国立劇場 11月歌舞伎公演 2日目 ― 2007/11/04 22:29
2007年11月4日 国立劇場大劇場 午前11時半開演 一階10列40番
客席は空いていたが充実した舞台だった。きょうはイヤホンガイドなしで観た。
「通し狂言 摂州合邦辻」
きのうは、「戻り」の部分が嫌だったが、きょうは藤十郎の熱演もあって「戻り」もそれほど拒否反応なく観られた。玉手にあのまま突っ走ってもらいたい気持ちに変わりはないが。
藤十郎のエキセントリックなところが玉手御前の役に合っていて、特に庵室の場は藤十郎が舞台も客席も支配していた。歌舞伎を観ているときになまめいたラブストーリーの気分を味わったのは仁左衛門の与三郎以来か。藤十郎の河庄もフランスの恋愛映画を観ているような気がしたし、この人の芝居は時折好きなことがある。
庵室の場は、両親とのやり取りや浅香姫への暴力があって、面白い。だからこの幕だけを上演する気持ちもわかるのだが、最初の方が地味なので、面白い場面が始まる前に客が眠ってしまう。それで私も前回観た内容は全く覚えてないわけだ。
庵室の場の我當は父性愛にあふれていて良かった。
三津五郎は全体を通してあまり大きな見せ場はないが、継母に言い寄られる美男子の上品な若君に見える。出奔前に父宛ての手紙を書くシーンが、座って筆を動かしているだけなのだが所作が綺麗なので見ていて飽きない。巻紙に文を書くときはああするのか、ああやって切って、あんな風に畳むのか、と見ていた。
浅香姫の扇雀は綺麗だが、この人は意思を持った女に見えるので、庵室の場で玉手に暴力を振るわれたときも合邦が玉手を刺さなければ自ら逆襲に出て女同士の死闘になったような気がする。
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