2008年 新春浅草歌舞伎 2日目 第二部2008/01/04 01:51

2008年1月3日 浅草公会堂 午後3時開演 1階か列34

挨拶は七之助だった。去年は七之助の挨拶はなかったので初めてだ。ずっと舞台に座ったまま話していた。きょうは昼の部の「弁天娘女男白浪」の最後に幕が閉まらないというハプニングがあったそうだ。観たかった。

「金閣寺」

きょうの席は上手で、きのうとは見えるものが違う。金閣寺の障子が開いていて、中の虎の絵が見える。松永大膳は前の人の頭で見えなくなることがあるが、雪姫はよく見えた。後ろにいる澤村國久が綺麗。 亀治郎はどうしてあんなおばさんみたいな声なのだろう。せめて声がかわいければ顔はあの程度でも美女の雰囲気が出せるかもしれないのに。

この演目はきょうも睡魔に襲われた。雪姫が活躍する演目で、玉三郎が雪姫をやったのを複数回観たのに、なぜ、好きな演目でないのか純粋に疑問だ。今月あと数回見るので、この演目がもう少し理解できるまで感想は控えておく。

「与話情浮名横櫛」

きょうは、昨日よりも愛之助の声の耳ざわりな高音が減ったような気がする。

見染の場、金五郎と与三郎が並んですわると普通に金五郎の方が良い男で、愛之助の与三郎は良い男というよりおぼっちゃま。客席に降りようとすると金五郎が先に下りて手をとり、降りた与三郎がちょっとよろめくのが可愛い。お富の顔を初めて見たときの与三郎の顔はきょうの席の方がよく見える。かっこよさではおよびもつかないが可愛さなら仁左衛門と張り合える愛之助。見染の場は可愛くて良かった。この場の与三郎はこれでいいと思う。

羽織は、花道で酔っ払いとぶつかったときに酔っ払いが紐をひっぱってほどき片方の肩から羽織がずり落ちるが、ずり落ちたのは元に戻り、金五郎と並んで下手に向かって立っているときに客席と反対側の肩を落とし、お富が花道を去っていくときに、手を後ろに回して袖口を引っ張ってもう一方の肩を落として、最後に両腕を下げて落としていた。

源氏店では、七之助が「とこのま」で噛んでいた。与三郎と蝙蝠安が花道を並んで歩いてくるとき、きのうは単に2人並んで出てきた、としか見えなかったが、きょうの席からだと姿勢の良い与三郎の向こう側に前かがみの蝙蝠安が見えて、絵としてきれいだった。

与三郎と蝙蝠安の玄関先での最初の会話を聞いて愛之助の声が昨日よりは良くなっているような気がして、「ご新造さんへ」準備態勢のときに「愛之助ガンバレ」と心の中で叫んだ。愛之助は「久しぶりだなあ」を2回言ったような気がする。「いやさ、お富」を抜かして立っている間に「久しぶりだなあ」と言ってしまって、座りながらもう一回言ったのか?

与三郎は昨日より少し良くなったかもしれない。

2008年新春浅草歌舞伎 3日目 第二部2008/01/04 20:18

2008年1月4日 浅草公会堂 午後3時開演 1階花列け番

与三郎がどうなることかと心配できょうも観た。憧れの花道横の席。け番は傾斜の上にあって椅子が少し斜めになってはいるが座ってみてびっくりしたことに観客の頭がみんな下に見えて何の障害もなく舞台が見渡せる。申し訳ないような良い席だった。それなのに何故か私の前2つはずっと空席。

挨拶は2回目の愛之助。やったことは大体前回と同じ。花道に立ったとき裾がちょっとめくれていたが、誰も直しには来ず、そのままだった。袴がめくれるのはよくあることで、かまわないものなのかもしれない。「江戸弁はまるで英語を習うようで・・・」と言ったので「そういう問題ではない」とそっと心の中でつっこみを入れる。愛之助は「死んだはずだネ お富さん」と言ったが、「死んだはずだヨ」が正しい。

「金閣寺」

きょう初めて、この演目を眠らないで見通した。30分くらいで寝入っている人がかなりいた。

勘太郎の此下東吉には、「この演目で一番美しいのは君だ!」と言ってやりたい。花道にいるときの真っ直ぐに伸ばして指先をついた手の美しさ。きょうの席からは碁盤の見得を正面に見ることができて堪能した。東吉の所作のすべてが美しい。去年の右京のような踊りがないのは残念だが、今年は此下東吉を見て我慢することにする。偶々、直前に同じ役で観たのは、この役も吃又も吉右衛門なのだが、私は両方とも勘太郎の方が好きだ。吃又は好みの問題として、東吉の役の素晴らしさは勘太郎のように所作が美しくなければ表現できないのではないか。

きのう観たときも思ったが、雪姫の上に降りかかる桜の花びらは、昔観たときは止まっている雪姫の上に一瞬にドカッと降るものだったように記憶しているが、今回はもう少し長い時間花びらが一様に降りそそいで、その下で雪姫が踊る。すると、降りそそぐ花びらの映像と踊る雪姫の映像を組み合わせた特殊映像を見ているように感じる。

積もった桜の花びらが、一昨日、昨日の席からは見えなかった。きょうの席からはかなり分厚く積もって絵も描けるほどになっているのが分かる。ただ絵は見えないので、それは2階で観るときの楽しみにする。

松永大膳は主役で、獅童は下手ではないと思うが存在感が薄い。「布団の上の極楽責め、声はりあげて歌え」みたいな台詞ばかり頭に残る。

「与話情浮名横櫛」

きょうはすぐ横の花道を行き来する役者の足元ばかり見ていた。見染の場の与三郎は着物の裾から襦袢(?)を足にかかるくらいはみ出させてヒラヒラさせながら早足で歩いていたので、あんな可愛い着方をしていたのか今まで気づかなかった、と思ったのだが、裾もちょっとまくれているように見えたしひょっとして失敗? 次回観劇時に確認することにする。あんな下着ファッションも舞妓さんみたいで可愛いと思うが。

与三郎と金五郎が客席通路を歩くときは廊下に出ないで中央の後ろの通路を通って花道に戻るが、休憩時間に見たら後ろの通路にはびっしり補助席ができていた。初日も2日目も遠目に見て狭そうな通路だとは思っていたが、客がすわっている後ろを身体を横にして無理やり通っているのだった。

見染の場は今日も無事に済み、さて問題の源氏店である。お富と藤八のおもしろいやり取りは、与三郎が拵えを変える時間稼ぎなのだろうと思いながら見る。藤八が天井や土瓶や庭などをほめちぎるのが面白い。誉め方のサンプルを見るようだ。

並んで出てきた与三郎と蝙蝠安の足を見ると蝙蝠安の方は生足、与三郎は白粉をつけている。七之助の足を見たときは足の裏が違う色だったので裏には白粉はつけてないとわかったが、愛之助は足の裏まで白い。そのせいで、最後の方では、座ったときに踵がつく着物のお尻のあたりが白くなっていた。

顔が短いとほっかむりが似合わないのだろうか。後ろ向きや横向きはまだましだと思えるほど正面がサマにならない。玄関先に座って蝙蝠安とお富の話を聞いているときは私の席からは斜め後ろ姿が見えていたが、それは綺麗だった。

蝙蝠安とお富の口論に振り向いた与三郎がお富の顔を見て息をはずませ、「立派な亭主がある身体」ときいてショックを受けたような目をする演技は良い。一分じゃけえられねえ、と決心する心の動きにつながる。帰ろうと促す安と「嫌だ」と拒否する与三郎のやり取りの時の声はまあまあ良い。ここで立ち上がって「ご新造さんへ」準備態勢に入ってからは手に汗を握った。愛之助、がんばれ! きょうは、「久しぶりだなあ」はちゃんと一回だけ。その後の台詞もちゃんと言っているが、時に気に入らない高音が混じる。仁左衛門と同じ調子で台詞を言うと愛之助の声では女めいた声が混じってしまうのかもしれない。愛之助は肩幅が広くがっちりしているのに、着物の上から見ると筋肉がついている分、肩が丸っこく見える。どうにかならないか。

いろいろ不満はあるのだが、愛之助が下手でないせいか与三郎に対する自分の感覚が狂ってきて、この与三郎でもいいかと思ってしまう。一ヶ月やっているうちに役に慣れてきて与三郎らしくなってくれればとも思うが、愛之助は自分の方に役を引き寄せつつあるのかもしれない。ずいぶん叙情的な顔をした与三郎だが、孝夫が若いときもこんな顔をして与三郎をやっていたのかもしれない。

お富の家から出て花道に蝙蝠安と立っているときの顔を見ると仁左衛門に似てるし、まあいいか。