趣向の華 ファイナル公演 8/25夜2014/08/26 20:27

2014年8月25日 日本橋劇場 午後5時開演 1階3列1番

一、演奏「六斎念仏」

前列の太鼓は下手から壱太郎、本職の女性、染五郎、菊之丞、
後ろの三味線に勘十郎が混じっている。

今藤政太郎の処女作で昭和33年の作というから56年も前のものだが、作曲者はきょうの客席にいた。

すごくテンポの速い曲で、太鼓も複数打つし、昭和33年頃の世相を考えると洋楽に影響を受けて作った曲かと思ったら、郷土芸能からヒントを得たそうで、意外だった。

開演前に染五郎が、興奮する曲で、これができるとかっこいい、と思ってやるけど、頭はここを打ってるつもりで手は別のところを打ってる、と言っていた。難曲のようだが、きのうも聴いた人の話では、きょうはきのうよりだいぶ良くなったとか。

一、袴歌舞伎通し狂言「東海道仇討絵巻」

「日本橋」と書いた掲示が出ている舞台に弥次(染五郎)と北(菊之丞)が出てくる。この二人は、何度か舞台転換の時間を稼ぐために出てきた。客席に下りて今藤政太郎に挨拶したり、客の贔屓の役者名を聞いたりしながら、舞台の準備が整った合図を待つ。二人で花道に座って小鼓を打ったりもした。

この演目はメンバーが全員出た。魁春、友右衛門、芝雀、高麗蔵がゲストで出演。

ストーリーはよく覚えていないので印象に残ったところだけを書く。

初めはお家騒動で、不破伴左衛門(萬太郎)が、悪家老かなんかだった。銀杏の前(米吉)を守ろうとする腰元左枝(廣松)。

梅枝は女助六雁金お七の役。助六と同じで、刀を探している高麗蔵は奥女中竹川。助六が簡単に刀を抜かないようにこよりをかける。刀を抜きそうになるが耐える助六。からんできた男たちが座っている助六に次々にちょっかいを出す。蔦之助が「少しもこわくはないわ」と歌ったときは思わず梅枝の口元がほころんだが、立ち直った。
「知らざあ言ってきかせましょう」という台詞がある。女なので「きかせやしょう」ではないわけだ。一人になると、幇間吉公実は小柴吉三郎役の隼人に近寄って「こちの人」と言う。隼人と梅枝が夫婦役をするようになったのかと感動した。


種之助は浮世又平で、おとくは梅丸。母(芝雀)におとくの懐妊を報告する。この母が実は化け猫。猫の大きな着ぐるみみたいなのが後ろの幕から顔を見せるときは、ちょっと可愛い。芝雀は眼帯をしていたし、すぐに芝雀とはわからなかった。

下女のお香(男寅)が修理之助(玉太郎)を連れて出かけ、上手の通路を通ってから花道の方へ来て、また舞台に戻る。その間、「趣向の華がなくなって、来年の夏休みは私たちはどうしたらよいのでしょうね」と言ったり、「最近はブログを書く方が多いですが、私の近い親戚の変なおじいさんも書いています。皆さまにはブログのアクセス数を稼いでいただきたいのでよろしくお願いします。おじいさんは今は軽井沢でゴルフをしています」と話したりする。男寅はまだ全然未完成だが、首から肩にかけての線が女らしく綺麗で、将来は色っぽい夜鷹の役をやったりするのだろうか。

帰宅した下女は化け猫が油をなめているのを目撃して悲鳴を上げ、ころころ転がされて、殺される。入れ替わりに出て来たおとくが、化け猫の芝雀の前で見事な海老反り。年下だが梅丸の演技の方に安定感がある。顔立ちと雰囲気からして、高麗蔵のように上流婦人を演じる女形になりそうだ。梅丸は昼の部の最初の演目でも種之助と並んで座っていたが、二人とも華奢できれいな子で、お似合いだ。

亀寿は天竺徳兵衛の役。あまり大きくなくて活躍もしないが蝦蟇がいて、可愛かった。

勘十郎と菊之丞の大薩摩の前に染五郎が足置きを置きに来て、終わると片づける、というお約束が今回もあった。

菊之丞が長女の羽鳥以知子ちゃん、勘十郎が長男の藤間雄大君を連れて花道から舞台を通って上手にはけた。以知子ちゃんは、3、4年前に孝太郎が出たとき、「お姫さまがお生まれになったそうで」と芝居の中で写真も見せてお祝いを渡していたときの赤ちゃんだろう。ずいぶん大きくなった。雄大君はお宮参りのときのケープのようなのをかけていて、私の席は花道の外なので顔がよく見えなかったが、休憩時間にロビーに行ったらお母さんに抱かれてニコニコしていた。目がパッチリした可愛い赤ちゃん。

休憩の間に、すっぽんが下がっているのがわかったが、幕が開いたら着ぐるみの虎が上がって来た。その虎は引っ込んでみえなくなったが、この後は狩野元信(歌昇)の虎退治の話になる。歌昇は襷をかけて花道に来て、虎退治に行く。舞台の上で虎の着ぐるみと戦って、勝つ。

みんなそろって見得を決めて幕となった後、会主たちが出て来て挨拶。そして再び幕が上がり、魁春に言葉を求めると「来年もあるかもしれませんが」。手打ちをしようということで、友右衛門が音頭。「一本締めですか、それでは、皆さん、ヨヨヨイヨヨイヨヨヨイヨイ、ということで、趣向の華の再開を願って」で、一本締め。今月は「挑む」の「お祭り」、歌舞伎座の「勢獅子」に続いて三度目の一本締めだ。
勘十郎が、「来年は趣向の華はありませんが・・・」と言い、歌昇が「来年の8/24、25に国立劇場小劇場で僕たち兄弟の勉強会をやります」と発表。
そして、打ち出しの太鼓は壱太郎。大太鼓が舞台中央に来て、壱太郎が打ち、最後には客席から「趣向の華!」と声が掛かって気持ちよく幕となった。