初春大歌舞伎 高麗屋襲名 初日 夜の部2018/01/03 01:37

2018年1月2日 歌舞伎座 午後4時半開演 1階2列30番

「角力場」

襲名公演はやっぱり、みんなが期待しているらしく、幕があくとすごい拍手。
角力小屋の周りに見物人が行き交うところに、吾妻(七之助) が、仲居たちを連れてやってきた。仲居役の先頭は宗之助、最後は千壽。そこに、与五郎(愛之助)が登場。吾妻の隣りにすわって、いちゃつく。浅草歌舞伎のお富と与三郎が懐かしい。

小屋の中から、放駒の勝ち名乗りが聞こえた後、放駒長吉役の愛之助が小屋から出てくる。与五郎と二役だ。ちょこちょこした動きで花道を引っ込む。

その後、小屋から与五郎が出てくる。続いて、濡髪(芝翫)が出てくるが、長身の芝翫が高下駄を履いているので出るのに苦労する感じ。
濡髪と与五郎の大きさの違いが自然なので、ちょっと押されて倒れるのも自然なことに感じられる。

濡髪をほめそやす金平に、喜んで金も財布も羽織も与えてしまう与五郎は、数ある歌舞伎の登場人物の中でも私が一番好きなキャラの一人だ。すごくなよっとした印象を持っていたが、本物の関西弁だと特になよっとしたしゃべり方ではないのだと思った。

濡髪と放駒二人のやり取りのとき、愛之助の台詞も動きも良かった。歌昇や松也の放駒がフレッシュタイプとしたら、愛之助の放駒はもう少し熟成したタイプで、濡髪との対決は見応えがあった。

「口上」

前に座っている人の頭の間から扇雀と愛之助がよく見える席だった。高麗屋の3人と言えば、小学校の頃、当時の染五郎だった白鸚のファンで、初めて観た歌舞伎は当時の幸四郎主演の「ひらかな盛衰記」、そのとき、新幸四郎は逆櫓の遠見の船頭の役だった。新染五郎は、初御目見えは観なかったが客席に手を振っている写真が可愛かったので、写真だけ買った。初舞台は観た。「趣向の華」の客席通路をウロチョロしていた可愛い男の子で、ロビーでもよく見かけた。それが、去年の俳優祭の頃は立派な美少年になっていた。当たり前だが、3人ともタイプが違うのが面白い。

「勧進帳」

新幸四郎は、染五郎のときにやった弁慶よりいい。あれが限界かと思っていたが、成長して線が太くなって、ニンにない役を無理やりやってる感じがなくなった。
吉右衛門の富樫は半端なく安定して、幸四郎をがっしり受け止めている。
12歳の染五郎の義経。下手なのは当然だが、声はちゃんと出ているし、品がある。
四天王は鴈治郎、芝翫、愛之助、歌六。
弁慶が舞っているあたりで、小さい地震があった。

「相生獅子」
つまらなかった。

「三人形」
奴役の又五郎を集中的に見て楽しんだ。

新春浅草歌舞伎 2018 一部2018/01/05 21:56

2018年1月5日 浅草公会堂 午前11時開演 2階ぬ列17番

電車の接続が悪くて公会堂に着いたときは挨拶が始まっていたので、終わってから席に着いた。

「鳥居前」

義経は種之助。顔だけでなく声も又五郎に似ている。四天王の一人の声に聞き覚えがある、とプログラムを見たら片岡當十郎だった。
静御前は梅丸。高音がよく出るようになった。
弁慶は歌昇。まずまずの出来。
逸見藤太は巳之助。浅草歌舞伎の最年少だった頃を思うと、とても成長した。最近は声が裏返ったりしなくなった。
狐忠信は隼人。台詞がイマイチ生な感じがするが、見た目は立派。隼人の六方を初めて観た。

「御浜御殿綱豊卿」

茶屋前の場では、江島役の新悟の台詞が一番すっきりして良かった。綱豊役の松也は、いつもは美声だと思うが、この役に関しては台詞がしつこくてお腹にもたれる感じがする。

途中で眠ってしまって、新井白石役の錦之助は全く記憶にないし、助右衛門が入って来たところも覚えていない。
助右衛門の役は10人近い別の役者のを観ていると思うが、巳之助はその中で上の部類。一生懸命な感じと、心情がよくわかるところがいい。松也の方は、感情過多に感じる。殿様なのに必死過ぎ。この役に関しては私の好みは仁左衛門よりも梅玉だから、もう少しクールな感じがいい。
米吉のお喜世は良かった。

初春大歌舞伎 高麗屋襲名 昼の部2018/01/10 00:35

2018年1月9日 歌舞伎座 午前11時開演 1階10列27番

「箱根霊験誓仇討」

初めて観る演目。

冒頭、初花(七之助)が、勝五郎(勘九郎)が乗るいざり車を引いて、花道を出て来る。舞台には奴筆助役の愛之助が登場する。

筆助が花道から引っ込んだ後、勝五郎と初花の台詞や立ち回りがあった後、愛之助2役目の滝口上野が舞台に登場。滝口上野は勝五郎の兄の敵で初花に横恋慕している。

初花の母の早蕨(秀太郎)も滝口上野に捕まっている。初花は、滝口上野の隙を見て殺すように勝五郎に言われて、滝口上野に引き渡される。

白滝の場で、勝五郎の足が立つ。最後は、命を落とした初花の姿が舞台の後ろの上の方に現れて「霊験」という雰囲気になるが、「いざりの仇討」というタイトルのような仇討シーンはなくて全体として退屈。愛之助の二役も、早変わりの楽しさがあるわけでもない。途中で寝てしまった。

「七福神」

恵比寿の又五郎を中心に、弁財天の扇雀、寿老人の弥十郎、福禄寿の門之助、布袋の高麗蔵、毘沙門の芝翫、大黒天の鴈治郎。
お正月らしい踊りで、夜の部の踊りより良かった。あまり見る機会はないが、高麗蔵はけっこううまい。


「車引」

七之助の桜丸が綺麗だった。女形がやる役だが、桜丸の顔が綺麗だと思ったのは初めてだ。七之助は骨格が綺麗なんだろう。

梅王丸の勘九郎は当然ながら形が綺麗に決まる。

杉王丸の廣太郎は成長したと思う。

松王丸の新幸四郎は、3年前に愛之助、菊之助といっしょにやったときは主役、という感じがしたが、今回は他の二人がわりと長身のせいか、少し影が薄い印象を受けた。

「寺子屋」

幕が開くと猿之助の涎くりが見えて、無事な姿にほっとする。しかし、左腕のあたりが、なんとなくいつもの猿之助ではない感じがした。元気そうだが、涎くりとしては、前回の歌舞伎座の弘太郎の方が子供らしくて好きだ。迎えに来る父親役が東蔵。いつもは涎くりが父をおぶって引っ込むのだが、今回は手をつないで引っ込んだ。

梅玉の源蔵はたぶん何回か観ている。無駄なものをそぎ落として磨きこんだ源蔵、という感じ。
戸浪の雀右衛門、幸四郎の松王丸、魁春の千代、みんな危なげのない演技。

藤十郎の園生の前は、段を上がったときに少し後ろに傾く感じがあってひやりとしたが、息子の菅秀才の横に座って優しいお母さんだった。

新春浅草歌舞伎 2018 二部2018/01/31 00:26

2018年1月24日 浅草公会堂 午後3時開演 1階そ列31番

挨拶は隼人。口上のときのような拵えで歌舞伎町で挨拶した後、マイクを取り上げて普通のしゃべり方になる。公演も最後に近づいたので、各役者の今後の予定を教えてくれた。

「操り三番叟」
隼人は衣装を変えて千歳の役、錦之助が翁。隼人は踊りがうまいわけではないが、手足が長くて見映えがする。錦之助は翁にしてはいい男過ぎるかも。

種之助の三番叟は、今月一番感動した。三番叟は好きだが、操り三番叟は好きではなかったのだが、種之助の踊りを観て初めて魅力がわかった。操られているように踊るのは、普通に踊るより技術も筋力もいる。種之助は、人形であることが目立つような動きだけではなく細部まで忠実に人形として動いている。踊りは元々うまいが、その技術と、今の若さが持つ筋力、心肺機能が揃ったときにだけ、今月の種之助の三番叟のような踊りが踊れる。10年先に同じように踊れるとは思わない。今月は、踊り手にとっても観客にとっても幸せな時間だったと言うべきだろう。

几帳面な感じの梅丸の後見が良く、端正なコンビだった。

「引窓」
これはうまくできた話で、与兵衛の役者によって、与兵衛の性格が微妙に変化するのも面白いが、歌昇は、わりと普通で、特に個性を感じなかった。
松也の濡髪は体格から言って、ニン。
米吉のお早は、今まで観たお早の中で一番、女郎上がりというのがよくわかる色っぽさ。

「京人形」
新悟の京人形と聞いて不安だったが、すごく良かった。人形なんだから、大きいのも自然な気がする。縦長の大きい大の字になるのもインパクトがあるし、急に女らしくなる動きとのギャップが大きくて、面白い。
甚五郎役の巳之助は丁寧に踊っている。種之助が、女房のおとく。磯之丞だの与五郎だのをやっていた頃と比べると関西弁も板についた。