講談「細川の血達磨」2010/02/27 20:03

2010年2月26日 紀尾井小ホール 午後6時半開演

日生劇場三月花形歌舞伎『通し狂言 染模様恩愛御書』記念イベント、と銘打った講談「細川の血達磨」。講談で聞く!禁断の歌舞伎、だそうだ。

自由席で、下手に座った。講談を聞くのは初めてだ。すぐに「細川の血達磨が始まるのかと思ったら若い人が出て来た。旭堂南青という人だった。講談にも前座があるのか。まず、「細川」のイントネーションが違うので驚いた。武州の八王子に住む男が細川家の門松を立てる話で「細川の福の神」というらしい。落語との違いは何だろう。

この後、真打(?)登場。 4年前の松竹座の語り手、旭堂南左衛門。いきなり語りだすのではなく、枕がある。松竹座の初日に舞台に出たら「待ってました南左衛門!」と声がかかって驚いたと話していた。私は初日を観たが、覚えていない。

本題の話は本を読みながら語る。これが講談か。 図書の名が出れば猿弥、十内の名が出れば薪車、と役者の顔が浮かんで頭の中で動き始める。講談の設定では、友右衛門は妻帯者で、舅が図書に殺される。父を殺された数馬と共通の仇がいる。自分と同じ立場の数馬の話を耳にして友右衛門は数馬に会うことにする。でもきっと、「美貌」と聞いたから会うことにしたのだろう。

浅草で出あって互いに一目ぼれするシーンがあるが、店で働いている人や、数馬と諍いを起こす人が、コテコテの関西弁。筋が通るように友右衛門の言葉として「上方の人が浅草にたんと来ている」というのが出てくるが、浅草にいる気が全くしない。上方講談だからしかたないのだろう。

友右衛門が細川家で働くようになって、ある夜、数馬の家に忍び込む。互いの愛の告白があって、ひょっとしてBL講談か!?と場内シンとして待ち構えていたが、濡場はなかった。

友右衛門が細川の殿様にとりたてられ、殿様も敵討ちの仲間の一人になるところで前半終了となった。

休憩の後、後半が始まるかと思ったのだが、幕が上がると旭堂南左衛門、染五郎、愛之助が立っていた。染五郎、愛之助は普段着で、座った椅子もパイプ椅子だし、カジュアルな雰囲気の対談だった。素顔の染五郎を見るのは初めてだ。色が白くて髭の剃り後が目立つ。

真ん中に座った司会の染五郎は前日は博多の千秋楽で、帰りの飛行機が羽田の濃霧のために遅れたりして大変だったらしい。途中で「さー困った」と言うくらい行きあたりばったりの感じだった。

染五郎が、染模様を4年前にやってどうでしたか、と愛之助に振ったら、「プライベートで本当はどうなんですかとか、染五郎さんとはその後どうなってるんですかという質問が多かった。あんな素敵な奥様とお子さんがいらっしゃるのにねえ」と客席に向かって手を振った。後ろを見たら一番後ろに斎君とお母さんが座っていた。この小ホールの中央最後列なんていう良席が関係者席になっていて頭に来ていたが、斎は可愛いから許す。

染五郎が愛之助に「長崎のハウステンボスにいたでしょう」と振ると、テレビ番組の収録のために亀治郎といっしょに行ったという話をした。ハンターから逃げ回って90分つかまらないと107万円もらえるとかで、すごく走ったらしい。亀治郎はその後、博多座に出た。

3月の舞台については、「日生でしかできないようなものを」という以外、具体的な話は聞けなかった。染五郎が膝に載せていた台本のうち表紙がピンクのが松竹座のときの台本で、今回のは赤い表紙。今回のがページ数が多いが、コンパクトにしたいと言っていた。

ポスターの写真撮影は11月に、愛之助は演舞場の舞台の後、染五郎はりびんぐでっどの稽古の後にやって6時間か7時間かかったそうだ。「僕は寝ているだけです」と言う愛之助に、染五郎は「寝ているといったって、この体勢って言ったらないでしょう」。実はかなり辛い体勢だったそうだ。写真は2人を別々にとって合成したのだと思っていたらそうではなく、染五郎は顔を近くに置くために「こんなでした」と、足を開いて腰をぐっと落として見せた。「それで、この顔してくれって言うんですから」と。その時の写真はパンフレットの中にも使われる予定で「かっこいいんですから」と言って、「自分で言っちゃいますか」とつっこまれ、場内爆笑だった。染五郎は「写真のことですよ」「思ってても言いませんよ」と言った。

南左衛門は、松竹座のときに火事場の話のときはむせてくださいと言われたが、自分のところに煙が来たので本当にむせたとか、語ってると義太夫の太夫さんのような気持ちになる、という話をしていた。南左衛門の語りに合わせて友右衛門や数馬が動くシーンは気持ちが良いそうだ。

最後に、3月に向けての決意を聞かれ、愛之助は、初めて歌舞伎を観る人に向いてる演目だと思う、チラシを見せて勧めてください、一度だけでなく二度三度と観てください、としっかり営業トークをしていた。

短い休憩の後、後半の講談があった。

講談では、敵討より前に友右衛門は火事場で死ぬ。数馬は1人で敵討ちをすることになるが、友右衛門は亡霊として現れて数馬を助ける。染五郎の船弁慶の知盛が好きなので、亡霊も良いと思った。講談の方には春猿がやったあざみは出ない。