兵士の物語2009/09/15 23:06

2009年9月12日(土) 新国立劇場中劇場 午後六時半開演 1階5列31番

新聞に出ていた先行予約の広告が目に入ったのでアダム・クーパー目当てにチケットを買った。5列目だから割と良い席、と思ってはいたが、行ってみたら最前列だったのでびっくりした。幕は下がっていなくて、舞台の客席側の真中はオーケストラピット、舞台端にはテーブルと椅子が並んでいて、いつの間にか人が座っていた。終わった後で友人と話したら、友人はあれは舞台席だと言ったが、そうなのだろうか。

舞台の後ろから出演者が出てきて、その中の一人がオーケストラピットに入った。指揮者だったのだ。

シルクハットにタキシードのウィル・ケンプが舞台の真中で "Welcome, ladies and gentlemen!" のようなことを言い、紙を見ながら「ミナサマ、ヨコソオコシクダサイマシタ」みたいなことを言って、話が始まった。

字幕は舞台の左右に出る。

どの程度バレエなのか、話が始まるまでわからなかった。結局、台詞とダンスが半々くらいか、あるいは台詞の方が多いかというくらい。

ストラヴィンスキーの音楽で、話の内容はロシアの寓話風で、両方とも魅力的なものなので、本格的なバレエで見たかった。

アダム・クーパーらしい踊りもなく、動きはウィル・ケンプの方が良かった。ただ、マシュー・ハートも含め3人ともダンサーなのに声が良くて舞台俳優も十分勤まるのは大したものだ。特にマシュー・ハートは老人、老婆、最後の悪魔、と扮装も変わり、演技派だった。

最後の悪魔はポヨポヨ体毛みたいに毛が生えたタイツで、あんなのは初めて見た。

ウィル・ケンプの白鳥も観てみたいと思った。

五耀会2009/09/15 23:09

2009年9月14日(月) 国立劇場大劇場 午後6時開演 1階8列49番

山村若を東京で見られる数少ないチャンスなのでチケットを買った。A席の上手通路際で、花道も舞台も人の頭に遮られずに見える。

五人の舞踊家が順番に素踊りを踊って最後にみんなでいっしょに踊る、と漠然と想像していたが、ちょっと違っていた。

葛西アナウンサーが各演目の前に出てきて解説したのは予想外だった。少しでもポイントを教えてもらうと素人にはわかりやすい。

最初の演目は山村若の素踊り「葵ノ上」。途中で謡が入って、若の声を聞けた。遅れて入ってくる人も多くて、トップバッターは損だ。

次の「浜松風」は歌舞伎舞踊。

小藤という女形を藤間蘭黄、此兵衛を西川箕乃助が踊った。素踊りではなく歌舞伎の扮装をして踊る。台詞もある。確かに踊り自体がうまいのはわかるが、汐桶のかつぎ方とか、帯の扱いとかに慣れてないようで、歌舞伎の女形と比べると見劣りがするし、台詞もひどくはないが歌舞伎役者ほどうまいわけでもない。何か「トンデモ」系のものを見ているような気もして、舞踊家はこういうものを踊りたいのか、これで何を主張したいのかと、やや複雑な気持ちになった。しかし、自分の得意分野だけに閉じこもっていない点では舞踊家の意気込みを感じた。

次は創作舞踊「一人(いちにん)の乱」。

これは素踊り。花柳寿楽が安部宗任、花柳基が源頼義を踊った。最初に基が馬を駆る所作で花道から現れる。最後は宗任が客席に向けた矢をつがえた弓をひきしぼった形で終わる。この中でも二人の台詞があった。基は以前、別の舞踊会で見たときも台詞を聞いたことがあるが、うまい。富士の山と陸奥の山々を語る一人ずつの踊りが特に見ごたえがあった。かっこいい舞踊で、ぜひもう一度見たいし、これ以外にも創作舞踊で良いものがあったら次の機会に紹介してほしい。

最後は、「七福神船出勝鬨(しちふくじんふなでのかちどき)」。

若が恵比寿、基が大黒、蘭黄が毘沙門天、箕乃助が寿老人 、寿楽が福禄寿だったと思う。扮装をしているわけではないが扇子にそれぞれを現す絵が描いてあるそうだ。そろって花道から出てきて名乗った。

楳茂都流家元襲名披露のときの「荒れ鼠」のように舞踊家の群舞は見ごたえがあるので期待していた。この演目は五人それぞれが順に主役になって踊るような構成で、その中で一人が踊るときと全員いっしょに踊るときがあり、思ったより時間も長くて存分に楽しめた。

地味目の公演を予想していたが、意外さもあって、予想よりエキサイティングだった。

小さいことだが、先日の「紀尾井舞の会」と同じくプログラムに詞章を載せてくれているのが嬉しい。