平成21年松竹大歌舞伎東コース 鎌倉2009/07/20 12:48

2009年7月19日 鎌倉芸術館 午後5時開演 一階6列37番

東コースは都内が会場のときはいつも平日なので、去年に続き今年も鎌倉に行った。しかし、チケットは会場に電話して取るべきだった。去年は下手の通路際で見やすかったが、今年は上手の端で、私の列までは段差なしなので、前の人たちの頭でかなり見えないところがあった。

このホールは浅草よりも残響が大きい。

「正札附根元草摺」

6月の歌舞伎座とは振り付けが違うそうだが、元々この演目の見方がよくわからないので、振り付けの違いもわからなかった。愛之助の五郎は、化粧した顔が歌舞伎の様式美にマッチし、がっしりした肩が強そうで、役に合っていた。

「義経千本桜」

プログラムでは「茶店の場」「釣瓶鮓屋の場」となっているが、いわゆる「木の実」「小金吾討死」「すし屋」だ。

木の実で出てくる仁左衛門の権太は、最初はそんな悪い人には見えない。途中から悪い人になって愛之助の小金吾をいじめるのがツボだった。ゆすりとった金を掌に載せて、小金吾にわざとちらっと見せたりするときの目つきが可笑しい。いじめっ子の仁左衛門、最高。愛之助は白塗りの前髪姿はぱっとしないが、熱演していた。

秀太郎の小せんと仁左衛門の権太の夫婦は前回歌舞伎座で見たときと同じく、愛情があって良い。確かに、ここの場からやらないと「すし屋」の悲劇の実感が薄くなるだろう。プログラムに、秀太郎は平成中村座の芝のぶの小せんに発見するところがあったと書いてあった。秀太郎は芝のぶのファンだそうだが、ずっと年下の女形の芝居を見ていて発見したりする秀太郎の柔らかい感性に感心した。

「小金吾討死」はもっと上の方から見ないと舞台の綺麗さがわからなそうだった。猪熊大之進の役で薪車が出る。プログラムに写真と言葉が出ているわりには、この役ひとつなのか。

「すし屋」では秀太郎の弥助実は維盛はよくない。品もないし、台詞が始まると眠くなる。この場の小せんもやるのだから、頑張って二役やらないで、この役は愛之助にやらせて、梶原は薪車にやらせたらどうなんだろう。

愛之助の梶原は普通に良かった。

仁左衛門は、ゾロゾロした格好で出てきたときから格好良い。若葉の内侍と六代君に仕立てた妻子との別れのシーンでは泣いている人もいた。よく見えなかったのだが、仁左衛門は、最後に陣羽織をかぶって突っ伏していたように見えた。愛之助の権太もあんなことしていただろうか?

私はどうも権太が父親に刺されてから死ぬまで延々と語るのが「僕ってかわいそうでしょ」に聞こえて、「すし屋」は嫌いな演目なのだが、、きょうの仁左衛門の台詞を聞いて、少し説得された。父に刺されたのは自業自得だとは思うが、自分がいがみでなければ「梶原ほどの侍が」やすやすと騙されたはずはない、と言うので、権太がいがみだったからこそ、若葉の内侍と六代君を救うことができたわけだ、と納得できた。

父親役の竹三郎は、父親の役は自分の役ではないと思ったそうだが、実際にはとてもうまかった。仁左衛門が、とても信頼している共演者なんだと感じる。仁左衛門は「わっと一声泣いたので」のところも「うぇあっと~」みたいにリアルさを追求して言っていて、歌舞伎座で見たときよりも自分の好きなようにやっているようで、それは語っている相手の竹三郎が、ちゃんと受けてくれることを確信してるからだろうと思った。

若葉の内侍の高麗蔵は品があって、初めから通してずっと良かった。