新橋演舞場 六月大歌舞伎 夜の部 2回目2011/06/12 02:35

2011年6月11日 午後4時半開演 2階3列31番

きょうは自分のコンディションが良くて全く眠くならなかったので、舞台内容もよく見えた。

「吹雪峠」
きょうは2階から見たので、花道に白い布が敷いてあるのが見えた。

おえん(孝太郎)と助蔵(愛之助)が下手後方から歩いてくると、回り舞台で、2人を迎えるように小屋が近づいて行く。おえんに支えられるように歩いていた助蔵が小屋の前まで来て倒れ、おえんに「お前さん、寝ちゃだめだよ」と言われる。そのままでしばらく雪に吹き付けられている助蔵の背中が可愛い。

直吉(染五郎)は、小屋の隅にあった木の台のようなのを動かして、上手に置いて座る。初日に見たとき正面に座ったように思い込んでいたが記憶違いかもしれない。

おえんが口移しで薬を飲ませているとき、向こう側にいる直吉の手がおえんの肩を抱くように動くので、よけいキスシーンのように見える。

直吉に出て行けと言われ、手をついた2人が顔を近づけて「どうする?」と相談してるように見えるのが可愛い。小屋を出た後、上から雪が落ちて来たのをきっかけに小屋に戻るのだと思うが、きょうは雪が落ちるタイミングが少し遅かったようで、それより早く小屋に向かっていた。

刀を抜いた直吉に2人が命乞いするとき、おえんが、自分の懐に直吉の手を入れさせるのと、助蔵が直吉に金を渡すのの順番が逆になっていた。初日に観たときは、おえんが直吉の手を懐に入れさせたのを見た助蔵が、「てめえ、なんてことしやがるんだ」と言って、自分は金をかき集めて直吉に渡していた。しかしきょうは、先に直吉が金を渡し、それに対抗しておえんが懐に手を入れさせていた。

最後も、演出が変わったような気がする。初日に観たときはすっぽんと小屋とは同時に見えない席だったので断言はできないのだが、直吉がすっぽんから去るのと、小屋が廻って見えなくなるのが同時だったのではないだろうか。少なくとも松竹座のときは、すっぽんに消える直吉と、小屋の中で取っ組み合いしている2人が同時に最後に見えた。しかしきょうは、2人が完全に見えなくなってたら、直吉がすっぽんに入った。

今月のおえんと助蔵は最後は2人で小屋の中で放心状態になってるだけだが、それても、最後は三人が舞台上に見える方が、三人全員負けの状況が読みとれて面白いと思う。

染五郎は「実は女がかわいかった」という台詞を言っても、おえんに対する未練があまり感じられない。これはおえん役が美人じゃないからという理由ではない気がする。いつもは感情が伝わってくる人なのに、二枚目すぎて女への未練みたいな感情がわからないのか。

「夏祭浪花鑑」

巷ではクールビズが叫ばれているが、この芝居に出てくる侍が着ているような絽の羽織はおしゃれだ。

磯之丞の錦之助は、きょうは花道を歩いてくるのも見えた。やっぱり綺麗だ。本当にうまくなったと思う。

前の芝居で年増女の役がうまかった孝太郎が、今度は琴浦の役で出てくるのが面白い。

市松役の金太郎の台詞は二言。最初の「ととに会うのは嬉しい嬉しい」はわかるが、二つめはよく聞き取れない。それでも大きな声だから良いか。

仁左衛門は、腰かけて髭を抜いてるシーンが一番見ごたえがある。本当は団七との立ち回りが一番の見物であるべきなのだろうが、2人とも跳んだりはねたりにはちょっと年をとりすぎたようだ。

おつぎ役の芝喜松は笑わせるタイミングとかがけっこううまい。
福助は「さぶさーん」のところなど、台詞がたまに気持悪いが綺麗で良い。

最後の殺しの場のはす池は初日の席からは見えなかった。今回は全体が視界に入って、義平次役の段四郎がはす池に落とされたり、出てきたりするのが見えた。

主観的には、ここの場面全体が間延びしてると感じるのだが、吉右衛門と段四郎の演技自体は一級品だし、2人の相性も良いと思う。

「かさね」

今回の「かさね」は全く期待してなかったのだが、とっても良い。玉三郎の「かさね」は確かにものすごく魅力のあるものなのだけれども、今回は正統派の「かさね」を初めて観た思いがする。大きな理由は時蔵だろう。気品と優雅さのある美貌で、かさねの顔がこわくなった後も、あくまでも美人であり続ける。演技力も必要なこの演目にぴったり。

綺麗なときに踊る踊りも良いし、帯を床に叩きつけるのも、けっこう力強くやっている。顔がこわくなってから、与右衛門にくっついてぐっぐっと横に動くとき、玉三郎みたいに、与右衛門にわざと顔を見させようという感じにはしていない。

踊りで時蔵に感心するときが来るとは予想しなかった。