四代目楳茂都流家元披露舞踊公演 ― 2009/03/02 22:33
2009年3月1日(日)午後2時開演 松竹座
「竹生島」を踊る予定だった吉村輝章が病気療養のため出演できなくなりました、と入口に張り紙がしてあったが、プログラムには「竹生島」は載っていなかったから、急なキャンセルになったわけではないようだ。
右列に舞妓が並び、左列には芸者姿ではないが粋筋の人達が座っていた。左列の後方の一番前に秀太郎がいたようだ。舞妓さん達は休憩時間に降りて来て「おいでやす、お母さん」などと挨拶していた。
各幕の前に演目と立役のアナウンスはあるが、それ以外の挨拶、口上等はなかった。
長唄 「老松」 楳茂都梅咲
梅咲さんは楳茂都流の重鎮として名前だけは聞いていたが、舞は初めて見た。 「老松」は玉三郎、春猿で見たが、今回は楳茂都流の振り付けだった。
長唄「楳茂都流春秋」 楳茂都梅若児、 梅琴児、 梅季児
後ろの絵は清水寺の下の木組み。階段と水も描いてある。三人は花道から出てきた。三人とも角隠しだったが、一番後ろから出てきた水色の地の着物の人は角隠しの後ろが外れて下に行ってしまい、後見の人が直していたが前の中心がずれ、蝶の差し金を持った人も直していたが、結局最後まで直らなかった。
三人が開いた傘の後ろに座って舞台が暗くなったので拍手をしたら、まだ終わりではなく、春から秋に変わるところだった。引き抜きのように踊りながら衣装を一瞬に変えて見せるのではなく、薄暗い中、後見が上の着物をとり、帯をひっくり返して別の柄が出るようにしているようだった。後ろの桜の木も紅葉に変わって、舞台がまた明るくなった。こういうのは初めて見た。
上方唄 「浪花音頭」 楳茂都 梅咲弥
一線で活躍している人らしい、しっかりした踊りだった。
地唄 「鐘ヶ岬」 楳茂都 梅英
これは去年、歌舞伎座で「海外公演座談会と舞踊のひととき」で玉三郎が踊ったのを見たが、振り付けが違うらしい。道成寺の手がたくさん入っている、ということで、華やかで飽きなかった。
地唄 「ゆき」 楳茂都 梅加
梅加 は「ばいか」と読むのだ。 地唄 「ゆき」は玉三郎が観世能楽堂で踊ったときも感動しなかった。振り付けは違うが、この女自体に共感できない。 表現しなければならないものがあまりに内面的で、難しい舞だと思う。
この後、20分の休憩
地唄 「都十二月」 楳茂都 扇性
楳茂都 扇性を襲名した愛之助が舞台中央に正坐してお辞儀をすると、場内から大きな拍手が来た。 愛之助の素踊りはとても良い。顔の良さで七難隠している。
長唄 「猩々」 若柳 吉蔵、若柳 吉金吾
能から採ったものだそうで、二人とも赤い長い毛をつけ、衣装も色鮮やか。他の演目はほとんど皆、地味な舞台装置、衣裳なのではなやかさが際立つ。祝の席らしいものだった。
地唄 「蓬莱 」山村 若
秀太郎が花道セミナーで話題にしていたが、このプログラムにも蓬莱は正月に飾る祝儀の台のもの、と書いてある。
山村 若は、うまい。愛之助が踊っているときに去年の若の踊りを思い出して、下半身の動きがやっぱり違うな、と思ったが、若が踊り出したのを見たら、上半身の動きもまるで違う。動きのすべてが洗練されている。プロとアマの差というか、こういうのを「舞踊家」と言うんだよ、と思った。私のような素人が見ても、上質なものはわかる。高いレベルの技術を、まだ若い体力が支えて、舞踊家として油の乗り切った時期なのだろう。自分が見とれてたからそんな気がするのではなく、本当に客席全員が目を奪われていたと思う。
地唄 「由縁の月」 井上 八千代
去年の「八島」には感動したが、この舞は地味だった。私は井上流の振り付けは好きなので、もっと派手な演目が見たかった。
地唄 「荒れ鼠」 楳茂都 扇性、山村 若、若柳 吉蔵、藤間 豊宏、藤間 勘世、吉村 古ゆう、花柳 源九郎
七匹の鼠が家中を荒らしまわる、という群舞。日本舞踊にしては珍しいのではないか。道成寺の毬つきのような、腰をぐっと落として歩きまわる動きもあるが、皆、各流派の有名な人たちなのでうまくこなしていた。
全部終わったら午後六時だった。四時間も見たような気がしないのに、次々に舞踊を見ているとあっという間に時間が過ぎる。
歌舞伎座さよなら公演 三月大歌舞伎 夜の部 ― 2009/03/12 00:21
2009年3月11日 歌舞伎座 午後4時半開演 1階3列29番
「南部坂雪の別れ」
去年六月の「鹿鳴館」以来久し振りに見る団十郎が、間違って惚れそうなくらい良かった。
この演目は三年前に国立でやった時に観た。その時は最初の泉岳寺境内の場はなかった。愛之助がやった羽倉斎宮は最後の門外の場だけに出てきて、下手から歩いて来て内蔵助を一気に罵倒してサッと上手に引っ込んだ。今回は同じ役を我當がやっているが、泉岳寺境内の場にも羽倉斎宮は出る。
我當は声量はあるが台詞はあまりうまくない。足元が覚束なくて傾斜があるところは持っている傘を杖にしている。 団十郎は上手から出てきたので近くて良く見えた。 少し痩せて男ぶりが上がり、黒い肩衣がよく似合っていた。大石の内に秘めた決意が男の色香となって立ち上ってくるようだった。台詞を聴いて、やっぱり我當よりはうまい、と変な感心をした。二人の大根が一生懸命台詞を言っていると、うまい藤十郎と愛之助がスラスラ台詞を言っているより実(じつ)があるように感じる。
国立のときは第二幕の浅野家中屋敷で煤払いの日、腰元達が用人を持ち上げている、わりに華やかなシーンから始まったような記憶がある。 筋書きに紙が挟まっていたが、今月は筋書きに出ている宗之助が病欠で、かわりに腰元みゆきを芝のぶが演じている。
夜の部は演目毎に内蔵助の役が別の役者になるが、「昼行燈」というイメージにぴったりなのは団十郎だけだ。
「仙石屋敷」
ここでは内蔵助の仁左衛門がひたすらうまい。一番長い台詞のときは、それまでしょっちゅう咳をしていた人の咳も止まったくらい、みんな聞き惚れていた。 昭和62年にも今回と同じ通しを歌舞伎座でやったときに昼夜通しで観たが、この演目の内蔵助は吉右衛門で、孝夫は仙石伯耆守だった。仙石伯耆守は、今回の梅玉も良かった。詮議中に内蔵助が途中で咳きこんで、仙石伯耆守が別の人に振ったのは事故ではなくて芝居だったのだと、20年以上ぶりにわかった。
最初の場で屋敷の玄関先にいる梅丸は先月の勧進帳の太刀持のときよりも可愛く見えた。声はそんなに甲高くはないがちゃんと出ているということは、まだ声変わり前か。今は子供として頂点の状態にいるわけか。
「大石最後の一日」
これは、ない方が良かった。仙石屋敷で終わりの方が良かった。大石役の幸四郎が下手とかではなく、真剣な敵打ちの話に、見知らぬ男女の色恋沙汰が乱入してきたような違和感があった。前の二幕で浪士の真情に打たれていただけに、最後がこれなのは納得できなかった。
おみのは、なんと迷惑な女だろう。これから切腹の場に赴こうとする磯貝の心を乱している。それに、福助の演技もぶりっこのようで嫌だった。
「Beauty うつくしいもの」初日舞台挨拶 ― 2009/03/15 02:14
2009年3月14日 銀座シネパトス 午前10時10分~
きょうは生憎の雨で、司会の西嶋さんは若いお嬢さんなのに「足元がお悪い中」とちゃんと言えていたので感動した。愛之助と後藤監督はスクリーンに向かって右側の非常口から入ってきた。
愛之助は最初に、長野の舞台挨拶の時は映画撮影のため髪が短かったが今回は人並みに伸びて、東京で公開できてうれしい、この映画を見てない人にも良い映画があると薦めてほしい、と言った。村芝居は見たことがなかったこと、現地では暖冬と言われて雪を運ぶくらいだったが自分には寒かったこと等を語り、演技の上で難しかったことを聞かれて、本職の歌舞伎俳優ではないので、あまりうまくやりすぎてはいけない、だからわざと腰をあまり落とさないで歩くようなこともした、しかし自分がやった雪夫の役は「うまい」という設定なので、ちゃんとできるのかと思った、と答えていた。また、この映画に出て、戦争はやってはいけないと思った、それは去年出た「築城せよ」という映画にも共通している、という話もした。
後藤監督の話は東京国際映画祭のときも聞いたが、あの時とは話の内容が違って、角川や長野県に資金を出してもらった話、雪夫の役は戦争が原因のPTSDなので、その演技のためにPTSDの専門家の話も聞いたという話をした。その話で愛之助が思い出したようで、難しかったことについて聞かれたが、戦争の後は自分は目の色が変わっている、そこを見てもらわないと、と付け足した。
歌舞伎座さよなら公演 三月大歌舞伎 昼の部 ― 2009/03/16 00:34
2009年3月14日 歌舞伎座 午前11時開演 1階8列10番
「江戸城の刃傷」
内匠頭が刃傷に及んだ直後から話がはじまるらしく、慌てている人々の中で大名役の千蔵が台詞を言った後、戸沢下野守の進之介が出てきて内匠頭のそばに行こうとするが、平川録太郎役の亀鶴が止める。ここまでが前置きで、内匠頭役の梅玉が二人に取り押さえられながら出てきて、本編が始まる。
庭に控えている源五右衛門に気づいた内匠頭が、有名な「風さそう~」の辞世の和歌を読んで切腹のときを迎える最後が美しい。
「最後の大評定」
話は覚えていないのだが、井関徳兵衛(歌六)のいでたちに見覚えがあった。 息子の紋左衛門の役は種太郎。父の傍らでおろおろしている雰囲気がよく出ている。前に観たときは誰がやったのだろうと筋書きの上演記録を見るが暗過ぎて読めず。 明るくなったときに観たら進之介だった。
巳之助は、夜は「仙石屋敷」で大石主税の役だが、ここでは元服前で松之丞。
長い幕で、ちょっと飽きた。
「御浜御殿綱豊卿」
この幕だけが仮名手本忠臣蔵並みの華やかさで、結局これが一番面白かった。夜の部を先に見てしまったのだが、最後にこの芝居を見て良い気持ちになれて良かった。
新井勘解由役の富十郎と綱豊役の仁左衛門が話しているところでは、最初に観たときの助右衛門は富十郎だったなあ、と思い出しながら眠ってしまった。やはりこの芝居のハイライトは綱豊対助右衛門の対決だ。
綱豊が助右衛門をばかにするような厭味な笑い方をするのを今回強く感じた。今までもそうしてたのかもしれないが、美貌が邪魔してか、厭味よりも爽やかさが勝った綱豊だった。
助右衛門の染五郎は前回も良かったが、今回はもっと良かった。もともと、無骨な田舎者とはかけ離れた染五郎だが、花道の出、舞台に出たときに辺りを見る目の鋭さ等、化粧も含めて前回より強そうな男になっていた。綱豊に言い返す長台詞は、染五郎の台詞をはじめてうまいと思った。
新皿屋舗月雨暈(しんさらやしきつきのあまがさ) ― 2009/03/22 23:56
2009年3月21日 国立劇場大劇場 午前11時半開演 3階11列30番
国立の1500円の席は花道もよく見えて椅子も豪華でコストパフォーマンスが良い。 今月は役者の顔は見えない方がむしろ興を削がれないような配役でもあることだし。 3階から見ると最前列が半分空席で、客入りは良くないようだった。
魚屋宗五郎は何回か見たが、その前の一幕目、お蔦殺しの場は今回初めて見た。今まで気付かなかったことがいくつかある。磯部の殿様は最後に出てくる立派な人のように思っていたが、周りの人間にちやほやされてスポイルされている人物だと感じた。おなぎは腰元かと思っていたら、お蔦の召使だった。
おなぎとお蔦が二人でお蔦の部屋にいると、お初と尾上のような感じがする。梅枝のおなぎはとてもうまかった。 弟の萬太郎も、花道で宗五郎とすれ違う鳶吉五郎の役をやっているが、こちらはまだ生硬。
磯部の殿様役の友右衛門は、あんまり円満な性格に見えないところが、この役の本当の姿(?)に合っていると思う。
遠くからで顔が見えなかったので孝太郎のお蔦はそんなに悪くはなかったが、相変わらず高い声は耳障りだ。 声だけでも、かつての田之助の声のような耳に心地よいものにならないものか。 おはまになってからは、出演者中、一番の出来だった。 おなぎの話を聞きながら懐からさっと手ぬぐいを取り出して目に押し当てる様子が涙を誘う。
亀寿の三吉も良かった。亀寿は一幕目で紋三郎の役で出てきたときは亀三郎かと思った。
松緑は、最初の方はあんまりうまくないが、おなぎが来て酒を飲み始めてから良くなる。片肌脱いで酒樽を振り回すと、若い男の燃えるような怒りが見える。
この話、最後に夫婦がお金をもらって喜んで終わりみたいなところが納得いかない。この殿様は金で解決しようとするのも無理ないような性格だと一幕目を見て納得がいったが、宗五郎夫婦が単純に喜んだのではあまりに妹を食いものにしすぎだと思う。
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