酒と涙とジキルとハイド2018/05/01 00:18

2018年4月27日 東京芸術劇場プレイハウス 午後7時15分開演 1階E列9番

4年前の初演を観たが、細部をほとんど忘れているせいか、新鮮な気持ちで観られた。
登場人物は4人。
迫田孝也演じるプールは、長髪に耳が見えている悪魔のような髪型と、「態度の大きい使用人」的な雰囲気がいい。
イヴ役の優香は、別の人格ハイジも演じて、熱演。
ビクター役の藤井隆は笑いの中心。舞台の床にキスをするように唇に当てた手を床につける動きが面白い。それを「何をやってるのだろう」のような顔で見るジキル博士役の愛之助も面白い。
「誰もがハイジになる」という薬を飲んだ後、初演のときは、当時の愛之助に期待されていたオネエっぽいしゃべりをしていたが、今回は歌舞伎の女形風に「熱うござんす」「ハイジでありんす」と言った。本業に立ち返っているのが面白い。

切られの与三2018/05/20 20:29

2018年5月17日 シアターコクーン 午後1時半開演 2階Ą列26番

歌舞伎風演劇だが、なかなか面白かった。七之助は見た目の雰囲気は与三郎にぴったり。普段歌舞伎の源氏店で見る男らしい与三郎と比べると情けない優男だが、見染めの場との連続性があって、ある意味、与三郎の実像はこんなもんかな、と納得がいく。

見染めの場から玄冶店までは、頭の中で歌舞伎と比較していた。
見染めの場、与三郎は舞台端の段のところに腰かけていて、お富(梅枝)とぶつからない。落ちた羽織は落ちたまま。
蝙蝠安(笹野高史)が傷だらけになった後の与三郎を連れ歩いて面倒をみている様子がわかる。与三郎の傷を見ると相手が金を投げ出して逃げる様子が面白い。
玄冶店のお富の家には女中はいなくて、藤八(亀蔵)と二人だけになっていた。お富に言い寄ってはいるが、化粧してもらったりあれやこれやは、なし。
蝙蝠安といっしょに来た与三郎が、安がゆすっている間にお富の顔を見て気が付くところは、二人に照明が当たる。
与三郎が「御新造さんへ、」という台詞の前の態勢に入ると客席が静まり返る、という状況をここでも体験できて感動した。台詞の「しがねえ恋の情けが仇」の後、「命の綱の切れたのを」以降はバックミュージックが流れる。
多左衛門役の扇雀は、落ち着いた大人の感じ。

玄冶店までで終わりかと思ったら、続きがあった。多左衛門にもらった金を使い果たした二人が金を作る相談をしているところに安が来て、会津屋の旦那の話をする。梅枝が「大店で会ったことがある」と言ったが「賭場で会ったことがある。大店の旦那だね」と言うべきところだったようで、客席と笹野が、やっちゃったな、という雰囲気になり、梅枝が恥ずかしがっていた。

梅枝は見染の場で通路に登場したときから歌舞伎味が強く、玄冶店もうまい。色っぽいところは色っぽく、与三郎に対しては年上女房風。
七之助の与三郎は可愛くて、梅枝に食われ気味だったが、二度目の休憩の後は、走ったり馬跳びなどがあって大活躍だった。普段はお目にかかれない太腿を露わにした姿も見られた。

扇雀の二役目の久次の最後は、玉手御前の戻りを思い出した。

最後の場は飛行機雲ができているような青空の下、与三郎が一人座って、「しがねえ恋の~」の台詞を言う。「与三郎の青春」という感じだった。