歌舞伎座百三十年 四月大歌舞伎 夜の部 「絵本合邦衢」2018/04/18 01:54

2018年4月17日 歌舞伎座 午後4時45分開演 1階9列41番

「絵本合邦衢」を観るのはこれで4度目だが、今回が一番良かった。主人公二人の、一切悔い改めることのない、徹底的な悪がいい。いかにも歌舞伎だ。

自分のブログを読む限り、国立でやった2回と話はそんなに変わらないようで、今回良いと感じた理由はよくわからない。太平次は、相変わらず大学之助が「殺してやった」で終わるわけで前回不満を感じた部分もそのままだ。

仁左衛門は大学之助の声は太くて、風邪かと思うようなガラガラ声だった。太平次のときは普段の仁左衛門の声だったので、わざと違う声にしていたのだろう。序幕の最後、開いた扇子の後ろで舌を出す大学之助が面白い。

今回の与兵衛は錦之助だった。愛之助のときは和事と感じたが、錦之助は特にそう思わなかったが、なかなか良かった。

うんざりお松は時蔵。強請に行くときの衣装が前回とは違うような気がする。

今回はお米の役が梅丸。太平次役の仁左衛門に縛られる。そして、最後に孫七(亀蔵)といっしょに太平次に串刺しにされて殺される。

最後の幕は、大きな閻魔の後ろから大学之助が現れる印象的な場面。自害したふりの弥十郎夫婦に殺される。騙し合いが最後まで続くわけだ。

大学之助が刺されて断末魔の後倒れて死んだ、と思うとすぐ起き上がって「こんにちはこれぎり~」となる。これも国立の時と変わらない。

坂東玉三郎 越路吹雪を歌う2018/04/18 01:52

2018年4月12日 NHKホール 午後6時半開演 2階C6列31番

早めにNHKホールに着いたら、入り口前がすごい行列で、入場後のトイレも長い行列だった。ここでこんな経験をしたのは初めてだ。
今回の公演は玉三郎だけではなくて、宝塚の人たち、ミュージカルの海宝直人が出た。
玉三郎が中央後方から登場して、まず「バラ色の人生」。久しぶりに、玉三郎の歌声を浴びた。
越路吹雪の大ファンでコンサートもほとんど見て、というような話の後、個人的に衝撃的だったという「群集」。
当時の染五郎が「王様と私」の王様の役をやった時に越路吹雪はアンヌ先生の役で、という話をきいて、私はあの頃染五郎のファンだったが、玉三郎は越路吹雪のファンで舞台を観に行ったんだな、というようなことを考えた。

宝塚の人たちが出てきて、いっしょになってミュージカルナンバーを歌った。みんなが来ているドレスの話、ブルガリから借りている宝石の話などがあった。

その後、玉三郎が「18の彼」。

真琴つばさが「パダム・パダム」。全体はうまいが、エディット・ピアフと比べるとパダム・パダム・パダムのインパクトが弱くて残念だ。

海宝直人が「誰もいない海」を歌った。本日唯一の、私の懐メロ。私の頃は、トワエモアが歌っていた。

「谷間に三つの金が鳴る」で一幕目は終了。

二幕目は衣装が変わって、1曲目は「枯葉」。続いて「私の心はヴァイオリン」。
きょうは出る予定がなかったという姿月あさとが出て「そして今は」を歌った。誰の歌だったか記憶がないが「Et Maintenant」を聞いた覚えがある。
その後、宝塚の人たちが越路吹雪のいろいろな歌を歌った。
最後に玉三郎の「愛の讃歌」。これはやっぱりいい。好きな歌詞を玉三郎の声で聴けて最高。
最後は「水に流して」。これは、6年前のコンサートでも聴いた。
アンコール曲は「最後のワルツ」。
宝塚の人たちが再登場して、玉三郎もいっしょに「すみれの花咲く頃」を歌った。

歌舞伎座百三十年 三月大歌舞伎 夜の部2018/03/25 20:03

2018年3月24日 歌舞伎座 午後4時半開演 1階14列12番

「お染の七役」

小梅莨屋の場
部屋の後ろに莨の葉が干してある。「岡崎」を観たときにもこうやって干して合って、あの時は莨の葉を刻む様子を見るまでは魚だと思っていた。
幕が開いてしばらく、土手のお六(玉三郎)と中間の三平(功一)が座ってしゃべる。綺麗な二人。
鬼門の喜兵衛(仁左衛門)は花道から出て来る。仁左衛門にぴったりの役なのに演じるのが41年ぶりとは。私が歌舞伎を観始めるずっと前ではないか。以前、玉三郎のお六で観たときは喜兵衛は團十郎だった。
莨を買いに来た嫁菜売り(橘太郎)が、髪結(亀蔵)に髪を直してもらいながら、傷をつけられた謝罪として油屋に袷と金をもらった話をする。そして、木綿物なら繕い物を請け負うというお六に袷と、着ていた羽織を預けていく。その着物を使って、桶の中の死人に着せ、油屋に連れて行って強請り、必要な百両を作ろうとする夫婦。桶の中の死人は丁稚の久太(吉太朗)で、死んだまま喜兵衛に帯を解かれる。帯を長く引っ張って決まる喜兵衛の姿を見た覚えがある。

油屋の場
夫婦の強請の場は十六夜清心を思い出すが、十六夜の方が若いせいかビッチ度が高い。お六は油屋(彦三郎)にしゃべるときは怖いが、旦那としゃべるときは女らしい。
錦之助演じる山家屋清兵衛が、死体はまだ死んでない、と言い、灸をすえさせる。昨日の嫁菜売が昨日の礼を言いに来る。自分の着物を着て倒れている死体を見て驚くが、死体は息を吹き返す。
吉太郎は息を吹き返して台詞を言い、花道でも黄色い布を使って一しきり所作をした。若い子が一生懸命やっている感じではなく役になり切っているのがすごい。歌舞伎座で、仁左衛門と玉三郎が出る人気の舞台で目立つ役をもらえてラッキーだ。
強請に失敗した夫婦は駕籠を担いで引き上げる。

「神田祭」
これはずいぶん前に一度観た。二人がいちゃいちゃする以外に何の内容もない演目だなと思ったが、今回の感想も同じ。綺麗な二人が寄り添ったり頬を寄せたり互いの着物を直したりするのをただうっとりと眺めていた。

「滝の白糸」
30年以上前に玉三郎と吉右衛門で観た。話は知っていると思っていたが細かいところは忘れている。
石動の茶屋の場では蚊帳の中で寝ているのが白糸(壱太郎)。太夫元が秀調、一座の先乗り新助は千次郎、春平は歌六、松三郎は亀蔵、桔梗は米吉。弟子のみどりが吉太朗。出刃打の南京寅吉が彦三郎。
水芸の舞台は楽しい。玉三郎の「はい」「はい」という声を覚えている。
村越欣也役の松也は、次の卯辰橋で登場する。
欣也に仕送りする金に困って強盗を働くことになる原因はこういうことだったのか、と再認識した。
法廷の場面は、玉三郎が背を向けて立っていたのと上の壇から吉右衛門が玉三郎に語りかけていたのが記憶にあるので、欣也は判事になったのだと思っていたが、検事なのだ。戦前の裁判制度で、検事も裁判官と並んで座っている。
白糸は被告だと思っていたが、これも違った。被告は南京寅吉で、強盗で起訴されている。そして、白糸から金を奪い、凶器とされる出刃はそのときに投げつけた、と主張している。白糸は証人で、金は盗られていない、と言う。南京寅吉役の彦三郎が、いつもと違う感じで面白かった。
ずっと黙って聞いていた欣也が、最後に白糸に向かって「待て」という声がいい。その後の台詞もなかなか聞かせた。言い聞かされて、金をとられたことを即座に認める白糸もいい。
欣也は席を立ち外に出て行って、間もなく銃声が聞こえ、法廷では白糸が舌を噛み切った。廷吏が欣也が自殺したと告げる。最後が短時間で片付くのが気持ちがいい。

二月大歌舞伎 夜の部 初日2018/02/04 23:08

2018年2月1日 歌舞伎座 午後4時半開演 1階16列31番

「熊谷陣屋」
相模は魁春。前に観た芝雀の相模と違って口で言うことが本心に聞こえるのが残念。その雀右衛門は藤の方。
堤軍次は鴈治郎。
梶原が芝翫で、義経は菊五郎。四天王は歌昇、萬太郎、巳之助、隼人。
何度も観た覚えがある左團次の弥陀六は流石にうまかった。
染五郎時代に花形の熊谷を観たことがあり、その時は悪くない印象を受けたのだが、今回は周りを先輩に囲まれているバランスからか、あまり良くなかった。

「壽三代歌舞伎賑」

舞台下手に座っていた我當は呂律が回らず、引き上げるときは、たぶん千次郎ともう一人出てきて、肩につかまって運ばれるような感じだった。
藤十郎の音頭で手締めがあった。
両花道に男伊達と女伊達が並ぶとき、私の席からは女形が後ろから出て来るのがよく見えた。真ん中あたりにいた梅枝は若くて背も高いので目立っていた。男伊達と女伊達が交互に台詞を言って、最後の秀太郎の台詞が終わると間もなく、後ろから黒衣が出てきて秀太郎の腰を支えていた。
玉三郎と梅玉が花道から出て来る前に舞台の上で仁左衛門、藤十郎、菊五郎、吉右衛門のうちの誰かが台詞が出てこなくなったようで、結局どうなるのが正しかったのかはわからないまま。
玉三郎と梅玉が舞台に出てしばらくして、梅玉が襲名の三人で口上をするように促して、三人は舞台後ろに入った。
舞台上が空になった後、三人が並んで座った台が出てきて、口上になった。最初に口上を述べた白鸚は声がよくてしっかりしていて、やっぱりまだ幸四郎はこの人にかなわないと思った。

「仮名手本忠臣蔵 七段目」

由良之助役の白鸚は良かった。染五郎が力弥役。

私の席からは二階から玉三郎が現れるのを正面に見ることができた。由良助の読む手紙を、おかるが二階から、九太夫(錦吾)が縁の下から読もうと試みるシーンはいつ見ても面白い。

仁左衛門と玉三郎の兄妹は、いつもながら美しい。前半の喜劇調のところも、「髪の飾りに化粧して」から始まる悲劇調のところもうっとりする。「あにさん、わたしゃどうしょー」というおかるに「もっともだ」とだけ言って応じる兄。「どうしょー」と最後に抱きついた形が素晴らしくて、あれで幕でも良かった。この二人の「桜姫東文章」を観て歌舞伎にのめり込み、30年以上いろいろ観てきたが、私が観たいのは結局これだ。

十二月大歌舞伎 第三部2017/12/28 01:20

2017年12月24日 歌舞伎座 午後6時半開演 1階13列26番

「瞼の母」

中車の忠太郎は、序幕の半次郎の家の場では台詞が普通の歌舞伎役者と比べるとやや音程が狂っている感じがしたが、母のおはま役の玉三郎とのやり取りはいい。「違う」と反論する台詞がとてもいい。最後の「おらあ、・・・」という独白も良くて、この役に合っていると思った。今までに獅童と勘九郎の忠太郎を観たが、総合点では中車が一番。猿翁は渡世人は似合わなくて、「荒川の左吉」は良いと思わなかったが、中車なら似合いそうだ。

半次郎(彦三郎)の家の場は、妹役の児太郎、母役の萬次郎も、みんな良かった。

夜鷹のおとら(歌女之丞)が、忠太郎から金を渡されて、夜鷹の客になるのだと誤解したところは、徳松と獅童の方が面白かった。

おはまの家で、出て行くときに妹のお登世(梅枝)と鉢合わせし、お登世をじっと見る忠太郎が良かった。梅枝は良かった。でも顔が大きい。玉三郎が小顔というわけでもないのに、並ぶと玉三郎の顔が小さく見える。


「楊貴妃」

玉三郎の楊貴妃は何年か前に日生劇場で見たし、その前にも見たかもしれない。

筝曲の演奏に女性が並んでいる。女性の演奏家を歌舞伎の舞台で見るのは新開場の月以来かも。

石がたくさんついた帽子がキラキラして綺麗だ。自分にとっては、クリスマスのケーキ代わり、といったところ。

吉例顔見世 夜の部 「五段目、六段目」「新口村」 初日2017/11/01 23:28

2017年11月1日 歌舞伎座 午後4時半開演 1階11列12番

「仮名手本忠臣蔵五段目、六段目」

五段目は染五郎が定九郎。これで、この世代の定九郎はほとんど見たことになる。「50両」という声が染五郎にしてはぐっと低かった。席が遠かったせいか、血が滴り落ちるのがよく見えなかった。倒れているときは前の人の頭で隠されてほとんど見えなかった。

六段目は、松之助が上方弁の源六。お才役の秀太郎は声が小さくて聞き取りにくい。一人で京都弁の世界に浸っているようにも見える。
おかや役の吉弥は前に観たときより良かった。でも竹三郎の方がもっと遠慮なく勘平を叩いていたように思う。勘平の仁左衛門は、うまいということよりも、最後まで観客を惹きつける力があるのが凄いと思った。


「新口村」

私が初めて歌舞伎座に行ったときにも「新口村」がかかった。忠兵衛は当時の扇雀、今の藤十郎で、孫右衛門は13代目仁左衛門、梅川は歌右衛門だった。
そしてきょうも藤十郎が忠兵衛を演じる。梅川は今の扇雀。孫右衛門は歌六。
扇雀は綺麗で、終始藤十郎を気にかけていた。歌六はうまいが、この役はもう少しぼろぼろ感がある方が個人的には好み。
話はあんまり好きではないが、雪の降る中を二人で綺麗な着物を着て歩いているありえなさが歌舞伎的で、黒地の着物と雪の白の組み合わせが鮮やかだ。

最後の「大石最後の一日」は都合により観られなかった。

芸術祭十月大歌舞伎2017/10/19 01:34

2017年10月11日 歌舞伎座 午後4時半開演 1階11列27番

「沓手鳥孤城落月」
序幕大阪城内奥殿の場、「日ノ本はわが化粧箱」という台詞が玉三郎にピッタリ。松竹座で藤十郎の淀君を見たときにも思ったが、この役は美人にやってもらいたい。玉三郎の台詞がたくさんあって嬉しかった。
千姫は可愛い米吉、饗場の局の梅枝の顔が古風でいい。

二の丸の場、秀頼は七之助。

裸武者は今月は出なかった。

「漢人韓文手管始」
七之助はこの演目では傾城高尾太夫。芝翫演じる典蔵と二人の場はとてもお似合いで美しいが、実際の恋人伝七の役が鴈治郎。背の高さもずいぶん違うし、高尾が伝七を騙している話なのかと思ったがそうではない。松也が出ているのだから、伝七は松也にすればいいのに。
ただ、伝七が松也になったとしても面白い話になったかどうかはわからないような芝居だった。


「秋の色種」
玉三郎と、梅枝、児太郎の踊り。
最初に玉三郎だけの踊りがある程度長くあるのが嬉しい。
途中で玉三郎は引っ込んで、その間、梅枝と児太郎が琴を弾く。
玉三郎が黒地の着物に着替えて出てきて、また三人で踊り、最後は花道から引っ込む。
いい演目だった。

壽初春大歌舞伎 夜の部2017/01/07 00:41

2017年1月5日 歌舞伎座 午後4時半開演 1階7列21番

「井伊大老」
愛之助は井伊直弼の幼馴染の水無部六臣役で、直助(幸四郎)と二人で語り合うシーンがある。「将軍江戸を去る」の時と役がかぶって、胸を病んだ鉄太郎のような雰囲気だ。二人とも美声。
全体的には退屈な話だった。

「越後獅子」
鷹之資の踊り。布晒しがうまかった。

「傾城」
場内が暗いので目をつぶって、目を開くと、正面の暗闇にぐるりと提灯が見えて、ここは何処だと驚く。舞台がパッと明るくなると、仲ノ町の花魁道中。功一の肩に手を置いた玉三郎が外八文字で歩いて、やがて消える。

仲ノ町が消えて、演奏の人たちがいる踊りの場面では、玉三郎お得意の打掛自慢。後ろ向きで腕を伸ばして打掛の柄を見せる。紫の地に孔雀の模様だった。
打掛を脱いで赤っぽい着物での手踊りが、玉三郎ならではで、きょう見に来た甲斐があったと思った。南座でも観たような気がする。見ていると嬉しくなってくる踊り。

最後は黒地に鶴の打掛を着て、後ろ向きにも横向きにも打掛を見せ、演奏者たちの後ろに黒い背景ができてそこに雪が降って、とても綺麗だった。

「松浦の太鼓」

序幕の両国橋の場で、其角(左團次)と、煤竹売りに身をやつした大高源吾(愛之助)が出会い、床几に腰かけてしばらく語る。その後、其角が「年の瀬や水の流れと人の身は」と詠み、源吾が「明日待たるるその宝船」と付句を詠んで去っていく。

第二幕は松浦邸。わがまま勝手だが、染五郎演じる松浦の殿様が可愛かった。浅草と掛け持ちの壱太郎が大高源吾の妹お縫の役で、腰元をやっている。
山鹿流の陣太鼓を聴いた松浦の殿様は赤穂浪士の助太刀をしようと馬に乗る。玄関先に大高源吾が来て、問われるまま、仇討の様子を語る。愛之助の語りは立派。

十二月大歌舞伎 第三部2017/01/02 00:35

2016年12月24日 歌舞伎座 午後6時半開演 2階2列37番

「二人椀久」

勘九郎の椀久はやはりとてもうまかった。松山太夫と二人がバラバラに踊っているのではなく、ちゃんと二人で踊っているように見える。それでも、恋人には見えないのが悲しい。

「五人道成寺」

玉三郎一人の踊りもたっぷり楽しめて、複数で踊る華やかさもあって、とても良かった。

吉例顔見世大歌舞伎 初日 夜の部2016/11/21 22:58

2016年11月1日 歌舞伎座 午後4時半開演 1階13列27番

「御浜御殿綱豊卿」

助右衛門は私の中で染五郎の出世作である。弱っちい助右衛門が綱豊に言い返すところが痛快だった。今回は前回までに比べてはじめから線が太い助右衛門で、後半の意外性が薄くなった。それでも、仁左衛門と染五郎の綱豊・助右衛門は現時点でのベストコンビだと思う。

仁左衛門の綱豊は孝夫時代最後の時から毎回観てきたが、輝くばかりの美貌と美声の綱豊がうまく枯れて、年寄りの意地悪さも感じられて、いい味が出て来た。お喜世の手を握って話しているとき、反対側の手を伸ばすと鴬色の着物の胸のところの金色の模様が流れるように見えて綺麗だ。筋書を読んだり台詞の意味を深く考えたりしない人間だが、何度も観ているとさすがに大体の内容が頭に入って、綱豊の討入りに対する期待がそこここに現れ、助右衛門と話して確かめようとしているのもわかる。

お喜世役の梅枝は危なげないが、可愛げはない。こういう役には向かないのかも。江島の時蔵がいかにも上流婦人で私好み。竹三郎の浦尾が意地悪そうな年寄りで良い。

「松嶋屋」と声が掛かっていた巡礼は仁左衛門の孫だろう。

「口上」
左團次が期待にたがわぬ愉快な口上だったのと、梅玉が先月と同じことを言っていたのが印象的だった。

「盛綱陣屋」
芝翫も左近も良かったが、時政役の彦三郎が印象的だった。口上のときは舌がもつれるような感じであぶなかったが、それが台詞になると常人ではない雰囲気を醸し出していた。花道から去るときの、やや前傾姿勢で、滑らかではない歩き方も、不思議な力のある老人という感じで良かった。

「芝翫奴」
三人兄弟が、何日かずつ順番に踊るらしい。きょうは長男の橋之助。すごく頑張って踊っているが、あまりうまくはない。