場。やっぱり声が問題かもしれない。声は染五郎の弱点だとしても、大抵はそれを忘れさせるくらい役の表現力が豊かなのだが、大慈院の場では、時に女々しい響きになったり、頼りない感じがしたりした。最後の千住大橋の場は悪くなかった。

山岡鉄太郎の勘九郎は熱血漢すぎて、三回目ともなると飽きた。大慈院の場で慶喜に謁見し、ツツツーと後ろに下がるようなところは流石にきれいな所作で嬉しい。

慶喜と鉄太郎を見ていたら「御浜御殿」を思い出した。染五郎の助右衛門はすごく良かったから、この芝居の中でも、役を逆にしたらよかったかもしれない。

「藤娘」

近くで見るともっぱら衣装に目が行く。左右の色が違うとか帯の色が変わったとか。

「鯉つかみ」

きょうはいよいよ水かぶり席。幕間に席を立って戻ったら、三角に折ったビニールが座席に挟んであった。

七三から上がって来た鯉が、少し上に行ってから皮を脱いで稚児姿の愛之助が現れるが、脱いだ鯉は、本当にうまくすっぽんの穴に落ちる。尾のところに錘でもついているのだろうか。下から引っ張っているのかときょうは目をこらしていたが、もっと上の方から落とすので、下から引っ張るようなことはできない。

夢の中で踊る小桜姫(壱太郎)。綺麗だが、あの踊りで客をうっとりさせられるのは玉三郎だけだろう。(ごめんねー) 玉三郎と仁左衛門で踊ってくれればいいのに。ありえないか。

志賀之助の姿の鯉の精が庭から笛を吹いて現れると、座敷にいる全員が喜んで上がれ上がれと勧める。あまりの大歓迎ぶりに、つかまえて鯉こくにするつもりではないのか、と危険を感じるほどだが、躊躇せず誘いにのる鯉さん。

小桜姫が志賀之助を誘うシーンは大受けで、後ろから笑い声がたくさん聞こえた。あの、あくまでも上品で可愛くて、しかし大胆な誘い方は、本当に素晴らしい。

鯉の精が逃げようとして庭の池に飛び込むと、周囲から噴水のような水が出る。それを見て両隣の人がさっとビニールを被ったので、おかしかった。客席に水が飛んでくるのは次の幕で~す。

次の幕が開き、浅黄幕が落ちて鯉と琵琶湖が現れると、さっそく花道に登場する、本物の志賀之助。

前に見た二回は普通に水槽に飛び込んでいたが、きょうは、トンボを切って飛び込むサービスが追加になっていた。

大きなビニールで下半身をしっかり包み、飛んでくる水に備えてビニールごしに立ち回りを見た。鯉が尾ひれで大量の水を飛ばすと、膝のあたりに水がビシッとかかるのを感じた。

鯉との戦いに勝った志賀之助は、全身ずぶ濡れで花道七三に立ち、疲労困憊の様子を見せる。客席から盛大な拍手を受ける愛之助。昔の猿之助のようだ。喝采を受けている愛之助はもちろん嬉しいだろうが、客の方も、こんな風に思い切りお疲れ様と拍手できるのはめったにないことで興奮する。