第一回 ABKAI2013/08/04 21:35

2013年8月4日 シアターコクーン 午後1時半開演 1階D列9番

すごく観易い席だった。

「蛇柳」

住職の役の愛之助、阿仏坊(新蔵)が下手の揚幕から出てきて愛之助が状況説明の台詞を言う。勧進帳の富樫のようだ。松羽目物? でも後ろの絵は柳。

丹波の助太郎(海老蔵)の踊りの振付が、この演目中一番見応えがあった。勘九郎か猿之助が踊ってくれたらどんなに良いだろう。海老蔵は下手というのでもないが、踊りとして見応えがあるほどの上手さでもない。

助太郎が正体を現して蛇柳の精になったときは、海老蔵の化け物めいた顔立ちが生きていた。蛇柳の精、鱗模様の衣装の四天、住職たちの立ち回りは凡庸。

しかし、海老蔵がいつの間にか誰かと入れ替わっていて、客席の後ろから、刀を三本刺した押し戻しの姿で歩いて舞台に上がって行ったのはびっくりした。

「疾風如白狗怒涛之花咲翁物語。(はなさかじいさん)」

福太郎が、開いていく幕に手をかけて下手から上手に移動し、最後は浄瑠璃の人に手を振ってはけた。

上手から、籠をしょったおじいさん登場。衣装のせいで貧弱な体格の老人に見えたが声を聴くと意外や愛之助。森の中で、怒った狐、兎、タヌキ、蛇、イノシシなどの小動物たちに襲われる。そこに白犬が出てきておじいさんを助ける。おじいさんは、籠の中身を全部捨て、白犬を連れて家に帰る。この時の白犬は可愛かった。

家で待っているおばあさんのセツは吉弥。おじいさんが肩からおろした籠から出てくる白犬が海老蔵。海老蔵は狐忠信の時の方が犬っぽかった。浴衣みたいな着物と、普通の武士のような形の白髪の鬘では犬に見えない。全然可愛げがなかった。おじいさんとおばあさんがうちで飼おう、と話しているとき、嫌がっているような表情なのが面白い。シロと名付けられた。

悪いおじいさんの得松(海老蔵)は小さい頃犬にかまれたので犬が嫌い。得松の見た目は海老蔵にはまってた。若い頃からセツに気があって、家に来たセツに迫るが拒否される。

シロが掘れといった場所をおじいさんとシロがいっしょに掘って、桃太郎が鬼ヶ島から持ち帰った鬼石を見つける。それを家に持ち帰ると、天井から小判が降って来る。小栗判官や牡丹灯籠ほどかっこよくはないけれども、舞台で観るなら地面から小判が出てくるより天井から降って来た方が見栄えがする。

得松は鬼石を盗むが、そこから現れたのは虫の亡霊(福太郎)で、得松は虫にさされて死ぬ。

桃太郎の家来の白犬が悪いことをしているという噂が立ち、村人たちが白犬をつかまえようと探しているので、おじいさんとおばあさんはシロを赤く塗り、名前も「アカ」に変えた。

追い詰められたシロは自分はアカではなく桃太郎の家来の白犬だと名乗って村人に殺され、おじいさんとおばあさんが嘆く中、ピンクの灰になる。その灰を集めて、おじいさんが背後の大きな桜の木に必死に登って撒くと、順々に花が咲く。喜んでいるおじいさんおばあさんの後ろからシロの幽霊が上がってきて、宙乗り。台詞を言って下手に消える。

実はシロは悪事を働いてはいなかったことが明らかになる。毛を白く染めて桃太郎の家来の白犬のふりをしていた黒犬が捕まって連れて来られる。

下手から馬(人が入ったのではなく、木馬のようなの)に乗った殿様(海老蔵)が登場。舞台を降りて愛嬌をふりまきながら通路を歩き、別の通路からまた舞台に戻った。

みんなで「枯れ木に花を咲かせましょう」で目出度く幕。幕開きのときと同じように、福太郎が幕に手を添えて上手から下手に歩いた。

カーテンコールがあり、初めは殿様の姿だった海老蔵が最後はシロの姿で登場した。

音楽が義太夫で、それに乗ってシロが踊っておじいさんに身の上を語ったり、ここほれわんわんのところもちゃんと踊りになっているし、自分は白犬だと名乗るときのぶっかえりとか、歌舞伎の手法を残している点に好感を持った。

一寸法師の使い方が中途半端かと思う。桃太郎のシーンは幻想的で美しかった。浪布が客の頭の上を通過して行ったのは初めての経験で楽しかった。