歌舞伎座 12月 初日 昼の部2007/12/02 23:26

2007年12月2日 午前11時開演 1階11列8番

二演目目から観劇。

「信濃路紅葉鬼揃」は一番楽しみにしていたが期待はずれだった。一番観たかったのは勘太郎の山神だが、それ以外にも去年の暮れの紅葉狩のようにいろんな人が次々に踊るのだろうと思っていた。

花道から金色の地に紅葉をちらした衣装の玉三郎を先頭に、門之助、吉弥、笑也、春猿、笑三郎の鬼女たちが登場。その後海老蔵の維茂が右近、猿弥、弘太郎を従えて花道から登場。この辺までは、この演目はもう一度見たいと思っていたが、玉三郎の舞は能っぽくて私の好みではないし、鬼女たちは玉三郎の取り巻き的に集団で踊るだけだし、右近も弘太郎も踊らないので、勘太郎が出てくるまでがとても長く感じられた。勘太郎の山神は良かった。それ以外は踊りを見た気がしなくて甚だ欲求不満。次の「筆屋幸兵衛」で勘三郎が発狂して箒を持って踊りだしたときにあのまま船弁慶を踊ってほしかったほど。

「筆屋幸兵衛」は鶴松の長女の役が思春期少し前くらいの女の子の感じがよく出ててとてもよかった。前の席の人が「いい子役だね」と隣りの人に囁いていた。鶴松はときどき声が裏返っていたがそろそろ声変わりなのだろうか。子役ではあるけれども女の子の色気があって女形のようだ。

歌舞伎座 12月 初日 夜の部2007/12/02 23:57

2007年12月2日 午後4時半開演 1階12列20番

きょうの「寺子屋」を見て、今まで観たことがあるような気がしていた仁左衛門の源蔵だが、実は観たことがないのだと確信した。松王丸はきらびやかで源蔵は渋い役というイメージを持っていたが、それは今まで自分が観た役者によって形成されたものだったようだ。華のある人が源蔵をやると、役そのものだけでなく、演目自体があんなにはなやかになるものだったのだ。きょう初めてそれに気づいたということは、仁左衛門の源蔵を観たことはないということだ。

海老蔵の源蔵は、腕組みして花道を歩いてくるところは、まあいいが、戸浪を相手の台詞は、いちおうスラスラ言えているだけという気がする。戸浪役の勘太郎が気持ちをこめて台詞を言っているように聞こえるのとは対照的だ。

しかし、松王丸の首実検を夫婦で息を詰めて見守っているところや、千代の出方によっては切って捨てようと身構えているあたりの緊張感はいい。着物の上半身を脱いで刀を抜いてからの千代との立ち回りで舞台が華やかになる。

松王丸役の勘三郎の出来は普通だろう。松の模様のど派手な衣装が似合わなくてみっともないかと思ったが、そうでもなかった。それよりも、黒い衣装で出てきたとき、仁左衛門の時と違ってあまりに地味な印象だったので驚いた。

いろは送りのときは前の人の頭で松王丸が見えず、そのかわり源蔵はしっかり見える席だったので、海老蔵ばかり見ていた。

「粟餅」は三津五郎と橋之助の踊り。踊りに飢えていたので嬉しかったが、それほど気分は高揚せず。

「ふるあめりかに袖はぬらさじ」は今まで何回か見た玉三郎主演の同じ演目の中で一番面白かった。演舞場で観た頃は玉三郎はまだお園をやるには若すぎて綺麗すぎるような感じだったが、今は相変わらず綺麗だけれど年について不足はないだろう。

亀遊役の七之助は弱々しい病人にぴったり。10月の幽霊に続いて適役。声も清純派の声だ。

通訳の役の獅童は七之助と年回りも身長もちょうど良く、若く綺麗な恋人同士に見えた。獅童はあんまり歌舞伎に出ないから、この役とか昼の巡査役のように歌舞伎っぽくない役をやるのが良いのかもしれない。

第二幕の最初に踊っている幇間は猿弥か。うまいと思った。唐人口の遊女が次々に出てきて紹介されるのだが、せっかくチェリーだのピーチだのバタフライだの面白い名前がついているのに一人一人の名前が聞き取りにくいのが残念だ。最後に出てきたマリアは誰かと思ったら福助だった。イルウスが亀遊を気に入った後、悔しそうにソファに寝そべって自棄酒をあおっているのが面白い。昔、演舞場で観たときのマリアはあそこまでやっていなかったような気がする。

岩亀楼の主人が、マリアをイルウスに勧めるために通訳させる日本語の内容も笑いのポイントなのだが、勘三郎は「裏をかえす」を「あとをかえす」と言っていた。もう一度観るので確認したい。あのシーンだけは安井昌二の主人の方が笑えた。

この芝居は元々好きで、玉三郎の役の中でも大好きな役の一つだが、歌舞伎ではない。今回は出演者全員が出るということで豪勢な配役になっており、そのせいもあってとても見応えがあって面白い。しかし、特に玉三郎贔屓ではない歌舞伎ファンにとって、歌舞伎座でこれを見せられても腹は立たないのか、という懸念を持った。