七月大歌舞伎 昼の部 ― 2015/07/22 00:41
2015年7月18日 歌舞伎座 午前11時開演 1階11列34番
「南総里見八犬伝」
芳流閣屋上の場、からやる。犬塚信乃役の獅童は拵えが似合わないし、立ち回りも下手。犬飼現八役が右近で二人が絡むのでよけいに下手なのが目立つ。
次の円塚山の場では、里見家の若様役が梅丸。今月は昼夜立役だ。
左母二郎は松江。浜路が笑三郎だと、左母二郎の方がとって食われそう。
毛野の笑也、小文吾の猿弥はニンに合っている。
だんまりでは歌昇、種之助、弘太郎の踊りのうまい三人が並ぶ。
梅玉が犬山道節の役で、最後に幕外のひっこみがある。
「世話情浮名横櫛」
見染の場の海老蔵は相変わらず台詞が下手。きょうは座席のすぐ横の通路を海老蔵が先に立って、金五郎役の九團次を引き連れて歩いて行ったので嬉しかった。羽織落としの流れはずいぶん自然になった。
源氏店では、台詞がところどころ早口になって変な感じがする以外は、まあまあ。与三郎らしい美貌を愛でる気にもなれる。
玉三郎のお富が鏡台に向って化粧をしている様子を見るのは楽しい。藤八役の猿弥に化粧をするのは楽しんでやっているように見えた。藤八はお菓子のサンタクロースのような顔になった。
下女およしは、夜の牡丹燈篭でお露をやっている玉朗。笑也みたいな雰囲気の綺麗な女形だ。
獅童の蝙蝠安は悪くはないが、獅童の良さが生きる役でもない。
「蜘蛛絲梓弦」
前に松竹座で観たことがある。歌舞伎らしい派手さがあって客席が盛り上がる。演出が派手なだけでなく猿之助の舞踊が素晴らしい。充実した演目だった。
「南総里見八犬伝」
芳流閣屋上の場、からやる。犬塚信乃役の獅童は拵えが似合わないし、立ち回りも下手。犬飼現八役が右近で二人が絡むのでよけいに下手なのが目立つ。
次の円塚山の場では、里見家の若様役が梅丸。今月は昼夜立役だ。
左母二郎は松江。浜路が笑三郎だと、左母二郎の方がとって食われそう。
毛野の笑也、小文吾の猿弥はニンに合っている。
だんまりでは歌昇、種之助、弘太郎の踊りのうまい三人が並ぶ。
梅玉が犬山道節の役で、最後に幕外のひっこみがある。
「世話情浮名横櫛」
見染の場の海老蔵は相変わらず台詞が下手。きょうは座席のすぐ横の通路を海老蔵が先に立って、金五郎役の九團次を引き連れて歩いて行ったので嬉しかった。羽織落としの流れはずいぶん自然になった。
源氏店では、台詞がところどころ早口になって変な感じがする以外は、まあまあ。与三郎らしい美貌を愛でる気にもなれる。
玉三郎のお富が鏡台に向って化粧をしている様子を見るのは楽しい。藤八役の猿弥に化粧をするのは楽しんでやっているように見えた。藤八はお菓子のサンタクロースのような顔になった。
下女およしは、夜の牡丹燈篭でお露をやっている玉朗。笑也みたいな雰囲気の綺麗な女形だ。
獅童の蝙蝠安は悪くはないが、獅童の良さが生きる役でもない。
「蜘蛛絲梓弦」
前に松竹座で観たことがある。歌舞伎らしい派手さがあって客席が盛り上がる。演出が派手なだけでなく猿之助の舞踊が素晴らしい。充実した演目だった。
七月大歌舞伎 初日 夜の部 ― 2015/07/05 00:07
2015年7月3日 歌舞伎座 午後4時半開演 1階12列7番
きょうは花道のすぐ横で、熊谷の引っ込みも伴蔵の最後の引っ込みもこちらに来る姿がよく見える、良い席だった。
「熊谷陣屋」
これは苦手な演目で、何度も観ているが途中で睡魔に襲われることが多く、話の筋が頭に入ってこない。海老蔵のような、引きこまれて見てしまうような人が演じてくれるのは助かる。今回は相模役の芝雀もよくて芝居に集中できたので、初めて一通りの筋がわかった。
出てきて七三に立った海老蔵の横顔を見たら團十郎に似ている気がした。もっとじっと見ると、ものすごく良い顔立ちなんだということがわかった。
「急所だとしたら悲しいか」などと息子の話をする熊谷と相模のやり取りが、意外に夫婦らしく見える。
海老蔵は敦盛の最期の様子を語るときは目を剥いてばかりで台詞が弱い。最後、出家した姿で舞台から花道に向かうときの足取りが、なんとなく「これは違う」感じがする。しかし、最後の花道での台詞と所作は良くて感動できる。
芝雀は、息子の首を見たときの驚きと悲しみの様子がよくわかり、かつ自然で、いつもながら情の深さを感じる。打掛けの模様の中の青緑の色が綺麗だ。
義経は梅玉。首を差し出す熊谷のハイテンションと、義経の冷めた雰囲気の対比が面白かった。四天王は巳之助、種之助、廣松、梅丸と若手がそろう。最近女形が多い廣松、梅丸の立役の声が新鮮だ。廣松の声は廣太郎に似ているかもしれない。
元薪車の九團次が堤軍次という大役で驚いたが、ちゃんとやっていた。
「牡丹燈篭」
今回は飯島家の話、つまりお露の父の妾お国とその愛人の源次郎が父と腰元を殺し、殺した腰元の妹がお国と同じ店に勤めていた話はカットされていて、お国は伴蔵の浮気相手としてだけ出る。
前回お国役だった吉弥は乳母の役。幽霊になってからが秀逸。お露は玉朗。新三郎は九團次。
玉三郎のお峰はいつも通り。中車の伴蔵は、背も玉三郎より低いし、可愛いので、年下亭主の雰囲気。
伴蔵がお峰に蚊帳を吊ってくれと頼み、お峰がつり始めたら、蚊帳用の紐のうち、客席側のがほどけてしまって、お峰が伴蔵に助けを求めた。中車が背伸びをして必死に直そうとしている様子が面白かった。二人でどうにか直し、伴蔵は「俺がつってんじゃねえか」と捨て台詞を言った。
中車の伴蔵は悪くない。仁左衛門と比べれば下手。これは歌舞伎がどうのという話ではなく、仁左衛門は語りがなにしろうまい。最初に観た「桜姫東文章」の権助の幽霊話もそうだが、この芝居の中でも、上野の山の鐘がゴーンと鳴ると・・・あたりからの語りが、誰と比べる必要もなく滅法うまい。中車の語りは、ゴーン、シーン、カラーンコローンのような擬音語の際立たせ方が足りないと思う。
北村和夫や仁左衛門は、伴蔵が関口屋の旦那になって、笹屋の女たちといっしょに花道から出てくると、ああ、立派になった、と感じた。中車は、前の幕までの伴蔵の衣装が変わっただけにしか見えない。これは単なる役者の持ち味の違いで、北村和夫や仁左衛門はいわゆる「旦那」の方が素に近いのだろう。中車の方が伴蔵らしいとも言える。
関口屋の旦那になってからの伴蔵が最初に登場するのは今回は花道ではなく、その前に笹屋の座敷でお国(春猿)といっしょに出る。この場面は今までの牡丹燈篭にはなく、飯島家の話をカットしたので、必要な部分をお国に語らせるためだろう。
お峰が馬子の久蔵に笹屋のお国の話をきいた後、遅く帰って来た伴蔵にプリプリした態度をとって諍いになるところは、相変わらず面白い。前回は、この幕の後にもう一幕あって、そこで伴蔵がお峰を殺した。今月は、眠っていたお六が乳母の幽霊のようになって出て来た後、お峰がお露の幽霊になり、それを伴蔵が殺す。そして、牡丹燈篭を追いながら中車が花道を引っ込む。膝を折って何回かつまづくような感じで進むのは中車にとっては大変だろうと思うが、頑張ってやっていた。
前回は、前の幕では仲良さそうだったのに次の幕で殺しちゃった、という唐突さがあったが、今月はその疑問はない。悪くない終わり方だと思う。
私の好みでは、もちろん玉三郎の相手は仁左衛門にやってほしいし、お国と源次郎のシーンは幻想的で美しいのでカットしないでほしい。しかし、中車の伴蔵は良いので、また相手を変えてやれば良いと思う。その時は時間があれば飯島家の話も普通にやってほしい。
円朝役の猿之助のしゃべり方は、落語家のしゃべりを模倣しようとしているのかもしれないが、まだ安定しない感じがする。
馬子久蔵役の海老蔵も良かった。海老蔵の汚れ役は何回か見たことがあるが、いつも真面目にやっていて感心する。
きょうは花道のすぐ横で、熊谷の引っ込みも伴蔵の最後の引っ込みもこちらに来る姿がよく見える、良い席だった。
「熊谷陣屋」
これは苦手な演目で、何度も観ているが途中で睡魔に襲われることが多く、話の筋が頭に入ってこない。海老蔵のような、引きこまれて見てしまうような人が演じてくれるのは助かる。今回は相模役の芝雀もよくて芝居に集中できたので、初めて一通りの筋がわかった。
出てきて七三に立った海老蔵の横顔を見たら團十郎に似ている気がした。もっとじっと見ると、ものすごく良い顔立ちなんだということがわかった。
「急所だとしたら悲しいか」などと息子の話をする熊谷と相模のやり取りが、意外に夫婦らしく見える。
海老蔵は敦盛の最期の様子を語るときは目を剥いてばかりで台詞が弱い。最後、出家した姿で舞台から花道に向かうときの足取りが、なんとなく「これは違う」感じがする。しかし、最後の花道での台詞と所作は良くて感動できる。
芝雀は、息子の首を見たときの驚きと悲しみの様子がよくわかり、かつ自然で、いつもながら情の深さを感じる。打掛けの模様の中の青緑の色が綺麗だ。
義経は梅玉。首を差し出す熊谷のハイテンションと、義経の冷めた雰囲気の対比が面白かった。四天王は巳之助、種之助、廣松、梅丸と若手がそろう。最近女形が多い廣松、梅丸の立役の声が新鮮だ。廣松の声は廣太郎に似ているかもしれない。
元薪車の九團次が堤軍次という大役で驚いたが、ちゃんとやっていた。
「牡丹燈篭」
今回は飯島家の話、つまりお露の父の妾お国とその愛人の源次郎が父と腰元を殺し、殺した腰元の妹がお国と同じ店に勤めていた話はカットされていて、お国は伴蔵の浮気相手としてだけ出る。
前回お国役だった吉弥は乳母の役。幽霊になってからが秀逸。お露は玉朗。新三郎は九團次。
玉三郎のお峰はいつも通り。中車の伴蔵は、背も玉三郎より低いし、可愛いので、年下亭主の雰囲気。
伴蔵がお峰に蚊帳を吊ってくれと頼み、お峰がつり始めたら、蚊帳用の紐のうち、客席側のがほどけてしまって、お峰が伴蔵に助けを求めた。中車が背伸びをして必死に直そうとしている様子が面白かった。二人でどうにか直し、伴蔵は「俺がつってんじゃねえか」と捨て台詞を言った。
中車の伴蔵は悪くない。仁左衛門と比べれば下手。これは歌舞伎がどうのという話ではなく、仁左衛門は語りがなにしろうまい。最初に観た「桜姫東文章」の権助の幽霊話もそうだが、この芝居の中でも、上野の山の鐘がゴーンと鳴ると・・・あたりからの語りが、誰と比べる必要もなく滅法うまい。中車の語りは、ゴーン、シーン、カラーンコローンのような擬音語の際立たせ方が足りないと思う。
北村和夫や仁左衛門は、伴蔵が関口屋の旦那になって、笹屋の女たちといっしょに花道から出てくると、ああ、立派になった、と感じた。中車は、前の幕までの伴蔵の衣装が変わっただけにしか見えない。これは単なる役者の持ち味の違いで、北村和夫や仁左衛門はいわゆる「旦那」の方が素に近いのだろう。中車の方が伴蔵らしいとも言える。
関口屋の旦那になってからの伴蔵が最初に登場するのは今回は花道ではなく、その前に笹屋の座敷でお国(春猿)といっしょに出る。この場面は今までの牡丹燈篭にはなく、飯島家の話をカットしたので、必要な部分をお国に語らせるためだろう。
お峰が馬子の久蔵に笹屋のお国の話をきいた後、遅く帰って来た伴蔵にプリプリした態度をとって諍いになるところは、相変わらず面白い。前回は、この幕の後にもう一幕あって、そこで伴蔵がお峰を殺した。今月は、眠っていたお六が乳母の幽霊のようになって出て来た後、お峰がお露の幽霊になり、それを伴蔵が殺す。そして、牡丹燈篭を追いながら中車が花道を引っ込む。膝を折って何回かつまづくような感じで進むのは中車にとっては大変だろうと思うが、頑張ってやっていた。
前回は、前の幕では仲良さそうだったのに次の幕で殺しちゃった、という唐突さがあったが、今月はその疑問はない。悪くない終わり方だと思う。
私の好みでは、もちろん玉三郎の相手は仁左衛門にやってほしいし、お国と源次郎のシーンは幻想的で美しいのでカットしないでほしい。しかし、中車の伴蔵は良いので、また相手を変えてやれば良いと思う。その時は時間があれば飯島家の話も普通にやってほしい。
円朝役の猿之助のしゃべり方は、落語家のしゃべりを模倣しようとしているのかもしれないが、まだ安定しない感じがする。
馬子久蔵役の海老蔵も良かった。海老蔵の汚れ役は何回か見たことがあるが、いつも真面目にやっていて感心する。
三月大歌舞伎 初日 昼の部 ― 2015/03/04 22:14
2015年3月3日 歌舞伎座 午前11時開演 1階5列9番
「加茂堤」
菊之助は桜丸にぴったりの雰囲気。桜丸の女房の八重は梅枝。八重に手を引かれて花道を出てくる苅屋姫の壱太郎も、役にぴったりの雰囲気。
牛車の中から出てくる斎世親王(萬太郎)と苅屋姫は恋人同士で、桜丸夫婦が二人が逢えるようにしたのだ。十代の恋人達を牛車の中に入らせるのが、歌舞伎的天真爛漫エロス。
二人が逃げて空っぽになった牛車を夫の着物を羽織って引いて行く八重の姿が綺麗だった。
「筆法伝授」
園生の前は魁春。目のまわりが赤いので出てくるとすぐわかる。
花道の上に敷いたゴザをこするかすかな音がして、源蔵(染五郎)と戸浪(梅枝)の夫婦が出てくる。二人とも裸足で、七三のところで二人でお辞儀をする。染五郎の寺子屋の源蔵は良かったなあと思い出しながら観た。これは寺子屋よりも前の話で、職場恋愛という「不義」を犯した二人は勘当され、今は貧乏暮らしをしている。
源蔵は菅丞相に筆法を伝授されるが勘当は解けない。菅丞相は藤原時平の讒言により流罪となる。源蔵は梅王丸に菅丞相の若君の菅秀才を預かると申し出て連れて帰る。菅秀才を背負った戸浪と源蔵が花道を引っ込むのが最後。
これが「寺子屋」につながるわけだ。
「道明寺」
苅屋姫の壱太郎、立田の前の芝雀がいるところに覚寿役の秀太郎が出てくると、役の身に着き方の違いを感じる。秀太郎は、位のある老人の役がとてもいい。「瞼の母」の母役のようなときは台詞が聞きづらいことがあるが、覚寿の台詞はしっかりしている。
立田の前の夫、宿禰太郎役の彌十郎はすごく大きくて、相撲取りの役かと思った。キャラが立っていて、なかなか良い。これが妻の立田の前を殺し、「誰が殺したかわかった」と言った覚寿が宿禰太郎に刀を借り、別の人を刺すと見せかけて宿禰太郎を刺すところは見応えがある。
立田の前の死体を引き上げる奴宅内は愛之助。奴林平みたいなかっこいい奴ではなく、逸見藤太的な滑稽な役。最後に褌姿になる。愛之助の太腿やがっちりした体を拝むのは久々だ。
菅丞相は奥の部屋にいる。木像のときは、座っているときに60度くらいずついっぺんに体の向きを変えていかにも人形らしい動きをする。歩く姿も人形だ。初めて観たときは、人形のような美貌が生きるはまり役だと思ったが、今は人形というには老けすぎた。
しかし、最後の苅屋姫との別れは、今まで観た中で最高。青っぽい衣装の大きな仁左衛門の裾のあたりに小さくかわいい壱太郎が、何も言わないが「置いてかないで~」のような風情で動いている。二人の姿を見ると、悲しむ人を見てもらい泣きするときのように感情が伝わってきて、涙が出そうになった。これは歌舞伎の美しいシーンの一つで、その中でもこの二人の組み合わせは最高だと思う。
青っぽい衣装になってからの仁左衛門は圧倒的に美しかった。顔に涙が光る花道の横顔を見て、年寄りだけど本当に骨格のきれいな人だと思った。
菅丞相を送って最後に花道に残る判官代輝国は菊之助。
「加茂堤」
菊之助は桜丸にぴったりの雰囲気。桜丸の女房の八重は梅枝。八重に手を引かれて花道を出てくる苅屋姫の壱太郎も、役にぴったりの雰囲気。
牛車の中から出てくる斎世親王(萬太郎)と苅屋姫は恋人同士で、桜丸夫婦が二人が逢えるようにしたのだ。十代の恋人達を牛車の中に入らせるのが、歌舞伎的天真爛漫エロス。
二人が逃げて空っぽになった牛車を夫の着物を羽織って引いて行く八重の姿が綺麗だった。
「筆法伝授」
園生の前は魁春。目のまわりが赤いので出てくるとすぐわかる。
花道の上に敷いたゴザをこするかすかな音がして、源蔵(染五郎)と戸浪(梅枝)の夫婦が出てくる。二人とも裸足で、七三のところで二人でお辞儀をする。染五郎の寺子屋の源蔵は良かったなあと思い出しながら観た。これは寺子屋よりも前の話で、職場恋愛という「不義」を犯した二人は勘当され、今は貧乏暮らしをしている。
源蔵は菅丞相に筆法を伝授されるが勘当は解けない。菅丞相は藤原時平の讒言により流罪となる。源蔵は梅王丸に菅丞相の若君の菅秀才を預かると申し出て連れて帰る。菅秀才を背負った戸浪と源蔵が花道を引っ込むのが最後。
これが「寺子屋」につながるわけだ。
「道明寺」
苅屋姫の壱太郎、立田の前の芝雀がいるところに覚寿役の秀太郎が出てくると、役の身に着き方の違いを感じる。秀太郎は、位のある老人の役がとてもいい。「瞼の母」の母役のようなときは台詞が聞きづらいことがあるが、覚寿の台詞はしっかりしている。
立田の前の夫、宿禰太郎役の彌十郎はすごく大きくて、相撲取りの役かと思った。キャラが立っていて、なかなか良い。これが妻の立田の前を殺し、「誰が殺したかわかった」と言った覚寿が宿禰太郎に刀を借り、別の人を刺すと見せかけて宿禰太郎を刺すところは見応えがある。
立田の前の死体を引き上げる奴宅内は愛之助。奴林平みたいなかっこいい奴ではなく、逸見藤太的な滑稽な役。最後に褌姿になる。愛之助の太腿やがっちりした体を拝むのは久々だ。
菅丞相は奥の部屋にいる。木像のときは、座っているときに60度くらいずついっぺんに体の向きを変えていかにも人形らしい動きをする。歩く姿も人形だ。初めて観たときは、人形のような美貌が生きるはまり役だと思ったが、今は人形というには老けすぎた。
しかし、最後の苅屋姫との別れは、今まで観た中で最高。青っぽい衣装の大きな仁左衛門の裾のあたりに小さくかわいい壱太郎が、何も言わないが「置いてかないで~」のような風情で動いている。二人の姿を見ると、悲しむ人を見てもらい泣きするときのように感情が伝わってきて、涙が出そうになった。これは歌舞伎の美しいシーンの一つで、その中でもこの二人の組み合わせは最高だと思う。
青っぽい衣装になってからの仁左衛門は圧倒的に美しかった。顔に涙が光る花道の横顔を見て、年寄りだけど本当に骨格のきれいな人だと思った。
菅丞相を送って最後に花道に残る判官代輝国は菊之助。
十二月大歌舞伎 夜の部 ― 2014/12/26 21:42
2014年12月24日 歌舞伎座 午後4時半開演 1階3列21番
「雷神不動北山櫻」
始まる前に仮名手本忠臣蔵のときのような人形が配役を紹介する。幕開きに役者が全員目をつぶっているのも忠臣蔵と同じ。
「毛抜」、「鳴神」を中心に、小さなシーンのいくつかで包んだような物語。愛之助は文屋豊秀の役で、「毛抜」、「鳴神」以外のシーンに出る。「毛抜」の後に、客席に下りて通路を歩いたりする。関白基経役の門之助は公家の役がものすごく似合う。
海老蔵は、久米寺弾正、鳴神上人とも、常人ではない雰囲気が良かった。若く見えるが実は100歳過ぎという、安倍清行も良かった。海老蔵はこういうナヨッとしたタイプは下手なのだが、この役はなかなか味がある。小磯(玉朗)が来ると「おなごの匂いがする」と出てきて、早口言葉で口説くのが面白かった。全体に、前に新橋演舞場で観たときよりも面白くて、海老蔵が大人になったと思った。
「毛抜」の久米寺弾正の衣装は、裃の裏が赤で着物の裏と見えている襟がオレンジで、グレーで模様のある着物に緑も入っていて、とんでもない色使いなのにおかしくないのはどうしてだろう。
若衆役の尾上右近が年齢、大きさともに海老蔵とバランスがいい。エロがテーマの通し狂言の中でも一番のセクハラシーンかもしれないが、可愛くて楽しかった。
万兵衛役の獅童は文楽人形のような顔。後半、弾正にやりこめられて泣き顔になるあたりがとても獅童らしかった。
「鳴神」は何十年ぶりかの玉三郎の雲絶間。白雲坊、黒雲坊(亀三郎、亀寿)の真中に座って恋人との逢瀬を語っているところが圧巻。観客全員が話に聞き入っていた。川を渡る話になって、雲絶間が立ち上がって岩屋の方を向き、「裾を、こう持ち上げて」とやるとき、團十郎の鳴神は反対側に目を背ける動作をしたと記憶していたが、海老蔵を見ると、前にあった台を反対側に片づけ、前より更に熱心に話に聞き入る。
鳴神が雲絶間の胸に手を入れるところの一番盛り上がるところで、玉三郎は全身の力が抜けて左腕をだらりと下げた後、その手で赤い袖をゆっくりと持ち上げ、「お師匠さま」と言う。
七日に観たときは気づかなかったが、海老蔵の鳴神はもう一度手を入れて「ここが○○、ここが~」と言うとき、どもるような感じにしていたようだが、あれは必要ない。ただ素直に真摯に演じていた團十郎の鳴神が好きだった。
注連縄を切ると、大きな竜が一匹と少し小さいのが二匹、天に昇って行く。
鳴神の後は休憩はなくて大詰になる。雨が降って喜ぶ百姓や巫女たち。百姓の中には國矢や蔦之助がいて、閉まった幕の前と花道を使って踊る。文屋豊秀は大詰にも出る。朝一の演目から愛之助はお疲れ様。関白基経の横にいる女官の一人が見た顔だと思ったら愛一郎。
次の場は朱雀門。早雲王子になった海老蔵が出る。太鼓の音がして、七日の席はもっと上手だったので気づかなかったが、舞台上手に、水平に置いた大きな太鼓を打っている人がいた。この場では花道の梯子乗りと、テンポの速い立ち回りが見ものだ。
最後は、不動明王(海老蔵)の空中浮揚。下手に小さな制多迦童子(市蔵)、上手にコンガラ童子(道行)。
「雷神不動北山櫻」
始まる前に仮名手本忠臣蔵のときのような人形が配役を紹介する。幕開きに役者が全員目をつぶっているのも忠臣蔵と同じ。
「毛抜」、「鳴神」を中心に、小さなシーンのいくつかで包んだような物語。愛之助は文屋豊秀の役で、「毛抜」、「鳴神」以外のシーンに出る。「毛抜」の後に、客席に下りて通路を歩いたりする。関白基経役の門之助は公家の役がものすごく似合う。
海老蔵は、久米寺弾正、鳴神上人とも、常人ではない雰囲気が良かった。若く見えるが実は100歳過ぎという、安倍清行も良かった。海老蔵はこういうナヨッとしたタイプは下手なのだが、この役はなかなか味がある。小磯(玉朗)が来ると「おなごの匂いがする」と出てきて、早口言葉で口説くのが面白かった。全体に、前に新橋演舞場で観たときよりも面白くて、海老蔵が大人になったと思った。
「毛抜」の久米寺弾正の衣装は、裃の裏が赤で着物の裏と見えている襟がオレンジで、グレーで模様のある着物に緑も入っていて、とんでもない色使いなのにおかしくないのはどうしてだろう。
若衆役の尾上右近が年齢、大きさともに海老蔵とバランスがいい。エロがテーマの通し狂言の中でも一番のセクハラシーンかもしれないが、可愛くて楽しかった。
万兵衛役の獅童は文楽人形のような顔。後半、弾正にやりこめられて泣き顔になるあたりがとても獅童らしかった。
「鳴神」は何十年ぶりかの玉三郎の雲絶間。白雲坊、黒雲坊(亀三郎、亀寿)の真中に座って恋人との逢瀬を語っているところが圧巻。観客全員が話に聞き入っていた。川を渡る話になって、雲絶間が立ち上がって岩屋の方を向き、「裾を、こう持ち上げて」とやるとき、團十郎の鳴神は反対側に目を背ける動作をしたと記憶していたが、海老蔵を見ると、前にあった台を反対側に片づけ、前より更に熱心に話に聞き入る。
鳴神が雲絶間の胸に手を入れるところの一番盛り上がるところで、玉三郎は全身の力が抜けて左腕をだらりと下げた後、その手で赤い袖をゆっくりと持ち上げ、「お師匠さま」と言う。
七日に観たときは気づかなかったが、海老蔵の鳴神はもう一度手を入れて「ここが○○、ここが~」と言うとき、どもるような感じにしていたようだが、あれは必要ない。ただ素直に真摯に演じていた團十郎の鳴神が好きだった。
注連縄を切ると、大きな竜が一匹と少し小さいのが二匹、天に昇って行く。
鳴神の後は休憩はなくて大詰になる。雨が降って喜ぶ百姓や巫女たち。百姓の中には國矢や蔦之助がいて、閉まった幕の前と花道を使って踊る。文屋豊秀は大詰にも出る。朝一の演目から愛之助はお疲れ様。関白基経の横にいる女官の一人が見た顔だと思ったら愛一郎。
次の場は朱雀門。早雲王子になった海老蔵が出る。太鼓の音がして、七日の席はもっと上手だったので気づかなかったが、舞台上手に、水平に置いた大きな太鼓を打っている人がいた。この場では花道の梯子乗りと、テンポの速い立ち回りが見ものだ。
最後は、不動明王(海老蔵)の空中浮揚。下手に小さな制多迦童子(市蔵)、上手にコンガラ童子(道行)。
十二月大歌舞伎 昼の部 初日 ― 2014/12/02 19:00
2014年12月2日 歌舞伎座 午前11時開演 1階1列23番
「義賢最期」
初役だった松竹座で観て以来、こんぴら、新橋、浅草、と観てこれで5回目。きょうは今まで観た中で一番良かった。
折平役は亀三郎。愛之助ともども口跡が良いので二人がからむ場面は聞きごたえがある。
義賢役の愛之助は低音を出すのに慣れて来たようで、ずっと前に感じたような聞き取りにくさのようなものがない。年取ってからの仁左衛門の声のようなちょっと割れたような低音だ。安定してうまいが、銀鼠色の着物で、義朝の髑髏を持ってきた二人と相対しているあたりが特に良い。ふたごころなき義賢が髑髏を蹴って晴らさん、とか言いながら結局兄の髑髏を蹴ることはできないその心の動きがよくわかる。
進野次郎は市川道行(元坂東薪車)。久しぶりに見るが、やっぱり華のある人だと思う。覚えていないが上演記録によると松竹座のときと演舞場のときの進野次郎は薪車だったのだ。
進野次郎が上手にはけると、逸見藤太のような雰囲気の矢走兵内(猿弥)が出てくる。義賢が最後の拵えで出てくるまでの時間稼ぎだ。葵御前は笑也、矢走が猿弥、と今月は配役が豪華。
チラシの写真のように顔から血を流して髪を乱した義賢が戦いながら襖の向こうから出てくる。やがて戸板が運び込まれ、二枚の戸板を立てて、義賢が乗った戸板をその上に乗せる。上で立ち上がって拍手を受けた後、下手の戸板を支えていた人がいなくなり、掛け声とともに上手の人が戸板の上の方を押すと、ゆっくり下手に傾いて行く。完全に倒れて、無事に着地。戸板倒し成功。
さらに戦い続ける義賢にいろんな方向から矢が飛んで来る。そして義賢は花道へ行って立ち回り。花道にいる間に舞台上の矢を片づける。
舞台に戻った義賢は進野次郎に刺されて致命傷を負う。最後の力を振り絞って進野を討ち、小万に白旗を託して、いよいよ階段の上に立ってフィニッシュの態勢に入る。片方ずつ腕を伸ばしてしゃっきり立った後、腕も上半身も下げてグタッとし、最後にスプレッドイーグルが背伸びをしたような格好になり、そのまま階段に倒れ込む。ガタッと音がし、身体が少し下に滑った。前の二回くらい、倒れ込んだときがフワッとした感じで少し不満だったが、今回は満足。仏倒れ成功で無事に幕。
小万役の梅枝は、白旗を渡されるときの泣きそうな顔も良かったし、手水鉢から水をくんで飲ませるところ、雄々しく戦うところ、下手に小走りではけるところまで、みんなうまい。
「幻武蔵」
新作なので、どんなもんだろうと思ったが、舞台は姫路城の天守なので「天守物語」と同じ。そこに花道すっぽんから上って来る感じで武蔵(獅童)と、息子の造酒之助(萬太郎)が出てくる。その後、周り舞台の上にいろいろな人の霊が次々に現れて場面を作る。
淀君の玉三郎と千姫の児太郎のときは孤城の落月みたいな雰囲気だった。暴力的な淀君の玉三郎が面白い。児太郎はブス。
千姫に恨みごとを言う坂崎出羽守が道行。昔、大河ドラマで高橋英樹がやった坂崎出羽守がとても良かったので、イケメンが出羽守をやるのは正しいと思うのだが、もっと男の哀愁がほしい。道行の演技にはそういう深味がない。この役は愛之助がやった方がいい。
やはり千姫に恨みごとを言う秀頼(弘太郎)。弘太郎は秀頼のイメージにとっても合う。
千姫が二人になって武蔵に言い寄ったりするが、武蔵は偽物と見破り、二人は姿を消す。
そこに小刑部明神(松也)が現れ、武蔵の過去をいろいろ責めたてる。松也の役はチラシの写真の女形とは違って、女物の衣装で典侍の局のような長い房のついた扇を持っているけれどもボリュームのある長い髪で、しゃべり方は中性的。巫女的と言うべきか。
明神と話しているうちに武蔵と同じ格好をした男たちが何人も現れる。鏡を使ったり映像処理をしたりするかわりに本物の人間を使った、というところか。
結局、武蔵は自分が見て来た幻は自分の心の中の煩悩なのだと気づいて、それをすべて斬り捨てることにした、ということなのだろう。
武蔵が斬り捨てると、小刑部明神もやられていなくなる。代わりに、衣装は同じだが女の髪型と化粧の松也が武蔵のところに来て、自分は富姫だと言う。
最後は武蔵はすっぽんから下がって行き、富姫は舞台にいて、幕。
「二人椀久」
海老蔵は、椀久の衣装もこの踊りも似合わない。私が今まで観た椀久は仁左衛門と愛之助だけなので気づかなかったのだが、この踊りがこんなに和事風の踊りだったことに初めて気づいた。
玉三郎はきれいだが、二人で踊った時の美しさが感じられない。この二人の「吉野山」は寿命が延びるような美しさだったが。「二人椀久」だったら、前に歌舞伎座で観た仁左衛門と孝太郎の方がずっと美しいと思えた。
「義賢最期」
初役だった松竹座で観て以来、こんぴら、新橋、浅草、と観てこれで5回目。きょうは今まで観た中で一番良かった。
折平役は亀三郎。愛之助ともども口跡が良いので二人がからむ場面は聞きごたえがある。
義賢役の愛之助は低音を出すのに慣れて来たようで、ずっと前に感じたような聞き取りにくさのようなものがない。年取ってからの仁左衛門の声のようなちょっと割れたような低音だ。安定してうまいが、銀鼠色の着物で、義朝の髑髏を持ってきた二人と相対しているあたりが特に良い。ふたごころなき義賢が髑髏を蹴って晴らさん、とか言いながら結局兄の髑髏を蹴ることはできないその心の動きがよくわかる。
進野次郎は市川道行(元坂東薪車)。久しぶりに見るが、やっぱり華のある人だと思う。覚えていないが上演記録によると松竹座のときと演舞場のときの進野次郎は薪車だったのだ。
進野次郎が上手にはけると、逸見藤太のような雰囲気の矢走兵内(猿弥)が出てくる。義賢が最後の拵えで出てくるまでの時間稼ぎだ。葵御前は笑也、矢走が猿弥、と今月は配役が豪華。
チラシの写真のように顔から血を流して髪を乱した義賢が戦いながら襖の向こうから出てくる。やがて戸板が運び込まれ、二枚の戸板を立てて、義賢が乗った戸板をその上に乗せる。上で立ち上がって拍手を受けた後、下手の戸板を支えていた人がいなくなり、掛け声とともに上手の人が戸板の上の方を押すと、ゆっくり下手に傾いて行く。完全に倒れて、無事に着地。戸板倒し成功。
さらに戦い続ける義賢にいろんな方向から矢が飛んで来る。そして義賢は花道へ行って立ち回り。花道にいる間に舞台上の矢を片づける。
舞台に戻った義賢は進野次郎に刺されて致命傷を負う。最後の力を振り絞って進野を討ち、小万に白旗を託して、いよいよ階段の上に立ってフィニッシュの態勢に入る。片方ずつ腕を伸ばしてしゃっきり立った後、腕も上半身も下げてグタッとし、最後にスプレッドイーグルが背伸びをしたような格好になり、そのまま階段に倒れ込む。ガタッと音がし、身体が少し下に滑った。前の二回くらい、倒れ込んだときがフワッとした感じで少し不満だったが、今回は満足。仏倒れ成功で無事に幕。
小万役の梅枝は、白旗を渡されるときの泣きそうな顔も良かったし、手水鉢から水をくんで飲ませるところ、雄々しく戦うところ、下手に小走りではけるところまで、みんなうまい。
「幻武蔵」
新作なので、どんなもんだろうと思ったが、舞台は姫路城の天守なので「天守物語」と同じ。そこに花道すっぽんから上って来る感じで武蔵(獅童)と、息子の造酒之助(萬太郎)が出てくる。その後、周り舞台の上にいろいろな人の霊が次々に現れて場面を作る。
淀君の玉三郎と千姫の児太郎のときは孤城の落月みたいな雰囲気だった。暴力的な淀君の玉三郎が面白い。児太郎はブス。
千姫に恨みごとを言う坂崎出羽守が道行。昔、大河ドラマで高橋英樹がやった坂崎出羽守がとても良かったので、イケメンが出羽守をやるのは正しいと思うのだが、もっと男の哀愁がほしい。道行の演技にはそういう深味がない。この役は愛之助がやった方がいい。
やはり千姫に恨みごとを言う秀頼(弘太郎)。弘太郎は秀頼のイメージにとっても合う。
千姫が二人になって武蔵に言い寄ったりするが、武蔵は偽物と見破り、二人は姿を消す。
そこに小刑部明神(松也)が現れ、武蔵の過去をいろいろ責めたてる。松也の役はチラシの写真の女形とは違って、女物の衣装で典侍の局のような長い房のついた扇を持っているけれどもボリュームのある長い髪で、しゃべり方は中性的。巫女的と言うべきか。
明神と話しているうちに武蔵と同じ格好をした男たちが何人も現れる。鏡を使ったり映像処理をしたりするかわりに本物の人間を使った、というところか。
結局、武蔵は自分が見て来た幻は自分の心の中の煩悩なのだと気づいて、それをすべて斬り捨てることにした、ということなのだろう。
武蔵が斬り捨てると、小刑部明神もやられていなくなる。代わりに、衣装は同じだが女の髪型と化粧の松也が武蔵のところに来て、自分は富姫だと言う。
最後は武蔵はすっぽんから下がって行き、富姫は舞台にいて、幕。
「二人椀久」
海老蔵は、椀久の衣装もこの踊りも似合わない。私が今まで観た椀久は仁左衛門と愛之助だけなので気づかなかったのだが、この踊りがこんなに和事風の踊りだったことに初めて気づいた。
玉三郎はきれいだが、二人で踊った時の美しさが感じられない。この二人の「吉野山」は寿命が延びるような美しさだったが。「二人椀久」だったら、前に歌舞伎座で観た仁左衛門と孝太郎の方がずっと美しいと思えた。
十月大歌舞伎 十七世・十八世中村勘三郎追善 夜の部 ― 2014/10/25 21:50
2014年10月24日 歌舞伎座 午後4時半開演 1階13列17番
「寺子屋」
何回も観ているわりには理解しきれていなくて、特に松王丸がよくわからなかったが、話の筋を知った上で仁左衛門を見ていると、泣き出しそうなところで咳込んでいるのかとか、息子の首が落とされた瞬間によろめいているな、とか今までよりはわかる気がした。
源蔵の勘九郎は無難な出来。松王丸とぶつかるあたりの足の運びがとても綺麗で私が勘九郎を見る楽しみは満たされるが、源蔵としては、特に心ひかれるところはなかった。
「吉野山」
藤十郎と梅玉の場合、踊りというよりパントマイムのようなものとして観るべきかもしれない。そういう意味ではとても良かった。二人とも見た目が綺麗だし、狐忠信の梅玉はお供らしく丁寧。忠信が静に踊りの振りを教えるところが、本当にそれらしくて良かった。
「鰯賣戀曳網」
最初に、博労役の獅童が馬をひいて現れる。猿源氏の父役の弥十郎と話しているときに、馬が足を持ち上げて見せるのが可愛い。
猿源氏(勘九郎)が鰯をかついで花道から登場。
猿源氏が思いを寄せている傾城の蛍火(七之助)に会うために、猿源氏が大名、博労が家老のふりをして揚屋に赴く。
猿源氏はだんだん地が出て姿勢がくずれるが、博労がビシッとした姿勢をして見せて、注意を促す。そのたびに猿源氏が姿勢を正し、ちょっと気取るように顔を動かす様子が笑える。
揚屋にいる傾城役は、巳之助、新悟、児太郎、鶴松、虎之助。巳之助が一番目立つ役だ。巳之助は女形だと美人だと思うのだが、髪型のせいか、そういう役なのか、あまり美人に見えなかった。
奥から現れる蛍火役の七之助が文句なく綺麗で、素晴らしい。
楽しい喜劇だった。勘九郎と七之助の仲良さそうなところがとても良くて、最後の花道では盛大な拍手を受けていた。
とても気持ちの良い終わり方で、帰りのお客さん達が満足そうだった。
「寺子屋」
何回も観ているわりには理解しきれていなくて、特に松王丸がよくわからなかったが、話の筋を知った上で仁左衛門を見ていると、泣き出しそうなところで咳込んでいるのかとか、息子の首が落とされた瞬間によろめいているな、とか今までよりはわかる気がした。
源蔵の勘九郎は無難な出来。松王丸とぶつかるあたりの足の運びがとても綺麗で私が勘九郎を見る楽しみは満たされるが、源蔵としては、特に心ひかれるところはなかった。
「吉野山」
藤十郎と梅玉の場合、踊りというよりパントマイムのようなものとして観るべきかもしれない。そういう意味ではとても良かった。二人とも見た目が綺麗だし、狐忠信の梅玉はお供らしく丁寧。忠信が静に踊りの振りを教えるところが、本当にそれらしくて良かった。
「鰯賣戀曳網」
最初に、博労役の獅童が馬をひいて現れる。猿源氏の父役の弥十郎と話しているときに、馬が足を持ち上げて見せるのが可愛い。
猿源氏(勘九郎)が鰯をかついで花道から登場。
猿源氏が思いを寄せている傾城の蛍火(七之助)に会うために、猿源氏が大名、博労が家老のふりをして揚屋に赴く。
猿源氏はだんだん地が出て姿勢がくずれるが、博労がビシッとした姿勢をして見せて、注意を促す。そのたびに猿源氏が姿勢を正し、ちょっと気取るように顔を動かす様子が笑える。
揚屋にいる傾城役は、巳之助、新悟、児太郎、鶴松、虎之助。巳之助が一番目立つ役だ。巳之助は女形だと美人だと思うのだが、髪型のせいか、そういう役なのか、あまり美人に見えなかった。
奥から現れる蛍火役の七之助が文句なく綺麗で、素晴らしい。
楽しい喜劇だった。勘九郎と七之助の仲良さそうなところがとても良くて、最後の花道では盛大な拍手を受けていた。
とても気持ちの良い終わり方で、帰りのお客さん達が満足そうだった。
七月大歌舞伎 夜の部 ― 2014/08/04 23:21
2014年7月21日 歌舞伎座 午後4時半開演 1階13列19番
「悪太郎」
浅草で亀治郎が踊ったときはあまり感心しなかったが、今回は本物を観られたな、という感じがする。右近の方が向いているというのもあるが、元々この演目をよく知っている人たちが踊っている。特に智蓮坊役の猿弥の存在が大きい。右近の踊りは昼よりもこっちの方が良い。一人で踊るところ、足をスーッと引くような動きとか、とても面白かった。
「修善寺物語」
中車はまたまた老人役をがんばっているが、夜叉王は歌舞伎の台詞ができないとダメなところがあるので苦しい。去年の顔見世の富森助右衛門ほどではないが、聞いてて辛いところが部分的にあった。
「天守物語」
玉三郎と海老蔵のコンビで観るのは四回目だ。最初の新之助のときは、その若さがいかにも図書之助にぴったりだと思った。三十代の半ばになった今回観て感じたのは、海老蔵は初々しい若者を演じるのにふさわしいきれいな声で、台詞まわしも爽やかだということだ。
「悪太郎」
浅草で亀治郎が踊ったときはあまり感心しなかったが、今回は本物を観られたな、という感じがする。右近の方が向いているというのもあるが、元々この演目をよく知っている人たちが踊っている。特に智蓮坊役の猿弥の存在が大きい。右近の踊りは昼よりもこっちの方が良い。一人で踊るところ、足をスーッと引くような動きとか、とても面白かった。
「修善寺物語」
中車はまたまた老人役をがんばっているが、夜叉王は歌舞伎の台詞ができないとダメなところがあるので苦しい。去年の顔見世の富森助右衛門ほどではないが、聞いてて辛いところが部分的にあった。
「天守物語」
玉三郎と海老蔵のコンビで観るのは四回目だ。最初の新之助のときは、その若さがいかにも図書之助にぴったりだと思った。三十代の半ばになった今回観て感じたのは、海老蔵は初々しい若者を演じるのにふさわしいきれいな声で、台詞まわしも爽やかだということだ。
七月大歌舞伎 昼の部 初日 ― 2014/07/08 02:38
2014年7月5日 歌舞伎座 午前11時開演 1階15列15番
歌舞伎座を入るときから、報道の人や警備の人が目についたので誰かセレブが観に来るのだろうと思った。席についてしばらくしたら周りが拍手し始めたのでいっしょに拍手していたら、安倍首相一行が入って来た。私の横あたりで少し立ち止まって客席の人に手を振っていた。安倍さんの後ろにはケネディ駐日大使が続いていた。昔、少女フレンドで「キャロリン日記」というのを読んでいた世代なので、本物のキャロラインちゃんを見られて嬉しかった。
「正札附根元草摺」
五郎の右近と舞鶴の笑三郎。右近は川口のときは休演だったが復活して良かった。動きの切れはまだ完全に復活していないように思う。
「夏祭浪花鑑」
夏祭の幕開きはいつも住吉大社の鳥居前だったが、きょうは、お座敷。「お鯛茶屋の場」という。磯之丞(門之助)がいつもの着物の上にばか殿のガウンみたいなのを羽織って出て来て、それはすぐに脱ぐ。
お梶(吉弥)が出て来て、磯之丞を連れ戻すために一芝居打たせた徳兵衛(猿弥)に金と着物を与える。これが、次の場でお梶が団七と徳兵衛の喧嘩を止めたときに、徳兵衛に気づいて「お前は~」と言う台詞の前提になるわけだ。
住吉鳥居前の場では、三婦(左團次)、お梶と市松が出てくる。可愛い市松。お梶と市松がお参りに行っている間に上手から出てくる釈放された団七(海老蔵)。
三婦は団七を髪結床にやり、髪結に着替えを渡そうとするが、着替えの褌を忘れたことに気づく。ここで、自分の締めているおろしたての赤褌を髪結(國矢)に引っ張らせてとらせるのが見せ場だが、きょうは、三婦と髪結が長いのれんの向こうにすっぽりと隠れて、台詞しか聞こえなかったので狐につままれたような気分。出て来て花道を引き揚げるときはいつもの動きだった。
髪結でさっぱりした団七が現れ、徳兵衛に呼び止められる。自分が今までに見た徳兵衛は仁左衛門とか錦之助とか獅童のような二枚目系が多かったので、猿弥の徳兵衛は違和感があった。しかし、次の幕で二人が色違いの浴衣を着て花道から出てくるとき、揚幕の後ろから声が聞こえるが、猿弥の方がうまく、比べると海老蔵の台詞はどことなく間が抜けている。
三婦の家にお辰(玉三郎)がやってくる。前に玉三郎のお辰を観たときも三婦は左團次だった。もう四半世紀前になるのだ。玉三郎は出だしはもたもたした感じだったが、しり上がりに良くなって、花道で胸を叩くところはかっこよかった。
そして、いよいよ、きょう一番注目している中車の義平次の登場となる。腰をかがめて少し左右に揺れながら花道を歩いて行く後ろ姿が目に焼き付く。声は、特にはじめのうち、年寄りにしては可愛すぎる印象だった。笠をとって顔が見えると場内が沸く。海老蔵の団七と今にもキスしそうなくらい顔をくっつけて睨み合ったり、相手の大げさな芸風を互いにしっかりと受け止めていて、演技がかみ合って面白い。「暑いなあ~」と何度もいうところや、「若いくせに物忘れ」のあたりで笑いが起きていた。斬られた後、舞台の前の方の穴に落ち、泥水でびっしょりになって戻って来て、ふらふらの義平次が団七の髪を後ろから引っ張る姿が面白い。海老蔵は所作がうまいわけではないが、美しい姿がどろどろの中車と対称的で引き立った。長町裏の場は期待通りの盛り上がり。
団七が神輿について踊りながら花道を引っ込むところで終わりではなく、団七内の場と、屋根上の立ち回りの場がつく。
歌舞伎座を入るときから、報道の人や警備の人が目についたので誰かセレブが観に来るのだろうと思った。席についてしばらくしたら周りが拍手し始めたのでいっしょに拍手していたら、安倍首相一行が入って来た。私の横あたりで少し立ち止まって客席の人に手を振っていた。安倍さんの後ろにはケネディ駐日大使が続いていた。昔、少女フレンドで「キャロリン日記」というのを読んでいた世代なので、本物のキャロラインちゃんを見られて嬉しかった。
「正札附根元草摺」
五郎の右近と舞鶴の笑三郎。右近は川口のときは休演だったが復活して良かった。動きの切れはまだ完全に復活していないように思う。
「夏祭浪花鑑」
夏祭の幕開きはいつも住吉大社の鳥居前だったが、きょうは、お座敷。「お鯛茶屋の場」という。磯之丞(門之助)がいつもの着物の上にばか殿のガウンみたいなのを羽織って出て来て、それはすぐに脱ぐ。
お梶(吉弥)が出て来て、磯之丞を連れ戻すために一芝居打たせた徳兵衛(猿弥)に金と着物を与える。これが、次の場でお梶が団七と徳兵衛の喧嘩を止めたときに、徳兵衛に気づいて「お前は~」と言う台詞の前提になるわけだ。
住吉鳥居前の場では、三婦(左團次)、お梶と市松が出てくる。可愛い市松。お梶と市松がお参りに行っている間に上手から出てくる釈放された団七(海老蔵)。
三婦は団七を髪結床にやり、髪結に着替えを渡そうとするが、着替えの褌を忘れたことに気づく。ここで、自分の締めているおろしたての赤褌を髪結(國矢)に引っ張らせてとらせるのが見せ場だが、きょうは、三婦と髪結が長いのれんの向こうにすっぽりと隠れて、台詞しか聞こえなかったので狐につままれたような気分。出て来て花道を引き揚げるときはいつもの動きだった。
髪結でさっぱりした団七が現れ、徳兵衛に呼び止められる。自分が今までに見た徳兵衛は仁左衛門とか錦之助とか獅童のような二枚目系が多かったので、猿弥の徳兵衛は違和感があった。しかし、次の幕で二人が色違いの浴衣を着て花道から出てくるとき、揚幕の後ろから声が聞こえるが、猿弥の方がうまく、比べると海老蔵の台詞はどことなく間が抜けている。
三婦の家にお辰(玉三郎)がやってくる。前に玉三郎のお辰を観たときも三婦は左團次だった。もう四半世紀前になるのだ。玉三郎は出だしはもたもたした感じだったが、しり上がりに良くなって、花道で胸を叩くところはかっこよかった。
そして、いよいよ、きょう一番注目している中車の義平次の登場となる。腰をかがめて少し左右に揺れながら花道を歩いて行く後ろ姿が目に焼き付く。声は、特にはじめのうち、年寄りにしては可愛すぎる印象だった。笠をとって顔が見えると場内が沸く。海老蔵の団七と今にもキスしそうなくらい顔をくっつけて睨み合ったり、相手の大げさな芸風を互いにしっかりと受け止めていて、演技がかみ合って面白い。「暑いなあ~」と何度もいうところや、「若いくせに物忘れ」のあたりで笑いが起きていた。斬られた後、舞台の前の方の穴に落ち、泥水でびっしょりになって戻って来て、ふらふらの義平次が団七の髪を後ろから引っ張る姿が面白い。海老蔵は所作がうまいわけではないが、美しい姿がどろどろの中車と対称的で引き立った。長町裏の場は期待通りの盛り上がり。
団七が神輿について踊りながら花道を引っ込むところで終わりではなく、団七内の場と、屋根上の立ち回りの場がつく。
歌舞伎座鳳凰祭三月 昼の部 「封印切」「二人藤娘」 ― 2014/03/28 11:31
2014年3月10日 1階10列30番
昼の部を途中から観劇。
「封印切」
藤十郎の忠兵衛はここ数年でこれで4回は観ている。以前はもっぱら松嶋屋型のを観ていたが、最近は正面を向いた階段も見慣れたものになった。
扇雀の梅川は綺麗だが、大人っぽく落ち着いているので、笑三郎のときに感じたと同じように、旦那から八右衛門の身請けの話をきいて忠兵衛に身請けされたいと懇願するような分別なしの若い女には見えない。
翫雀の八右衛門がつまらなかった。この人は、見た目はふんわりしているけれども醸し出す雰囲気は硬い。ひょっとすると扇雀がやった方が面白いかもしれない。
「二人藤娘」
本日、お目当ての演目。
七之助は白い藤の花を持って先に舞台にいる。玉三郎は藤色の藤を持って花道から登場。
七之助は藤娘そのもの、玉三郎はやや年のいった藤姐さんだと思うのだが、見た目はまだ玉三郎の方が綺麗だ。だからこそ成り立つ共演なのだろう。
二人でお酒を注ぎ合ったりするのが「二人藤娘」ならでは。衣装替えは引き抜きではなく、藤の木の後ろに隠れてまた出てくるときに替わっていた。
二人が違う色の着物なのでその分一人のときよりもカラフルだし、同じ動きでも玉三郎独特の観客にアピールする動きを確認することができ、玉三郎の何とも言えない目の動きをあらためて感じて、楽しかった。
昼の部を途中から観劇。
「封印切」
藤十郎の忠兵衛はここ数年でこれで4回は観ている。以前はもっぱら松嶋屋型のを観ていたが、最近は正面を向いた階段も見慣れたものになった。
扇雀の梅川は綺麗だが、大人っぽく落ち着いているので、笑三郎のときに感じたと同じように、旦那から八右衛門の身請けの話をきいて忠兵衛に身請けされたいと懇願するような分別なしの若い女には見えない。
翫雀の八右衛門がつまらなかった。この人は、見た目はふんわりしているけれども醸し出す雰囲気は硬い。ひょっとすると扇雀がやった方が面白いかもしれない。
「二人藤娘」
本日、お目当ての演目。
七之助は白い藤の花を持って先に舞台にいる。玉三郎は藤色の藤を持って花道から登場。
七之助は藤娘そのもの、玉三郎はやや年のいった藤姐さんだと思うのだが、見た目はまだ玉三郎の方が綺麗だ。だからこそ成り立つ共演なのだろう。
二人でお酒を注ぎ合ったりするのが「二人藤娘」ならでは。衣装替えは引き抜きではなく、藤の木の後ろに隠れてまた出てくるときに替わっていた。
二人が違う色の着物なのでその分一人のときよりもカラフルだし、同じ動きでも玉三郎独特の観客にアピールする動きを確認することができ、玉三郎の何とも言えない目の動きをあらためて感じて、楽しかった。
歌舞伎座こけら落とし12月 夜の部 ― 2013/12/14 01:07
2013年12月13日 午後4時半開演 1階14列26番
「五段目、六段目」
染五郎の勘平は五段目は菊五郎よりスラッとしてるな、と思った程度で、文句のない勘平だったが、六段目はあまり感心しなかった。どこが悪いというのではなく、ただ自分が感動しなかっただけだ。
七之助の女房おかるを観るのは二回目。玉三郎の雰囲気だが、声が少し福助に似てきたと思った。
千崎弥五郎は、五段目で出て来た時わからなかったが、高麗蔵。不破数右衛門が弥十郎なのですごく身長差がある。高麗蔵の千崎は連判状を出す前に外を確かめるとき、戸を開けてあたりを見るが外には出ない。又五郎は外に出て確かめていたような気がした。
「七段目」
この段の幸四郎の由良之助を観たことがあるかどうか記憶にないが、悪くなかった。特に今月は平右衛門が海老蔵で玉三郎と親子ほど年の差があるので、玉三郎と適当な年齢差でお兄さんの幸四郎と二人の場面が良かった。
海老蔵の平右衛門も悪くなかった。幸四郎も玉三郎もよく受けてくれていると思う。由良之助とのやり取りのところは、海老蔵の目立ち方がうっとうしく感じた。
おかるとのからみは、無骨な兄に見えて、なかなか良い。「髪の飾りに化粧して~」で悲劇調に転じるところも良かった。たまに怪獣みたいな顔になることがあるし、勘平が腹を切って死んでしまった、という前に「は、は」というのが不自然で下手とか、おかるに耳を貸すときの形がイマイチ綺麗じゃないとかいろいろ欠点はあるが、全体的には合格。
仲居役で小山三が出ていて、受けていた。獅子くたようなお侍、と言うのが小山三。
見立ては、長い布を波のように動かして海に見立てた「あまちゃん」と、燭台を聖火に見立ててオリンピックだった。
「十一段目」
獅童の小林平八郎と松也の竹森喜多八の泉水の立ち回りは先月の錦之助と歌昇にはかなわないだろうと思ったが、松也が投げられる場面が二回あったし、一応許せる範囲だった。
「五段目、六段目」
染五郎の勘平は五段目は菊五郎よりスラッとしてるな、と思った程度で、文句のない勘平だったが、六段目はあまり感心しなかった。どこが悪いというのではなく、ただ自分が感動しなかっただけだ。
七之助の女房おかるを観るのは二回目。玉三郎の雰囲気だが、声が少し福助に似てきたと思った。
千崎弥五郎は、五段目で出て来た時わからなかったが、高麗蔵。不破数右衛門が弥十郎なのですごく身長差がある。高麗蔵の千崎は連判状を出す前に外を確かめるとき、戸を開けてあたりを見るが外には出ない。又五郎は外に出て確かめていたような気がした。
「七段目」
この段の幸四郎の由良之助を観たことがあるかどうか記憶にないが、悪くなかった。特に今月は平右衛門が海老蔵で玉三郎と親子ほど年の差があるので、玉三郎と適当な年齢差でお兄さんの幸四郎と二人の場面が良かった。
海老蔵の平右衛門も悪くなかった。幸四郎も玉三郎もよく受けてくれていると思う。由良之助とのやり取りのところは、海老蔵の目立ち方がうっとうしく感じた。
おかるとのからみは、無骨な兄に見えて、なかなか良い。「髪の飾りに化粧して~」で悲劇調に転じるところも良かった。たまに怪獣みたいな顔になることがあるし、勘平が腹を切って死んでしまった、という前に「は、は」というのが不自然で下手とか、おかるに耳を貸すときの形がイマイチ綺麗じゃないとかいろいろ欠点はあるが、全体的には合格。
仲居役で小山三が出ていて、受けていた。獅子くたようなお侍、と言うのが小山三。
見立ては、長い布を波のように動かして海に見立てた「あまちゃん」と、燭台を聖火に見立ててオリンピックだった。
「十一段目」
獅童の小林平八郎と松也の竹森喜多八の泉水の立ち回りは先月の錦之助と歌昇にはかなわないだろうと思ったが、松也が投げられる場面が二回あったし、一応許せる範囲だった。
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