レッドクリフ2008/12/03 23:39

2008年11月29日 

土曜日の夜に吉祥寺で「レッドクリフ」を見た。前に行ったことがあるかどうかわからないが、クッションの良い椅子だと思ったら肘掛の先に飲み物を入れるところも付いていたので、コーヒーを買って、ついでにポップコーンも買って、映画が始まる前に食べてしまった。

冒頭に、日本語の音声で、当時の中国の勢力区分の説明があったのでびっくりした。 私は三国志はほとんど知らないが、大画面での戦闘シーンは見ごたえがあった。 去年の大河ドラマの風林火山は景色が綺麗だったがレッドクリフの場合は三国志に書いてある陣形や戦術を再現してるのが凄い。いろんな規模の立ち回りがたくさん見られて面白い。中国風の立ち回りなので、捻りが入って華やかだ。 ジョン・ウーの作品は今まで見たことがなかったが、一つ一つの画面が綺麗で、力のある人だと思った。

曹操役の俳優の顔に見覚えがあったので、きっとあの人だろうとプログラムで確認したら、やっぱり「さらばわが愛」でレスリーチャンの恋の相手だった人だった。この人の顔、日本人が見ると誰かに似ている。渡瀬恒彦の笑ったときの顔か、志村喬を若くしたような顔か、と思った。 トニーレオンと、その主人役のチャン・チェンは「ヴエノスアイレス」に出ていた。チャン・チェンの妹役の女優は菅野美穂を派手にしたような顔。

孔明役の金城武は、わかりやすいイケメンだと思う。私の中ではチャン・チェンの方が美形度高いが、チャン・チェンは顔が中高すぎて真正面からだとよくわからない。 獅童も地味に堅実な演技だった。今年の浅草の鏡割りの挨拶で、レッドクリフの話をしていた。あのとき言ってたのはどの動作のことかな、と思って見ていたが、騎乗しながらちょっと腰をずらして振り向き気味に敵をやっつけるところかもしれない。獅童は、今月の舞台で見たときより少しふっくらした顔をしていた。今月は顔の下半分がぐっと細くなっていたが、「羊と兵隊」の時に7キロ減量したのが戻ってないようだ。

おお、いよいよ本番の赤壁の戦い、と思ったらto be continued! で、Part 2は来年4月だそうだ。待ち遠しい。

中村勘太郎・七之助 特別公演2008/12/04 23:25

2008年12月3日 文京シビックホール 午後6時半開演 1階31列1番

今年の歌舞伎はこれが見納め。 文京シビックホールが入っている文京区役所の高層の建物は通勤の電車からも見えるのだが、来たのは初めてだ。地下鉄から連絡口があるのでとても楽。

ロビーで買ったパンフレット(1300円)には写真がいっぱい載っていて嬉しい。十月の忠臣蔵は写真は一枚も買わなかったが、パンフレットに何枚か載っていた。二人で泉水の立ち回りもやったのか、これは見たかった。

「舌出し三番叟」は初めて見た。勘太郎の三番叟、七之助の千歳。三番叟大好き人間だが、あまり感動しなかった。実は、席が後ろ過ぎて、定価で買ったチケットなのに自分の前に何列か列ごと空いている席があるにもかかわらずこんな後ろとは、買い方を間違えたとむかついていて、なかなか気持ちが踊りに入っていけなかった。それに多分、この三番叟は私が好きな動きではなかったのだろう。三社祭にような跳んだりはねたりで、いかにもダンスという感じの踊りが好きだ。 七之助の千歳は綺麗だった。七之助の踊りの癖みたいなものを覚えたような気がして、顔を隠していても七之助とわかるだろうと思った。

次が「芸談」。司会は武藤まきこさん。勘三郎は今アリゾナだそうだ。

武藤さんは二人が小さい時から知っているようで、昔は二人が小さかったが今はよその小さいお子さんが出てくるようになって・・・ということで、七之助が、橋之助の息子三人の初舞台の時は橋之助が白塗りよりも下の顔が白いほど顔面蒼白で大変だったという話をしていた。よしおは今は歌舞伎大好きで楽屋で歌舞伎ごっこをして自分で三役やったりするが、初舞台のときは25日の間に2回くらいしか自分の名前を言えなかった、という話をした。

今年はずっと忙しかったですね、というような話の後、客席からの質問に移った。

初っ端の質問が「いつ結婚するんですか」。こういうのにはっきりした答えをするはずがなく、七之助は二十歳までには結婚したかったが、二十一、二十二でも結婚できなくて今は早く結婚したくはなくなった、もしかすると富十郎のおじさまを見習って・・・みたいなことを言っていた。七之助が七十になるまで私は生きていられないから、それまでずっと独身でいてくれたら嬉しい。

十月の役についての質問に答えて十月の話をしてくれたのが面白かった。勘平は難しい役で、その上に判官の役もやったので精神的にきつかったが、六段目の勘平は女衒役の勘三郎と数右衛門役の仁左衛門が勘平経験者で、父は自分がやりやすいように動いてくれるし仁左衛門は腹を切った後、ずっと抱きかかえてくれていたし(!)、とても楽だった、ということだった。反対に七之助は、父がちっとも自分のやりやすいように動いてくれなくて大変だったそうだ。玉三郎に教わったように煙草盆を渡したかったのにむこうから取っちゃうし、みたいなことだった。

「六段目で、お二人に『ご兄弟!』と掛けた人がいたでしょう」と重ねて質問されて、勘太郎が、「そう。七段目まで待てよ、と思った。七段目なら兄弟の役なんだから、髪の・・・ と。 」 (そうだ、勘太郎、あの「髪のかざりやけわいして・・・・」が、悲劇に転換する要の台詞だよね!) 「 間の悪い人は結構います」と言った。

台詞を忘れたりしたときは、の質問に、勘太郎は「堂々としている」。踊りのときは振りを忘れたら「とりあえず回る」。七之助によると、台詞を忘れたとき、黙ってしまう人と延々としゃべりだす人に二分されるそうだ。扇雀は後者で、骨寄せの岩藤をやってるとき、七之助が腹を切って突っ伏した後、扇雀が台詞を忘れ、「あの人は慶応で言葉をいっぱい知ってるので」自分で考えた台詞を3分もしゃべった、それも、「お前がよくなったら」「俺にまかせておけ」みたいな内容で、腹切ってるしもう良くなったりするわけないのに。七之助も勘三郎も必死に笑いを堪えていて、幕が閉まった途端、桜席のお客さんが見てるのにみんなで大笑いした、という話をした。

「ごまかすのはうまいから」と小山三が途中から登場させられた。八十八歳。武藤さんに「二人ともこんなに立派になってもうご安心でしょう」と聞かれて「耳が遠くなって」と古典的なギャグを見せてくれた。

「二人で映画に出るとしたらどんな役やりたいですか」という質問に、勘太郎が即座に「タッチですか」、七之助が「それじゃ僕すぐ死んじゃう」という冗談の後、質問者に「お二人は舞台でよく恋人同士をなさっているので、それを素の顔でやったらどんな感じかと・・・」と言われ、勘太郎が「ホモ映画ですか! そういえば真夜中の野次さん喜多さんでファンになったんでしたね・・・」。質問者に「二人で一人の女性を好きになって奪い合うようなのは?」と言われ、「このドロボウだぬき!」みたいな昼ドラもやってみたいと言った。

映画に関連した話で、勘太郎の主演映画「禅」の前売券はロビーで勘太郎のサイン付きクリアフォルダのおまけ付きで売られていて、「風流陣」の間にサインさせられ、「それでも足りねーって言って」昼夜の間に食事できなかった、という話を聞き、次の休憩にロビーの列に並んで前売券を買ってしまった。

次の「風流陣」には兄弟は出なくて、仲之助、仲四郎、澤村國久の桃、桜、梅と、いてうの山神。 後見が澤村國矢と土橋慶一。國矢は太ったままなのかどうか遠くてわからなかった。顔は判別できないが最初に踊った梅の國久がやはり一番うまいと思った。

「雪傾城」は七之助の傾城と、鶴松の新造。新造と言っても、花魁のように見えた。まだ子供の体型だが鶴松は踊りがうまかった。七之助は普通の綺麗さ。

最後が勘太郎の「まかしょ」。富十郎の浮かれ坊主を思い出すような振 りの踊りだ。舌だし三番叟よりこっちの方が気に入った。勘太郎のような体型の人があの坊主の衣装を着て踊ると、ちょっと変わった衣装を着ているバレエダンサーのようだ。