十二月大歌舞伎 初日 第一部2017/12/03 01:29

2017年12月2日 歌舞伎座 午前11時開演 1階7列21番

「実盛物語」

愛之助が実盛をやると、義賢最期を思い出し、つながりが頭に浮かぶ。九郎助(松之助)と太郎吉、それに葵御前(笑三郎)がいる。白旗をつかんだ手が九郎助の網にかかった。義賢が口にくわえて戦った源氏の白旗だ。白旗を託された小万は死んだのだ。身重だった葵御前は無事男子を産む。

実盛はよそ者だが、敵に見えた瀬尾は実は小万の実の父で、孫の九郎助の手柄にするために、自らを討たせる。瀬尾役の亀蔵がでんぐり返って、首がポロリと落ちた。

九郎助の女房小よし役が吉弥。実盛の郎党役に宗之介、竹松、廣太郎、廣松。太郎吉を馬にのせたり、下ろしたりするのを廣太郎がやっていた。きょうの太郎吉は醍醐くんの方だろうか。元気そうでうまかった。

馬に乗った実盛は郎党たちに見守られ、幕外の引っ込みをする。はじめは馬が言うことをきかないが、ちょっとご機嫌をとって、うまく動いてもらった。この辺のほのぼの感は愛之助がなかなか良かった。

「土蜘」

土蜘はかっこいいが、出てくる前に睡魔に襲われるのではないかと心配だったが、太刀持役の左近や、胡蝶役の梅枝の踊りがあったので、起きていることができた。僧の拵えの土蜘が気配を殺して花道から出てくるときは、途中で誰かが拍手したり掛け声をかけたりするんじゃないかとドキドキしたが、そんなことはなく、土蜘が花道七三まで来た。七三での松緑の台詞は今まで聞いた覚えがない低音の落ち着いた声だった。舞台に出てからの所作も良かった。松緑は体型が蜘蛛っぽいし、この役に向いている。

左近が良かった。途中で一度台詞につまったが、一瞬の沈黙の後、「・・・ぞんじそうろう」とまとめて、続けた。

石神実は小姓四郎吾役の亀三郎の「ここで会ったが百年目っ」という台詞が可愛かった。

巫女役の新悟が綺麗だった。

十二月大歌舞伎 初日 第二部2017/12/03 01:32

2017年12月2日 歌舞伎座 午後3時開演 1階4列26番

「らくだ」

愛之助のやたけたの熊五郎はすし屋の権太のような雰囲気。久しぶりに太い腕を見た。中車のクズ屋は今まで観たこの役の中で一番完成度が高い。らくだは、定評のある片岡亀蔵なので、ベストの配役かも。
クズ屋がらくだの死体を背負って歩くとき、亀蔵の足の甲が舞台を滑って行く。熊五郎が大家とかけあっているときに外で待っているクズ屋とらくだの体勢がいろいろ変わって面白い。カンカンノウは、最後には死んだらくだもいっしょになって踊る。

「蘭平物狂」

前回も観たが松緑と左近の親子共演ばかり気になって、今回愛之助が演じる行平のことは全く記憶にない。小顔の松緑と、それよりも小さい顔の左近が顔を見合わせるのはほほえましい。左近はだいぶ成長して、前回よりも意識して役を演じていると感じた。

蘭平と繁蔵親子や、蘭平の所作など見所はあるのだが、前半は途中で睡魔に襲われた。立ち回りの幕の前に、中で松緑が「じゃあ、よろしく」と声をかけるのが聞こえ、期待が高まった。

Kバレエカンパニー 「くるみ割り人形」2017/12/22 00:55

2017年12月21日 赤坂ACTシアター 午後2時開演 1階V列39番

「くるみ割り人形」はクリスマスが本物に見える外国のバレエ団に限る、と思っていたのだが、美術と技術が気に入ったKバレエカンパニーのを観てみることにした。
クリスマス気分がイマイチなのは、ダンサーの顔が日本人だからだと思う。しかし、一幕目は美術が素晴らしく、二幕目は馴染みの曲が次々に出てきて、楽しめた。立派なエンタテインメントだ。

ネズミが可愛い。幕開きにもカーテンコールにも出る。おもちゃの兵隊と戦うときは、投石機でチーズを投げ、おもちゃの兵隊に当たる、という演出。

倒れたくるみ割り人形の側で悲しむクララから悲しみが伝わってきた。その後、クララ、ドロッセルマイヤー、くるみ割り人形の三人で踊るシーンが美しい。後ろでひらひらと揺れ動く幕、それに音楽の力が加わって、観客をうっとりさせる。揺れ動く幕が落ち、横にすべってはける。後ろには雪の国が現れる。

二幕目は花のワルツ、アラビア、スペイン、中国、ロシア、と馴染みの曲が続き、それぞれが別の魅力で惹きつけられた。私の好きな「アラビア」は女性一人と男性二人。女性が大柄で手足が長く、顔立ちもはっきりしていて、いかにもアラビアのダンサー風でインパクトがあった。中国の人形の二人もコミカルな感じが良かった。ロシアのコサックダンスもあった。

マリー姫と、青年の姿になったくるみ割り人形の踊りも、流れる曲が美しくてよかった。マリー姫は小林美奈。浅川紫織のケガで、雪の女王役からこちらに変わったと掲示があった。難しい踊りも何気なくこなせる、上手い人だと思う。

十二月大歌舞伎 第三部2017/12/28 01:20

2017年12月24日 歌舞伎座 午後6時半開演 1階13列26番

「瞼の母」

中車の忠太郎は、序幕の半次郎の家の場では台詞が普通の歌舞伎役者と比べるとやや音程が狂っている感じがしたが、母のおはま役の玉三郎とのやり取りはいい。「違う」と反論する台詞がとてもいい。最後の「おらあ、・・・」という独白も良くて、この役に合っていると思った。今までに獅童と勘九郎の忠太郎を観たが、総合点では中車が一番。猿翁は渡世人は似合わなくて、「荒川の左吉」は良いと思わなかったが、中車なら似合いそうだ。

半次郎(彦三郎)の家の場は、妹役の児太郎、母役の萬次郎も、みんな良かった。

夜鷹のおとら(歌女之丞)が、忠太郎から金を渡されて、夜鷹の客になるのだと誤解したところは、徳松と獅童の方が面白かった。

おはまの家で、出て行くときに妹のお登世(梅枝)と鉢合わせし、お登世をじっと見る忠太郎が良かった。梅枝は良かった。でも顔が大きい。玉三郎が小顔というわけでもないのに、並ぶと玉三郎の顔が小さく見える。


「楊貴妃」

玉三郎の楊貴妃は何年か前に日生劇場で見たし、その前にも見たかもしれない。

筝曲の演奏に女性が並んでいる。女性の演奏家を歌舞伎の舞台で見るのは新開場の月以来かも。

石がたくさんついた帽子がキラキラして綺麗だ。自分にとっては、クリスマスのケーキ代わり、といったところ。